偽物となった者   作:ヤァヤァ

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仮にもし、転生して力を持った時人は小説の登場人物のように動くのだろうか?



この者、最大級のアホにつき

 

キヴォトスの夜は、黒い霧のように深く、そして重い。

 

裏通りの空気に漂うのは、硝煙の残り香と、微かに残る血の鉄臭さだけだった。数時間前まで賑わっていたはずの違法な賭博場や闇酒場は、今や固く扉を閉ざし、人っ子一人いない。この一帯を覆う沈黙は、ある種の恐怖が浸透したことの証拠だった。

 

ここ数週間、ブラックマーケットの勢力図は、たった一人の少女の出現によって、音もなく、しかし確実に塗り替えられつつあった。その名も、“撫で切り武士”。

 

彼女に関する情報は、あまりにも少なく、断片的であった。その姿を見た者は、例外なく帰らない。生き延びた者が語る証言はどれも曖昧で、一致しないものばかり。唯一共通するのは、「一撃だった」「気づいたら首が飛んでいた」「逃げる暇すらなかった」という、まるで悪夢の出来事を語るかのような断片的な言葉だけだ。

 

最初は、噂程度だった。「アリウスから逃げ出した元工作員の復讐劇」「ブラックマーケットの支配を狙う組織の刺客」「キヴォトスに仇なす者への粛清」……。様々な憶測が飛び交い、人々は恐怖と好奇心が入り混じった眼差しで、その存在を語り合った。

 

しかし、事件は次第に増えていった。

 

ある時は、裏社会の大手組織の幹部が、自室で血まみれの死体となって発見された。首を綺麗に切断され、室内は争った形跡すらない。まるで、熟練の医師が精密な手術を行ったかのようだった。

 

別の日には、武装した傭兵集団が、一夜にして全滅。彼らの首は、すべて等間隔に並べられていたという。その異様な光景は、恐怖の象徴となり、ブラックマーケット全体に不安と動揺を広げていった。

…まぁんなことするアホは奴しかいないだろう。

 

「へくち!…うぅ…さみぃ…コート買おうかのぉ」

 

そう戒野ミサだ。

 

…さてこんな感じでブラックマーケットにて撫で切り武士と異名を持つほどの大暴れしているこいつはいったい何を考えているのでしょうか。

 

実際元々の本物である戒野ミサキと違う名前にしたとは言え姿形は瓜二つだ、きっとエデン条約編が終わってから当分は撫で切り武士と勘違いされることがあるだろう。

 

では何かさくがあるか?

 

…まぁ身も蓋もないことを言おう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつ致命的にアホなのだ、後先考えてないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通の転生者であれば、「本編のシナリオに影響を与えてはならない」と考え、目立たぬように行動するだろう…だがこいつは違う。

 

とにかく突き走り人生を謳歌する。

 

本物と真逆の生き方をしているのだ。元アリウスのクソったれ地獄から逃げたんだから好きなように生きたいのう……みたいな感じだ。

 

致命的すぎるだろう、これが小説であるならば読者は呆れ返りここでブラウザバックをして低評価をつけるごとくの駄作になるだろう。

 

しかしこれは現実、フィクションではなくリアルなのだ。

それに、現実とキヴォトスは違いたいてい暴力でも解決する。

 

故に犯罪組織の組員を根絶やしにしその金庫から金を獲るというイカれ行為も、ここでは許される。

 

そう、ミサの思考はシンプル極まりない。目の前に邪魔な障害があるなら、それを排除する。それが例え、巨大な組織であっても、関係ない。彼女にとって、それは目的ではなく手段なのだ。

 

…まぁだからこそだろう。

本来NTR展開や鬱展開、曇らせ展開になるはずであろう場面に颯爽と現れ、悪い大人を横から皆殺しにするという荒技で生徒を間接的に救う時もあるので、まぁ悪いことばかりではない……のか?

 

そんなこんなでミサの噂は瞬く間に広がった。

 

犯罪組織を単騎で潰し回る狂人の噂がブラックマーケットを駆け巡ると同時に、彼女が率いているとされる組織の噂も流れ始めた。

「戒野ミサは、実はただの使いっぱで、本当のボスが別にいる」「そのボスは、ブラックマーケットの深淵に潜む、恐るべき存在だ」といった具合だ。

実際はそんなものは存在せず、全てミサのひとり舞台なのだが、人々の想像力は止まらない。

 

特に、ミサがブラックマーケットで目についた金を片っ端から奪っていく姿は、まるで山賊のような荒業だった。

 

もちろん、こういった行動を繰り返せば、当然敵も増える。彼女の狂行に業を煮やした組織からの襲撃、賞金稼ぎによる命を狙われる日々……。

だが、それでもミサは止まらない。

むしろ、面白そうだと楽しげに笑う始末だ。

 

そしてこう叫ぶのだ。

 

「これじゃけぇ面白いんじゃ…人生ってやつは」

 





「くそ…くそくそくそくそくそくそくそくそ!!!!!!クソッタレが!!!」

…薄暗い部屋の中、マフィアの頭目だった男が狂乱していた。
男はテーブルに拳を叩きつけ、怒りを露わにしている。

「なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!



なぜ私の作り上げた組織が小娘一人に壊滅させられるんだ!あの女は一体何者なんだ!?」

「うろたえないでください、親方……!我々も全力で捜索しております……!」

「うるさい!!そんな事はわかってる!!」

彼の部下達も困惑と恐怖の入り混じった表情で男の命令を待っていたが、誰もが事態が深刻であることは理解しており、その内心には焦燥感が募るばかりだった。彼らは今まで、多くの敵対勢力を倒してきた。一部とはいえ、かなり大きな地盤を築いてきたのだ。
しかし今は、その足元すら揺らいでいる。

「どうすれば……!?どうすれば……!!」

男の脳裏に浮かぶのは、ただ一つの可能性。彼は部下達を睨み付けながら、静かに言い放った。

「…確か…便利屋68とかいう奴らがいたな……?」

「は……?確かにその名前のグループがいますが……彼らに頼むつもりですか?」

「ふざけんな!!!あんな素人の集まりに任せられるか!!」

男は憤慨して立ち上がり、拳を握り締めた。

「だが……他に策はない……」

「しかし……」

「アイツらに依頼をする、連絡しろ」

「わ、分かりました……」

部下は戸惑いながらも通信機を取り出し、指定された番号へ電話をかけた。 
『はい、便利屋68の陸八魔あ__』

電話越しに聞こえてくる少女の声は自信に満ち溢れており、まるで勝利を確信しているかのようだ。
だが次の瞬間、男が電話を取り上げ叫ぶように告げた。

「便利屋68だな……?貴様らの噂は聞いているぞ」

電話の向こう側から伝わってくる緊張感、そして僅かに戸惑うような沈黙が流れる。それでも向こう側にいる人物は冷静さを取り戻し応答した。

『依頼ですか?』

「あぁそうだ……依頼だ」

男の口調が徐々に穏やかになり、どこか挑発的な雰囲気が漂う。

「撫で切り武士というクソ女を…潰せ。生死は問わない、生け捕りはまず無理だ…前金で準備するくらいの金額はくれてやる…確実に始末しろ!!」



『……』

「……」

突然訪れた静寂、長い沈黙、そして唐突に聞こえてくる小さなため息……

それだけで十分だった。電話の向こう側にいる人物は何かを察したのだろう、諦めたように言葉を紡ぎ出す。

『わかりましたわ……承ります』

その後すぐに電話が切れてしまい、周囲に重苦しい空気が漂い始める。それはまるで嵐の前の静けさのように感じられたのである。
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