ホロライブJP最強王決定戦   作:七星かいと

17 / 18
15.準決勝第一試合『大神ミオ』 VS 『大空スバル』後編

 ……これ、どうすんだ!? ミオちゃんなんか獣なんですけーど!

 

 思い、でもこのまま相手の異様に竦んでいても何も好転しないと、スバルは足を踏み出す。

 

「"風真流――――振袖草"!!!」

 

 横薙ぎの手刀。

 鋭く振られたそれは、"ダンサー"による補正で強化されるが、ミオが腕を振る動きだけで防がれる。

 金属音。

 肉体同士がぶつかったと考えられない音が響き、スバルの手にはまるで壁を殴ったかのような痛みが走る。

 

「っあ! 硬ぇ! ミオちゃんの腕が鋼みたいになってる!」

 

「そうそうウチの防御は崩せないぞスバル!」

 

 大振りの一撃。

 見た目通り獣に寄っているのか、一回戦、二回戦で見せた近接戦闘の動きと異なり、大味で雑な技振りになっている。

 だが。

 

 ……威力はどう考えてもこっちの方が上!

 

 鈍い音で地面を殴ったミオの右手が、アスファルトに覆われた大地をえぐる。

 乱暴に振りぬかれた腕により繰りぬかれた地面が吹っ飛ばされ、交差点にあった支柱に激突し、四散。

 先ほどまでスバルが立っていた場所に空く三十センチくらいの穴と、粉々に砕けた道路だったものは、その攻撃を受けた自分の姿を想起させるには十分な衝撃を伴っていた。

 

「やっべぇ! やべぇ! これ一撃も喰らえないじゃん! ノエルの攻撃より怖いんだが!?」

 

「聖騎士団の団長とは人間! 獣人の、それも神降ろししてるウチの攻撃と比べてもらっちゃ困るなぁー!」

 

 その動きは荒々しく、そして鋭い。

 

「"樹神(こだま)"!!」

 

「木が生えたぁ!?」

 

 跳躍からの、前方宙返り。

 片足だけを伸ばしてスバルの頭上に振り下ろされる踵落としをバックステップで避ける。

 衝撃。

 先ほどまでスバルの頭があった位置へ緑色に光るミオの足が振り下ろされ、そのまま踵が地面に着弾。

 地面が爆ぜ、足に纏っていた緑色の光を宿した土塊が四方八方に飛び散ると、地面に落ちたところから発芽しあっと言う間に直径十センチくらいの木が生えた。

 

「何やってんだお前ぇ! 道路のど真ん中にこんな木を生やしたら交通の邪魔だろうが!」

 

「そりゃそうだろうけどそれは今言う事か!?」

 

 

 

 

『もう完全に漫才始めてるじゃないですか、スバル先輩』

 

『いや、だってもう、正直この時点で若干無理かなって思い始めててさ。だっていろはちゃんの風真流も、ノエルぶった切った技も全然通用しないんだぜ? あとは言葉でなんとか気をそらしてワンちゃん狙うしか無くね? って感じで頑張ってボケてみたってワケ』

 

『ミオ先輩のツッコミで気をそらせようとしている!?』

 

 

神様降ろしたミオしゃやばいんですけーど

攻撃力爆上がりじゃん

スバちゃんの攻撃全然聞いてないし

運動能力もやべぇし

これはもうスバル負けるか……

ミオちゃんが容赦なさすぎる

暴虐な背景で行われる軽妙なやりとりの違和感やべぇ

面白いんだけどね、いつも通り過ぎて

うあぁ、スバルちゃん防戦一方だよ

 

 

『だって見てくれよいろはちゃん。スバルの攻撃、風真流の攻撃をバチバチに当ててるはずなのにミオちゃん全くダメージ受けてないんですけど。おかしくない!?』

 

『まぁ、神様を相手取るってそういう事ですし……。そもそも、神様に攻撃を通すには明確な条件が必要になります。実況のござるが説明するのもあれですけど、一応そのあたりに見識がある立場として説明させていただきますね』

 

『いや、対神様戦とかスバル全然知らないからむしろお願いしたいんだけど』

 

『では! 神様、幻想的に言うと神族と呼ばれる種族は、人間種、および獣人種からの攻撃を完全に無効化します。これは種族差というか、保有する神秘量からくる絶対的な能力差によるものです』

 

『でも、同じくらい神秘量持ってる悪魔には攻撃通るって聞いたことあるけど』

 

『はい。悪魔族、および天使族には攻撃が通ります。神秘量だけで言うならば神族に匹敵する両種族ですが、それぞれ魔神、および神による被創造物という、神に対する下位種族としての立ち位置から神族ほどの絶対性を有していません。なので、人間種や獣人種でも攻撃を通すことは可能ですが、それでも防御力と攻撃力に差があるので悪魔や天使の位階が高くなれば高くなるほど攻撃は通りづらくなります』

 

『ちなみに、トワやかなたってどれくらいなの?』

 

『トワ様もかなた先輩も悪魔と天使としての位階は一番下位の位階ではあります。ただ今はもう知名度による補正が乗るので二つか三つくらいは上の位階と言っても過言じゃないと思いますね。知名度って要するに、信仰をいかに集めてるかって事になりますから』

 

『そうなんだ。あ、ごめん、話をずらしちゃったけど、神族に攻撃を通す方法って?』

 

『はい。一つは当然ですが同じ格である神族同士であれば攻撃が通ります。同じ理由で、ミオ先輩のように"神獣回帰"を行い神の力を宿す事でも攻撃を通すことができます。ただこの場合、あくまで神様を降ろしているだけなので、神族と比べると攻撃力も防御も落ちるので攻撃が通せるだけ、という感じではありますね』

 

『ノーダメと比べれば十分すぎない?』

 

『それはそう。そしてもう一つが沙花叉が行っていた"魂歌絶唱"です。あれは詠唱の定型句として含まれる、"ここに我が身を示す歌を一つ、我が身に宿る神へと捧ぐ"の部分が示すように、自分の中に宿る神へ捧げる奉納の詩です。つまり、形は違えどやっていることの意味は"神獣回帰"と同じと言えます』

 

『ああ、だから攻撃が通るようになるんだ。神様に歌を捧げて、神の威を得ているから』

 

『そうです。効果こそ自身の能力を拡大させるものですけど、本質は神降ろし。即ち、"魂歌絶唱"を使える異能使いはいずれ神に至る可能性を秘めた能力者って言う事になりますね。寿命という一番の敵がなければ、ですけど』

 

『それ最強の敵じゃね……?』

 

 

勝てっこない敵が来たな

いずれ神に至る、死ななければ

なお不老ではない

でも神秘量が多い人ほど長生きするらしいし、若いころに鍛えまくって保有神秘量を激増すれば……

やりすぎると体が許容できる神秘量を超えて化け物になります

おわた

老いるが先か化け物になるのが先か……

上手い具合にやれれば寿命迎える寸前に神に至ったりしそう

だから仙人とか爺のイメージなんか

 

 

『あ、今コメント欄の方が最後の正解を仰ってくれましたね! そう、最後に攻撃を通す手段は、仙人になる事です!』

 

『仙人って、中華系の最上位能力者の事だっけ?』

 

『はい。仙人になるにはいくつか方法があるんですが、一番有名なのは仙骨という神秘を大量に蓄えることができる骨を生まれつき持っていて、そこに溜め込んだ神秘を爆発させることで至るやり方です』

 

『あー、封神演義で読んだわ、それ』

 

『ですね。あのお話は遥か昔に人間から仙人――即ち神へと至った人たちと、その敵対者である妖怪との戦争物語ですから。そしてもう一つ、仙骨を持たない人が仙人に至る道……すなわち、一意専心を最後まで貫き、人間の限界を突破する事』

 

『え? ちょっと待って? つまりそれって、この後スバルがやったあれって……』

 

『はい。皆殿はこの後見ることになりますが、仙人や神の領域に至れずとも人間種が神に一手攻撃を加える事ができる手段が一つだけあります』

 

『……うわぁ。そういう事? そりゃー、いろはちゃん出禁なわけだ』

 

『あ。そうこう話しているうちに始まりそうですよ。スバル先輩の見せ場!』

 

 

 

 

「くっそぉ! 攻撃通らないなんてずるじゃんか!」

 

 蹴り、殴り、投げる。

 "ダンサー"で得た身体能力と、視聴者から送られる応援の声が"アイドル"の能力により強大なバフとなってスバルの力になっているというのに、それらが一つとしてミオの防御を抜けれない。

 対するミオの攻撃は一撃でも喰らえれば自分の負けが確定する威力を持っている。

 雑に振り下ろされる腕の一撃が大地をえぐり、その破片から草木が生まれ種による弾丸をばら撒く。

 乱暴に振り回された蹴りが周囲の建物や電柱などをぶち壊し、さらに草木による銃撃の包囲網が広がる。

 

 ……どうしようもないが!?

 

 ミオの蹴りを後ろに跳ねて避け――背面から放たれた種の弾丸で吹っ飛ばされる。

 飛ばされた先で狙いすましたように振られたミオの拳を身体を丸めながら避けてそのまま前方に転がり――横薙ぎに振るわれた蔓の鞭で殴り飛ばされる。

 転げた先で四方八方から自分に向けて集中放火される種マシンガンを避けるために空中へ跳躍したところに、ミオの飛び蹴りが腹へ突き刺さって近くのビルまで吹っ飛ばされる。

 

「ぐはっ、こ、のぉ……っ!」

 

 爛々と目を輝かせながら追撃に飛んできたミオにカウンターで飛び蹴りを返すも、ダメージを全く受けずにケロリとした顔で受け止められ、逆に組んだ両手を上から下に振り下ろされ、胸部に与えられた打撃により地面に叩きつけられる。

 

「っ、く、っそ……っっっ!」

 

 スバルを殴った反動で上方に移動し、ビルの外壁を蹴り上げて方向転換したミオが飛び蹴りの格好で降ってくる。

 それから逃れるたびに前へ跳躍し、そのまま勢いよく走って距離をとる。

 

「こうなったら、一か八かを、やるっきゃないか!」

 

 覚悟を決める。

 これからやるのは、大技だ。

 風真流の大本である風真いろはから教わった、どんな防御だって突破できる自信がある、最強の一撃。

 風真流を、"ダンサー"の能力をフル活用すればミオがどんな能力を引っ提げてきたって戦えると思ってたから使ってこなかったが、これはもう無理だ。

 

 ……通らなかったらスバルの負け。通ったら勝ち目がちょっと出てくる感じか。

 

 大きく深呼吸を一つ。

 心は決まった。

 覚悟を決めた。

 ならば後は、貫くのみ!

 

「ミオしゃ! スバル大技行くから、勝負しようぜ!」

 

「勝負ぅー!? いいよー!」

 

 

 

 

『ミオちゃんあっさりスバルの口車に乗せられてて草なんだけど』

 

『し、仕方ないじゃんか! 神獣回帰中はテンション上がって思考力落ちてるんだもの! そりゃー、面白そうな提案されたら受けるでしょ!』

 

『あー、神様パワーで頭いっぱいになってバカになっちゃってるんだ?』

 

『事実だけどなんかいかがわしい言い方してない!?』

 

『あははははは! してないよぉー。ミオちゃん敏感過ぎだってば』

 

 

今日もようおかゆんの喉で鳥が鳴いとる

ピヨってる

喉の鳥さん絶好調

ゲラると小鳥さんが鳴くのおもろいよね

それはそれとしておかゆんの言葉は大体ピンクっぽい定期

まぁ、ホロライブ三大頭ピンクお姉さんだから……

後の二人は?

ちょこ先生とアキロゼ

まつりちゃんは?

抜けない

夏色まつり:屋上

ヒェッ

南無

オイオイあいつ、終わったな

 

 

『まつりに屋上に呼び出されてしまった哀れなリスナーさんはさておいて』

 

『置くなよ』

 

『画面上ではミオちゃんへの挑発に成功したスバルちゃんが何やら目を閉じた状態で、左腰に両手を持ってきて見たことのない……いや、あれどこかで見たことある気がするけど……なんだっけ?』

 

『あれは、刀を構える動きだよ。居合抜きの前みたいな構えだね』

 

 

 

 

 ……行くぞいろはちゃん!

 

宣言・開始――――

 

 取るのは、居合抜きの構え。

 いろはに教わった口上を唱えながら、頭の中でこれから行う技を想起。

 ゲームのシステムアシストにより、身体が自然にその構えを取る。

 

スバルの()に断てぬモノ無し

 

 そうなれば、始まるのは"ダンサー"による行動補正だ。

 身体に銀光が溢れ、特に両手へと光が集まる。

 

神に会えば神を断ち、仏に会えば仏を断つ、風真の剣を防ぐ理無し

 

 読み上げるのは決意の言葉だ。

 これから己が何をするのか。

 何を成すのか。

 それを言葉に出し、宣言し、その通りにするだけのモノだ。

 

故にスバルが拳の前に、森羅万象、一切の区別無し!!

 

 故に。

 

スバルの()に断てぬモノ無し、故にスバルは――――神を斬る!!!

 

 走る。

 

「"風真流一の奥義――――疾風木葉斬り"!!!!!

 

 放った。

 

 

 

 

 ……斬られた!?

 

 だが、ダメージはない。

 痛みもなく、ただスバルが大技の気配だけ出して腕を振りぬきながらミオの横を通り過ぎて行っただけだ。

 

 ……そうだよね、神様の防御を人族が抜けるわけないもんね!

 

 思い、大技を放って隙だらけになってるであろうスバルに反撃するために振り返ったところで、膝から力が抜ける。

 

「……あ、れ? 力が――――」

 

「隙だらけだぜミオしゃー!!!!」

 

「がは……っ!?」

 

 腹に一撃が入り、肺にあった空気が強制的に吐き出された。

 

 ……攻撃が通った!? なんで!?

 

 そのまま追撃で放たれる二撃目、三撃目を腕でガードするも、その攻撃もしっかりとミオの身体に届く。

 神降ろしによる対人族への概念的な防御が働いていない。

 腕に伝わる衝撃が、そこから感じられるダメージがその事実を否応なく突きつけてくる。

 

「っ、そんな好き勝手やらせる、かぁ!」

 

 少し距離をとったスバルが振り上げた踵を落としてきたのにカウンター。

 拳を突き出して踵に当たり――押し負ける。

 そして気づく。

 先ほどまで身体を覆っていた、神獣回帰の能力光が消えている。

 

 ……なんで!?

 

 神獣回帰が終わっている。まだ、効果が切れるまでの時間はあるはずなのに。

 テンションが上がって熱に浮かされて能力を連発したのが良くなかったのか。

 それともやはり、付け焼刃な神獣回帰だからこそ、途中で効果が切れてしまったのか。

 スバルの踵落としからの直蹴りを受けて後ろにわざと吹っ飛びながら思考を回しながら、次の攻撃を放とうとしているスバルを観る。

 右腕が、消えていた。

 つまり、

 

「――――腕を犠牲に神殺しを成したの!?」

 

 

 

 

 ……バランス取りずれぇ!

 

 先ほどの一撃を放った右腕はもう消えている。

 消えているどころか、切断面になっている肩口からは光が漏れ続け、HPが徐々に削れていくのがわかる。

 いろはから教えてもらった切り札の代償だ。

 

 ……これを放ったらほぼ死に体になるからリーサル決める時か、どうしようもない時しか使っちゃダメって言ってたもんな。

 

 スバルがやったのは単純明快。

 いろはから教わった口上の最後に何を斬るのかをオリジナルでつけ足して、全力全開で技を放つだけ。

 技も、風真流のモーションを用いた自動実行だ。

 完全にゲームシステムに依存した行動だったが、それが"ダンサー"との相性が抜群だった。

 何せ、"ダンサー"は動作の型が持つ意味を強化する能力だ。

 つまり、ゲームシステムがなぞる型も当然その対象になる。

 

 ……それがこんな結果になるとは思わなかったけど!

 

 何せ、神を斬ると宣言して腕を振るったら、ミオには当たらないし、腕は消し飛ぶし散々だ。

 ただ、良く分からないがミオに攻撃が通るようになった。

 なら、後は自分がやられる前に倒し切るだけだと残った左腕と足を使ってひたすらに攻撃を仕掛けていく。

 

「うぉおおおおお!!!」

 

 吹っ飛んだミオに追いつき右足で胴を横薙ぎに。

 体をくの字に曲げて苦痛の表情を浮かべる様子を確認し、右足を戻す勢いで左腕を振って打撃。

 ガードに上げられた腕ごとミオを殴りつけ、バランスを崩したところで今度は左足でのヤクザキック。

 鳩尾に打ち込んだ直蹴りで真っすぐすっ飛び、スバルの正面に見えるビルへ背中から突っ込んでいくミオを確認し、大きく呼吸を一つ。

 

 ……これで決めてやる!

 

 MPも、HPもだいぶ限界だ。

 腕から零れ落ちるHPの光に試合の終わりが近づいてくるのを感じながら、右足を大きく引いて半身になり、徒競走の駆け出しを待つような姿勢を取る。

 

「いっくぞぉおおおおおおお!!!!!」

 

 身体が金に輝く。

 この試合を見ているスバ友たちから伝わる応援の気持ちが、スバルの足を軽くし、戦いに対する意識が鮮明になり、体に力がみなぎる。

 走る。

 ビルの瓦礫をかき分けて立ち上がったミオがこちらの動きに合わせて構えをとるが、遅い。

 走る。走る。

 あとはもう、最後に一撃をぶち当てて全部貫くくらいしか手がない。

 "アイドル"によるバフで回復するMPを片っ端から消費して"ダンサー"での強化に回し、右肩からこぼれ刻一刻とゼロに近づいていく体力が尽きる前に勝負を決めに行く。

 走る。走る。走る。

 だからもう、最後は最大限に助走をつけた、飛び蹴りだ。

 "風真流・矢竹"。矢の材料として用いられる竹の名を冠した跳び蹴りは、畳の数枚であれば貫く威力を持っている。

 それが、二重のバフを得ている今ならば、当たれば確実な必殺の一撃となる。

 だから。

 

「倒れろ、ミオしゃぁああああああ!!!!!!」

 

 飛んだ。

 

 

 

 

「誰が倒れるかぁああああ!!!!!!」

 

 種がわかれば覚悟も決まる。

 真っすぐ飛び蹴りを放つスバルを観ながら、"フォレスト"の能力を発動。

 スバルの軌跡に合わせるように、表面にぬるぬると滑る粘液分泌する大きな草を作り出す。

 それを支えるように太い茎を用意して、自身も支えの一人となって葉を支える。

 

「ぬおぉおあああああ!?!? 滑る滑る滑るぅうううう!???」

 

 スバル、着弾。

 衝撃を全身で支えながら、葉の表面にあふれる潤滑油によって葉上を滑っていった事をスバルが上げる悲鳴で確認。

 

「ぃよし! スバル吹っ飛んだな!!」

 

 跳び蹴りの勢いをそのまま速度に転化したスバルが、まるで発射台の上を加速するスペースシャトルのように斜め上へと伸びた葉の上を滑りあがっていく。

 それを確認しながら足元にバネの性質をもつ植物を作り出し、地面から頑丈な蔓を伸ばして左手に巻き付ける。

 

「ホワァアアアアアアアアアアア!?」

 

「ここで、終わらせる……!」

 

 スバル、飛翔。

 葉の先端から滑る勢いそのままに空中で投げ出されたことで上がる悲鳴を聞きながら、バネの木を勢いよく踏みつける。

 ジャンプまでのタメだ。

 スバルの悲鳴が遠ざかるのを聞いて頭上を見上げると、残った左腕と両足をばたばたさせながら空中で藻掻く姿を確認。

 

 ……飛べない鳥は落ちるだけだぞスバル!

 

 笑い、膝を曲げるのに合わせて踏みつける力を緩め、溜めた力を解放。。

 勢いよくバネの木が伸びる反動を力に変え、大跳躍。

 左手に巻き付けた蔓を地面から伸ばし続けながら空でジタバタと踊るスバルに追いつき、背中に拳を打ち付けながらさら上昇。

 

「げふっ……ミオしゃ!?」

 

「さぁ、一緒に墜落しようか!」

 

 跳躍が頂点に達する寸前で、スバルの背中に当てていた拳をずらしてスバルより上に出る。

 振り向きざまスバルの顔を鷲掴みにし、左手に巻きつけながら伸ばしていた蔓の生成を終了。

 地面とミオの左手の間でピンと張った蔓を力強く引っぱる。

 獣人の膂力で引かれた蔓は、スバルとミオの身体を勢いよく下方へと導き、あっという間に二人の身体が地面へと近づいていく。

 

「まっ、これ、ちょっとミオしゃぁ!!!??? ホワァアアアアアア!!!!!!!!」

 

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 

 轟音。

 地面にたたきつけられた頭が地中に埋まった最後の一撃でHPは全損。

 スバルの身体が光となり消えて、ミオの頭上にWINの三文字が輝く。

 

「か……勝ったぁ……!」

 

 

【配信アーカイブ:『ホロライブJP最強王決定戦 準決勝第二試合』の『大神ミオ枠』および『大空スバル枠』の再生を終了します】

-------------------

 

 

「はい、というわけで試合の映像も終わり、おかゆ先輩とミオ先輩とも合流しました! 準決勝第二試合はミオ先輩の勝利! スバル先輩は一矢報いる所までは行けましたが、最終的にはミオ先輩が意地を見せてスバル先輩を見事に迎撃! いやー、手に汗握る戦いでしたね!」

 

「というか、最後のアレ、わざわざスバルの顔面鷲掴みにしてまで地面に叩きつける必要なかったと思うんですケード! スバルの頭完全に地面に埋まってたんですケード!」

 

「まるで漫画みたいな最後になってたよね、スバルちゃん」

 

「まぁ、それはほら。テンションに任せてというか、やっぱりトドメはきっちり確実にしておかなきゃいけないかなって思って」

 

「畜神さん!? なんかこいつヤベーこと言ってんだけど!? トドメって! いや、確かにトドメで間違っちゃいないんだけど!」

 

「残心は大事ですから。戦士たるもの、やはり相手はしっかりと息の根を止めねば勝利を掴んだとは言えないでござる」

 

「価値観が武士すぎるよいろはちゃん」

 

「珍しく忍者じゃなくて侍要素持ってくるじゃん、いろは」

 

「ミオ先輩!? 風真は侍であって忍者じゃないでござるよー!?」

 

 

そして試合が終わったとたんに始まるわちゃわちゃである

ミオしゃが相変わらずキレッキレで草

ス虐はやっぱり最高だぜ!

たまに出てくるござるさんの侍要素きちゃ

忍者っぽいけどこういう価値観しっかり侍っぽいよね

でも相手の息の根を確実に止めて仕留めるって考えると忍者っぽさもあるわけで

やはりござるさんは忍者……?

侍だって、侍

ところで、結局最後は怒涛の勢いのまま話が進んで言ったけど、ミオしゃの神降ろしが切れたのってなんでなの?

スバちゃんの大技も空振りしただけだったし

あれが何かしたのはわかるけど何がどうなったのかがわからない

 

 

「あ、コメント欄の人たちも気になってるみたいだよスバルちゃん。あれ、何をどうやってミオちゃんの神獣回帰を終わらせたの?」

 

「え? わかんない。いろはちゃんなんで?」

 

「やった張本人がわかってねぇのかよ!」

 

「スバル、いろはちゃんに言われたままの切り札切っただけだし」

 

「それでは、解説しますね。スバル先輩が行ったのは、風真流では"必倒宣言"という名前の自己暗示術です。試合中は解説の途中でクライマックスのシーンが挟まったので説明が途中になってしまったのですが、只人が意図的に神を倒す力を得る技術の一つです。風真流では"必倒宣言"という名前ですけど、他の流派でも同じ技術が色々な名前で存在している技ですよ」

 

 

ひっとうせんげん……必ず倒す宣言って事?

技術ってことは、誰でも使えるのか……

で、結局それがどうしてミオしゃの"神獣回帰"を終わらせられたん?

スバちゃん、さっき気づいてなかったっけ?

たぶん戦い観て興奮して忘れてる

鳥頭だからなぁ

 

 

「おいコメント欄! 見てるんだからな!? スバルもお前たちの発言を見てるんだからなこっちは!!」

 

「あ、なんだ、しゃべってたの?」

 

「はい! ちょうどミオ先輩の"神獣回帰"への対応方法についてお話していました。そこで仙人への至り方を離していたところでスバル先輩も察していた様子だったんですが……」

 

「ウチとの戦いが佳境になったことでそっちに盛り上がって忘れちゃったと」

 

「実にスバルちゃんらしいねぇ」

 

「どういう意味だよおかゆ! スバルがシングルタスクってことか! そうだけど!」

 

「ハハハハハ、そうだったらいいじゃん」

 

「ええっと、話を戻しますね。"必答宣言"をはじめとした自己暗示系の技術は、その最終地点として武の境地――即ち武仙に至るための土台を盛るためのものです。どういうことかと言いますと、武術みたいな純粋な技量がモノを言う技術体系は、才能はもとよりその才能をどれだけの時間、どれほどの強度で鍛え続けたかが物を言う世界なわけです」

 

「まぁ、そうだよな。スバルも空手やってたけど、天才って呼ばれてる怠け者より才能がないって努力家の方が最終的に強くなったって話は何度も聞いたし」

 

「つまるところ、才能とは理解力の速さです。ただ理解しても体に染みつかせて、その理解した技術を覚えこませる土台が低いままだとそれなりの実力しか尽きません。覚えるのが遅くても、覚えたものを積み上げていける土台が広く分厚く頑丈なものの方が、最終的に積みあがる両と質が段違いになるわけです。問題は、それを積み上げるための時間が圧倒的に足りないというだけの話で」

 

「あー、なんとなくウチにも話が見えてきた。え? つまり"必答宣言"って、無理やり土台を増やす技術なの?」

 

「大枠はあってますが、少しだけ違います。土台を増やすだけでなく、詰みあがった技術の質も上げれます。ただその代償が技術によっては寿命だったり身体の部位だったりしたわけですね、昔は」

 

「今は違うんだ? あ、でもスバルちゃんの腕は消えてたけど……あれが代償ってこと?」

 

「いえ、スバル先輩の腕が吹っ飛んだのは威力に耐えられなかったからで、ゲーム世界で言うところの代償はMPですね。現実世界だと今は神秘を消費する、と説明するとわかりやすいかもしれません。昔は神秘を生成するのに命や肉体を削ったわけです。まぁ、今でもどこまで高めるかによっては神秘を無理やり生成するために肉体や命を使いますが」

 

「壮絶だな、おい」

 

「もちろん、それは自分の技量をどこまで高めるか、によって消費する神秘量が異なりますので、例えば一年後の自分の技量を呼び出す程度であれば二日くらい寝込む程度の体力消費で済みます。ただ今回は神様を斬るレベルの技術向上だったので、ゲームではMPの枯渇程度で済みますが、現実だと多分発動した瞬間にスバル先輩の寿命が尽きておばあちゃんになって死んでた可能性があります」

 

「お前なんつーものスバルに仕込んだんだよ! あぶねぇよ! 宣言内容覚えちまったじゃなぇか!」

 

「使わなければ大丈夫ですので! あとあれは風真流専用に調整された宣言なので、風真流を十全に使えるようにならない限りは使用でき来ません! 今回はゲームシステム的に使用できるようになっただけで、実際に外で宣言してもただ格好つけて痛い発言しているだけで済みますのでご安心ください!」

 

 

ただの痛い発言で草

安心できる要素がまったくないゾ

流石ござるさん、天然だぁ

にしても、武術界隈怖すぎだろ

まぁ、人間が神様に相対しようと思えばそれくらいの代償はいるよね

納得感はある

でもござるさんの説明からすると、使う人の技量がめっちゃ高いと代償も減るんでしょ?

そこまで至るのがめっちゃくちゃ大変だって話でもあるんだけどね

だから武闘仙人って呼ばれる人たちってお年寄りが多いんよね

必答宣言の使い過ぎで寿命縮めてるから?

仙人に至るまでに相応に年取るから

 

 

「話を元に戻しまして、今回スバル先輩は風真流の……ござるをベースとした"必答宣言"を行いました。そして斬る対象をミオ先輩が降ろした神の力に限定したことでいわゆる概念斬りを行いました。"疾風木葉斬り"がござるが一番得意としている技なので、最大威力の技で最大の効果を発揮した形となります」

 

「概念斬りて。いろはお前、形のないモノ斬れるの!?」

 

「ええ、まぁ、ござるの場合は"必答宣言"抜きに斬れますよ。"疾風木葉斬り"使わないと無理ですからね。ござるが"必答宣言"を使う事態になる場合は、もう本気で神族や天族、魔族と命のやり取りをする時です」

 

「対戦相手がガチすぎて草なんだけど」

 

「だからこの大会を通じてHoloxのやばさが浮き彫りになるの何なんだよ」

 

「いろはちゃんとクロヱのやばさが現状際立ってるけど、じゃあその上の序列にいるこよとルイとラプちゃんはどうなるんだって感じだよね」

 

「まぁ、なんだかんだと秘密結社でござるので……」

 

「ま、まぁ、それじゃあいろはちゃんの解説が終わったところで、これで準決勝はこよとミオちゃんが決勝に、はじめちゃんとスバルちゃんが三位決定戦に進んだわけだけど、同時視聴の予定ってどうなったんだっけ? 元々の予定ではこの後三位決定戦の予定だったけど」

 

「三位決定戦、および決勝も今回と同じような形式で実施することになったんですが、そうなるとちょっと時間が遅くなりそうで……。皆さんはこの後お時間は大丈夫ですか?」

 

「え? スバルは大丈夫だけど」

 

「僕も大丈夫かな。一応伸びても問題ないように時間は取っておいたから」

 

「ウチも問題ないかな。こよりとはじめはどうなの?」

 

 

博衣こより:問題ないですよー。アーカイブの準備も整えましたので

轟はじめ:うちも大丈夫です。この後に枠立てしますね

おおおおお! このまま三位決定戦と決勝も観れるのか!

ちょっと押してたからまた後日かと思った

時間的に最悪決勝はアーカイブかなぁ

博衣こより:ちょっとだけ休憩時間を取りつつ、その間に決勝の実況に来れる……あ、大会参加者の人たちで時間ある人探しますか。誰かいますかー?

白上フブキ:白上はいいですよー!

獅白ぼたん:あたしもいいよ

博衣こより:では三位決定戦にフブキ先輩とぼたん先輩に実況をお願いします! 時間的にも押してますので、同時並行で行っていきましょう!

配慮助かる

了解だよー!

 

 

「では、二十分ほど休憩を挟みまして、決勝の博衣こよりVS大神ミオはござるとおかゆ先輩が、三位決定戦の轟はじめVS大空スバルはフブキ先輩とぼたん先輩が実況、そしてそれぞれの選手が解説として参加する形となります! 四枠同時並行で配信してまいりますので、皆さま好きな枠をご覧ください! では、こちらの枠はいったんここまで! 実況の風真いろはと!」

 

「同じ実況の猫又おかゆと」

 

「選手兼解説の大空スバルと!」

 

「同じく解説兼選手の大神ミオでしたー! じゃあねみんな、ばいばーい」

 

 

お疲れさまでしたー

おつかれさまー

誰の配信見ようかな

こよちゃんの枠観る

三位決定戦も気になる

好きな配信見ればいい

一応結果はわかっているけど、何がどうなった良く分かってないシーンも多かったから楽しみ

 




ここまでお読みいただきありがとうございました。

というわけで、なんとか書き終わりました。もしかしたら今年最後の更新になるかも?
明日からも頑張って書きますが、色々年の瀬でやることがあるのと、ちょっとスト6でヴァイパーのマスター目指してるのでそっち優先するかも。

次回は三位決定戦の予定。ばんちょー対スバルのガチンコ殴り合いバトルをお待ちください。

というわけで、今回のバトルダイスリザルト。


試合会場ダイス→2 都市
①荒野②都市③海上④樹海⑤兵器工廠⑥浮島

第2試合:大神ミオ VS 大空スバル

大神ミオ所有能力
①フォーチュンテラー
②フォレスト
③プリンセス
④ミラージュ

大空スバル 所有能力
①ダンサー
②アイドル
③マシーナリー
④ ナイト

第一ダイス 2-7 (ミオ有利 スバ不利 1-0)
第二ダイス 3-5 (ミオ不利 スバ不利 1-0)
第三ダイス 10-8(ミオクリ スバ有利 3-0)
第四ダイス 4-5 (ミオ有利 スバ不利 4-0)
第五ダイス 3-6 (ミオ不利 スバ有利 4-1)
第六ダイス 4-3 (ミオ有利 スバ不利 5-1)


大神ミオの勝利
獲得能力→???
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。