その言葉に布団から飛び出そうとしたルウを押しとどめる。
未だ生乾きの服を着ながら、恥ずかしそうに彼女は言う。
「すみません、取り乱しました。えっと……何とお呼びすればいいですか?」
「俺の名前はシロウだ」
「シロウ様ですね、私はルウ。妹はライラーと言います」
そう言えば自己紹介していなかったね!
鑑定に頼りすぎるとコミュニケーションに変なズレが発生するから頼りすぎも良くない。
「シロウ様、気づいておられますか?」
「あぁ」
彼女の体に張り付いた服、ボディーラインが見えている。
それも気が付いているが窓の外に意識を向ける。
「騎士が見張っているから、また移動呪文で宿を出よう」
ルウはこくりと頷いた。
やはり彼女、俺を高レベルの冒険者と勘違いしている可能性あるなぁ、どこかで説明しないとなぁ。
ただ現状は一刻を争う。
アンドリー
探索者ギルド横
「ここは?」
「探索者ギルドの横道、さすがに準備が足りない」
滋養丸と強壮丸をそれぞれ6個ずつ購入、念のため毒消し丸も3個購入した。
滋養丸はHP回復の薬で強壮丸はMPを回復できる。
さすがに薬無しで突入する勇気はなかったので準備したが、原作でも言及されていたとおりギルド職員が悠長に硬貨を数える姿にルウがハラハラする姿を見ていると逆に落ち着いてきた。
ルウにも薬を分けて、彼女が服のポケットにしまうのを確認して言う。
「防具屋は閉まっているか、行こう」
「アジトはこっちです」
夕日が落ち、月こそ出ていないが程よく明るい夜にルウの白耳を目印に走ると、街の雰囲気と臭いが変わる。
どうやら治安の良くない地域を駆け抜けているらしい。
俺はボーナス呪文「ワープ」が使える。
一度見たことがある場所に制限なく移動できるスキルだが、初期地点がダンジョンでは使えないと考えていた。
夜風が当たり、冷静になった頭で考えるとアクセ5の気配遮断を使ってモンスターを回避しつつ、もしも遭遇しそうになった場合はワープで初期地点に戻るができたのではないだろうか。
初期地点にモンスターが移動してきた場合は詰むが、ダンジョンから出れた場合も盗賊たちに遭遇できる。
選択次第では、英雄の条件を満たせたかもしれない。
情けないがまだ
時間さえあれば、村人のレベルを上げて戦士を解放して「ラッシュ」のスキルが欲しかった。
ジェノサイドアタックさんは使いどころが限られすぎる。
アンドリー
盗賊アジト前
「ここです」
物陰に隠れ、小声でルウが話しかけてくる。
「妹の気配もあります。盗賊たちの気配もいつもより少ないのでチャンスです」
近くに来たからか、気配探知の精度が上がったらしい。
具体的に6人くらい少なくないかな?
「どうされますか?」
「正面から行く、手を出してくれ」
アイテムボックスからシミターを取り出すと、彼女の差し出した手を拾った
シロウ・トラシマ
探索者LV3/狂戦士LV2/村人LV2
装備:決意の指輪
BP 63/101
アクセサリー2 3
3thジョブ 3
ステータス器用 10
ステータス俊敏 16
詠唱省略 3
ワープ 1
鑑定 1
キャラクター再設定 1
対人戦と言えば、決意の指輪を装備せざるをえない。
決意の指輪
攻撃力上昇/対人強化
三日月槍はいつでも出せるように63BPを残して、余ったポイントは下がっている器用を補強して、残りは俊敏に振った。
入口を見張る盗賊に話しかける。
「お前らが捜している獣人を捕まえた、武器もある。ボスに会わせてくれないか?」
「XXXXXXX? XXXXX!」
残念。ブラヒム語は話せないらしい。
盗賊はシミターと行き先が病院だと分かり何も信じられなくなったペット顔をしたルウを見て察したらしい。
アジトへとすんなり招き入れてくれた。
「確かに正面ですけど……」
能面のような表情で彼女が呟くが、会話して親しげにするわけにいかない。
盗賊のボスの部屋に案内されると床には手足を縛られた獣人が転がっていた。
口を布で塞がれているライラーは、縄に縛られた姉の姿を見ると驚いた様子だ。
「XXXXX、XXXXXXX?」
盗賊 LV48
言葉は通じないが友好的に下種な笑顔で迎えてくれる男が頭目だろう。
とっさに駆け寄ろうとする姉をロープを引くことで制止して、盗賊のボスから視線を外さない。
「XXXXXXXXXXXX、XXXXX?」
男は包帯を巻いた足を示しながら「ケガをしている、近くに来てくれ」と手招きをしてくる。
「机の下、クロスボウ」
ルウが獣人が何とか聞こえるくらい小声で警告してくれる。
殺意高いなぁ……、もしかしてあの包帯もフェイクだったりする?
原作には弓やクロスボウが出てこなかったけど、ダンジョン攻略には向いていないからか。
俺は鞘に収まったシミターを取り出すと、