皆さんの予想通りですよ!
「……ここまでが今日やった範囲よ」
「分かった。ありがとうな二人とも」
「夕飯にデザート一品ね」
「私も~」
「……了解」
それくらいならお安い御用だ。高校の頃から半分社会人みたいな生活で、結構稼いでるし、お礼としても妥当な所だろう。
ちなみに、これは俺だけじゃなくて、美星では結構当たり前だったりする。早ければ中学の頃から関わってる奴もいるし。アイシャなんかはそうだな。
「しかし、意外だよ~」
「何がだ?」
「見た感じ、そこまで優等生って感じに見えないいーさーがここまで勉強出来るなんてさ~」
「ああ、それは良く言われるし、俺も自覚はある」
「でも、イサムこう見えて美星の高等部首席で卒業してるのよ」
ちなみに、美星は進学校という訳ではない(進路は7割が新星インダストリーに就職、残りの2割が進学、一割が他の所に就職)が、偏差値はIS学園と同じくらいである。
「凄いね~」
「いや、アレはそんな凄いもんじゃないぞ」
「どういう事?」
「俺と俺のダチの成績が一緒で、最終的に首席をジャンケンで決めたからな」
その俺のダチと言うのはミシェルの事で、俺もミシェルも所属先が既に決まっていて、お互いそこまで主席にこだわりも無かったから、どう決めるか話し合って、ジャンケンで決める事となったのが真相だったりする。
「噂にはなってたけど、あの話本当だったのね」
「学校も良く許したね~」
「まあ、学校を経営してんのもウチの会社で俺達の進路だからな。ぶっちゃけ、どっちでも良かったんだろうよ」
どっちが主席になっても大差ないし、会社入ったらそんなん関係ないしな。
「……にしても、面倒に巻き込まれたもんだよ」
教室に戻ってくるまでの間に俺が教室を出た後何があったかをアイシャと本音が教えてくれた。
なんでも、来週の頭に金髪と一夏がISで一騎打ちをするんだとか。んで、その後、何故か俺も戦う羽目になってた。……多分、織斑先生があの金髪の認識を変えさせるために仕組んだ事だろう。
「確かにね。でも、オルコットさん、教師が優しい人で助かったよね。先生によってはヤバい事になってたかもしれないのに」
「何でだ?」
「それはね~、国家代表候補生っていうのは後々、国家代表になるようなエリートでしょ? つまり、発言の一つ一つが国そのものの意思って取られちゃうんだよ。でしょ、アイちゃん?」
「そうだよ。最低でも代表候補の資格剥奪。下手したら、一生牢獄暮らし。個人じゃなくて国としての問題も発生するだろうからね」
アイシャがここまで詳しいのは、マリアの母親である前アメリカ代表のミリアさんを始め、新星インダストリーと関わりのある何人かの代表やその候補生を知っているからだろう。
「責任ある立場にはそれ相応の重さがあるって事か。当たり前だけど、成人してない奴が背負うには重いよなあ」
ある程度は覚悟があってだとは思うけど、その重さは子供が背負えるもんじゃない。それを支える大人があの金髪の周りにいないのか。教える大人が居なかったのか。そこら辺は疑問だけど、俺が気にする事では無い。
「対策を考えないとダメだよな。情報は……ネット漁れば何かしら引っかかるだろうよ」
「イギリスの最新鋭のテスト機だったら多分、BT兵器搭載機だと思うよ」
「BT兵器? なんだそれ?」
「簡単に言えば遠隔操作のビット兵器だよ。後、イギリスの伝統で、遠距離重視に作られていると思うよ~。噂では前代表の主兵装『スターライトMK2』の改良型が作られたって話だから、レーザーライフルもあるんじゃないかな~」
「レーザーにビットって……ここはSFの世界かよ」
「ISが実用化されてる時点でそのツッコミは意味ないと思うよ」
「そうだね~」
確かに、二人の言う通りだ。ISが実用化される前だったら、物語の世界の物だった武器がISが関連した技術でどんどん実用化されていく。知らない人間が見たらこの世界こそSFだろうよ。
「しかし、本音もIS詳しいな。いや、ここに来るくらいなら常識なのか?」
「私は、色々有って自分から勉強したよ。それにアイちゃんと一緒で整備課志望だから、技術関連の勉強は大事なんだよ~」
「へえー。んじゃ、これからアイシャと同じくらい頼りにさせてもらおうかな」
「おまかせだよ~」
頼りになる人と知り合えただけでも十分だろう。それに、カナのお蔭で上級生とも知り合えたし。一日目でここまで出来たら上出来だろう。
IS関連では俺は素人だ。相談できる人が居るのはありがたい。
……それに、幼馴染の本音なら、カナの好みとか知ってるだろうしな。彼女関係の相談が出来る人なんてシェリル位だったし、シェリル自身も忙しいからな。本音は同じ学園で生活するって事だし生活のリズムもほぼ同じになるから、相談しやすいと思うし。
「ああ、大村君と織斑君。まだ、教室に居てくれたんですね」
教室の前の方の入口から入って来た山田先生がそう言った。何か用事なのか?
「はい?」
勉強の方に意識を向けていた、一夏は名前を呼ばれて少し抜けた感じの返事を返した。
「どうしたんですか、山田先生」
「えーっとですね、寮の部屋が決まったのでそれを知らせに来たのと、カギを持って来たんです」
……一週間は学園近くのホテルから通うって話だったはずだけど、事情が変わったのか、それとも先生方が色々尽力してくれたのか。まあ、楽できんのは間違いないか。
「それくらいなら、呼んでくれれば職員室まで取りに行きますよ。でも、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、これが私の仕事ですから。大村君のはこちらになります」
そう言って俺に寮の部屋のカギを渡す。カギに付いているプレートには2025と書かれている。……さっきの山田先生の言葉で気になる事があった。
「先生、俺のはこっちって言いましたよね? 俺と一夏同じ部屋じゃないんですか?」
そう、同じ部屋ならカギは同じものだから、どっちを渡しても一緒のはずだ。それを「こっちになる」なんて事を言ったらそう思うのも仕方ないと思う。
「……同じじゃないんです。すみません、色々不自由を掛けて」
嫌な予感ってのは当たるもんだ。先生方も頑張った結果なんだから仕方ない。山田先生が謝る所でも無いし。
「仕方ないですよ。これくらいの不自由は我慢します。あー……じゃあ、荷物をホテルに取りに行かないと」
「俺も家に荷物を取りに行かないといけないんで、今日は帰りますね」
一夏の家はここからそれほど離れていないらしく、自宅通いの様だ。ここから荷物纏めて、戻ってくるとなると結構遅い時間になりそうだ。
「あっ、荷物なら―」
「織斑の分は私が手配した。生活必需品だけで十分だろう。必要な物は休みに自分で取りに行け。大村のもホテルからこちらに運んでもらった」
いつの間にか山田先生の後ろに居た織斑先生がそういう。
「織斑先生までわざわざありがとうございます」
「じゃあ、時間をみて部屋に行ってくださいね。夕食は6時から8時、寮の食堂で食べてください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますが、大浴場もあります。学年ごとに使える時間は違いますけど。……ただ、お二人は使えません」
「え、なんでですか?」
凄い当たり前の事を聞き返す一夏。
「そんなの、少し考えりゃ分かるだろ。IS学園は女子校で職員含めて99,9パーセント女性だぞ。女性用の大浴場しかないからに決まってるだろ」
「大村の言う通りだ。それともまさか同年代の女子と一緒に入りたいのか?」
「お、織斑君、女の子とお風呂入りたいんですか!? だ、ダメですよ!?」
「い、いや、入りたくないです!」
「ええっ? 女の子に興味無いんですか!? そ、それはそれで問題のような……」
……分かったのは案外、山田先生は暴走しやすいって事と、一夏が結構バカって事か。後、それでは俗に言う『婦女子談義』いや『腐女子談義』が始まっている。こう言っちゃなんだけど、美星でも、男所帯の俺達はそういうのの対象にされてたから平気ではあるけどさ。ただ……見てくれが良くても男から見ると、残念だなーと思う。
「まあ、そういう趣味の知り合いが会社に居ない訳じゃないから、俺は気にしないけど……とりあえず、半径5メートル以内に近付くな」
「めちゃくちゃ気にしてるじゃねえか!」
「そんじゃ、俺は部屋に行きます」
なんか言ってる一夏をスルーして、俺は部屋に向かった。面白く反応してくれるから、からかい甲斐あるよな、アイツ。
「2025……ここか」
今日から俺の部屋になる所に着いて、そう呟いた。
良い人だったらいいなあ。金髪みたいなタイプだったら絶対嫌だな。野宿も辞さない。
そう思いながら、ドアをノックする。が、返事が無い。まだ来ていないのか? 念のためもう一度ノックする。やっぱり返事が無い。試しにドアノブを回してドアを開けてみると……開いた。寝てんのか?
その予想は開けた瞬間、木っ端微塵に砕け散った。
「おかえりなさい、貴方。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
ドアの向こうには裸エプロンのカナが立っていた。……これは夢か? んな訳無え。俺の意識はさっきまであるし、どこで寝たんだっていう話だよな。んじゃ、やる事は決まってるよな。俺は部屋に入り、ドアのカギを締める。
「全部だ。風呂入りながら、お前という夕食を美味しく頂く。……覚悟しろよ?」
「えっ、あっ……」
顔を真っ赤にして動揺するカナ。動揺するって事は想定外だったんだな。
「なんて、冗談だよ。何も準備も無い状態でんな事しねーよ。……それより、服着てくれ。目のやり場に困る」
「うん。……困らせちゃってゴメンね、イサム」
「恰好は少し困ったけど、俺はお前が出迎えてくれて嬉しかったぜ? それに、ここに居るって事はお前がルームメイトなんだろ? これ以上に嬉しい事は無いさ。だから、そんなに気にすんな」
「うん」
少し元気を取り戻したカナはシャワールームに併設してある更衣室入る。俺も部屋の奥に進み、上着を脱ぎ、ネクタイを解く。しかし、ちょっとしたホテル並みの部屋だな。
……しかし、付き合うって事になって一月なんだけど一緒に居た時間なんて1時間ちょっとだろ。なのに同棲って……どうなんだろうな。嬉しいけど、ステップを何段も飛ばしてる気がするんだよな。俺としては健全なお付き合いをしたいものです。
「着替えたわよー」
そう言いながらカナは更衣室から出てきた。七分丈のTシャツに膝の少し下位の丈のパンツ。露出はそこまで高くないが……見事なまでに整ったボディーラインがはっきり分かるので、下手に肌を見せるよりエロい。
「イサム」
「何だ?」
「……声に出てる」
「……マジで?」
顔を赤くして頷くカナ。……やっちまった。
「やっぱり、男の子はそういう所に目が行くの?」
「……ああ。どうしても意識する。カナはレベルが高いし、それに……」
「それに?」
「好きな女の子の事を意識すんなって方が無茶だ」
「そっか♪」
ふう、最悪ケンカまで行くかと思ったけど、良かった。もうちょっと女の子への気遣いとかミシェルに聞いとけばよかった。その辺、探り探りで、頑張るか。
「んじゃ、気を取り直して、色々決めようぜ」
「共同生活なんだから、いくつかルールは必要よね。シャワーは後が良い? 先が良い?」
「俺は遅い方が良いな。どっちかといえば」
個人的に寝る前にさっぱりするってのが好みだから。
「それじゃ、基本的には私が8時から9時、イサムが9時から10時でどう?」
「了解。後は、間違えが起こらんようにドアノブに何か掛ければ良いんじゃないか? ホテルにもあるだろそういうの」
「『シャワー使ってます』って感じで? 良いと思うわ。決めた時間以外で使う時もあるだろうし」
「適当なもの見繕って来るか。後は何を決める?」
「私から一つだけ。朝と夜は出来るだけ一緒に食べに行く。どうかな?」
「OK。むしろ、喜んで付き合うよ。んじゃ、俺からも一つ。ISの操縦教えてくれ」
「あー、イギリスの子や織斑先生の弟さんの織斑君と戦うんだっけ? 良いわよ。早速、明日の放課後からやりましょ」
よし、最高のコーチをゲットできた。
「そういやさ、いつの間にか俺が生徒会の役員にさせられてたんだけど、理由を聞かせてくれるか?」
「……怒らない?」
「その理由による」
「人手が欲しかったとか、細かい理由はあるけど、一番大きいのは少しでも長い時間一緒にイサムと居たいからだよ」
そんな事言われたら怒れねえよ。むしろ、そこまで俺の事を好きでいてくれて嬉しいくらいだ。
「そっか。分かった、その話引き受けるぜ。俺もカナと長い時間一緒に居たいしな」
「ありがとう! イサム、大好き!」
そう言って俺に抱き着いてくる、カナ。俺はカナを抱き締め返す。こういう時間も悪くねえよな。
「正直、この時間は惜しいけど、早めに夕食行きますか」
「そうね。行きましょ」
こうやって一緒に居れる時間がカナが卒業するまであるのなら、IS動かせた事も良かったと思っている俺は現金な奴だと思う。思うだけだけど。
ひねる必要なんてないんです。ここが二人の愛の巣なんですから。