オラオラヒーロー『スタープラチナ』   作:花京院

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オラオラ

 雄英高校。

 静岡県に所在するプロヒーロー養成学科を有する稀有な学校の一つであり、プロヒーローを養成するヒーロー科、大学進学を第一目標としつつ成績優秀者にはヒーロー科移籍も検討される普通科、そしてコスチュームなどヒーロー活動を支援する物品の開発、調整などを行う技術者を養成するサポート科、そしてヒーローの生活基盤や社会的地位の下支えを目的とした、プロデュースやビジネス、会社運営を目的とした経営者養成を行う経営科で構成されており、それら全てが全国最高水準。

 特にヒーロー科は偏差値79、入試倍率は300倍ととんでもないことになっている。

 

 そんな高校の会議室に、職員兼プロヒーロー達は集結していた。

 議題は勿論、先日起こったUSJ襲撃事件である。

 また、この場には雄英高校の職員ではないものの、事件の調査に関わった警部の塚内、そして実際に(ヴィラン)を撃退したスタープラチナも呼ばれていた。

 ちなみにスタープラチナは実に不良らしく机の上に足を組んで乗せており、隣にいるブラッドヒーロー『ブラドキング』に注意されているが、どこ吹く風といった態度だ。

 

「……っていうか! 本当にこの場にスタープラチナを呼んでも良かったのか!? オールマイト!」

「大丈夫だブラドキング。彼は信頼できる人物だよ。私が保証する」

 

 そうブラドキングに言うのは、鶏ガラを思わせるようなガリガリの男。

 貧弱という言葉が形を得たかのような体格をしているその男は、なんと最強のヒーロー、オールマイトの真の姿だ。

 ヒーローとして活動しているムキムキマッチョな姿は例えるならば『プールサイドでずっと腹筋に力を入れている人』のようなもので、一昔前ならばその姿でずっといられたものの、大幅に弱体化した今ではこうして真の姿を晒さねば、体の方が保たなくなってしまうのだ。

 

「どちらかと言えば、元々彼は僕たち側の人間なのさ。彼が他所で我々に不利な発言をするとか、そう言う心配はしなくてもいい」

「そうなのですか」

 

 そしてそんな鶏ガラオールマイトの発言に反応するのはげっ歯類。

 ハムスターともネズミとも言えないような肉体にシャツとベストを着て、豪華な椅子に腰掛けている存在自体が冗談のような彼は、なんと雄英高校の校長である根津だ。

 

「さて、それでは調査の結果を。死柄木という名前、触れたモノを粉々にする個性は、少なくとも20代から30代の間では該当無しですね。同様にワープゲート……黒霧という者も該当なし。無戸籍かつ偽名、個性届を提出していない、いわゆる裏の人間ですね」

 

 塚内警部が手に持った資料を読み上げる。

 警察のデータベースや戸籍データを参照して調べたようだったが、しかしそれで理解できた事と言えば、敵が根っからの『悪』であるということだけのようだ。

 

「あまりにも情報が少なすぎるな。何も分かっていない。捕まえた(ヴィラン)達もどうやら重要な事は何も知らない下っ端のようだし、主犯を取り逃しちまったのは痛いな。手傷の一つでも負わせられればよかったのだが」

「……主犯、か」

 

『スナイプ』の発言に反応するのはオールマイトだ。

 

「何だい、オールマイト。何か、気になるところがあったのかな?」

「そうですね、何というのでしょう。あの男を主犯と呼んでいいものか、些か疑問に思える部分がありまして」

「というと?」

 

 根津が続きを促し、オールマイトが話し出す。

 

「今回の件は、思いついても普通は行動に移そうとは思わないような大胆な襲撃でした。しかし相手は本気で襲撃を成功させるつもりで、そのために用意は周到にされていた。だが、あの男が……あの手の(ヴィラン)に、それをするだけの能力があるとは思えない。自分の個性について語ろうとしないが、脳無とやらの個性を自慢げに語り……思い通りにいかないと露骨に気分を悪くし……そして味方に当たる。まぁ、ある程度は私を誘導する意図があったとして、それにしても……何と言いますか、その……」

「ふむ、それはつまり────」

「あんまりにもチグハグすぎるって事だ」

 

 警部の塚内の声を遮り、会議室の中に入ってから今まで無言を貫いていたスタープラチナが発言する。

 

「……続けてくれたまえ」

「今回の襲撃事件は、事の大きさとあの野郎の人間のデカさが噛み合ってねぇ。あれだけの人数を動かし、緻密に用意されたであろう計画を遂行しつつ、あんなバケモンを用意するだけの力があると考えるには、アイツはあまりにもガキすぎた」

 

 ガキ。餓鬼。

 つまり、子供っぽいという意味だろう。

 

「一番近いイメージは子供のお使いだ。子供の成長を願う母親が、3歳になる自分の子供に一万円札と子供ケータイ、メモを握らせて、近所のスーパーに買い物に行かせる。そんな雰囲気を、俺は今回の件に感じたぜ」

「そう、それだ。それと近いイメージを私も抱いた」

「そりゃあ、もっと大きい指導者的存在が背後にいるってことか!? その根拠は!?」

 

 ブラドキングが焦ったように承太郎へと問いかける。

 

「一万円札は大量の(ヴィラン)とバケモン。子供が自力では金を稼げないように、アイツがアレだけの戦力を動員するだけの力があるとは思えねぇ。次に子供ケータイはあのモヤモヤ野郎。困った時のお助け役、最悪の場合の逃げ足にもなる。最後のメモは計画。オッサンを殺すことに重点を置きながら、幾つもの副次効果を狙ってやがる。やっぱりあのガキが考えついたものとは思えねぇ」

 

 スタープラチナの説明に成程と。その場にいたヒーロー達も感心する。

 

「ふむ……背後に潜む大きな存在……か。スタープラチナ、君は一体どんな相手だと見る?」

「知るか」

「あれっ」

 

 プロヒーロー達は思わずズッコケそうになってしまう。

 先程までアレほど理路整然とした推理を披露していたというのに、今度はたった一言で質問を切って捨ててしまった。

 

「……だが、たった一つ。たった一つだけ分かっていることがあるぜ」

「それは……?」

「もし本当に黒幕がいやがったとして、ソイツはガキのお使い感覚でアレだけの戦力を使い潰せるヤローって事だ」

「!!」

 

 俄かに、プロヒーロー達の間に緊張が走る。

 言われてみればそうだ。もし本当にあの襲撃の裏に真の主犯がいたとして────その人物は、一体どれだけの力を持っているのか?

 オールマイトですら苦戦したようなあの化け物を、アレの他に何体も保有しているのか?

 そんな懸念が次々と生まれ、不安は益々大きくなる。

 

「…………まァ、ヒーローのお陰で我々も地道な捜査に専念出来る。捜査網を拡大して、引き続き犯人逮捕に尽力して参ります」

「そうだね。我々も動くしかない。近くには雄英体育祭も控えている。雄英の信頼を取り戻すためにも、ここは無事に体育祭を完遂しなければ」

 

 しかし、いつまでも不安に囚われていてはいけない。

 この場にいるのはプロヒーローと警察。

 正義の名の下に、民衆が安心して暮らすために行動しなければならないのだ。

 塚内警部の発言を受けて、決意を新たにするように根津は言う。

 

「はい。そうするべきでしょう。しかし懸念は残ります。プロヒーローによる警備を強化しましょう。例年の倍以上が望ましいかと」

「いや、倍では足りないわね。今年はオールマイト効果もあるだろうし、来場者は例年よりも圧倒的に多くなると予想できるわ。最低でも3倍。勿論警備の数は多ければ多いほどいいけど、費用など諸々を考えれば、5倍程度が限界じゃないかしら?」

「ロボットの類も全て投入しよう! 敵にワープゲートの個性がいる限り、どこから湧いてくるかわからん! 死角を全て消すくらいの気持ちでやらねば!」

 

 と、プロヒーロー達は真面目な顔で今後の方針や策について話し合いを始める。

 取り敢えず襲撃事件の事は置いておいて、目の前に迫っている問題に取り掛かる事にしたらしい。

 

「ふん……もういいな? じゃあ俺はもう帰らせてもらうぜ」

 

 その事を察したスタープラチナは、もう自分は不要だろうと考え、捜査に戻ると一足先に戻っていた塚内警部の後を追うように部屋を出ようとする。

 

「まぁ雇うプロヒーローの一人目はそこのスタープラチナで良いとして────」

「…………あ?」

 

 そうして、何とも聞き捨てならないセリフが背後から飛んできた。




……オレンジかぁ。(露骨な催促)
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