天内を護衛して呪専に着いた時だった。
傑が叫んだ。
「【悟、前に飛べ!】」
傑の声だけど、傑の声じゃない。
頭で情報を処理する前に、強制的に体が動く。
すぐ後ろに冷たい感覚。
追いつかれる前に、傑が呪霊を出して攻撃する。
そして、その直後、傑の瞳が焦点を結び、我に帰った。
「悟! 理子ちゃん!」
天内を確保し、傑は下がる。
「助かった、傑!」
「なんだよ、今の」
怠そうに男が言う。
気配がなかった。呪力を全く感じない。
「傑、天内を連れていけ!」
「いや、ここで片付ける。悟に全部任せる」
そして、傑は再度口を開いた。
「【悟、受け取ってくれ。私の全部を】」
そう傑が言った途端、俺は凄まじい全能感と強い呪力を得ていた。
空だって飛べそうだ。
呪力がなくなった傑が倒れて、黒井と天内に支えられ離脱する。
そうして、俺は刺客と向かい合った。負ける気は全然しなかった。
極限まで強化された体はまるで暴れ馬のようで、乗りこなすのは大変だった。
だが、そのおかげで刺客を追い返す事に成功した。
さっきの変な術のせいか、気を失った様子の傑を抱き上げ、天内を連れて天元様の所へと向かう。
そうして、天元様の同化は成し遂げられた。
傑が目覚めたのは、それから二日経った後の事だった。
「で、傑。なんなんだよ、あの呪言」
「私の切り札だよ。危険が迫った時に周りにそれを伝えてくれる術に、強化が出来る術。警告とバフと言ってね。ぶっつけ本番だったけど、上手く出来てよかった」
「うまくいったから良かったけどさ。気絶するなら、あんま気軽に使うなよな」
「悟なら、どうにかしてくれるって信じていたよ」
傑は、穏やかに笑った。
俺はその笑みに、何故か心臓を跳ねさせてしまうのだった。
「なー傑。傑の切り札、もっかい試したい」
赫が出来たのだ。頑張れば虚式「茈」もできるかもしれない。
上からも詳細を報告しろと言われている事だし。
「あれは、負担が掛かるからね……。あまり使いたくないかな」
「だから練習するんじゃん。次は気絶しねーようにしないと」
「乱用するような物でもないんだよ。あれは切り札だから、報告もしたくない」
「お願い!」
「……詳細は内緒だよ?」
「やたっ」
そんなわけで、バフの練習をする事にした。
傑は俺と硝子にバフを掛ける。
「きたっ」
「おぉー」
「傑の方は大丈夫?」
傑を見ると、かなり辛そうで、すでに立てていない。やはり負担が大きいようだ。
「硝子、傑見てて。俺は技が出せるか試してるから」
「りょーかい。大丈夫か、傑ー」
「気持ち悪い……。ちょっと寝るよ」
呪力が溢れ出る。傑の呪力が俺を強化してくれている。
すげー全能感。呪力の核心を掴めそう。
この状態で傑と組み手できたら良いんだけど、傑が動けないのが痛いな。
でも、俺らやっぱり最強だ!
雑踏の中で見てしまった。
整った顔。俺ほどじゃねーけど。
絡まる指。上擦った声。どう見ても発情したおっさん。
隠すように受け渡される小瓶。そして2人はホテルに消えていく。
「なあ、今日、会っていた人って誰?」
「あー。援交してるんだ。私。先生には内緒だよ?」
照れたように笑う傑。
俺は傑の事を知らない。
その事に気づいたのは、あまりにも遅かった。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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