トリックは推理されたけど、ターゲットを全員殺すまで止まりませんよ?   作:Distance

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2話投稿したら思った以上に感想、お気に入り、高評価が一気に増えて嬉しくも驚きで震えました。
皆さん、ありがとうございます。


後編

(そろそろなんか食わんと死ぬ……)

 

 毒親だった両親から離れて数年。

 いくつかのバイトを掛け持ちして生活していたが、碌に学歴もないフリーターが誰の援助もなしに生きていくのはそれなりに大変だった。

 給料日まであと三日。

 とにかく水道水だけで腹を保たそうとしていたある日だった。

 インターホンが鳴る。

 

「……誰だよくそが」

 

 空腹からそれだけで苛立ち、つい乱暴にドアを開けてしまう。

 

「あ、はじめまして。私、最近隣に引っ越してきた雨ヶ谷小夜と言います」

 

「はぁ。ども……春日井明夫っす」

 

 苛立ちが表情に出ていて、態度が悪かったろうに。小夜は笑みを崩さずに持っていた袋を差し出す。

 

「これ、良かったらどうぞ。筑前煮なんですけど。作り過ぎちゃって」

 

 そんなありふれた言葉で筑前煮の入った袋を渡してくる。

 だけど俺にそれが何よりありがたかった。

 

「いいんすか?」

 

「どうせ食べ切れないし。容器は使い捨てだから、そっちで捨ててくれると」

 

「ありがとうございます!!」

 

 袋を受け取って頭を下げる。

 もう丸二日なんにも食べてなかったのだ。

 少し大きめのパックに入った筑前煮。

 それがどれだけ助けになったか。

 ありがたいやら情けないやらで涙が溢れてきた。

 

「そこまでありがたられると……それじゃあ」

 

 そそくさと自分の部屋に戻っていく小夜。

 俺も早歩きで中に入り、筑前煮を食べた。

 久々の人間らしい食事に泣いた。

 数日小分けして食べようと思っていたのに、気付いたら容器が空になっていた。

 

 

 

 それから小夜はなんやかんやと理由を付けてよく食べ物をお裾分けしてくれた。

 次第に会話も増えて、部屋に招かれて食事を取るようになり、こっちが年下だと判ると、弟に接するような態度になっていた。

 一応食事代を出そうと渡そうとしたが、そんな余裕あるの? と断られた。

 そうして少しだけ生活に余裕が見え始めた頃に、バイト仲間に小夜と一緒に居るところを見られ、関係を訊かれたので正直に話した。

 

「それ、お前のこと好きなんじゃね?」

 

 好きでもない男にわざわざ頻繁にご馳走してくれるなんてあり得ないと。

 今思えば、バイト仲間がからかっていただけなのだが、真に受けた俺は、数日悶々としつつも、次食事に誘われた時に、当時精一杯の気持ちで告白した。

 返ってきた返事は当然。

 

「ない。うん、ないよ。将来性なさ過ぎて無理」

 

 と、テレビを観ながら返された。

 考えてみれば当然だ。

 言ってしまえば当時の俺は客観的に小夜のヒモ同然である。

 優しくされて舞い上がってただけのガキだった。

 それでも納得出来なかった俺は、なんでこうして部屋に招いて食事を用意してくれるのかと食い下がった。

 

「だって(あき)くん、私がご飯あげないと知らない間に餓死してそうなんだもん。嫌よ私。家に帰ってきたらお隣が餓死してるの」

 

 ぐうの音も出ない。

 落ち込んで項垂れる俺に、小夜は肩をポンポンと叩く。

 

「私、大学卒業したらこのアパート出るけど、そしたら明くん生きていける?」

 

「……」

 

 食事を小夜に頼り切りになってしまっていて。それが無くなって生きていける気がしなかった。

 

「だからね。私もそろそろ本格的に就職活動しなきゃいけないし、明くんもがんばろ?」

 

「え?」

 

 小夜が履歴書を渡してきた。

 

「明くんならちゃんと働けるって」

 

 碌に学校にも行かなかった俺がまともな職に就く。

 諦めていたそれを提示してくれた。

 

 

 そうは言っても就職活動は当然難航した。

 書類審査で落とされ。面接でも良い反応を貰えた試しがない。

 俺が就職活動をしていると知ったバイト先の上司がこういう職場で良ければと今の職を紹介してくれた。

 自動車の整備工事。

 もちろん資格がある訳もない俺は最初、バイトとして雑用をしながら整備士の人達に仕事を教えて貰った。

 勉強しなきゃいけない事はたくさんあったが、思いの外楽しかった。

 それでも俺が整備士資格を取ってなんとか正社員になれた。

 まぁ、その頃には小夜も順調に仕事で評価されて給与が1.5倍くらい差があったが。

 小夜は俺と会ってくれて、食事やデートを重ねて、自然と同棲するようになった。

 俺自身がようやく納得出来るだけの収入を得られるようになって、ようやく胸を張って小夜にプロポーズ出来た。

 

「あはは。遅いよ……私三十越えちゃったよ。これからもよろしくお願いします」

 

 そう泣き笑いの顔で俺のプロポーズを受けてくれた。

 この時に、俺はこの人を幸せにする為に生きていくんだと、そう思ってた。

 そうなる筈だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察のど真ん中で七匹目の頭をかち割ってやると、誰かの悲鳴が響き渡る。

 それを無視して残りのターゲットを指差す。

 

「安藤桜子。三島大輝。そして坂本茂男。逃げられると思うなよ」

 

 周囲に緊張が走る中で俺が足を前に動かすと、安藤桜子が警察に向かって騒ぐ。

 

「なにしてるの! は、早くあの殺人鬼を捕まえてよ!!」

 

 ヒステリックに叫ぶ安藤桜子から視線を外して毛利探偵を見た。

 

「毛利探偵。なんで俺がこのツアーを利用してこいつらを殺し回ってたか分かるか?」

 

 警察も含めて俺を警戒しながら耳を傾ける。

 さっきの凶行で、俺がどう出るか判断が難しい為だろう。

 

「先ず一つ。この島自体をこいつらを逃さない檻とする為。会社に乗り込んでターゲットの十人を殺そうとすれば、無関係な社員も殺しちまうだろうし、外で一人一人殺し回ったら、何人か俺の目の届かない土地に逃げる可能性が高いだろ。なにより、そんな時間をかけてたら間違いなく全員殺す前に俺が捕まるからな」

 

 この島に着き、船が離れてしまえば一日二日は警察も介入出来ない。都内よりはターゲットだけを狙いやすかった。

 

「二つめ。この島がまだ開発途中で、防犯カメラを含めて人の目がつきにくい箇所が島全体にあったこと」

 

 前もって調べるのは大変だったが、防犯カメラなどの位置は流石に確認した。

 

「三つめ。そもそも小夜に対してイジメをしていた面々がなんで都合良くこのツアーに参加してたのか」

 

 社員旅行で来た訳じゃない。

 これはあくまでも個人的な集まりの旅行だった。

 なのに何故都合良い面々が集まったのか。

 

「それは、小夜が自殺した記念に集まった旅行だったからだよ」

 

 その言葉に当人達以外は理解できない様子だった。

 俺だって無関係な他人だったら同じ顔をするだろう。

 こいつらからしたら旅行するのに集まるただの口実。

 ふざけんなよ? 

 

「真面目に働いてた人間を自殺させるまで追い込んで、死んだ後までコケにしやがって。一番大事な人をここまで侮辱されて正気で居られる奴だけ俺を非難しろ」

 

 巻き込んだ他のツアー客や従業員の人達には本当に悪いと思うが、ここまで婚約者を辱められて我慢できる程、俺は理性的な人間じゃない。

 もう一度、安藤桜子に視線を向ける。

 

「安藤桜子。小夜を含めた社内の人間の私物などを窃盗し、フリマアプリで売り捌いていたらしいな。それを咎めて上に報告しようとした小夜に取り巻きの……あぁ、この島に着いて殺した二匹な。そのゴミ共を使っての軽度の暴力と他の社員への恐喝をしていたらしいな。社長の姪ってだけでずいぶん好き勝手してたみたいだな」

 

 二十代半ばくらいの女がバツが悪そうに顔を歪める。

 それなりに整った容姿と若さと愛嬌で、仕事は出来ないが周囲を味方につけるのは上手かったようだ。

 自分の給与に不満でもあったのか、他の社員の私物を盗んで小銭を稼いでいた。

 それを咎められたら取り巻きの男社員を使って暴力を含めた脅迫行為。そして社内で小夜と仲の良かった人達と分断させ、孤立させた。

 俺が足を進めると安藤桜子が後ろに下がる。

 走ろうと動くと、若い刑事が俺を止めようと前に出る。

 

「止まりなさい!」

 

「邪魔だってんだよ!」

 

 その刑事を鉈で峰打ちし、腕を折ると同時に鉈も捨てる。

 

「ぐあぁっ!?」

 

「高木君!?」

 

 ショートカットの女刑事が骨を折った刑事の名前を呼んで駆け寄ろうとする。

 

「悪いなお兄さん。もう止まる気ないんだわ」

 

 その女刑事目掛けて蹴りで押す。

 高木という名の刑事を受け止めさせて、安藤桜子のところまで行き、首根っこ掴んで壁側まで運ぶ。

 壁に叩きつけてホテルに置いてある、ある物を持ち上げた。

 それは消火器だった。

 ホースを安藤桜子の口に押し込む。

 

「ここに小さな子供達が居なくて良かった。流石にこれは、見せらんねぇからな」

 

「やめろ!」

 

 警察の誰かがそう叫んで止めるが、躊躇わずに栓を抜く。

 途轍もない勢いで噴射した消火剤が安藤桜子の口から中に押し込まれ、体が内側から破裂する。

 人間が内側から弾ける光景。

 その無惨な姿に、警察を含めたこの場に居る何人かが嘔吐した。

 消火器を捨てて、次のターゲットを見る。

 

「次はお前だな。三島大輝」

 

 俺が睨みつけると腰を抜かしてその場に座り込んだ。

 

「小夜が成功しそうだった例のプロジェクトを横から掻っ攫ってわざと失敗させたな。小夜にフラれたのがそんなに腹立たしかったのか?」

 

 小夜が成功させようとやつれるまで頑張った成功の見込みが無かったプロジェクト。

 それをなんとか採算が取れるギリギリまで持ち込んだのに、後からチャチャ入れて台無しにした。

 小夜にフラれた腹いせにめちゃくちゃにしたのだとバーで同僚に自慢気に話していたのは調べがついている。

 

「人の血の滲む努力に唾を吐くのは楽しいか、おい?」

 

 三島大輝に近付こうとすると拳銃を構えた警官がこちらを狙っている。

 それでも無視して三島大輝を殺そうと動くと、上から唸るような声が聞こえた。

 

「はぁああぁあああっ!!」

 

 毛利探偵の娘さんが二階のテラスから飛び降りて、俺を蹴り飛ばそうとした。

 

「おわっ!?」

 

 突然の乱入に下がって避けると着地した娘さんが空手だろうか? 拳や蹴りを繰り出してくる。

 

「はぁああっ! やっ!!」

 

 何発か腹に良いのを貰い、頭が下がったところへ上段蹴り。

 側頭部を思いっきり蹴ってきた。

 一瞬視界が点滅し、意識がぶっ飛びかける。

 

(良い蹴りしてんなこの娘! でもな……!)

 

 足が引く前に足首を掴む。

 

「こんなんで止まれるわけねぇだろ!」

 

「キャッ!?」

 

 掴んだ足を引っ張って、体勢を崩させて背中を床に打ち付けさせる。

 立たれる前に三島大輝へ走ろうと当然警官が立ち塞がる。

 

「いっけぇええええっ!!」

 

 そこで、コナンくんが蹴ったサッカーボールがとんでもない勢いで飛んで来た。

 

「おうっ!?」

 

 驚きのままにそのサッカーボールをキャッチする。

 しかし、両手で包んでるのに一向に速度が衰えない。

 

「つっ!?」

 

 なんとか受け切ってボールが床に落ちると、空気が抜けて萎んだ。

 

「あっぶね!? なんだ今の!」

 

 どう考えても小学生のキック力じゃない。

 また蹴って来ると思ったが、コナンくんも唖然としている。

 こっちも警官に銃を向けられてどうするかと悩んでいると、警部さんが説得を始めた。

 

「止まれ! これ以上罪を重ねるな!!」

 

「あ? 重ねるに決まってんだろ。なんの為にここまで来たと思ってる。それに既に八人殺ってんだ。俺の死刑はほぼ確実。なら尚更もうやめるわけにはいかねぇだろ」

 

 腑抜けた事を()かしてんじゃねぇよ。こっちはそいつらをぶち殺せればもう後の事なんざ知ったこっちゃねぇんだ。

 毛利探偵の娘を抱きかかえる。

 

「なにをっ!?」

 

「ごめんね。ちょっと付き合ってくれ」

 

 銃を持った警官達へ向かって走る。

 

「ほれパス」

 

 ちょうど良い距離で娘さんを警官に放り投げた。

 

「蘭っ!?」

 

 コナンくんが叫んでいる間に毛利探偵の娘さんを警察が数人がかりでキャッチした。

 警察が安堵してる間に腰を抜かしてヘタれこんでる三島大輝の首根っこを掴む。

 

「悪いな。もっと丁重に殺すつもりだったが、時間もないしまだ本命が残ってんだ。前座らしく手早く逝ってくれ」

 

 両手で首を絞める。

 窒息などと時間のかかる事はしない。俺の指が三島大輝の首に食い込み、既に血が流れている。

 そこで三島大輝が涙ぐんでたすけて、とか。ゆるしてくれなどと唇が動く。

 それすらも神経を苛立たせる。

 とっとと死ね。てめぇなんかが俺に一分を煩わせんじゃねぇよ。

 指の食い込みが深くなり、首の肉を抉り取ると、肉食動物にでも喉を食い千切られたように見える死体が出来上がった。

 噴き出るように飛び散った血で顔やら服やらを浴びる形となった。

 ようやく後一匹か、と殺した罪悪感より徒労感が襲ってきた。

 もうすぐだ。

 

「坂本茂男。小夜が自殺した元凶のお前は最後に殺すと決めてたんだよ。こんな風に優しく殺して貰えると思うなよ?」

 

 俺が最後のターゲットを指差すと、わなわなと顔を震わせていた。

 こいつを殺す為に用意してた小道具があったが、それを使うには坂本茂男を外に連れ出す必要がある。

 ここまで大立ち回りすれば警察もこっちの目標を守ろうと固まる。

 そこで坂本茂男が怒りで自分を奮い立たせて怒鳴ってくる。

 

「ふざけんな! 頭おかしいんじゃないか! たかだかちょっとからかってやっただけで勝手に自殺したクソ女のせいで殺されてたまるかよ!!」

 

「犯人を刺激するな!」

 

 近くの刑事が坂本茂男を抑え込む。

 ちょっとからかってやった、か。

 自分の仕事を押し付けて深夜残業や休日出勤は当たり前。

 毎日意味のない罵倒や鬱病の診断書のもみ消し。

 そして。

 

「酒が弱かった小夜に無理やり酒を飲ませて泥酔させた挙げ句、ホテルに連れ込んで餓鬼拵えさせたくせに被害者ぶってんじゃねぇよ屑が」

 

 俺の言葉に坂本茂男は驚きから瞬きする。

 周囲の目が非難を伴う物になっていた。

 

「嘘だ!? デタラメ言ってんじゃ……っ!?」

 

「アイツの遺書に全部書かれてたんだよ。こっちが知りたいことは全部知ってんだ。少しでも罪悪感があるなら、ここで俺に殺されろ」

 

 そこで警部さんが疑問を問いかけてくる。

 

「そこまで分かっているのなら、何故訴えを起こさなかった? 証拠が有れば裁判で彼らを裁くことも」

 

「してどうなるよ? 裁判がこいつらを死刑にしてくれんのか? 被害者遺族への多少の罰金と短い懲役を終えて人生再スタート? 全然たりねぇよな」

 

 言ってしまえばこいつらのやったことは社内での様々なパワハラと一部の強姦だけ。

 数年すれば充分やり直せる。

 もちろん社会的ハンデは付き纏うだろうが。

 

「生きて罪を償えば人生やり直せるなんてクソ喰らえだ。小夜を追い込んだ奴らは全員死んで償え……!」

 

 紛うことなき俺の本音にこの場に居る誰もが張り詰めた表情をする。

 他人にどう思われようと、これが俺の出した結論だった。

 こっちの幸せをズタズタにしておいて、ヘラヘラ笑ってる奴らを見て、我慢できる訳ないだろ。

 

「そんなことをして亡くなった小夜さんが喜ぶと本当に思ってるの!!」

 

「……」

 

 コナンくんがそう俺に訴えかける。

 それに俺は答えない。

 きっとこの子には俺のドロドロとした負の感情は理解できないだろう。

 そもそも厳密に言えばこれは小夜の為の復讐というより、俺の憂さ晴らしが近い。

 あいつはきっと、こいつらへの恨み辛みより、自分への不甲斐無さを責め続けただろうから。

 そういう女性(ひと)だからこそ幸せにしたかったんだよ。

 

「お喋りはこれくらいでいいだろ。ぶっ殺してやるよ屑が」

 

 警察は坂本茂男を含む一般人を守る為に人数を割いている。

 だから俺は切り札として用意していたそれを上着の内側から取り出して警察に向けて投げつけた。

 

「発煙筒っ!?」

 

 そこそこ大きなサイズのそれが坂本茂男の周囲に煙を巻く。

 警察が慌てている隙に坂本茂男を連れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハー。人がゴミのようだー」

 

 坂本茂男を連れ去った後に動けないようにし、盗んで隠してあった廃棄予定のドラム缶の中に詰め込み、灯油をぶっかけて火を点けた。

 この島はまだ、整備された道以外で車やバイクは使えない。

 結構無茶なルートを通ったので、警察が到着するまでもう少し時間がかかる筈だ

 火を点けて最初は叫んでいた坂本茂男ももう物言わぬタンパク質の塊となっていた。

 

「やっと終わった……」

 

 煙草に火を点けて肺いっぱいに紫煙を吸い込んで吐き出す。

 すると、小さな人影がその場に現れる。

 

「コナンくん……」

 

 脇にスケボーを抱えてやって来た子供に俺は顔を顰める。

 

「前にも言ったけどさ。あんまり危ないことしないの。私がもしも逃げる気だったらどうするつもりだったの?」

 

 お前が言うなと思うかもしれないが、俺は小さな子を叱るように問い詰める。

 最初会った時の言葉使いを意識して話す。

 こういう態度は面接を受ける為に小夜から指導して貰って身に付けた。

 愛想を振り撒く時にする外向きの態度だ。

 荒かった呼吸を整えて、コナンくんが苦い顔で口を開く。

 

「ここまでしなきゃいけなかったの? 恨んでる人達を殺して、楽しかった?」

 

 責める口調で問いかけてくるコナンくんに俺は苦笑して返した。

 

「別に楽しくはなかったよ。多少はスッキリしたけどね」

 

 俺は別に快楽殺人鬼じゃない。

 人を殺して楽しいとは思わなかった。特に罪悪感も沸かないが。

 

「こんなことをしたって亡くなった小夜さんは生き返らないし、あなただって犯した罪からは逃れられない! 誰も幸せにならないよ!」

 

 だから俺のやった事は無意味だと言うコナンくん。

 でもその答えはちょっとズレてるよ。

 

「……小夜を失った時点で俺が幸せになることなんてないよ。これは絶対」

 

 俺だって全部を知ってからそういう想像をしなかった訳じゃない。

 だけど、小夜にされた事を忘れて、別の誰かとのうのうと生きていく自分を想像するだけで吐き気がした。

 

「……もう警察もここに来る。あなたは逃げられないよ」

 

「そうだね。だから、早く逝くとするか」

 

 内ポケットに忍ばせていた小瓶を取り出す。

 それを見た、コナンくんがギョッとする。

 

「待てっ!?」

 

 それを一気に呷ると、俺は吐血して倒れた。

 コナンくんが駆け寄ってくる。

 

「くそ! なんでっ!?」

 

「生きて償えば人生やり直せる、なんて……クソ喰らえだって言ったろ……」

 

 最初から人生再スタートなんてこっちは考えてないんだよ。

 

「一年も……待たせちまったからさ……早く、会いに逝ってやらないと……」

 

 呼吸が段々と難しくなり、ぼやけ始めた視界でコナンくんが悔しそうに唇を噛む。

 

「ふざけるな!! あれだけ人を殺しておいて、自分勝手に────」

 

 怒ったコナンくんがその小さい身体で俺を運ぼうとする。

 そんな小さなこの子の努力も空しく、俺の意識は遠ざかっていく。

 自分の死が近い事を自覚する。

 人殺しの俺が小夜と同じ所に逝けるなんて思ってないし、輪廻転生なんて信じてもないけど。

 だけどもしも許されるなら。

 

「また……小夜に、逢いたいなぁ……」

 

 

 

 




後日談的な話は、コナン視点で書きます。
警察が無能っぽく見えるのは、作者の想像力不足です。
1話じゃなくてこの話のアクセス数が飛び抜けてるの笑う。
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