「さーて、始まりましたホロライブJP最強王決定戦、準決勝第二試合の実況解説枠でござるー!」
「実況はホロライブゲーマーズ猫又おかゆと風真いろはちゃんでお送りしていくよー」
「まず最初に皆殿、予定より二時間も開始が押してしまい申し訳ありませんでした! お詫びにこんこよが切腹します!」
「しないしない! しないよ!? えっとねぇ、準決勝第一試合でこよちゃんが映像に細工して自分の行動が視聴者にばれないようにしてたのもあり、流石にそれはちょっとどうなのよ、と物言いが入りまして。主に負けたはじめちゃんから」
「その節は本当に申し訳ないというか、こんこよはちゃんとシバいておきましたのでご安心ください! あとで罰もちゃんと受けさせますので!」
「何させつもりなの……?」
「一週間配信抜きです」
「それ罰になるなの!? ご褒美じゃないの!?」
「活動系全部禁止で家でずっと筋トレしてもらいます」
「それは地味に罰になるけども!」
ござるー
もぐもぐー
ござるさん最初からキレッキレでござる
おかゆんが突っ込みに回らざるを得なくなってる
流石ござるさん、天然です
こんこよ怒られたのか
配信一週間禁止が罰になるの草
まぁ、配信モンスターだから……
隙あらば配信してるしなぁ
あれでしっかり寝てるし締め切り護るし収録とかもめっちゃくちゃしてる
身体何個あるんだよ
今回で少なくとも二人に分身出来るのは確定した
話題に出てないけどもう一人のこよちゃん何してるの……?
というか、ござるさんも実況? 解説じゃないの?
あ、そういえば確かに、おかゆんが二人とも実況みたいな風に言ってた
「並行世界から呼び出されたこんこよと、あと並行世界で編集技術とか持ってるこんこよの協力でこの枠は作られております」
「並行世界の自分に仕事投げるってマジなんなんだと結構みんな総出で突っ込みを入れた案件だったけど、でもまぁ、こよちゃんだしなぁという結論に落ち着きました」
「ちなみにござるは一回戦第一試合の解説枠でござるござる言い過ぎってうちの角ガキに煽られたので今回はござる控えめです。アイツ許せねぇよなぁ! 試合にも出てないし今回は特に何もイベント参加してないくせに!」
「まー、ラプラスはその分色々なあれやこれやがのしかかってるから……。この期間中、ずっとレッスンに撮影に案件に追われて日に日に目が死んでってるのは聞いてるけど、どうなの?」
「青息吐息になってましたけど、空き時間で色んなホロメンのASMR聴いて元気を取り戻してました。正直キショかったです」
「アハハハハ、ラプラスらしいねぇ」
「さて、角ガキの話はさておきまして、今回の配信は先ほどまでの配信と少し更生を変えてお送りします。まず第一に、実はこの後でもう一枠おかゆ先輩の枠で配信が開きます! ござるの配信はこのままござるが、おかゆ先輩の枠にはおかゆ先輩が移動しまして、そこでそれぞれ実況解説を行っていく、という形になっています」
「一緒の枠で観てると、やっぱりちょっと見ずらいよねって話が感想見てると上がっていたのと、あとそのタイミングで何がどうなっていたのかを分かりやすくするためにもそのような形にさせていただきました。僕の枠ではミオちゃんの、いろはちゃんの枠ではスバルちゃんの視点映像が流れますので、好きな方を見てくれてもいいですし、二窓してみてもらっても全然大丈夫です。ちょっと会話がごちゃごちゃしちゃうかもしれないけど、そこはまぁ、ご愛敬と言うところで」
「そして! ござるとおかゆ先輩が実況ということで、それぞれの枠で解説に入ってもらうお二人をお呼びしましょうー。スバルせんぱーい、ミオせんぱーい」
「はーい、ウチウチ、ウチだよー、大神ミオだよー! ということでおかゆの枠で自分の戦いを解説するミオです」
「ちわーっす! 大空スバルでーす。いろはちゃんの枠で解説しまーす。というか急遽だよ!? スバルたちの参加! あと、スバルの戦いならどちらかというといろはの方が解説できるだろ! スバル使ってるの風真流だし」
あじまる屋さんにミオしゃだ!
それぞれ自分の戦いを解説するのか
割と恥ずかしそう
自分の戦いだもんなぁ
でも何が起こったかとか、どういう意図でその行動をしてたとかはわかりやすそう
それにしても、今回は突っ込み多いな
そういえば、わりと全員突っ込みに回れるほうか
ござるさんは突っ込みか……?
自認突っ込み
あとおかゆんはござるさん相手だから突っ込みに回らざるを得なかっただけで本質ボケだから……
「ござる突っ込みなんですけど!? 皆殿!?」
「いやいろははボケだよ」
「いろはちゃんはボケ側かなぁ」
「いろはちゃんは天然ボケだとウチも思うなー」
「先輩がたぁ!?」
ござるさんはボケだよ
間違いなくボケ
博衣こより:むしろなんで突っ込みだと思ってるのか
沙花叉クロヱ:まぁまぁ、そこがほら、いろはちゃんの可愛い所だし
鷹嶺ルイ:自認イケメンツッコミ侍だけど、他認は天然ぼけぼけゆるかわ忍者だからね
ラ+D:語尾ござる少なくしろって突っ込んだら一人称ござるでござるを継続してやがるしな
Holoxそろい踏みで草
というかラプ様の名前それなんか
長いから……
山田でええやん
ラ+D:良いわけないだろ!
「皆ぁ!? 風真は侍でござるよ!? 忍者じゃないもん!」
「あ、突っ込むのそこなんだ?」
「アイデンティティだからな……」
「さて、楽しく雑談をしていきたいところではあるけれども、話を進めていきましょう。この後それぞれ僕といろはちゃんの枠に分かれて二人の戦いを観ていくわだけど、一応始まる前に今回の試合はどうだった? という事を聞いていこうと思います。もちろんこの後試合が流れるのを考えて話してね?」
「アハハ、フリが雑だなぁ。でもそうだね、ウチとスバルの試合は、リアタイで見てた人はわかると思うけどガチの真っ向勝負です。これ、実はこよとはじめの試合が終わった後で二人で話して決めたんだよね」
「そうなの!?」
「あー、うん、そう。ミオちゃんから提案があってさー。はじめとこよりの試合がこう、どちらかというとコメディっぽい感じの流れが多かったじゃん?」
「まぁ、そうですね。こんこよもあえてガチらずにクロヱを召喚したり、助手くんたちではじめさんを翻弄したりとやりたい放題していましたね」
「そうそう。だからウチとスバルはもう最初っから、戦闘準備をバチバチに整えたうえで切り札ガンガンぶち込んで短期決戦でやり合おうって提案したんだよ」
「その提案聞いてとりあえずわかった! って了承したけど、内心こいつ何言ってんだマジで、って感じだったよね。なんていうか、肉食獣系の本能出ちゃってるっていうか」
「そう思いながらとりあえずで了承するスバルちゃんって本当に変だよね」
「なんでだよ!? だってさー、フブちゃんとミオちゃんの試合見てたらさー。罠とか仕掛けられて、ああいうの絶対スバル悪いの踏み抜くから、搦め手されてズタボロになって負ける未来しか見えなかったんだもん。だったら、そりゃー、ここまでの試合でガチってきた風真流を信じてガチバトルっしょ! ってなるだろ」
「そこで信じるのは風真流なんだね」
「当たり前だろ! おめぇ、スバルの空手なんて練度たかが知れてんだから! はじめの選んだ武器としての空手なんだよあれ、スバルあんなの習いに行ってた道場の師匠クラスでしか見たことねぇよ」
「ちなみに、このゲームで武器として付与されている格闘技のモーションデータなんかは、世界中にいる色々な流派の中から風真やルイ姉、こよちゃんの伝手を使ってご了承を得た方々のご協力で作られています。まぁその、マイルドにわかりやすく空手とかテコンドーって名前にはしてありますけど、その実態はわりと飛んでも流派なこともあるので……」
「風真流がその最たるものだもんね」
「この後の試合を見るに、ミオ先輩に最たるものとか言ってほしくないでござる……」
「はいはい、このまま雑談していると話が進まないので戻すけど、そんな感じで二人の談合というか、話し合いがあって準決勝第二試合は仲良しな二人のガチンコバトルになるよ」
「談合って言うなよ人聞きの悪い! 良いだろ話し合いだけで!」
「スバルちゃんのツッコミはとりあえず無視していくけど、そんなわけで第二試合は第一試合と比べてだいぶギュっとした展開になるから、みんな頑張って展開についてきてね。僕たちもがんばって実況解説していくから!」
「さらっと無視すんな!」
「スバルのツッコミは置いておいて、それじゃあさっそく、試合の映像を流していくよ。とりあえずここからは僕といろはちゃんそれぞれの枠に移動することになるから、ミオちゃんの視点メインで見たい人は僕の枠に来てね」
「お二人とも、スバル先輩の扱いが雑過ぎでは……? え、ええっと、それではござるの枠では引き続きスバル先輩の視点をお送りします。頑張って実況しますので、皆殿もスバル先輩もよろしくお願いしますでござる!」
「いろはちゃんあいつらひでぇよぉー。まぁ、でもいいや、それじゃあスバルとミオちゃんの試合を、どうぞ!」
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【配信アーカイブ:『ホロライブJP最強王決定戦 準決勝第二試合』の『大神ミオ枠』および『大空スバル枠』を再生します】
[……ウチの初期配置は公園か。マップで言うと右下。スバルとは真ん中の交差点で戦り合おうって話をしてたし……向かいながら準備するか。っと、その前に――"プリンセス"」
都市ステージの公園。そこに降り立った大神ミオが、さっそくという風に能力を行使する。
狼の召喚だ。
二匹の狼が召喚され、嬉しそうにミオの足元に鼻先をこすりつけて甘える。
「よしよし、いい子いい子。それじゃあ、念のためスバルの誘導をよろしくね」
二匹の頭を優しく撫で、指示を出すミオ。
それにウォンとひと吠えして二匹が足取り軽く夜の街へと二匹の狼が駆けていく。
それを見送り、一つ深呼吸。
ゆったりと目を閉じると両手を掲げ、MPを消費して呼び出したのは黒いタロットカードだ。
「――――"フォーチュンテラー"、からの"
呼び出されたタロットカードが宙を舞う。
MPを二重に消費して行われるのは、意図的なカード操作だ。
引き出されるカードは"太陽"、"女帝"、"戦車"、"魔術師"、"世界"の五枚だ。
すべて正位置で引かれ、ミオの目の前で五芒星の頂点を表す位置へ配置された。
「"
言葉に合わせ五枚のカードが光、消える。
引いたタロットの効果が発動。
ミオの身体にバフを示す緑色の光が舞い、それに合わせてMPの表示が限界まで下がる
●
『というわけで序盤、さっそくMPをガンガン使っての自己強化を行っていくミオちゃん! いきなりスバルちゃんの迷子対策で狼を召喚したのには思わず笑っちゃったけど、この序盤からの自己強化技連打はやっぱり短期決戦を意識してたの?』
『それはもちろん! スバルとどういう風に戦おうかなって考えた時に、これで勝った場合の相手がこよりなのは確定した後だったでしょ? そうなるとこよりに準備させる前に自分の強化をして速攻戦仕掛ける必要が出てきそうだったから、その試金石として自分を最速で最大の状況まで強化する方法を一度試していこうって思って』
『スバルちゃんの先をもう見て戦略組んでたの!? って事は、え、もしかして試合前に短期決戦を提案したのもその仕込みだったの!?』
『あー、うん。そうそう。スバルだったらウチの提案に二つ返事しそうだなって思って。実際に二つ返事だったわけだけど』
『怖ぁ……。さすがミオちゃん、ゲーマーズの中で最強なだけのことはある』
『ウチ最強かなぁ? ころねの方が強いと思うけど』
『ころさんどちらかというと恐怖の方だから』
『最恐ってことぉ!?』
ミオしゃの戦略眼が怖すぎる
こよちゃんが勝った後間を置かずにこの戦略組み立てたって考えると流石だわ
目先の試合じゃなくてそこを超えた後を念頭に置いてるのミオしゃらしいというか
そして何も考えず了承するスバルちゃんの解釈一致感
スバちゃんとりあえずいいよって言うから……
いいけど、なんで? ってOK出してから聞く姿が簡単に目に浮かぶ
ころさんが怖い方の最恐ってのはわかる
ころさんだからなぁ
犬神ころね:あ"? どういう意味?
何でもないです!
ころさんもよう見とる
えっと、ミ、ミオしゃのバフってどういう効果だったの? 太陽と魔術師はフブさんとの試合で見たけど
ナイス、ナイス話転換!
犬神ころね:名前、覚えたかんね?
ひえっ
『ころさんがコメント欄で暴れてるけど、それはとりあえず置いておくとして。各タロットの効果はどういう感じなの?』
『ざっくり説明すると、フブキとの試合で使った太陽は能力のバフと次にやる運に関わる行動の確定成功。運に寄らないものは成功率を上げる感じかな。魔術師は魔法系能力に対するバフだね』
『"
『そうそう。何をしようとしてたのかはこの後続きを見てもらえればわかるのでこの場面では話さないけど、その意図で合ってるよ。あとの三枚、女帝のカードは回復力の強化と行動成功率の強化。戦車も行動成功率の強化と攻撃力の強化。世界が全行動に対する成功率の大強化、およびMP消費量の軽減、回復量の増大、魔法系能力へのバフだね』
『これでもかってくらい成功率が低い魔法系の行動を意識したカード編成だね!?』
『この後にやろうとしてたの、ぶっちゃけウチだと実際にやろうとしたらかなり成功率が低い行動だったからね。いくらゲーム世界でそのあたりの融通が利くとは言え、可能な限り成功率を高くしておかないと怖かったからねー。実際、これだけ成功率を高くしても正直なところ成功率半々くらいだったからこの時かなりドッキドキだったよ』
『なるほどー。と、ここでバフがかけ終わったのでミオちゃんが移動を始めるね。この後はスバルちゃんと相対するまでは移動シーンばっかりが続くから、その間にみんなからの質問とか聞いていこうかな』
『それもいいけど、同時視聴組は確かこれくらいの頃にウチの狼がスバルと合流して案内始めてたはずだから、スバルの方見てもいいかも。たしか、狼が合流したあたりでスバルも短期決戦の準備を始めたって聞いたから』
●
「こっちだよな? たぶん。マップ呼び出しても、スバル地図読むの苦手なんだよなぁ」
眼前にマップを表示させながら夜の街をゆっくりとした足取りで歩く少女。
大空スバルだ。
一切の能力光を出さずただ歩くだけの様子は、ここまで二回の激戦を潜り抜けてきたとは思えないほどの平和に満ちている。
「どーすっかなぁー。いろはちゃんに一番威力出せる方法を教わったは良いモノの、ミオしゃがそれを準備する暇を許してくれるとは思えないんだよなぁ」
頭の後ろで腕を組みながら歩くスバル。
一切の能力光を出さないままただ歩く姿は、これから激戦を行おうとしている様子には見えない。
「なぁ、スバ友。スバルコメント観れないけど、これどうすりゃいいと思う?」
●
『ちなみにこの時、スバ友さんたちは何て仰ってたんですか?』
『アーカイブ見たら、揃って諦めたら? って言ってた』
『初手諦めの誘いで草でーす』
だって相手ミオしゃだし
スバちゃんが勝てるビジョンがね
スバ友さんたちそれでええんか
でもミオしゃだよ?
スバちゃんが勝てるとは……
それは舌戦だったら勝ち目ないけどさぁ
バトルだったらワンチャンあるかもしれんやん!
パッションで押し切れば!
『え? スバルそんなにミオちゃんに勝てないって思われてたの?』
『普段の行いかも……? ござるも正直、舌戦でスバル先輩がミオ先輩に勝利してる姿が見えないですし』
『いや、確かに口喧嘩だとミオしゃ最強格だけどさぁ。フィジカルだったら勝てると思ってるんだけどなぁ』
『なんだかんだ、ミオ先輩も獣人種ですからね。二回戦の最後、フブキ先輩に見せた刀に対して抜き手で勝利を掴んだ姿を見ると、やはり単純なフィジカル勝負となった時に種族の壁が立ちふさがると思いますよ』
『ちなみに、いろはちゃんだと?』
『どうかなー。現実世界だとそうそう負ける気はしないですけど、このゲーム世界ではわからないですね。魔法スキルの使い方とか、使用者の想像範囲によってくるので一気呵成に攻められたらあっさり負けてしまうことも可能性としては考えられます』
『そのあたりミオちゃんも考え方柔軟だもんね』
『そうですね。っと、ここでミオ先輩の狼さんがやってきましたよ』
迷子のお迎えだ
誘導狼
ミオしゃの召喚獣だ
ビビったスバルが思わず構えを取ってて笑える
狼もワフッって飽きれたように笑ってるの面白い
表情豊かだよね、召喚獣の狼
●
「あぁー、短期決戦ったって、ミオしゃとどう戦えってんだよー! なぁ、お前。どう思う?」
「……わふっ」
ゆっくりとした足取りで歩く大空スバル。
その足元で先導するように歩く狼のうち一匹が、振り返りながらため息をつく。
「いろはちゃんからは大技を教えてもらったけどさー。ミオちゃんがそれを許してくれるとは思えないんだよなぁー、ここはひとつ正々堂々短期決戦って話しだたtけど、いきなり必殺で不意打ちかますのはどう思う? まずいかなぁ」
「……わおーっ!」
「うぉわっ、何すんだよ! いきなり攻撃するのずるいだろ!」
狼が遠吠えてから脛に噛み付いて来ようとするのを、スバルは狙われた足を反射的に引き上げながら叫ぶ。
「あっぶなぁー。なんだよ急に。びっくりするじゃん!」
●
「お前それウチの召喚獣なんだから作戦相談なんかしたらウチに筒抜けに決まってんだろアホかー!」
●
『ミオちゃん魂のツッコミで草』
『我慢できなかったよね……』
●
『後で聞いたけど、あれミオちゃんに筒抜けで、我慢できずに突っ込んだって言ってた』
『そりゃー、召喚獣なんだから召喚主と繋がってるに決まってるじゃないでござるか……』
『相談する相手を考えろとか、情報漏洩大丈夫かお前とか、ガチ説教喰らって会社のコンプラ研修受けさせられる事になった』
『ミオ先輩、もはや突っ込みとかじゃなくてやってる事心配性の上司っていうかお母さんでござる……』
●
「それにしても、待ち合わせている交差点ってまだまだ歩くんだっけ? あれ、これスバル急がないと、先についたミオちゃんが準備万端に大技仕掛ける準備を始めると思うんですけーど!」
のんびりとした足取りで二匹の狼とじゃれながら進んでいたスバルは、ふと試合開始からの時間を確認する。
試合開始から、すでに十分が経過。
たかが十分、されど十分。
普通にただ歩いているだけのスバルとは違い、対戦相手の大神ミオは時間があればそれだけバフを積み、自分専用に戦いの場を調整して対戦相手をハメる事ができる人物だ。
「やっべ、急ぐぞ! このままだとスバル、マジで何もいいとこ見せられないままミオしゃに一方的にボコボコにされて準決勝終わっちゃう! こより以上のギャグパート要員になっちまう!」
●
博衣こより:こよがギャグパート要因ってどういう意味なんでしょうか、スバル先輩! こよ、気になります!
こよちゃんもよう見とる
でもまぁ、昨日の試合を見る限りはギャグパート要因で間違ってない
始終番長が翻弄されてたもんなぁ
轟はじめ:こより先輩はどう考えたってギャグパート要因でした! はじめが保証します!
姫森ルーナ:まちがいないのらね
博衣こより:あれー!?
ここまでの対戦相手全員から認められてて草
残念でもなく当然です
『こよりはマジで反省してほしい。はじめ可哀そうだったやん!』
『そうでござるよこんこよ。真剣勝負の最後をギャグパートで〆るのはいけないぞ。ちゃんと相手に向き合って倒さないと』
『それはそれでどうなんだいろは。倒すの前提なんだ』
『本気で向かってくる相手に対して無礼ですからね。正面から正々堂々、とは言わないですけど、やっぱり本気で向かってくる相手にはそれなりの態度で挑んでほしいと実働部隊としては思うわけでござる』
『そうだぞ! こより、お前、大会はもう終わってるからあれだけど、次の大会開くときはそのあたりちゃんとしろよ』
博衣こより:はーい。でもまぁ、次回こよが参加するかはわからないですけどね
轟はじめ:出てくださいよ! リベンジさせてくれ!
こんこよは最初から運営に回りそう
今回も八面六臂の大活躍だったもんね
エキシビジョンで戦ってくれるくらいになるのかなぁ
最初のござるさんみたいに?
次回はまた違うメンツでの戦いも観たいし、今回生まれた因縁の戦いみたいなのも見てみたい
まぁ、次回があるかは現段階だとわからないけども
『と、雑談しているうちにスバル先輩が予定していた交差点にたどり着きましたね』
『あー、見てよあのスバルの顔。到着したところで狼たちが反対側に移動してくんだけど、そこに広がるミオファ軍団とそれを従えるミオちゃんの姿に絶望してるじゃん』
●
「……え? 嘘じゃん。何あれ。なんでミオちゃんあんなことになってんの!? リソースがおかしいだろリソースが!」
交差点にたどり着いたスバル。
その反対側、四本の道路を挟んだ先にいたのは、大量のミオファを従えながらゆったりとした動きで舞う大神ミオの姿だった。
明らかにおかしい。
HPの数字を考えると、何らかのズルをしないとあんなに大量に召喚を行るわけがない。
だが、現実にそれが起きている。
「……でも、あれを乗り越えなきゃ勝てないもんな」
"ダンサー"の能力を発動。
意識を体の隅々まで張り巡らせ、銀光を纏う。
呼吸を一つ。
……最初の一撃。一番最初にまっすぐ突っ込んんで、先手を取られる前に一撃与えて主導権を握る!
思い、体を前傾にして重心を動かしたところで。
"ここに我が身へ降りる神へと捧ぐ、御身を示す語りを紡ぐ"
歌が、聞こえた。
●
"始めは若木がただ一本
初めの獣がただ一匹"
謡う。
それは、神へと捧ぐ祈りの詩だ。
大神ミオが育ったのは、深い森と清流を蓄える川が流れる田舎の町だ。
元々は神代の時代に成立した隠れ里をメインとした町で、都市部へ繋がる大きい道路が一本ある以外は森と川で大部分が絞められた土地だ。
"しだいに増えて林となって、気づけば林が森となり
番いて生んでを繰り返し、家を構えて群れを成す
……賭けだね。
思いながら、歌を紡ぐ。
これからミオがやろうとしているのは神降ろし。
地元の元になった隠れ里を維持していた、大神ミオの祖に当たる神の力を自身の降ろす大技だ。
現実世界だと、地元の神社で、徹底的に精進潔斎して、お会いできる神に承認を得たうえで、ガッチガチに構築した祭場で奉納の神楽舞を一日ぶっ通しで踊り続けてようやく、ほんの五分程度維持できる大技中の大技。
ゲーム世界であり、博衣こよりが事前に神への許可を得てくれているからこそできる正真正銘の必殺技だ。
準備はした
"
ここまでくる道中で、触媒となるミオファも大量に召喚した。
スバルが来るまでの間にMPを最大まで回復させ、成功率を少しでも上げるために神楽舞を舞っていた。
それでもなお、成功率はおそらく七割が良い所である。
"平和な森を脅かす、外より来る災厄を、倒して防いで幾星霜
誰にも侵せず守り切り、どこにも攻めず引き籠る、我らは拒まず追わぬモノ
護り傷つき流した血潮、誇りと紡いで威を示す、ここは壊れぬ不破の森"
だから、さらに成功率を上げる。
召喚したミオファたちがミオを中心として円形に広がり、"ミラージュ"によってミオファの身体から放たれる緑の光が大木へと姿を変える。
それは故郷の森を再現した儀式場の再現であり、ミオの大技を止めるべく走り寄ってきたスバルの動きを止める結界だ。
「っ、ミオちゃんの所に行けない! くそっ、殴っても全然通れねぇ!?」
走りの勢いを乗せた拳が結界に当たり、甲高い金属音と衝撃の風をばら撒きながら威力が周囲へ放出される。
自分が放った攻撃の衝撃が返り、スバルがバックステップを踏んで結界から離れる。
その姿を見ながら大きく息を吸い、ミオは仕上げの詩を読み上げていく。
"何時しか泉が生まれ出て、川と流れて生を生み、育み増えて大森林
導の祠を拵えて、祀りて崇めて王と成し、水尾つ串打ち道を生む
いつしか初めの若狼は、森を守護する大神へ、育ち見守り君臨す――――"
"
召喚したミオファ達――眷属たる狼の群れにより形成したミオファの森――即ち隠れ里、"みおつくすふわのもり"を模した儀式場の形成。
時間を最大限利用した神へ奉納する神楽舞の実施。
そして最後に、女の度胸を一つまみ!
"神氣招来――――"
……頼むよ神様、ウチに力を!
"我が身に宿りて威を示せ――神獣回帰・
光が奔る。
ミオファ達により形成されていた"みおつくすふわのもり"が光として弾け、ミオの元へと集中する。
「っ、風が……!」
光と合わせて風がミオを中心として流れ、それに引っ張られないようにスバルが踏ん張る。
「ありがと、神様。さぁ、行くよスバル――全力全開ガチンコの短期決戦だぁー!」
●
『見事な舞と共に高らかに謡った詠唱の果てに、ミオちゃんの髪色が白く変わって、四肢が完全に獣の様相を見せていくぅー! さらにミオちゃんが二足歩行から四足歩行の構え! 手足をついているところから草木が立ち上るのは"フォレスト"の能力か、それとも行使した技の能力か! 解説のミオちゃん。改めて、あれ何?』
『あぁー。準決勝第一試合でクロヱが魂歌絶唱を使ってたでしょ? ウチがやったのはその亜種というかバリエーションの一つというか。魂歌絶唱は自分の中にいる神様に魂を示す歌を捧げる事で自分の能力を一段階上に上げるんだけど、ウチがやった神獣回帰は神降ろし。自分が奉じている神の力を身に宿し、神の権能をお借りする技術だね』
『ちなみに、ミオちゃんが降ろした
『
『まぁ、それは見ればわかるけれども……。ミオちゃん、かなり攻撃的な表情になってるしね』
『あ、あと、もう一つでっかいのがあるよ』
『え?』
『神を降ろしたウチに、人の攻撃は届かないよ。特にウチの神様は守護の権能持ちなのでほぼ無敵だね。だから、ぶっちゃけ神獣回帰が成功した段階であとはスバルを本能に任せてぶん殴るだけの予定だったんだよね、この時』
『ず、ずっるぅー!? そうか、神に対して只人の攻撃が通るわけないもんね!? 神に相対して攻撃を通せるのは神か、あるいは神の土俵に乗る英雄か、神を自分の土俵に引きずりおろす化け物だけだもんね!?』
さすが畜ミオ。容赦がない
ミオファの森はあったんや!
ミオファの森の大神かぁ。やっぱり狼なんかなぁ
神降ろしかぁー。神様が下りたミオしゃすっごい神々しい
野性味溢れてる
リアタイしてたけど、これ流石に決まったなぁ、って思ってた
ネタバレ禁止で頼むで
ここからスバルちゃんに入れる保険はあるんですか!
ミオしゃはゲマズの中で最強って言説に確証を持たせる技だな……
現実世界だと使えないらしいけどもね
『さぁ、神獣回帰を成功させて勝利へのチェックメイトを決めたミオちゃん! 対するスバルちゃんは顔面蒼白ながらも戦意は失っていないぞ!』
ずいぶんお待たせしてしまいました。
というわけで準決勝第二試合の前半をお届けいたします。
後半は、うまい事書ければ明日には投稿できる……といいな、という感じでございます。
書いては出しなので、いろいろ荒いのは本当に申し訳ない。
では、ここまで読んでいただきありがとうございました。できる限り早く上げます。