異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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063 昔話

 

 エルカトルと風呂に入るが、白磁のように白い肌にどきりとする。

 

「先ずは掛け湯をして体をお湯に慣れさせると同時に汚れを流して落とす」

 

 手や足など心臓に遠い所から徐々に掛けるようにした方がいいのはプールと同じだろう。

 

「かしこまりました」

 

 水も滴るいい男、は正しいのだが所作が一々心臓に悪い美貌を持ってる。

 

 裸と裸の付き合いというが、お互いノーガードなのでやっと男だと確信できた。

 

 男の娘でよくある股間にドライブドラゴンは飼っていないようだ。

 俺が勝ったのでネコではなくタイガーのままでセーフ?

 

「石鹸も使ってもよろしいのですか?」

 

「ああ……しっかりと使え」

 

 正直、薄汚れてても綺麗なこのエルフをこれ以上綺麗にして大丈夫なのか不安になってきた。

 

 化粧とかしたら人が死ぬ可能性があるな。最初に俺が犠牲になる自信がある。

 

    リーベ

   自宅 主寝室

 

 風呂を出て髪の輝き、通称:天使の輪が出てきたエルカトルに俺と女性陣が満場一致で外出の際はケープか帽子を被るのを徹底させることにした。

 

 俺たち4人は主寝室で寝て、エルカトルは子供部屋に設置したベッドで1人寝ることになる。

 

 

 深夜、何故か目が覚めた。

 

「眠れませんか?」

 

「喉が渇いただけなので、少し降りてくる」

 

「猫人族は夜目が利きますのでお持ちしますが?」

 

「便所にも寄るので先に寝ていてくれ。ありがとう」

 

 ルウの頭を撫でると、ベッドから起きてアビィの姿が無いことに気が付いた。

 便所に入る際はノックしないといけないなと、と寝ぼけながらも階段を降りて一階にいく。

 月が明るい夜なので問題なく階段を降りて台所に付くと先客がいた。

 

    リーベ

   自宅 台所

 

「ご主人様、どうされましたか?」

 

 エルカトルとアビィが台所の机に座って話をしていたようだ。

 こんな静かな夜ならばアビィの声でもエルカトルの耳にも届くのかもしれない。

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「水を飲みに来たら偶然会いました」

「新しいベッドに未だ慣れないみたいで」

 

 二人とも急に鍛冶師になったり、奴隷になったりで気持ちの整理ができていないのかもしれない。

 

「少し話をしようか、俺も混ぜてほしい」

 

 百合の間に挟まるのは大罪だが、美少女と男の娘の間なら治外法権だろう。

 

「飲み物を用意します」

 

「そうだ、さっき良いものを買ったから火を起こしてもらえるか」

 

「かしこまりました?」

 

 手際よくエルカトルに火を起こしてもらって、鍋にアイテムボックスから取り出した良いものを入れる。

 

  酪 ×3

 

 (らく)

 迷宮の23階層以降のモロクタウロスのボスが落とす高級牛乳。

 先ほど、探索者ギルドに行った際に納品している人を見かけて久々に牛乳が飲みたくなってしまったのだ。

 

 かなりいい値段がしたので毎朝は飲めないが、眠れない夜はホットミルクと相場が決まっている。

 

「やはりホットミルクは落ち着くなぁ」

「落ち着きますね」

「こんな高価な物を……」

 

 元の世界の赤いパッケージに入った牛乳に匹敵する美味しさに唸る。

 値段を知らないエルカトルと、値段を知るアビィで反応が違うのは面白いが。

 

「そういえば昼間やっていた鬼人族ごっこだが、鬼人族以外にも滅びた種族はいるのか?」

 

「十二獣人の話はご存じですか?」

 

「いや、微妙に知らない」

 

「鼠人族、牛人族、虎人族、兎人族、竜人族、蛇人族、馬人族、羊人族、猿人族、鳥人族、狼人族、豚人族、かつて存在したと言われる十二種の獣人族ですね」

 

「正解ですが、竜人族は獣人と子供はできませんので法螺話だと確定しています。竜の代わりに猫が入ると言う学者もいます」

 

 原作では狼と猫しか登場していないが結構多いな。

 

「鼠人族が飢饉の際に牛人族と猫人族を騙して食料を奪った恨みで滅ぼされたとか、猿人族と虎人族と蛇人族のヌ・エ連合が竜人族と鬼人族と戦争して滅ぼしあったとか、迷宮の呪いで馬、羊、鳥、豚は家畜に姿を変えてられて滅んだとか、滅んでしまったら存在したことを証明するのは難しいです」

 

「ということは、残っているのは「人間」「エルフ」「ドワーフ」「エマーロ」「竜人族」「狼人族」「猫人族」「虎人族」「牛人族」「兎人族」の10種族だけか」

 

 それでも原作よりも種族が多い。

 もしかして初期設定で文明の数を「多い」を選んだ可能性があるか?

 原作主人公が言及していない部分ではあって、言及されていない部分は全部「普通」を選んだ説が多数派だが一部は文明が多いと危険と判断して「少ない」を選んだ説を見たときは目から鱗が落ちた記憶がある。文明の数=種族の数ではないとは思うが、種族の数だけ文明や文化があってもおかしくはない。

 

(文明は多い方が良いよなぁ)

 

 脳裏に蘇るあのサイトを入力した記憶に鈍い痛みが走る。

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「すまんな、少し忘れてた記憶を思い出しただけだ」

 

 静かだったエルカトルも何故か泣いていて、ふと呟いた。

 

「思い出しました、ボクの両親も昔寝れない夜に牛乳を温めてくれました」

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