異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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006 選択

 

「動くな、何をしているか素直に答えろ」

 

  ルウ 僧侶LV3 

 

「!? わ、私は」

 

 突然、背後を取られた猫人族の少女は驚愕の瞳で振り返る。

 そして三日月槍を構える俺の姿に目を丸くすると、ぶるぶると震えだし……。

 

「……」

 

 無言で泣き出した彼女の足元にも水気が垂れている。

 まずいまずいまずい! 騎士呼ばれたら今度こそ捕まる状況では!?

 

「とりあえず部屋で話そう」

 

 無詠唱でパーティー編成を飛ばすと、彼女は泣き止まぬまま承認した。

 

 パーティー:シロウ/ルウ

 

 編成が完了したのを確認すると、ワープで宿屋の部屋に飛んだ。

 

   アンドリー

  宿屋202号室

 

「……」

「……」

 

 超気まずい。

 

 とりあえず急いで走り、丁度用意できていたお湯を受け取って部屋に戻る。

 

「これを使っていい。そして何があったか話してくれ」

 

 臭いが充満し始めているので窓を開けたいが話を優先したい。

 

 泣き止みつつある彼女は布で涙や諸々を黙って拭いていく。

 後ろを向く訳にはいかないのでそれを眺める訳になるわけだが、相変わらず気まずい。

 

「そういえば、もう一人はどうした?」

 

「ッ!」

 

 また泣き出しそうになったので、慌てて涙を拭いてやって宥める。

 落ち着いた彼女はぽつりぽつりと話し始めた。

 

「妹は捕まりました」

 

「そうか……」

 

 彼女は海賊だったからなぁ。

 

「騎士にではありません、()()に捕まりました」

 

「ん?」

 

 何故そうなると首をかしげるとルウは一本の武器を床に置いた。

 

  激情のシミター 

  攻撃力2倍/HP吸収 

 

「お願いです。これにはHP吸収のスキルが付いています。

 これを差し上げますので妹を、ライラーを助けてください!!!」

 

 ルウは五体投地で訴える。

 見事な土下座スタイル……、てか異世界にも土下座あるのか。

 

 彼女のお尻に元気なく垂れさがる純白の尻尾を眺めながら考える。

 

 どうする?

 →助ける

  助けない

  殺す

  犯す

 

 選択肢が世紀末過ぎるなぁ。

 

「他には何も……、私が何でもします!!」

 

 ん?今、何でもするって……、悩んでいるように見える俺に彼女が条件を吊り上げてくる。

 罠の可能性とか回りくどすぎて考える必要がないので既に答えは決まっている。

 

「分かった、助けるから()()()()()

 

 彼女は返答に覚悟を決めた顔で服を脱ぎ始める。

 

「すまん、言い方が悪かった。そろそろ臭いが厳しくなってきたからその服は洗ってほしい」

 

 顔を真っ赤にしたルウは手にした布を投げつけてきた。

 回避できたが避けたら収拾できなくなる気がして、甘んじて顔で受けた。

 

 

 窓を開けて、思ったより旅の汚れが落ちなかったとお湯を追加したりした。

 洗われたルウの服を眺めながら、布団にくるまれてこちらを睨む中身に詳しい事情を聴いた。

 

 要略すると、彼女たち姉妹の村が盗賊に襲われて両親は殺害され捕まった。

 容姿が悪くなく双子の珍しさもあって高く売れると判断されて、その場で乱暴はされなかった。

 物好きな貴族に売れる目途が立ったが酔った盗賊の頭目に襲われそうになった。

 妹の方が武器を奪って反撃、その騒動でアジトから抜け出してダンジョンに逃げ込んだらしい。

 

「そこで俺に出会ったと」

 

「はい、とても強そうに見えました。ボスも直ぐに倒されていましたし」

 

 15発はこの世界基準ではそこそこ速いらしい。

 

「暗くなる前にダンジョンを出て、食糧を手に入れようと街に戻ったところで盗賊たちに見つかってしまいました」

 

 武器を渡して身軽になった妹が囮になることでどうにか逃げきったが、待ち合わせ場所に戻らない。

 妹を助け出そうにも騎士に助けを求めることもできない。

 そこで街に、俺の気配があることを感じ取ったらしい。

 

「気配?」

 

「ときどき希薄になる独特な気配ですので」

 

 気配遮断のアクセサリーは、攻撃したり会話したりすると効果が無くなるようで、また徐々に効果が表れる仕様らしい。

 辺境伯や騎士たちには効果が無さそうに見えたのはLV差があると効力が低くなる可能性があるなぁ。

 盗賊LV20には効いていたように見えるし、LV20差くらいが限界かもしれない。

 

 そもそも気配が感じ取れるって凄いことなのでは?

 

「もしかしてダンジョンのモンスターの気配とか分かる?」

 

「分かります」

 

 これは、索敵要員が手に入ったのでは?

 獣人になって全体的にスペックが上昇したのは実感しているけど、ダンジョン内で臭いをかぎ分けるの無理ゲーと早々に諦めた。

 

 これは絶対彼女を仲間にする為に、妹を助け出さないとならないな!

 

「ぁ」

 

「どうされました?」

 

 辺境伯の言葉が思い出される。

 

「……今晩、騎士団がその盗賊団を殲滅するらしい」

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