IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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昼編や夜編があるかは不明です。

夜編って意味深ですよね。


第十話 新しい日々(朝編)

「朝か……」

 

IS学園の寮のベットで目を覚ました俺はそう呟いた。俺のベットは窓側で、窓が東側にあるから、朝日が結構眩しい。

ところで……俺の右腕の違和感は何でしょうか? いや、大体なにか察しは付いてるんだけどさ。確認のために布団をめくって見てみる。

そこには、幸せそうな寝顔を浮かべているカナが俺の腕を抱き枕にして寝ていた。しかもいつの間にか、ワイシャツ一枚になってるし。

なんで分かるかって? 俺の右手はカナのふとももに挟まれてるんだけど、そこの感触が布じゃなくて肉感的なんだよ。

 

「むにゃ……イサム……大好き」

 

……寝言でまでそんな事言ってくれちゃってさ。これ以上俺を好きにさせてどうするんだよ。

何でもない日常なんだけど、そこにただ一人の人が増えただけで、こんなに幸せになれる。人を好きになるって凄えな。しみじみ思う。

そんな事を考えていると、俺の枕元に置いてあった携帯が鳴り出す。相手は……アルト? 一体何の用だ?

 

「朝っぱらからなんだよ、アルト」

『朝? あー……悪い、時差の事忘れてた』

「時差? お前今どこに居るんだよ?」

『フランス。前にパリ公演あるって言わなかったか?』

「そういや、そんな話有ったな。あの後、色々あり過ぎて忘れてたわ」

 

たしか、その話を聞いたのはISに乗れることが分かる前でその後に殺人的に忙しくなったから、記憶から抜けてしまっていた。

 

『まあ、お前は色々あったからな。んで、IS学園の初日はどうだったんだ?』

「あー……色々面倒な事があったし、これからも色々あるとは思うけど、んなもんはカナと一緒に居れるだけでちゃらになるぜ」

『……俺の言った通りのろけてるじゃねえか。ならないんじゃなかったのか?』

「ほっとけ。あの時の俺は人を愛するって感情を舐めてたんだよ」

 

愛って感情は凄い。昨日一日でよく分かった。

 

『でも、悪くないだろ?』

「……そうだな。そういや、俺がこの前送った奴、シェリルにも渡してくれたか?」

『ああ。シェリルも喜んでた』

「そうか、そりゃなにより。そっち、夜遅いんだろ? 明日のために寝たらどうだ?」

『そうするよ。んじゃ、日本に戻って予定が合ったら四人で会おうぜ?』

 

そういや、俺達四人で会うってのは初めてになるのか。カナとアルトたちが友達って言うのも知ったのがカナと再会した時だし。

 

「A-OK。楽しみにしてる。ついでに土産も頼むわ」

『はいはい。じゃあな』

「おう」

 

電話が切れる。

 

「電話誰からだったの?」

 

すぐにカナに話しかけらる。

 

「うおっ、起こしたか?」

「ううん、目が覚めただけだよ」

 

俺達は体を起こす。やはりカナはワイシャツ一枚所謂『裸ワイシャツ』の状態。しかも、上から二つボタンをはずしているから、がっつり谷間が見える。

 

「そうか。んで、電話の相手はアルトだぜ。俺の様子を聞いただけ。こんな時間になったのはアイツフランスに居て時差の事を忘れてたらしい」

「フランス? あー、そう言えば海外公演に行くとか言ってたわね。色々あって忘れてたわ。なるほど、あっちは日付が変わる位だものね、ホテルでのんびりしていたら良い位の時間だわ」

「そうだな。……一つ聞きたいんだけどさ、なんでワイシャツになって、俺のベットに潜り込んできてんだ?」

「二つになってるわよ? それで、ベットに入ったのは一緒に寝たかったからで、ワイシャツになったのは……イサムが喜んでくれるかなーって思って」

 

いや、たしかに眼福ではあるけど。

 

「それと、やっぱり男の子って大きいね。袖とかかなり余ってるし」

「って、それ、俺のワイシャツかよ!」

 

なんかやけにサイズデカいと思ってたけどさ! 

……ふと思うんだが、こういうシチュエーションって女子はどうやって覚えんだ? 俺の場合だと、女性の事に関しては百戦錬磨の親友が居て、そいつが暇つぶしで話してくるのを聞きていたし、クラスメイトの男子もそういう方面の話をしていたから自然と覚える形になった。

 

「それで……どうかな?」

「……良い。でも、わざわざ新しいの出したのか?」

「ううん、昨日イサムが着たやつだよ」

「それなら、汗臭く無えのか?」

 

昨日は汗をかくほどの暑さでははなかったけど、臭いはあるだろう。

 

「全然。それにこっちの方が、イサムに包まれている感じがあっていい感じだし」

 

……その言い方はズルい。

 

「抱きしめて欲しかったら、抱きしめるぜ? いや、俺が抱きしめたいからさせてください」

「ふふっ、何それ? ……でも、お願いしようかな」

 

カナからのOKもいただいたので、彼女を抱きしめる。なんつーか、柔らかい。んで、暖かい。

 

「そうだ、それと……」

 

そう言いながら俺の方に顔を近づけ、軽くキスをするカナ。

 

「おはよ、イサム!」

「ああ、おはよう、カナ」

 

彼女のキスとこの笑顔だけで、今日一日頑張れそうだ。……俺も案外現金な奴だよな。

 

 

 

制服に着替えて、俺達は食堂に向かう。

着替える時に、カナのオーダーでネクタイだけカナに締めてもらった。「恋人みたいで良いじゃん」と言ってたけど、これは新婚夫婦のやる事だろ。まあ、拒まずやってもらったけどさ。

んで、食堂に着く。少し早めなので、人はまばらだ。

 

「カナ、お勧めはあるか?」

「うーん……何でも美味しいわよ?」

 

昨日の昼と夜も食べたけど、ここの食堂のレベルは高い。しかも、それが良心的な価格で食べれるんだから贅沢な話だ。……日本人の血税で賄われていると思うと心苦しいけど。俺も納税者だから、恩恵を受けれていると思えばいいか。

 

「それなら、日替わり定食はいかがでしょうか? 色々なメニューを楽しめますよ」

 

いきなり後ろから話しかけられたので、俺達は声の方を向いた。

そこにはヘアバンド装備の知的な眼鏡美人が居た。しかし、顔のパーツとかがどこかで見た人に似てるような……。

 

「おはよう虚ちゃん」

「おはようございます、お嬢様」

 

どうやら、カナの知り合いらしい。制服のリボンで最上級生だとは分かるんだけど……。

 

「イサム、紹介するわ。私の幼馴染の布仏虚ちゃん」

「初めまして、布仏虚です」

「大村勇です。布仏って事は……本音のお姉さんで?」

 

雰囲気は正反対だけど、確かに顔の造りには所々共通点がある。

 

「ええ。そう言えば、本音とはクラスメイトでしたね。妹の事よろしくお願いします」

「いやいや、俺の方こそ、本音には色々頼ると思うっす。後、敬語は良いですよ、年上ですけど、後輩ですし。呼び方もイサムで大丈夫っす」

「そうですか? では、イサムさんと呼ばせていただきます。口調はこれが素なので気にしないでください。私の方も虚で構いませんし、普段の口調で構いませんよ?」

「それなら、お言葉に甘えさせてもらうよ。よろしくな、虚」

「お嬢様共々よろしくお願いします、イサムさん。それとも旦那様とお呼びしましょうか?」

「う、虚ちゃん⁉」

 

顔を真っ赤にし、驚きの声を上げるカナ。

 

「……カナもこうなるし、そういうのはもう少し時間が経ってからにしてくれ。俺としてはそう呼ばれても構わないんだけどな」

「あら、案外一途な方なんですね。見た感じプレイボーイかと思ってました」

「そうじゃなきゃ、10年以上一人の人を想ったりしねえよ。たしかに、ガールフレンドは多いとは思うが、愛しているのはカナだけだ」

「情熱的な言葉はよろしいのですが……大丈夫ですか、お嬢様?」

 

虚の言葉を聞いて、俺はカナの方を見る。さっきより顔を赤くして、頭から湯気を上げるカナが居た。

 

「ストレートすぎたかね?」

「だと思います。でも、そこまでまっすぐ言われる方が女性は嬉しいと私は思います」

「そういうものなのか? ……それより、早く動かないとな。まだ朝早いとはいえ、いつまでもここに居ると邪魔になる」

「そうですね。では、イサムさんはお嬢様をお願いします。食事は私が運びますので。日替わり定食でよろしいですか?」

「それで良いけど、一人で三人分持てるのか?」

「私は更識家の、お嬢様の従者。いわばメイドですので、これ位は」

「じゃあ、頼みます」

 

飯の事を虚に任せて、俺はカナの手を引いて空いている席に座る。

 

「カナ、大丈夫か?」

「うん……。色々嬉しさと恥ずかしさが合わさって、それが許容を超えちゃった」

 

そういや、前に「お前の女性の褒め方はラテン系の俺と同じ感じだ。加減をある程度覚えろ」とミシェルに言われたことがあった。俺としてはほとんど思った事を口にしているだけなのだが、どうやらそれが女性にとっては嬉しいながらも恥ずかしいらしい。もう少し加減を覚えたいのだが、上手くいかない。

 

「そうか。これからは気を付ける」

「ううん、私が少しずつ慣れてくよ。嬉しいのは嬉しいもん」

「お待たせしました、お二人とも。朝食にしましょう?」

 

虚が持って来た日替わり定食は白米と味噌汁、漬物に焼き魚とザ・日本の朝食と言った感じ。そして味も申し分ないし栄養バランスももちろん考えられてるだろう。良い環境だな。美星も環境にはかなり気を配ってたけど、流石は国立といった所だ。

 

「そういえば、訓練のコーチ引き受けたけど、機体はどうするの?」

「言わなかったか? 俺の身元をウチの会社が引き受けるための条件の一つに俺に専用機を与えるってのが有ったんだよ。んで、突貫で作り上げたのが俺の機体」

 

そう言って俺は首に提げていたドッグタグを見せる。これが俺の専用機の待機形態。

 

「新星インダストリーという事は『クァドラン』の新型ですか? 第三世代機開発中と噂がありますけど」

「『クァドラン』の新型はあるし、もうロールアウトしてテストも行われてるけど、俺のはそれとは違う」

「でも、新星インダストリーのISといえばクァドランよね?」

「まあ、そうだけどさ。……俺のは俺の弟が暴走した結果生まれた、ISみたいな何かだ」

 

ISのコアを使っているからISになるんだろうけど、アレはISとは別物な気がする。むしろ、ウチの最新機に近いし。

 

「……イサム、弟居たの?」

「そこですか⁉」

 

驚きの声を出す虚。まあ、食いつくのはそこじゃないしな。

 

「俺のお袋、体が弱くてな。俺が中学の時、亡くなったんだ。んで、後妻の連れ子が弟って訳。そいつ、悠樹は歳は高1だけど、すでに新星インダストリーで開発チームの1つを率いる正真正銘の天才だ。まあ、天才と書いてバカと読むんだけどな。そいつが1から設計したものだ」

 

技術バカ。新しい物を思いつくと飯食わず、休まず、人間らしい生活すべてを放棄して没頭するバカ。周りも基本、そんなバカばかりだから、ストッパーが居ないのだ。アイシャも若干そういう気があるのだが、アイツはそれ以上だ。

 

「色々あるんだね……。でも、15、6でISの設計って凄すぎるわよ!」

「でも、日本の代表候補生が自分の専用機を自分で設計して開発したって聞いたぞ」

「「あー……」」

 

どうやら、この噂話、なにやら裏がありそうだ。

 

「その噂、元は私と私の専用機「クラミツハ」の事なんだけど、決して私が独力で作り上げたわけじゃないの」

「政府お抱えの研究所で作られていたのですが、そこの所長の汚職やら色々な出来事が重なって開発途中で研究所が閉鎖。他の研究所も忙しく、民間に頼るのも国がNGを出しまして。最終手段として私たち学生で作り上げる事になりました。幸い、お嬢様の実家の『更識』は政府ともつながりのある家ですから、更識家が作った架空の研究所の所有コアにさせて、開発が再開されました」

「その時、私が口にしたのは武器のプラン位よ。再設計から、組立、諸々の機動テストまで、当時二年だった虚ちゃんが中心となって、機体自体は夏休み過ぎに、武器を含めた完成が年明け位には終わったわ。この時、すでに当時一年の薫子ちゃんも参加してたりするんだけどね。で、何故かそれを政府が『私一人で作った』みたいな宣伝しちゃったのよね。二、三年の整備課は事情を知ってるけど。私としては協力してくれた人達の手柄を取ったみたいで心苦しいんだけど……」

「元々、技術職、整備課は裏方の仕事ですから、皆さん、そこまで気にしていないんですよ」

「色々あるんだな。つーか、学生でそこまでやったんだから、十分凄いだろ。しかも、世界的に少ない第三世代機をさ」

 

まさかの俺の彼女が件の噂の張本人だった。

そういや、元々日本の政府直轄の研究所で働いていた人が「あそこの奴らは技術者じゃない、公務員だ。エリートって言ってるが能力的には新星インダストリーの足元にも及ばない」って言ってたな。

下手な技術者スカウトするより、向上意欲のある学生の方が良いって、ウチの社長の読みは正しいわけだ。

 

「ここは設備も整ってますし、育成中とはいえ、人材も豊富です。時間と資金がネックになりますが、良い機体を作ってくれますよ。その結果がお嬢様の機体です」

「なるほどな。ちなみに虚、その子達進路は決まってるのか?」

「操縦者ならともかく、私達技術系の生徒はこんなに早く決まりませんよ」

 

まだ、新学期始まって二日目だしな。

 

「そうか。実は俺とアイシャにはここでの人材のスカウトっていう仕事もあるんだよ。んで、その子達にその気があるのなら、是非ウチに来てほしいんだ。出来れば夏休みまでに返事が欲しい。長期休暇を使って、面接や会社案内をしたいし」

「そういう話でしたら、喜んで。何か用意しておくべきものとかは?」

「そうだな……。技術者方面の事はアイシャに任せてあるから、詳しくはアイシャに「呼んだ?」」

 

タイミングよく、アイシャが食堂にやって来た。横にはマリアも居る。そういや、昨日ルームメイトって言ってたな。

 

「ああ、実はな……」

 

俺はアイシャに(ついでにマリアにも)今までの話をかいつまんで説明する。

 

「そういう噂、アメリカにも流れてたけど……そういう事だったのね」

「それは、凄い! それで、必要な物ね。開発の際の工程を記録したログや設計図とかがあれば良いんですけど……」

「それなら、私が逐一保存してあります。第三世代機の開発ですから、何が起こるか分かりませんし、後々勉強にも使えるかと思い、個人的に取っておいたのが。バックアップも用意してあるので、それくらいならすぐにでも用意出来ますよ」

「……虚さん、今すぐ、学校やめてウチの会社で働きませんか? 私とイサムが偉い所説得して、凄い良い条件付けさせますよ?」

 

オイオイ、無茶言うなよ、アイシャ。伯父さんも祖父さんも確かに身内に甘い所はあるけど、それよりも公私はしっかり分ける人だから、そう簡単ではないぞ。

まあ、直接見て、その結果超好条件を用意するかもしれないけどさ。

 

「嬉しい申し出ですが、私のやりたい事はお嬢様の従者ですので」

「……良い幼馴染だな、カナ」

「私の自慢の幼馴染よ」

 

羨ましいねえ。まあ、俺にもアルトやシェリルといった自慢の幼馴染が居るけどさ。

話をしながらも朝食が進んで行く。さて、今日も一日頑張りますか。




今作は主人公とヒロインが揃うと高確率で甘い話に言ってる気がします。


クァドラン

本作にて世界シェア一位を誇る量産機。以降も時々名前が出てきます。
マクロスで女性専用機、しかもパワードスーツとISとの親和性も抜群だったのでそのまま採用しました。細かい事は今後作中で話すでしょう。

クラミツハ

原作におけるミステリアスレイディの本作版。
名前変更の理由は刀奈が日本代表候補生になったから。
政府主導で開発の際の名前は『第三世代試製IS一号機』であり、イメージインターフェイスのデータ収集が目的だった。
利権関係のごたごたで開発が凍結直前まで行くが、楯無(刀奈の父親)の機転でIS学園の生徒主導の開発になり完成まで行く。
『第三世代試製IS一号機』は味気なかったので開発のメンバーと刀奈で意見を出し合い、水が特徴の機体なのでそれに関係した名前に変更。ちなみに命名者は薫子。


次回は専用機なお話になると思います。
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