異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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058 鑑定

 

「驚きました」

 

 モナは驚いた表情で続けた。

 

「具体的には商談中に突然、干し肉を齧りだしたお客様よりも」

 

 具体的過ぎて実体験なのだろう。

 彼女の反応を見たくてこんな突拍子もない行動に出てみた。

 

「よくやったアビィ、成功だ」

 

「ありがとうございます」

 

 アビィを褒めてショーテルを机の上に置いて続ける。

 

「強権のショーテル、これで金貨50枚と引換だったか?」

 

「はい。ですが、元々スキルが付いていた場合に多重スキル武器でシロウ君が損してしまうのでギルド神殿で鑑定させてほしいです」

 

 上手い返答だ。

 

 アイテムボックスから出せた本物のショーテル、モナ自身が競り落としたスキルカードを使用しての目の前での合成。

 

 ここでギルド神殿で鑑定させてほしいと言えば「貴方を信用していません」という回答になるし、逆に直ぐにお金を出すのも慎重さが足りない。

 

 相手の気分を害さずに冷静になる時間を稼ぐか、鑑定する必要がある場面だがモナは的確に対応した。

 

「問題ない、鑑定料はどうする?」

 

「私からの提案ですので勿論私が出します」

 

 結果的に、彼女の頭の回転の速さが理解できて鑑定料も節約できた。

 

「ところで合成時に成功するのが分かっていたようでしたけど?」

 

「失敗する前提で合成する人間はいないな」

 

 モナは嘘を嗅ぎ分ける能力がある可能性があるので一般的な回答を返した。

 彼女も完全に納得してないようだが、それもそうですよねとショーテルを持つとギルド神殿に案内する。

 

 目が隠れて表情が分かりにくいアビィは初めての合成に緊張していたので「成功するか分からない」演技になっていた。

 

 モナが受付に話を通して、カウンターの奥にあるギルド神殿のある部屋へと移動する。

 

「これがギルド神殿か」

 

「ギルド員以外が勝手に触ったら駄目ですからね」

 

 祭壇の上に鎮座する虹色に発光する黒い物体……タワー型のパソコンにしか見えねぇ。

 

 ゲーミングギルド神殿を商業ギルドの職員が操作すると、モナがその上に置いた強権のショーテルが鑑定される。

 

  強権のショーテル 詠唱中断 

 

 ギルド神殿の鑑定でスキルスロットの空きが表示されないのは存在が把握されていない時点で予想できている。

 

「これは複数スキルも鑑定できたりするのか?」

 

「できないですね。最初に付いたスキルだけ表示されますよ」

 

 商業ギルドの職員が説明してくれる。

 更に職員が操作すると、電子音が鳴って付箋のような紙きれがギルド神殿から出てくる。

 モナは付箋を強権のショーテルに貼ると満足そうに言う。

 

「これで鑑定は終了です。お金を引き出しますのでもう少しだけ待ってくださいね」

 

 強権のショーテルを返却されたので付箋を見るとブラヒム語で何か書いてある。

 

「先ほどの鑑定結果が書かれているのですか」

 

 覗き込んだルウが感想で教えてくれる。

 

「紙は剥がすと消えますので剥がさないようお気を付けてください」

 

 モナが注意する。

 貼り直し防止機能が付いたファンタジー付箋に感動しつつ、ギルド神殿に後ろ髪を引かれながら退室する。

 ギルド神殿に廃熱機構とかUSBポートとか無いか観察してみたかった。

 

 そういえばオリーブオイルの油風船の薄い膜は破れたものは時間が経つと消滅するらしい。

 ダンジョンの魔物の姿も魔力がそう見せているだけで、魔力の核はドロップアイテム説が一般的だったか?

 魔力が減ると形が保てなくなり消滅すると考えると納得できなくもない。

 

 ダンジョンが人間の死体を素早く吸収するのは、死体の魔力を分解しているのか?

 人間の核となるアイテム……、インテリジェンスカードがある。

 あまり深く考えると自分がゲームの登場人物だと発覚する主人公みたいな表情になりそうだ。

 

 モナが受付でお金を引き出すと、商談室で武器と交換に金貨袋を受け取る。

 

「ご取引ありがとうございます。これで先方もお喜びになります」

 

「こちらこそ、成功できて臨時収入を得ることができた。追加のスキルカードの注文は可能だろうか?」

 

「勿論です」

 

「挟式食虫植物が3枚、コボルトが3枚、芋虫が5枚、いや6枚頼む」

 

 枚数の多さに少し驚かれたが、俺の資金が金貨50枚以上あること知っているので野暮な話は省略できる。

 モナに相場を聞くと原作と似たような金額だったので構わず注文しておく。

 

「スキルカードが12枚で手数料は6000ナールですが、この度は貴重な合成成功を見せていただきましたので4200ナールお願いいたします」

 

 手数料を払うと、モナと握手して商人ギルドを後にした。

 

 リーベ

 自 宅

 

「予定通り、上手くいったな!」

 

「本当に自前の鍛冶師をばらしてよろしかったのでしょうか?」

 

 ルウが心配するが、アビィの頭を撫でながら言う。

 

「俺の自慢の鍛冶師を見せたかったのもあるが、スキルカードの購入頻度でいずれバレることだ」

 

「自慢の鍛冶師……」

 

 目の前で合成して目の色が変わるかは実際にしてみないと分からない。

 アビィの耳が赤くなっているが、二人に説明する。

 

「次に作る予定のMP吸収のスタッフはアンドリーの騎士団に売ろうと思う。交互に売って先に情報を漏らした方と縁を切ればいい」

 

 情報を漏らした方と縁切りすれば、もう片方はより慎重に取引してくれるだろう。

 

「シロウ様は嘘を嗅ぎ分けられたりできるのでしょうか?」

 

 俺はルウとアビィを嗅いでみて笑顔で言う。

 

「石鹸のいい香りがするな!」

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