オラオラヒーロー『スタープラチナ』   作:花京院

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オラオラオラオラ

 肩を怒らせて、スタープラチナは一年生の試合が行われているアリーナの通路を練り歩く。

 観客席の方から大きな歓声が聞こえて来るが、スタープラチナがアリーナに訪れたのは一年生の競技の様子を見るためではない。

 自分の事を『協力者』だの『こちら側の人間』だのと散々身内扱いしてきた癖に重要な報連相を怠りやがったオールマイトから詳しい事情を聞き出すためだった。

 

 しかし、どこに行ってもオールマイトは見つからない。

 個性の発動時間を少しでも減らすため、職員用の部屋に居るか、そうでなければあの鶏ガラ姿で観客に紛れているかの二つに一つだとスタープラチナは予測していたが、しかし職員用の部屋に行けば『どっか行った』と追い返された。

 であるならばとその後にスタープラチナは観客席を覗いたが、スタープラチナの観察眼を用いてもオールマイトの姿は見当たらない。

 

「チッ、どこ行きやがった……!」

 

 オールマイトの都合を考えれば、このアリーナから離れることはほぼ無いはず。

 となればこのアリーナのどこかには居るはずなのだ。

 そう考えて、スタープラチナはアリーナの通路をひたすらに練り歩く。

 すると─────

 

「…………!」

 

 俄かに、スタープラチナは周囲の空気から熱気を感じた。

 その場に足を止めてみれば、少し先の曲がり角から姿を現したのは燃焼系ヒーローにしてオールマイトに次ぐNo2ヒーロー、『エンデヴァー』だ。

 ヒーローコスチュームを身に纏い、肩や顔からは自らのアイデンティティである炎を放出し、揺らめかせている。

 熱気の正体は、十中八九彼だろう。

 

「スタープラチナ、か。生憎と今は君に用はない。道を開けてくれ、俺は便所に行きたい」

 

 上から目線で、エンデヴァーはスタープラチナに道を譲るように命令した。

 まるで、そうすることが当然であるかのように。

 自分の方がスタープラチナを避けて通るという選択肢が、初めから存在しないかのように。

 

「……………」

「おい、どうしたスタープラチナ? 話を聞いているのか?」

 

 だが、スタープラチナは動かない。沈黙を貫く。

 

「おい?」

「…………」

 

 帽子に隠れ、エンデヴァーからスタープラチナの表情は見えない。

 微動だにせず、沈黙を貫くスタープラチナに、エンデヴァーは得体の知れない不安感を抱いた。

 

「おい! 何とか反応したらどうだ!」

 

 ボッと炎を吹かせ、そんな不安感を拭うかのようにスタープラチナに凄むエンデヴァー。

 そこまでして、ようやくスタープラチナは口を開いた。

 

「黙りな、クソジジィ」

「んなっ……!?」

 

 帽子から覗いた翡翠の瞳に、恐れの色は一切ない。

 それどころかどこまでも冷ややかであり、同時に深い怒りを閉じ込めているようでもあった。

 そんな瞳に見つめられ、エンデヴァーは思わず一歩、後退りをしてしまう。

 

「俺もテメーに用はねぇ。あの脳筋ジジィに話つけなきゃならねぇんでな。わかったらとっとと失せな。邪魔だぜ」

「ッ…………どうやら、年長者への敬意が足らんようだなァ……」

 

 ボォ、と。エンデヴァーの炎が強まり、辺りの空気が一段と熱される。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、と。空気が鳴るような緊張が両者の間に走る。

 何かきっかけがあれば、即座に二人は戦闘へと移行する事だろう。

 そんな一触即発の雰囲気が、二人の間には漂っていた。

 

「STOOOOOOOOOOOOOOP!!!」

 

 だが、一人の男がそんな二人の間に割り込み、その雰囲気を霧散させる。

 その男は、スタープラチナがつい先程まで必死になって探していた脳筋ジジィこと、オールマイトであった。

 エンデヴァーの前であるからか、マッスルフォームに変身している。

 

「君達! こんな所で戦闘はダメだぞ!」

「……ふん。そんなことは貴様に言われずとも分かっている」

「………………」

 

 忌々しげにオールマイトを睨め付けながら、炎を収めるエンデヴァー。

 そうしてコツコツと足音を立てながらオールマイトとスタープラチナの横を通り過ぎ────

 

「『キャラ作り』は確かに大切だが、時と場合は考えることだ」

 

 その途中でスタープラチナの肩に手を置き、プロヒーローの先達としての忠告を残す。

 つまるところ『今回は見逃してやるけど、生意気な口利くのも程々にしておけ』という警告なのだろう。無論、スタープラチナにとっては至極どうでもいい話であるが。

 

「……君、本当にエンデヴァーのことが嫌いだよねぇ……」

「……………………………チッ」

 

 エンデヴァーの背中が遠ざかった事を確認してから、オールマイトは呟く。

 事実として、スタープラチナはエンデヴァーのことが嫌いだった。

 それも、ただの『嫌い』ではない。『大嫌い』なのだ。

 

 スタープラチナにとって、『炎』とは特別なものだ。

 それは自分を狭い牢獄の中から引き摺り出してくれた導きであり、尊敬すべき人生の先輩であり、かけがえのない仲間であり、そしてこんなどうしようもない自分を認めてくれる『友』の一人であった。

 

 だからスタープラチナは、あのような男が『炎』を我が物顔で操っているのが気に食わない。

 あの男が『炎』を穢し、『友』の顔に泥を塗りたくっているように見えて仕方がないのだ。

 

「それで? 一体どうしたんだい? 何やら私を探しているようだったが」

 

 しかし、そんな事は知ったこっちゃないオールマイトは、まるで何事も無かったかのようにスタープラチナに要件を聞こうとする。

 そんなオールマイトを、スタープラチナはギロリと睨みつけた。

 

「……ああ、そうだ。テメー、アレはどういう事だ」

「アレ、とは?」

「とぼけるんじゃあねぇ! あの緑髪のガキの個性だ! 何であのガキが、テメーと全く同じ個性を使いやがる!!」

「!」

 

 スタープラチナが胸ぐらを掴み上げて怒鳴ると、オールマイトは驚愕に目を見開く。

 

「……そう言えば、君にはまだ詳しい事を話していなかったね。……場所を移そう。ここでは、いったい誰が聞いているか、わかったものじゃない」

「………………いいだろう」

 

 スタープラチナは素直にオールマイトを掴んでいた手を離す。

 そうして、歩き出すオールマイトの後について行くのだった。




関係ない話だけど、『うろジョジョ』って知ってる?
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