異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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009 土下座

 

 (ほど)くのも面倒なのでシミターの刃でルウの縄を斬ると、妹に駆け寄って口を塞いでいた布を外す。

 

「良かった、無事で」

 

「ねえさん?」

 

 尊い姉妹愛を鑑賞しながら盗賊に刺さった三日月槍を回収。

 ライラーの縄は思ったよりも固く縛ってあったので、同じように斬って解放した。

 

「説明はあとで。盗賊たちが向かってきています」

 

 血の臭いに空気が慌ただしく動き出し、足音を上手く隠しつつこの部屋に集まってくる。

 

「戦う、ます」

 

 護身用にシミターを渡すと妹が受け取った。

 黒耳猫娘が好戦的だが、冷静にパーティー編成を飛ばしてワープを使った。

 

 盗賊たちが部屋に雪崩れ込むがもぬけの殻。

 ボスと見張りの死体に驚く間もなく、入口から悲鳴が聞こえたのだった。

 

「裏口には?」

 

「数名いるようです」

 

「なら、そっちから先に片付けよう」

 

 入口にワープして建物から出てきた盗賊を始末して、裏口に回って逃げようとする盗賊の背中を斬りつける。

 

 これで裏口にもワープできるようになったので逃走の心配は無くなった。

 

 気配察知を最大限活用して数が少ない盗賊から各個撃破、明かりが少ない場所でも夜目が利く姉妹が予想以上に活躍する。

 

「これで全部のようです」

 

 いつの間にかクロスボウを持ち出していたルウが終了を告げる。

 

 淡々と盗賊のボスの死体を漁るライラー、手癖の悪い姉妹にこれがスタンダードかと考えを改める。

 改めて、一息を吐くと濃厚な血の臭いが鼻腔を埋める。

 

 今度は胃液が逆流する気配もなく、鼻だけではなく感覚も少し麻痺しているのかもしれない。

 

 粗方回収し終えると、外から蹄の音が聞こえてきた。

 

「来ました」

 

 ルウの言葉に頷くと姉妹を連れて、今度はワープを使わずに入口へと向かった。

 

「貴公、ここで何をしている?」

 

 つい数刻前に同じ台詞を聞いたなぁと他人事のように思えるが、目の前の聖騎士の声も少しわざとらしい。

 

 俺はついさっきこの街に来て、建物の前の男に話しかけると盗賊で、返り討ちにしたことを説明すると辺境伯は笑い嚙み殺して聞いていた。

 

「その女子(おなご)は?」

 

「騎士様にお願いがあります!」

 

 俺は五体投地で、シミターを差し出しながら懇願する。

 

「盗賊に捕まり無理やり悪事に加担させられていた者たちです。全くの無罪とは言えませんが、盗賊の首と戦利品を差し上げますので情状酌量の余地をお願い致します!」

「「お願いします!」」

 

 同じ高さで姉妹の声が重なるということは、二人も土下座しているようだ。

 

 辺境伯の声が上から響く。

 

「どうして貴公が、その女子らを庇う必要がある?」

 

「俺には野望があります!」

 

 野望、という言葉に辺境伯が反応を示した。

 

「俺は自分のハーレムを作りたいのです!!」

 

 空気が凍るが、俺は続ける。

 

「なので、彼女たちは俺のハーレムメンバーに加えます」

 

「ん?」

 

 妹が頭を上げようとするが、姉が素早く頭を地面に押し付けた。

 その様子に辺境伯も困惑している。

 

「き、貴公が我に仕えるなら考えても……」

 

「男なら、()()を目指したいと考えております」

 

 そうであれば仕方ないか、と辺境伯が折れると姉妹二人に手を出すように命令する。

 詠唱するとインテリジェンスカードが浮かび上がり、何かを操作する。

 

「この者たちの身分に奴隷を書き込んだ。これからは責務を果たすように」

 

 ルウ   ♀15歳 僧侶LV3(奴隷:所有者なし)

 ライラー ♀15歳 村人LV4(奴隷:所有者なし)

 

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「ありがとうござる、ます?」

 

 一人納得していないようだが、円満解決しそうな雰囲気になった。

 

「貴公は奴隷商の伝手はあるのか?」

 

「勿論、無いです!」

 

 爽やかな笑顔の俺に、辺境伯は兜の上から眉間を押さえるような仕草をしていた。

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