部屋中を暴れる赤い跳弾、ライラーの
どうにか頭は守ろうとするが背中や足を被弾する。
「あやまちあらキャ!」
全体手当を詠唱しようとしたルウに兎が直撃して派手に転ばされた。
パーティーライゼーションは全体魔法を使うために強壮薬=MP回復に設定しているので回復手段が無い。
ルウの全体回復で十分間に合っていたので僧侶をセットしていない。
ジョブ変更を使うために無防備になるのは危険な状況、しかしこのままではジリ貧かもしれない。
ライラーなら撃ち落とせそうだが、露骨に彼女の方には跳ねないように感じる。
ここは一か八かジェノサイドアタックでカウンターか?
「任せてください」
アビィの声が聞こえる。
彼女の装備や俊敏ではあの跳弾を止める手段はないように思えるが……。
「任せろ、です」
シャベルの上に乗ったライラー。
アビィがシャベルをハンマー投げのように豪快に振るうと、ライラーが射出される。
人間砲弾と化したライラーが空中で兎と交差して叩き落とした。
偶然、俺の方に転がってきた兎をラッシュで斬り飛ばすと消滅する。
兎肉
ジョブ変更で曲芸師を僧侶に変えると手当をルウに使いつつ、アビィと話す。
「予想外の使い方だったな」
「後衛で詠唱する魔物に向けて強権持ちの人を飛ばすこともできると思います」
ダンジョンの通路は微妙に狭いので魔物が増えると詰まって前衛と後衛に分かれる。
そういう場合に後衛の魔物が魔法を詠唱することが多いので、詠唱中断が間に合わない場合が多い。
後衛に向かって、敵の群れの中で暴れられる俺やライラーを投げ込む戦法はありかもしれない。
アビィだからこそ、主人や先輩奴隷を投げるという発想ができるのは流石である。
「回復ありがとうございます」
ルウが復帰したので、シャベルの戦法を説明すると顔が引きつる。
「が、頑張ります」
強権の鋼鉄槍を持ったルウは投げ飛ばすなら俺よりも軽くて適任なので頑張ってほしい。
アンドリー南の迷宮
第9階層
「第9階層からはチープシープが出現します。毛皮部分は斬撃も打撃もダメージが軽減されますので頭を狙ってください」
原作では角に剣が当たってダメージが入っていない描写があった気がする。
ミノほど脅威ではないが、左右の巻角を避けて頭を狙うのは地味に苦労しそうだ。
「突きや魔法なら毛皮でも軽減されません」
シャベルは微妙だが、シミターや鋼鉄の槍なら突きを主体に戦えば問題なさそうである。
俺は魔法を使えばいいので経験値ブーストに戻して聖剣を装備した。
チープシープ LV9
ミノ LV9
ミノ LV9
ミノ LV9
ミノは4階層下の魔物なので出現率はかなり低い筈なのだが、アンドリー南なら仕方ない。
チープシープは体格のいい厚い毛皮に覆われた羊だ。
「いくぞ、ファイアーストーム!」アンコール!
最下層で火魔法に耐性がある魔物がいないので基本はファイアーストーム一択だ。
逆に弱点があるのはコボルトが火水風土、ニートアントが水。唯一ニードルウッドには水耐性があるらしい。
弱点の属性だと倍近くダメージ効率が違うらしいので、上の階層ではより重要になってくる。
俺とライラーとアビィがミノを抑えて、槍で毛皮を貫けるルウがチープシープを相手する。
ファイアーストーム!アンコール!
2巡目の魔法を紡ぎながら、炎で焼かれながらも角を振り回すミノの攻撃を聖剣で防ぐ。
ルウは羊毛に槍を絡めとられないように素早く突き刺してけん制し、アビィは豪快に角ごとシャベルで叩いてミノの動きを止める。
ライラーは興奮するミノからあえて距離とって突進を誘発させると壁に激突させてダメージを稼いでいる。
ファイアーストーム!アンコール!
3巡目の全体魔法で魔物たちが消滅した。
曲芸師のレベルが上がり器用さが伸びてきているので2発目の炎も徐々に大きくなってきている。
羊毛
皮が3枚と綿の塊のような物体をルウが持ってくる。
「羊毛は服の素材や布団の中身など様々な用途に使われています。毛糸にする手間がありますが色が落ちにくく丈夫なので長持ちします」
羊の肉も毛もダンジョンで手に入るなら家畜として飼うメリットはあまり無さそうである。
「皮はアビィの貢献度稼ぎに使ってくれ。9階層のボス部屋を目指そう」
アンドリー南の迷宮
第9階層 ボス部屋
「チープシープのボスはビープシープです。こちらを眠らせるスキルを使ってきます。上位種のスリープシープは毛皮に触れただけでも眠らせてくる厄介なボスですが、ビープシープの毛皮に触れても確定で眠るわけでもないそうです」
毒に続いての状態異常、睡眠。
攻撃を受けるまでは目覚めることはないらしく、原作では確か警策?という板で作れるアイテムで起こしていた記憶がある。
「どうされますか?」
板も買い忘れたし、睡眠耐性も防具に付けられていないので確認されるが詠唱中断が2名いるので行けると判断した。
ビープシープ LV9
巨大な羊が出現すると開幕、足元に魔法陣が発生する。
「行きます」
俺が強権の聖剣で斬りつけるより早く、シャベルでルウが発射された。