ルウは見事に巨大な羊の背中に槍を突き立てた。
詠唱中断に成功して、魔法陣が消滅する。
しかしルウが槍を抜こうと動いてそのまま倒れて羊毛に埋まってしまった。
「?」
「?」
「?」
獣人の聴覚で、ルウの寝息が聞こえてくるので無事ではあるのだが。
「もしかして確定では眠らないが、触れ続けると持続的に判定があるのか」
「寝てる、です」
「申し訳ございません」
開幕、強権持ちが一人減ってしまった。
強権の鋼鉄槍は刺さったままなので詠唱は封じてることはできているがどうすればいい。
予想外の事態に混乱するが、ボスは背中に痛みを感じているようで怒っている。
振り落とすように暴れるが槍は深く刺さり、羊毛に絡まるように埋まったルウも落ちてこない。
槍の持続ダメージでもいずれは勝てそうだが、魔法を撃つことにする。
「ファイアーストーム!」アンコール!
単体魔法や壁魔法は味方にも当たってしまうので全体魔法一択なのが、絵面は最悪だ。
燃える羊の上で眠れる
蛮族の儀式でも見れないような奇怪な光景に俺も妹もドワーフも困惑している。
幸か不幸か、ほぼ頂上付近でルウは眠っているので頭や足を狙えば攻撃で刃が当たる心配はない。
「そろそろか?」
ボスが瀕死かどうか分かるルウが寝ているので、いつも以上に警戒する必要がある。
ビープシープが甲高く鳴くと、頭と足を毛皮に収納してしまった。
そのまま回転したり転がったりするのかと思ったが身動きしない。
「動かないな」
「動かない、です」
「これでは攻撃が当てにくいですね」
リーチが短い武器しか持っていない場合は分厚い毛皮の鎧に触れることになるのである意味絶対防御である。
唯一安全に攻撃できそうな槍が刺さったままで仕方ないので魔法で焼いて倒した。
羊皮紙
「肉ない、です」
ライラーはがっかりとした表情で紙を拾って持ってくる。
原作では羊肉が落ちた記憶なのだが、ライラーを撫でながらアビィに聞いてみた。
「羊皮紙は羊系のレアドロップです。そこそこ貴重なのですが、雑魚でも落ちますのでボスで落ちると……」
さすがはアンドリー南の迷宮さん、レアドロップで嫌がらせしてくるとは多才ですね。
「起きない、です」
「さてどうするべきか」
睡眠の状態異常は攻撃を受けるまで目覚めないので、ルウは眠ったままである。
「私が叩きましょうか?」
進んで悪役になれるはアビィのいい所だが、禍根が残りそうだ。主に腕力の関係で。
「今日はもう帰るし、帰りに鍛冶師ギルドに寄って板を買って帰ろう」
アビィが背負うと申し出たが、体格的に俺が背負うことにした。
背中の
リーベ
鍛冶師ギルド
獣人中心のアンドリーと比べるとリーベの鍛冶師ギルドは少し立派に感じる。
アビィにお金を渡して受付で板を購入するとギルド割引が効いて2割安く買えた。
正直、3割引きスキルで探索者ギルドで購入した方が安いがギルドで購入する実績も重要だ。
俺の種族がドワーフだったならば、ギルド割引と3割引きスキルで44%OFFというチート鍛冶師無双が始まっていたかもしれない。
髭モジャは勘弁してもらいたいので選べたとしても選ばなかっただろうが。
生産職が戦闘面でもチートなのは武器が強いのか本人が強いのか訳分からなくなって魅力が半減する気がしてしまう難儀な性分なのだ。
原作主人公は魔法中心のジョブ構成だったので腕力と器用が伸びる鍛冶師をパーティーに入れるのを悩んだ場面もあったなぁ。
俺の場合は狂戦士で凹んだ器用さが補える鍛冶師のジョブ補正は優秀だと思う。
狂戦士の上位ジョブにアイテムボックスが付いてくる保証も無いので2人目のアイテムボックスは助かるし、最奥のボス戦で修理スキルを使う最悪なパターンも想定している。
「警策を作ります。~武器製造」
いつもよりも控えめな光だった気がするが一瞬で木の板が、薄くて細長い木のヘラのように変化する。
警策 〇
無駄にスキルスロット付いてるぅ!
ダメージが無い武器扱いなので10分の1の確率でこんなこともありえるのか。
ネットゲームとかなら催眠添加の警策とか作ってネタ武器扱いされそうだがそんな無駄の無駄はできない。
警策は、よく寺院などで座禅を組んでいる際に雑念がある人を叩くアレだ。
準備ができたので王子様のキスではなく、警策を構えるとスパン!とルウの額を叩いた。
ペチンのつもりで振り下ろしたのに効果音の音量設定間違えてないですか?
「おはようございました?」
ダメージが無いというより0の固定ダメージを与えて起こすのか一瞬でルウが目覚めた。
知らない鍛冶師ギルドにいるので混乱した様子のルウ、肉が落ちなくて悲しむライラー、無駄なスロットに落ち込む主人。
余裕があるなら警策を製造して納品してほしいと言われてMPを消費して気分が沈んだアビィが加わって軽く地獄絵図になる。
ちなみにスロ有の警策を2本は、俺とアビィのアイテムボックスの中に残して残りは貢献度に変わったのだった。