「さて、それでは明日四人が戦う準決勝の舞台を決めるルーレットです! とはいえ、本当にルーレットを回すことになるのかはわかりません。何せ、準決勝の舞台は出場者それぞれが自分の意思で選びたいステージを示し、それが異なった場合にルーレットを回す形式となるからです!」
「改めてステージのおさらいをするけど、『荒野』、『都市』、『海上』、『樹海』、『兵器工廠』、『浮島』の六ケ所です」
「荒野は平坦な見晴らしのいいオブジェクト少なめのフィールドです。あってもせいぜい岩やまばらに生えている木という感じで、とても開けております。今日で言うと敗者復活第三試合の舞台でしたね。フィールド自体もあまり広くない事から事前準備が必要な能力を持つ皆さまはその準備を行うことが非常に困難なステージでもあります」
「模擬試合や敗者復活第三試合でもそうだったけど、本当に試合は短時間で終わる感じだよね。距離が近いのと、隠れる場所がほとんどないから短期決戦になりがちな感じ」
「実際、直接戦闘能力がモノを言うステージではあります。おそらく、今回用意されたステージで一番シンプルで、かつ実力が直接的に出るステージですね」
他のステージと違ってギミックもないしなぁ
岩くらいかな
勝ってるのも直接戦闘能力が高い方だったってのもその通り
ししろんは武器はあったけど素の戦闘能力で、リオーナは分身での戦闘だったけどフィジカルはバフがないし、それに比べて番長はフィジカル強化ばっちばちだったからなぁ
一撃がでかい方がかつってイメージ
このステージ選ばれたらこよちゃんとミオしゃはキツそう
スバルと番長は有利そう
「皆さんの予想通り、荒野ステージだったらスバル先輩と番長がとても有利だと思います。さて、次は今の所一度も出ていない都市ステージ。これは半径五キロメートルのステージ内に高層ビル、公園、学校、商店街など色々な施設が存在しています。建物の高さは外側に行けば行くほど高く、真ん中にはサッカースタジアムがある、外見だけで言うならすり鉢状のステージですね」
「このステージも登場場所はランダムなんだよね?」
「もちろんランダムです。このステージの場合、色々な機械や素材が存在していますので、"マシーナリー"やこより先輩が持つ"イータ"とも相性が良いです。また相性という意味で言えば、超長距離射撃に適性があったぼたん先輩だとスポーン位置にも寄りますが、かなり有利に戦いを進められていた可能性があります」
「ぼたんちゃん、スナイパー適正高いもんね」
「一歩的なスナイピングで有利を取るか、スポーン位置次第では様々な近代兵器を駆使してゲリラ戦を仕掛けたりであるとか、色々な事を出来るステージではありますね」
そういえばまだ一度も出てないのか、都市ステージ
ししろんは熱望してそうだった
ししろんも兵器工廠に荒野にと運がなかった感じだったよねぇ
もうちょい隠れる場所が多いステージだったらまた違う結果だったかもしれないのにね
都市ステージでの戦いも凄く楽しみではある。
獅白ぼたん:エキシビジョンとか、フリーで遊べるなら都市ステージで遊んでみたいよねぇ
ぼたんちゃんもよう見ておる
「次は海上ステージだね。一回戦でこよとルーナちゃん、二回戦でスバルちゃんとノエルちゃんが戦ったステージ。海の上に浮かぶ連結された木造船二十隻が部隊のステージだけど、このステージって基本的に落ちちゃったら負けなんだよね?」
「そうですね。船の上から落ちて海に落とされたらその時点で敗北となるギミックがありますが、この場合の"海に落ちる"というのは全身が海に沈む状態と、沈んでいなくても一番近い船から一定の距離離れてしまった状況を示しています。つまり、ただ落ちただけでは敗北にはなりません。まぁ、"ダンサー"や"ランナー"のようにどこでも足場にできる能力とかがないと船に戻るのは厳しいので、落ちた段階で負けと言っても過言ではありません」
「今の所海に落ちて負けって状況はないけど、こよの攻撃なんかは結構ぎりぎりだったよね」
「というより、こより先輩のあれは万が一ルーナ先輩が爆発を避けても船を沈めることで勝利条件を満たそうとした意図がありましたね。全段階で周りの船全部沈めて逃げれないようにしていましたし」
「あの手管はえげつなかったよね……」
「流石はHoloxの頭脳、頭脳を使った素晴らしい戦いだったと思います」
あの決着はおもろかった
こよちゃん、観客も意識して試合してたからなぁ
流石の余裕ではあった
姫森ルーナ:アーカイブ見たけど若干の舐めプされてた気がするのら
でも最初から最後まで楽しそうに戦ってたから本気だったとは思うよ
全力出せないように色々制限つけてるみたいだしね
それは姫も同じだろうけど、こんこよの場合最大効率でやるとマジで作業ゲーになりそうではある
足止めする薬無限弾数制だと海上ステージだとマジ無敵だろうしなぁ
それだと流石に一方的過ぎるもんね
「ちなみに、こよになんであの戦い方をしたのか個人的に気になったから聞いてきたんだけどさ」
「はい」
「『ルーナ先輩にも戦いを楽しんでもらいたかったのと、ちゃんと勝ち筋を残すためにも、冷たすぎるプレイングはしないように心がけていました! おかげでルーナイトさんたちの活躍も、ルーナ先輩が選んだ武器の特性も、こよの発明品紹介なんかもできたので良かったです!』だってさ」
「主催なだけあって色々考えてらっしゃるんですねぇ」
「それにルーナちゃんも数を用意したからリソースが足りなかったけど、一撃で木造船沈められる武器用意してたら同じことできたはずだしね」
「それはそうです。つまり互角の条件だったわけですね」
「というわけで、海上ステージの話はここまで! 次は樹海ステージだけど、樹海もまだ出てないよね?」
「出てないですね。樹海は半径二キロメートルの森が舞台のステージです。鬱蒼と生い茂る巨木に、様々な効果を持った植物がギミックとして存在しており、天然の罠も大量にある厄介なステージです」
「ここもこよなんかは"イータ"で食べれるものが多いから強そうだよね。あとは人海戦術ができるルーナちゃんも強そう」
「後は意外に、みこ先輩が"フレイム"で燃やし始めると、一気に使える火の規模が大きくなります。このステージ、実はすっごく燃えやすい植物がギミックとして組み込まれているので、そこに着火しちゃと森全体が山火事状態となります。身を護るすべがないと、それだけで敗退必至のステージに早変わりですね」
やはりみこちと言えば炎、炎と言えばみこち
強制あっちゅあっちゅフィールドかぁ
でも最終的に自分にも燃え移って対戦相手より先に燃え尽きて負けてそう
さくらみこ:なんでだよ!
みこちだし
あえんびえんする様子が目に浮かぶ
あっちゅ!あっちゅ!
様式美ってものがあってだな
「後は隠れる場所が多いからぼたんちゃんやミオちゃんなんかも強そう」
「フブキ先輩も、兵器工廠と同じように隠れる場所が多いですからね。獣人組は総じて強そうです」
「話題にも出たし、次は兵器工廠かな?」
「そうですね。昨日の試合ではフブキ先輩とぼたん先輩が、今日はみこ先輩と番長、フブキ先輩とミオ先輩が戦ったステージで、至るところに兵器が転がってる危険なステージです。"マシーナリー"持ちにとっては楽園みたいなステージですね。みこ先輩は自爆して負けましたが」
「兵器を動かすための発電設備があるから、"サンダー"も操れる電気が豊富にあるから強いのかな。でもずっと色んな音がしてて色んな匂いもするステージだから、音や匂いなんかの五感を頼りに索敵する獣人勢は苦手そうだったね」
「フブキ先輩は"ウインド"の風による索敵、ミオ先輩は"プリンセス"による人海戦術での索敵でしたからねぇ」
「準決勝に出場した中で"マシーナリー"持ちは、スバルちゃんとはじめちゃんだっけ?」
「そうですね、そのはずです。ただ二人とも何となくですが、兵器工廠は選ばないんじゃないかなぁ、という気がしますね。みこ先輩の勇姿を観てるので」
スバルも自爆してそう
番長は番長でマシーナリー有効活用できなさそう
大空スバル:なんでだよ!
轟きはじめ:できるよ!
ホントかなぁ
二人そろって派手に自爆しそう
まぁ、後は組み合わせが番長とすばうの組み合わせになった時相手に利するから外してはいそう
そんなに頭いい選択するかなぁ
いや、二人とも意外に頭いいじゃん
中々にみんな失礼で草
「最後は浮島ステージかな?」
「そうですね。一回戦、敗者復活試合通して一番選ばれている浮島ステージは、三つの浮遊島からなるステージです。ここもステージギミックとして、落ちたら自動敗北が決定します」
「跳べる系の能力がないとしんどいよね」
「そうですね。面白い事にこの会場が選ばれた際には参加者が大体空を移動できる系の能力を持っていたので今のところ落下負けはないです。ただなんというか、浮島ステージ、最初の試合からみこ先輩に放火されたり、次はリオナに島墜としされたりと碌な目にあってません。これがこより先輩だと爆弾使いそうですし、大規模破壊系の行動ができる人たちはこれだから困りますね」
「島墜としは派手だだったねー。敗者復活だとリオナが下の島にスポーンしたから見れなかったけど」
「でもあれ、実はやろうと思えば、下の島から上の島に"アース"で作った土の塔で連結して無理やり墜とすなり、もう一つの島にぶつけたりできたんですよね。推し相手だからやらなかったのと、あと単純にルーナイトさんたちの軍団に攻められてそんな準備する余裕がなかったんだと思いますが」
「それはそれでみたかった気もする……」
リオーナの試合は派手で良い
派手じゃなかった試合の方が少ないけどね
盛り上がりがどの試合も凄い
なんだかんだとみんな流石のエンターテイナー
ししろんとフブさんの試合も緊張感という意味の盛り上がりはえぐかったしな
あれはどちらかというとサスペンス映画観てる感じだった
「というわけで、準決勝のステージ決めとなります。先にも説明しましたが準決勝のステージは参加者全員の希望を観てからのルーレットです! 準決勝進出確定準で発表するとしましょう」
「一番最初だから、二回戦をシードですっ飛ばして準決勝に進んだこよからかな」
「そうですね。というわけで、こより先輩が選んだステージはこちら! 都市ステージです!」
「おおー、やっぱり主催者としては全部のステージを見せたいのかな?」
「それもあるでしょうし、このメンバーだと樹海よりも都市の戦いが映えると判断した可能性もあります。ではサクサクと行きましょう、次は二回戦第一試合を勝ち抜いたスバル先輩です! スバル先輩は……おお! スバル先輩も都市! 都市ステージを選択してます!」
「スバルちゃんも都市かー。これ、全員が都市だったらそれはそれで面白いね」
「ルーレット回さなくていいですからね! そして次は二回戦第二試合を勝ち抜いたミオ先輩! 選んだのは……ミオ先輩も都市だぁー! アッハッハッハ、これで第一試合か第二試合が試合が都市になるのは確定ですね!」
「みんな都市大好きだぁ」
最後の番長が何選ぶのかが楽しみ
マジで全部都市になるのかどうなのか
それはそれで面白そう
四者四様の戦い方が見れるわけだもんな
「というわけで、最後の番長が選んだのは……都市! 全員都市ステージを選択! つまり明日の準決勝は都市で繰り広げられることが確定しました!」
「すごいね、ここまで一致するとは思わなかったよ」
「余談ですが、皆さんのステージ選考理由、こより先輩は『まだ出てないステージで、準決勝参加メンバーが全員平等に有利不利背負えるから』、スバル先輩は『"マシーナリー"使えるところが良いけど兵器工廠だと自爆する未来しか見えないから』、ミオ先輩は『色々準備できる余裕がある場所が良いけど浮島と兵器工廠は怖そうで樹海は不意打ちくらいそうだから』、番長は『"マシーナリー"が使えて、かつ今まで試合したことのないステージだったから』という感じですね」
「みんな色々考えた結果なんだねぇ」
「ミオ先輩の浮島に対するトラウマっぷりがヤバイですね。あと兵器工廠もフブキ先輩との対決で怖さを感じていたのと、対戦相手の内、二人が"マシーナリー"持ちだったのも大きいですね」
「兵器工廠だとこよも時間与えたら色々準備してきそうだしねぇ」
「素材が山ほどあるわけですからねぇ。特殊能力を使わない普通の組み立て能力を考えると、こより先輩も兵器工廠だと生き生きすると思います」
「兵器工廠にない珍兵器が誕生しても驚かないよ」
特殊能力とは別の所で変なの作りだしそうなこんこよ
ミオちゃん、実質的に兵器工廠選べないの草
マシーナリー持ち二人に、開発能力が特殊能力なこんこよだもんなぁ
大空スバル:都市か……、選んどいてあれだけど都市でも怖いよ
大神ミオ:ウチの能力だと明確に一方的な有利取れる場所ないからなぁ
轟はじめ:都市だったら監視カメラとか乗っ取れそうだし……
皆も良く考えてるなぁ
「さて、戦うステージが決まったところで、次は組み合わせのルーレットです。明日戦う相手がこれで決まります!」
「ドキドキだね!」
「ではさっそくまいりましょう。準決勝第一試合の一人目は……こよりせんぱーい! そして二人目は……ばーんちょー!」
「という事は、準決勝第二試合はスバルちゃんとミオちゃんの組み合わせだね」
ばんちょーVSこんこよ!
スバルVSミオしゃ!
轟はじめ:こより先輩とかぁ……、どう戦えばいいんだろう
大神ミオ:スバルとかぁ……。狼召喚して攻め立てるかなぁ
大空スバル:やめてよミオしゃ!? 数で攻められたらスバル勝てないんですケド!
スバルが早々に敗北宣言しとる
そんなこと言いながらも試合だとガチガチで戦ってそう
「さて、試合の組み合わせも決まったところで、こより先輩からの映像を観てみましょうか」
「どんな映像なんだろうね。私たちも知らないんだけど」
「そればっかりは見てみないとわかりません。それでは、博衣こより先輩よりご提供いただきました、映像をどうぞお楽しみください!」
-------------------
【動画:『博衣こよりから出場者の皆様へ』を再生します。お楽しみください】
「みんなー! こんこよー! 振り返り配信をご覧の皆様、そして進行をしてくれているそら先輩にらでんちゃんも大会、楽しんでくれていますかー!」
「皆殿やっほー。ござるでーす」
「ばっくばっくばくーん。どーもー、沙花叉だよー」
映像に映ったのは三人の女性。秘密結社Holoxの実働部隊である沙花叉クロヱと風真いろは、開発部門のトップである博衣こよりだ。
ラフな格好をしているこよりと沙花叉の二人に対して、いろはは通常装備で立っている。
「というわけで、今日は二回戦、および敗者復活の試合お疲れさまでした! そら先輩も、らでんちゃんも本当に実況解説枠ありがとうございます!」
「皆さんの試合見てましたが、どの試合も凄く白熱して楽しかったでござる! いやー、はじめちゃんの必殺技とか、真正面から斬ってみたい出来でござったな!」
「考え方が脳筋過ぎるんよ、いろはちゃん。まぁ、こんこよの企画というか、思い付きで始まった大会だけど、面白い出来になってて沙花叉も一視聴者として楽しんでるよー」
「さて、というわけで、自己紹介とご挨拶はこれまでとして本題と参りましょう! 準決勝に進出されたスバル先輩、ミオ先輩、はじめちゃんは一回戦と敗者復活戦で獲得した能力を駆使……ゲットした能力が使えないステージだったスバル先輩とはじめちゃんは置いておくとして、獲得した能力や付与された武器を駆使した戦いを見せていただきました! ならば、こよも視聴者や準決勝進出者に手の内を明かさねば不平等というもの! というわけで、こよが一回戦でゲットした能力を紹介する動画を作ったというわけです」
「あ、じゃあこんこよ、風真準備するね」
「いやー、能力紹介は良いんだけど、まぁ、どちらかというとこれリスクヘッジだよね。あとはこの動画自体も戦略的には明日の試合を有利に進めるためというか。さすがこんこよ汚い」
こよりの言葉を合図に、三人がいる荒野ステージの離れた位置へ移動するいろは。
そしてこよりの傍に残りながら、煽りの言葉を紡ぐクロヱ。
その二人の様子を楽しそうに見ながら、こよりも一歩前に出る。
「では、こよが一回戦にルーナ先輩から獲得した能力は"プリンセス"。MPを消費して兵士を召喚する能力です。この召喚は実在する相手を召喚しているわけではなく、能力を使う人間の想像力で作り出しています。つまり召喚というよりは創造に近いわけです。つまり、ミオ先輩やリオナが見せていたみたいに、ルーナイトさんたち以外も呼び出すことが可能です。そう、つまりこういう感じで」
こよりが"プリンセス"の能力を行使する。
頭上に浮かんでいたMPゲージが最大からゼロまで一気に消費。
地面にこれまでの試合では見られなかった魔法陣が表示。
桃色の光を発しながら輝く魔法陣の中央から、ヒト型の影が浮かび上がってくる。
「召喚――"沙花叉クロヱ"」
魔法陣が表れた人型に収束し、桃色の光を周囲にまき散らしながら消失。
そこには、通常装備を身に着けた沙花叉イロハの姿かがあった。
「うわぁ、沙花叉がなんかピンクと白のこんこよっぽいカラーリングで登場したよ。きもーい。こんこよ沙花叉の事好きすぎー」
「クロたんが勝手にこよの色になったからクロたんがこよの事大好きなのは確定的に明らかなので、とりあえずスルーするけど、はーい、というわけで、こよちゃんの"プリンセス"はHoloxメンバーを呼び出せまーす! まぁ、レギュレーション違反になるからラプちゃんといろはちゃんは召喚できないですけどね」
「ちなみに、リソースが足りないので、沙花叉の武器までは一緒に"プリンセス"だと召喚できないんですけどー」
「こよには"アルケミスト"がありますので! HPの八割を消費して、こより謹製、沙花叉クロヱ決戦装備"双刀・猛毒"生成! コピークロたん、新鮮な武器だよー!」
『はーい、ありがとこんこよ』
「うーわぁ、沙花叉の姿してるこんこよカラーの沙花叉コピーが素直にお礼を言ってて気持ちわるーい」
「どういう意味だよ!? さて、というわけで、なんか戯言を吐いてるクロたんは置いておいて、いろはちゃーん、準備はおーけー?」
「はーい、大丈夫でござるよー。今回は、模擬試合と違って全力でやっていいんでござるよね? こんこよ」
「いーよー! というわけで、皆さんにはこれからゲームシステムに依存してない素の能力をコピーしたそのまんまのいろはちゃんと、同じくこよができる範囲で用意した素のクロたんの試合をご覧いただきます! 実況はこより! 解説はクロたん! さぁ、行ってみましょー!」
こよりの言葉を合図に、クロヱ・コピーが動き出す。
両手に持った毒々しい紫色を基調としたナイフをくるくる手の中で回して遊びながらも、その歩法に淀みはない。
対してその先に立つ風真いろはもまた、すらりと自身のメイン武器であるチャキ丸を抜いて青眼に構える。
立ち姿は凛として、一切の乱れ無し。
「風真流――"一文字"」
「"隠れバナ"」
二人の距離が縮まるにつれ、高まる緊張感が甲高い金属音によって切り裂かれた。
走り寄る己を迎撃する為に放たれた刀による横薙ぎを前に、飛び込むように身体を引くして跳躍。
自身に迫りくる刃を手に持ったナイフの刃に滑らせることで受け流しつつ身体を回転。
刀を振りぬいたいろはの脇を通り抜け様にナイフを振るうも、紙一重で避けられて空を切る。
「さぁ、最初の接敵から盛り上がっているよー! 走り寄ってきたクロたんをいろはちゃんが横薙ぎの一撃で迎撃! 見れば分かるけど、いなされた斬撃が空を走って軌跡の先にあった木をぶった切ったよ! 怖いね!」
「今のはいろはちゃんの飛ぶ斬撃、"一文字"だねー。飛ばされた斬撃を迎撃するのは沙花叉にできないから、相手の視界から消えつつ懐に潜り込む"隠れバナって技で移動しながら斬撃が放たれる前の刀そのものを往なした感じだよ。そのまま"隠れバナ"の勢いでナイフを振るったけどいろはちゃんには流石に避けられるよねー」
「余談ですが、今回のゲームで"風真流"を武器として採用する際、体術だけに絞ったのはこれが一つの理由です。いいですか? あの技、基礎ですからね? 奥義とか必殺技とかじゃなくて、風真流のスタンダードな技ですからね? いろはちゃんが参加禁止になったのも、これが原因です。能力使わずに能力以上のことが容易くできるのはやっぱりレギュレーション違反かなーって」
「英断だと思うよ、実際。いろはちゃんとラプラスはもう、ちょっと規格がねラプラスは逆に、能力無しだとクソ雑魚すぎてね」
「逆にラプちゃんの場合能力使わせると発想力の差でどうしようもなくなるからね。今回は自由の能力選んでいいレギュレーションだったから、能力の使い方がうま過ぎてNGにしました。さぁ、場面が動いて、クロたんが能力を使います!」
解説が流れる先、クロヱ・コピーの姿が消えていく。
それを見たいろはの構えが青眼から八双に変わる。
構えたいろはの周りに、ピンク色の風が舞う。
クロヱ・コピーが変じた風の色合いだ。
「沙花叉コピーをそのままクロたん呼びするのやめてくれない……? まぁいいや、沙花叉の能力は"イミテーション・ミミック"。これは普通に沙花叉が持ってる能力なんですけどー、まぁ、ざっくり言うと変身能力ですねー。何にでも変身できます。今は、風に擬態して姿を消してるね、あれ。実際は無色の風に変じるけど、今回はさっきいろはちゃんが見せた飛ぶ斬撃みたいに効果として色がついてるよー。見栄え的な意味でもね」
「そして相対するいろはちゃんは構えを変えました! すり足で少しずつ風が動く方向を向きながら牽制! ちなみに、いろはちゃんは風も切れます! なのでクロたんはいろはちゃんの間合いに容易に踏み込めません!」
「ちなみに、沙花叉は現実だとああいう感じでどこにでもある何かに変じて近づいて一撃で仕留めたりするやり方が得意だね。まぁ、いろはちゃんレベルの相手になると風に擬態しても普通の風とは違う気配を察知して沙花叉の事を判別して攻撃仕掛けてくるからどうしようもないけど」
「ちなみにそういった場合はどうするの?」
「うーん、正攻法かなぁ。ちゃんと正攻法で、正々堂々、真正面から手段を選ばず不意打ちってカモってやるかな。ああいう感じで」
クロヱの言葉が聞こえたわけでもないが、クロヱ・コピーが動きを変える。
ピンクの風がいろはの周囲を高速で円形に回り、実態の気配をいろはに掴ませづらくする。
それを見て動くのを止めじっと構えたままで息を整えるいろはの前後左右にピンクの色が集まり、本体よりも小さな四人の沙花叉クロヱ・コピーの姿を取る。
分身だ。
「さぁ、こっちのクロたんがどこかの策師みたいな言い回しをキメ顔で言い放ったところで場が動いた! 風に変じたクロたんが四つに分かれていろはちゃんの四方を取る!」
「沙花叉流暗殺術とか勝手に名乗って名前を付けるなら"四んクロ"かなぁー。"さんりおな"よりはマシだよね、多分」
「版権的にはだいぶマシだね! そして四方をクロたんに囲まれたいろはちゃんはどうするか! と、動いた! 一瞬で踏み込んで正面にいるミニクロたんの胴体をチャキ丸による平突きで串刺し! しかし串刺しにされたミニクロたんもただでは転びません! 自身の腕以外を爆弾に変えて、いろはちゃんの腕をつかんで逃げられないようにしながら大爆発! こよ好みの大爆発!」
「べつにこんこよを喜ばせようとして爆発したわけじゃないと思うよ?」
桃色の爆風に吹っ飛ばされたいろはを三方に散っていたクロヱ・コピーが襲いかかる。
「"三惨花"」
「風真流――"左門字"」
三方向からナイフを手に連続斬りを仕掛けてきたクロヱ・コピーの攻撃を刀一本で全て捌き切り、弾き飛ばしたところで左の一字を描く軌跡で連続斬りを放ついろは。
その攻撃によりバッサリ斬られたクロヱ・コピーが光となって消え――残心を取っていたいろはの足元から飛び出て襲い掛かる。
「咄嗟に"いろはステップ"を使って空間を足場に後ろにジャンプしながら爆発の直撃を回避したいろはちゃん! だたそのまま爆風に吹っ飛ばされて分身しているクロたん達が待ち構えている場所へ移動! そのいろはちゃんにクロたんたちが襲い掛かるも、それを全部刀で捌ききる! 返す刀で三人の分身をぶった切っていろはちゃんの勝利――とはならない!」
「コピ又の体力ゲージ、実は消え切ってないんだよねぇ。じゃあどこに行ったんだって話なんだけど、爆風に紛れて爆弾の破片に化けていろはちゃんと一緒に移動してたわけで。そんで切られたコピ又は実はもうスッカスカの張りぼてで、本体は破片になってたわけ。それで不意打ちで真下から攻撃を仕掛けたんだ、けど……うん、流石いろはちゃん。あの程度じゃどうしようもならないよねぇ」
真下から飛び出てきたクロヱ・コピーの攻撃を頬へのかすり傷のみでいなしたいろはが、チャキ丸を地面に突き刺し支えとしながら上下にすれ違ったクロヱ・コピーの腹を蹴って打ち上げる。
「下から強襲したクロたんの攻撃を避けて、いろはちゃんが逆襲! ちなみに"双刀・猛毒"にはゲーム的には結構えぐめのHPダメージを与える毒が仕込んであるので、かすり傷でもがっつりHPが減るよ! 毒が回った事でものすごい勢いでいろはちゃんのHPゲージが減っていく!」
「満タンから削りきるまで20秒くらいなんだけどー。でもまぁ、相手いろはちゃんだからね……」
「蹴り上げたクロたんを追って"いろはステップ"で追いかけていく! 空間を壁蹴りしてクロたんに攻撃を続けながら高く高く駆けあがっていくぅー!」
「沙花叉、これ二日前に見たなぁー。この後上に打ち上げられていろはちゃんに正座されて地面に叩きつけられるんだ……」
「さぁ、クロたんの予想は当たるのか! 五メートルくらいの高さまで到達したところでいろはちゃんがクロたんを後ろから脇下に腕を差し込んで抱きしめる!」
「あっれぇ!? これ沙花叉の予想と違うんですけど!?」
こよりの実況通り、背面から沙花叉の腕をロックしながら抱きしめたいろはが、地面方向に向かい身体を反転。
HPの減りが半分を割り、どんどん減っていくのを全く意に介さず、技を継続する。
「風真流・亜種新伝――――」
「あっ、これ一回戦でスバル先輩がやってたやつぅーー!!!!」
「ちなみに、この技、一回戦で結構受けが良かったのと、配信を観たいろはちゃんの実家から流派に取り込む許可とブラッシュアップしろって指示がでたらしいよ」
「だから新伝とかってついているんだ……と、沙花叉コピーがさっきみたいに変身して逃げない理由は、"イミテーション・ミミック"の能力が他者と接触していると使えないからだよ。さっきいろはちゃんに刺されてた時はいろはちゃんに触る前に爆弾に変じていたのと、他者判定が無機物を介さないで、相手の温もりを感じてる事だからね」
「さぁ、クロたんの解説をしり目に、じたばた逃げようとするクロたんを逃がさないいろはちゃんが地面に向かって回転しながら飛ぶように墜ちていく!」
「これは必殺技だなぁ……」
「――――"土筆落とし"!!!」
「着弾寸前に身体をのけぞらせることで地面との間に空白を作るいろはちゃん! そして頭から地面に叩きつけられて埋まるクロたん! 地面に手をついて一度肘を曲げてから突き放して宙返り! 軽業を披露しながら着地してそのままブイサイン! いろはちゃんのかーちー!」
「いやー、さすがに沙花叉じゃいろはちゃんに真正面から勝つのは無理だなぁ」
「えへへ、ござるの勝利ー! 大勝利ー!」
「というわけで、これにてこよの獲得能力紹介は終わりでーす! 今回はクロたんといろはちゃんに協力してもらいましたー! それじゃあ、組み合わせの結果なんかは後でアーカイブで確認しますので、この後も色々やる事とか明日の準備とか済ませておきます! 皆さん、明日また楽しみにしてくださいねー!」
「ばいばーい」
「ばいばいでござるー!」
【動画:『博衣こよりから出場者の皆様へ』を再生しました】
【ご視聴いただきありがとうございました。またのご利用をお待ちしております】
-------------------
……は?
え? "プリンセス"ってあんなことできるの?
あんな精度で他人の分身作れるんか
轟はじめ:待って、これはじめ、沙花叉先輩と戦うの!? めっちゃ不利じゃん!
大空スバル:いや、それはスバルも同じ条件なんだけど!? え? ミオちゃんに勝ってもこよりが上がってきたら、クロヱと戦いの相性めっちゃ悪い気がするんだけど!?
大神ミオ:ウチはまだ、うん……。うちの"プリンセス"で狼呼び出せるからまだ何とかなると思うけども。でもまだはじめの方が戦いやすそう
準決勝進出者たちのリアクションが怖い
そりゃそうだろ、あんなの見せられたら
あれがHoloxの掃除やかぁ……
刀装備ござるさんと普通に近接戦闘した上に、あの変身能力フルで使えるんだろ? ヤバくね?
スバルが使うの風真流+空手だろ? 手の内半分バレてるやん
空手も代表的な動きはいくらでも調べられるしなぁ
準備できる余裕を与えたらあのクロヱと物量の火力持ちなこんこよが襲い掛かってくるわけだろ? きっつぅ
「……えっと、これ、大丈夫?」
「ど、どうなんでしょう? "プリンセス"はMPを消費して自分の思い通りに動く兵士を作り出す能力です。これはその作り出す兵士の種類に制限はありません。例えばルーナ先輩はルーナイトさん達を、リオナはルーナイトとしての自分を、ミオ先輩は眷属でもある狼を呼び出して使役しています。そこから考えると、沙花叉先輩をよく知るこより先輩なら沙花叉先輩を"プリンセス"で作り出すことも可能だとは思いますが……あれ、本当に"プリンセス"で呼び出した分身ですか? 本物ではなく?」
「本物クロヱちゃんがちゃんと解説してたし、呼び出すところから始めてたので間違いないと思うけど……。こ、これ、明日のステージが都市で確定したから、開始時の状況次第でHolox二人と戦うことになるんだよね、きっと」
「そうですねぇ。そして私は沙花叉先輩の戦闘能力を生で見たことがないので何とも言えないのですが、少なくとも私では動画で行われていたいろは先輩の動きは対応ができません。つまりそれを普通にさばいてた沙花叉先輩の分身はそれ相応の能力を有していると推察することができます。なおかつ、これ、厄介なのは、ルイ先輩が出てくる可能性も否定できないわけです。さっきの動画で否定されていたのは、ラプラス先輩といろは先輩を呼び出すことだけなので」
「そこからブラフが仕込まれている可能性があるのか……」
「流石はHoloxの頭脳である、という感じですね。逆にHoloxを召喚せずにほかの何かを召喚する可能性もあるわけで……」
「やっばぁ。明日の試合が楽しみだよ、これ」
「ええ、それはまったくもってその通り。というわけで、チャット欄の番長ー? 今どんな気持ち? ねぇ今どんな気持ちー?」
轟はじめ:らでんーっ! お前ー! くっそ、明日どうすればいいんだー!
大空スバル:こよりじゃなくて良かったと思ったけど、でも明日の相手ミオしゃなんだよな……。それに勝ってもこよりなんだよな……
大神ミオ:がんばってねはじめ。ウチはスバルをボコってこより戦に備えるから
こよちゃんが勝ちあがると思われてて草
この試合形式だとなんだかんだどっちが勝つかわからないけど、ただお出しされた情報が強すぎる
まぁ、ござるさんで強いと確定しているHoloxの実働班だからなぁ、クロヱ
実働班とバックアップ班の組み合わせで襲い掛かられるの恐怖でしかない
それも、HPとMPの回復できる能力持ちのこよちゃんだから、下手すると沙花叉倒しても次の沙花叉が出てくる
無限沙花叉編か……
何それ怖い
「はじめちゃん、ものすごく悲壮感漂ってるね……」
「今の映像観た後なので仕方なし、というところでしょうか。さて、それではそろそろ締めの時間でしょうか。短く済ませる予定でしたけど、なんだかんだ切り抜きが豪勢だったので時間がかかってしまいましたね」
「ステージ説明にも熱が入っちゃったからねー。失敗失敗」
「ちなみに明日は、各試合三枠立ちます。昨日今日と同じように実況解説枠と、昨日今日の試合で行われていた各種検証の成果で出来るようになった各選手視点の配信枠です。正しくは試合開始にそれぞれの配信枠で視点枠が行われ、試合後に各視点をアーカイブで見ながら実況解説をする枠が立ちますよ。各選手の視点枠では試合中のコメントは読まれませんが、参加者の皆様視点をリアルタイムで観ることが可能でございます。より臨場感たっぷりな戦いをお楽しみいただけます」
「一応、明日は予定があって実況出来ない予定だから、外で観れそうなら誰かの視点枠観ようかな」
「それもいいと思います。私は明日また実況として参加する予定でございますので、今日と同じように実況解説枠で皆さんと一緒に試合を楽しませていただきます。では、また明日、準決勝第一試合の枠でお会いしましょう! おつらでーん!」
「みんなまたねー」
おつらでーん
そらちゃんもお疲れ様ー
明日も楽しみ
まずは番長とこんこよの試合かー
これまでヒーローやってる番長だから、秘密結社の幹部は倒してほしい所
なお、本人はあえんびえんの模様
なんにせよ楽しみだ!
というわけで、漸く土曜日更新に戻れました、読んでいただきありがとうございます。
来週も土曜日に更新予定。今の所、予定としては後回しにしていたこの世界の世界観説明。どこかでやろうと思ってましたけど、中々差し込むタイミングができなかったので、次回に書きます。
というわけで、話としては書かなかった敗者復活第一、第二試合のリザルトを書いておきます。
【敗者復活第一試合】
試合会場ダイス→6 浮島
①荒野②都市③海上④樹海⑤兵器工廠⑥浮島
第1試合:姫森ルーナ VS 響咲リオナ
姫森ルーナ 所有能力
プリンセス
スケーター
武器:武器辞典
響咲リオナ所有能力
プリンセス
アース
武器:テコンドー
第一ダイス 6-4 (姫有利 リオ有利 0-0)
第二ダイス 3-1 (姫不利 リオファ 2-0)
第三ダイス 4-9 (姫有利 リオ不利 3-0)
第四ダイス 1-2 (姫ファ リオ有利 1-0)
第五ダイス 9-1 (姫不利 リオファ 3-0)
第六ダイス 9-6 (姫不利 リオ有利 3-1)
第七ダイス 7-10(姫不利 リオクリ 3-3)
第八ダイス 7-2 (姫不利 リオ有利 3-4)
第九ダイス 1-3 (姫ファ リオ不利 1-4)
第十ダイス 5-8 (姫不利 リオ有利 1-5)
響咲リオナの勝利
獲得能力→能力重複のため スケーター固定
【敗者復活第二試合】
試合会場ダイス→5 兵器工廠
①荒野②都市③海上④樹海⑤兵器工廠⑥浮島
第2試合:轟はじめ VS さくらみこ
轟はじめ 所有能力
ダンサー
サンダー
武器:空手
さくらみこ 所有能力
フレイム
マシーナリー
武器:如意棒
第一ダイス 8-4 (はじめ有利 みこ有利 0-0)
第二ダイス 6-1 (はじめ有利 みこファ 2-0)
第三ダイス 5-4 (はじめ不利 みこ有利 2-1)
第四ダイス 1-6 (はじめファ みこ有利 0-1)
第五ダイス 6-8 (はじめ有利 みこ有利 0-1)
第六ダイス 4-3 (はじめ有利 みこ不利 1-1)
第七ダイス 7-5 (はじめ不利 みこ不利 1-1)
第八ダイス 10-2(はじめクリ みこ有利 3-1)
第九ダイス 3-1 (はじめ不利 みこファ 4-0)
第十ダイス 2-10(はじめ有利 みこクリ 4-2)
第11ダイス 9-4 (はじめ不利 みこ有利 4-3)
第12ダイス 8-1 (はじめ有利 みこファ 4-1)
第13ダイス 5-6 (はじめ不利 みこ有利 4-2)
第14ダイス 5-4 (はじめ不利 みこ有利 4-3)
第15ダイス 8-8 (はじめ有利 みこ有利 4-3)
第16ダイス 2-3 (はじめ有利 みこ不利 5-3)
轟はじめの勝利
獲得能力→マシーナリー