異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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008 頭目

 

「XX!?」

 

 頭目の視線が空中のシミターに移った隙に三日月槍を出して横薙ぎする。

 

「チッ」

 

 舌打ちしたいのは両方だろう。

 さすがは兇賊に近い高レベル盗賊の頭目、俊敏の高さから椅子ごと転げ落ちるように槍の一撃を回避した。

 

 首を狙った一撃だが肩を大きく斬っただけで致命傷を避けられた。

 

 血飛沫を散らして床に転がる頭目の手にはしっかりとクロスボウが握られている。

 

  クロスボウ 〇 

 

 空きスロットが見えるということは装備品か。余計に1発でも当たれないな。

 

「XXXX!」

 

 くそ野郎!とか殺してやる!と分かる言葉と表情でクロスボウを構えるがその射線上には、案内で来た盗賊が目を丸くしている。

 

「XXXX!?」

 

 どこだ、と叫ぶ彼の思考よりも速く姿勢を限界まで低くして死角から狙いを付ける。

 

 しかし盗賊の頭目の視界には転がったシミターを拾うルウの姿が入り、クロスボウの狙いが……

 

()()()!」

 

 大声で叫ぶが、姉妹にだけ聞こえるようにバーナ語に変換されていてほしい。

 

 ルウはシミターを拾った勢いのまま壁にぶつかるように転がり離れ、ライラーは縛られたまま体をバネにして海老のように部屋の隅に飛んだ。

 

「XXXX!!」

 

 頭目は迫る俺に標的を変えて引き金を引き、クロスボウからボルトが発射される。

 

 この距離は避けられない。

 

 ジェノサイドアタック!!

 

 視界が赤く染まり、血が急沸騰した如く熱くなった身体に鉄のボルトが刺さるがその衝撃よりも踏み込む力が何倍も強い。

 

 三日月槍が今度こそ頭目の喉を食い破った。

 

 傷付いても止まらない狂戦士の一撃を目に焼き付けた頭目の瞳の光が消える。

 

 人を殺した罪悪感よりも、使わないと決めたスキルを使ってしまった嫌悪感が勝る。

 

 しかし、戦闘は終わっていない。

 

 部屋にいる盗賊を殺さないと。アジトにいる盗賊を皆殺しにしないと。

 

「シロウ様、薬をお飲みください!」

 

 赤い霧が晴れるように、ルウの声で正気に戻る。

 身体に熱した釘を撃ち込まれたような痛みで動けなくなる前に、革袋から薬を流し込んだ。

 

 余裕がないので毒消し丸もまとめて飲み込んだが、ボルトに毒が塗ってあった場合には効果があるだろう。

 

 あれ、ダンジョン外の毒は効果がない仕様だっけ?

 

 痛みと熱が収まり始めると、ボルトを引き抜いて捨てる。

 

「XXXXX!?」

 

 案内で来た盗賊と視線が合うと怯えたように逃げようとする。

 スキルは使えないので、一気に踏み込んで槍で扉ごと串刺しにする。

 

 三日月槍のHP吸収の効果でボルトを抜いた傷が癒えたのを感じる。

 冷静になってくると、とっさに槍を投げようかと思ったが器用さが命中に補正されるならば投擲はリスクばかりで止めた方がいいな。

 

「シロウ様、怪我は大丈夫ですか?」

 

「薬を飲んだから問題ない。その薬は妹にでも使ってやれ」

 

 駆け寄るルウが持たせた薬を差し出そうとするが断る。

 仕方なかったこととはいえ、彼女達を殺す可能性があるスキルを使った俺は受け取れない。

 

 俺は英雄にはなれなかった。

 

 もっと力が欲しい、強くなりたい。

 ただ我武者羅に無様でも強さを求めていくには、このジョブ(狂戦士)に頼るしかないのだ。





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