IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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まだクラス代表決定戦に入りません。すみません。


第十四話 試合開始! ……その前に

俺はカナ、虚、悠樹と一緒に今日のクラス代表決定戦の行われるアリーナにやって来た。

 

「ISのアリーナって案外狭いんすね~。いや、普通に考えたら十分なんっすけど、性能を考えると狭いんじゃないっすか?」

「そりゃ、そんなデカいの作るほど、土地が無いからだろ。広すぎても試合観にくいだけだしな」

「サッカーとか陸上競技とかの競技場よりははるかに広いけど、これ以上は色々問題出てくるだろうね」

「学園が出来た当初はもうちょっと狭かったらしいですよ? でも、訓練や模擬戦で使っていて狭いという意見が多くなってこの広さになったらしいです。後、観客席に張るシールドの出力の問題もありますね」

 

ISのアリーナは観客席にシールドが張られている。当たり前だが、流れ弾から観客を守るためだ。観客は誰も死と隣り合わせの緊張感を求めてない。ここは硝煙のむせる臭いが立ち込めて赤い酸の雨が降る、荒廃した街じゃないんだしな。

 

「なるほど~、ISの技術はそれこそ日進月歩で進んでいるっすから、ある程度出力に余裕を持たせないと、安全を保てないって事っすね」

「実際の所どれくらいの攻撃を耐えれるんだろうな?」

「クラミツハの切り札、『蛟の咢(みずちのあぎと)』のエネルギー量はかなりの物だけど、それでも破れはしないわよ」

「……前々から気になってたんだけどさ、その中二病全開の技の名前誰が付けたんだ?」

 

クラミツハの第三世代兵装『蒼水晶(そうすいしょう)』はそこからナノマシンを生成し、水を操る。そのナノマシンを発熱させ、水蒸気爆発を起こす攻撃技にも『静炎の叫び(せいえんのさけび)』という名前が付けられている。

 

「これ? これは全部薫子ちゃんが付けたの。機体の名前や青色を使って考えたんだって。私が使っている理由はそういう必殺技とか、意識させれれば、そっちの方に意識を向け過ぎて、チャンスを作れるかもでしょ? 名前ははっきり意識付けさせるための手段だよ」

「なんというか……したたかだな」

「ただ戦うだけが戦いじゃないよ。情報戦も一つの戦いだよ」

 

開けた扇子には『戦いは既に始まっている』と書かれている。

まあ、そういうのも努力の一環なのかもな。アプローチの方法は千差万別ってこった。

ちなみに後々に命名者の薫子に話を聞いたところ、「いやー、一年の時から学校のイベントで実況やってるんだけど、そういう時に技名あった方が良いかなーって思って名付けたんだよ。お蔭でなっちゃんの時は実況してて楽しいよ」だそうだ。

 

「情報は大事っすよ~。技術者としてはどこに有用な物が転がってるか分かんないっすから。誰よりも早く目を付けて、それを物に出来る人が一流になれるっす」

「それの最たる例がISですね」

 

虚の言う通りだ。

最初、ISが発表された時、学会や世間は『子供の戯言』と切り捨ててほとんどの人間は相手にしなかった。

我が社の社長である伯父さんは発表されてすぐ篠ノ之博士に接触するとともに、何人かの技術者に基礎研究を始めさせた。

これが今日我が社がISのシェア一位になっている直接的な理由だ。

元々の技術力が高かったとか、人材や資金が豊富だったとか細かいのは色々あるけど、真っ先に目を付けた事による時間が最大の理由だと俺は思っている。

……まあ、伯父さんは「宇宙には私のロマンと会社のビジネスチャンスが眠っている。その両方を叶える可能性だ。摘み取らずに育てるべきだろう」と半分ぐらい私欲で動いてたんだけどさ。

 

「そうっすね~。いち早く世界最初の量産機のクァドランを開発できたのもそのおかげっすから」

「そこから、ミセスバルキリーの第一回機体のロー、ローを量産機化したノナ、ローのカスタム機でミセスバルキリーの第二回機体のキルカ、それで今は最新鋭機を開発中と。やっぱり凄いわね」

「それに『クァドラン=ミリア・ファリーナ・ジーナス』と思われますけど、他の国の国家代表もカスタム機を専用機としている人がいますからね。黎明期を象徴する傑作機と言っても差し支えないでしょう」

「凄いのはクァドランの設計をした、バーナード・キメリコラさんとクリスティーナ・キメリコラさんのキメリコラ夫妻だけどな」

 

クァドランの凄い所はどんな事でも出来る汎用性の高さとどんな改造も可能な拡張性の高さにある。それを端的に表す言葉が「打鉄やラファールに出来る事はクァドランでも出来るが、クァドランの出来る事全てをやろうと思ったらその二機には重荷である」だ。欠点は少し高い事(大体打鉄とラファールの1,2倍位らしい)が、IS自体絶対数が少ないから、より良い物をとお金持ちの国はこぞって購入している。

 

「キメリコラ夫妻は去年、特別講師として学園に来られましたけど、流石は世界最高峰の技術者、勉強する事が沢山ありました」

「あの人たちは凄いっすからね~。クァドランの一号機を設計した時ってまだ二十歳そこそこっすよ? そこから最前線を譲らず、今も最新鋭機のレアを開発っすよ。そのレアも現在入念なテスト中なだけで、もうガンガン動いてるっす。その内ここに居る誰かに引き渡されるはずっすよ。候補はマリアっすね」

「乗り手も後継者に渡されるのね。今から楽しみだわ」

「そうですね、是非見てみたいです」

 

おおよそ高校生らしくない、しかしある意味IS学園らしい会話をしながら歩いていると、アリーナの管制室に着いた。

 

「早いな、大村。横に居るのが政府と委員会から通達のあった人間か。……というより、お前の弟じゃないか」

「お久しぶりっす、千冬さん。大村悠樹、なんか色んな所からの要請を受けてここに来る事になりましたっす。まあ、今は兄貴の試合の観戦しに来ただけっすよ~」

「お前なら合格だろ。中学ですでにドイツのトップレベルと渡り合ってたのだからな」

「懐かしい話っすね~。あの辺からいろんな所にスカウトが来るようになったすね。でも、ウチの会社より良い所は無いっす」

 

多分給料なら国家のスカウトを受ける方が多いだろう。設備も同等の物を用意できる所もあるだろうけど、そこでは得られない物がウチにはあると思う。それを理解しているから、コイツはスカウトを受けないのだと思う。

 

「……悠樹さんは勉強する事あるのでしょうか?」

「あるっすよ~。日々勉強、日々精進っす。学ぶことを止めないかぎり勉強する事はあり続けるって会社の先輩たちは言ってたっす」

 

才能もあるがこの貪欲な姿勢こそ悠樹を若くして一流に登り詰めさせた一因であり、この考えが会社内に広まっているからこそウチの会社が世界トップでIS業界で一位に居れるのだと思う。

 

「生徒の皆が、大村弟のような意識を持ってくれれば教えるこちらも張り合いがあるのだがな」

「去年も言ってましたね、そんな事。私が生徒会長になった頃に。『生徒会長は生徒の代表だ。憧れでも対抗心でも良い。生徒に向上心を芽生えさせる壁になってくれ』でしたっけ?」

「私も似たような事を言われましたね」

「ああ、各学年の首席には毎回似たような事を言っている。ここに入った事がゴールではない。むしろここはスタート地点だ。自分が望むゴールに向かう為には努力をするしかない。主席や生徒会長など目立つ生徒には見本と増長しない様にと釘を刺すために、その他の生徒はそういう意識を持たせるためにな」

 

織斑先生が厳しいのもここに入るほどの能力を持っているからこその期待の裏返しなのだろう。

 

「その点、ここの四人は心配なさそうだな。大村弟はさっき言った通り。大村兄は超一流の戦闘機乗りだが、それに驕らないからな」

「そりゃ、ISじゃ素人に毛が生えたレベルっすから」

「更識は代表候補生で生徒会長だが、それでも努力を止めない」

「目指すのは国家代表ですから」

「布仏も一年からずっと主席だが、努力を怠らない」

「私が自分自身の為に頑張った結果ですから。自分に満足するには早いです」

「貪欲な向上心は上達の最低条件で、最も必要な物だ。持つことは誰でも出来るが維持するのは難しい」

「篠ノ之博士もそれを持ち続けていたから、ISを開発できたんっすかね~」

 

悠樹の何気ない言葉に織斑先生は少し表情を穏やかにしながら、

 

「ああ、アイツは『未知の宇宙を調べる』という自分の夢の為に突き進んだだけだ。そしてさまざまな物を吸収した結晶がISだ」

 

織斑先生と篠ノ之博士が幼馴染で古くからの友人と言うのはよく知られた事だ。だから、織斑先生=白騎士というのは公然の秘密のようなものだ。

だから、織斑先生はISの誕生の経緯を知っているのだろう。

 

「やっぱり、今の使われ方は複雑な思いなんすかね」

「自分の努力を認められた嬉しさと、兵器として使われた悲しさの半々と言っていたな。だが、アイツ自身まだまだ諦めていないからこそ、今も研究を続けているんだろう」

「だから、一年に一度、研究発表をし続けているんですね」

 

篠ノ之博士は一年に一度のペースで自分の研究結果をIS委員会に送り、発表している。大体、12月の頭位なので、清水寺で行われる、今年の一字みたいにちょっとした冬の風物詩になっている。

 

「時に、大村兄、更識。今学園中に流れている噂、様子を見る限り本当の様だが、実際の所どうなんだ?」

「まあ、織斑先生には言ってもいいよね?」

「いいんじゃないか?」

「はい、噂は真実です。いちいち発表するのも面倒だし、その内薫子ちゃんが記事にすると思います」

「新聞部にリークしたわけか。芽を刈り取っておこうという魂胆か」

「自分でも驚いてるんですけど、独占欲が強く出てきまして」

「……何股も掛けれるほど器用じゃねえんだけどなあ」

 

じゃなきゃ、カナを想って十年も片思いしてないだろうし、恋人だって作ってただろうさ。

 

「いやでも、刀奈さんの判断は正しいっすよ?」

「どういう事ですか、悠樹さん?」

「いや、去年美星の高等部に流れた話なんっすけど、『美星の高等部のパイロットコースには女子人気を二分する男子が居る。無意識に片っ端から惚れさせて、振っていく爆撃機と狙った獲物は外さないスナイパー』この話の爆撃機に当たるのが兄貴っす」

「色々誤解を生む言い方だな、それ。まあ、確かに美星の六年で結構告白されたけど、心に決めた人がいるなら、断るのが誠実ってもんだろ」

 

生半可な気持ちで受けたら誰も幸せにならんからな。

まあ、どうやら方便と受け取られてたみたいだけどな。

 

「ちなみにその辺詳しそうなスナイパーに当たる人に聞いたら、100人は超えるらしいっす」

 

……ミシェルの奴、帰ったらシメる。

 

「……その話を聞くとお嬢様の安心のためにも正しい判断だったみたいですね」

「同感っす」

 

俺としては浮気する気などさらさらないけど、これでカナが安心できるならそれでいいと思う。

 

「……まあ、教師としては節度を持って付き合えば、自由にしていいぞ。校則に特に書かれていないしな。さて、最初は織斑とオルコットの対戦だ。その後、大村には二連戦になるが、まあ、大丈夫だろう。お前のISのコーチにもお墨付きを貰ったからな」

「了解っす。……つーか、態々連絡したんっすか?」

「念のためにな。さあ、更衣室で準備してこい」

 

その目に『あの女をぶちのめしてこい』という威圧を感じたのは俺の勘ぐり過ぎだろうか? いやでも、織斑先生怒ってたし、ありそうだよな。




説明回となりました。いくつか、用語を取りあげていきます。


クァドラン・ロー

出典 『超時空要塞マクロス』

原作ではエースのミリアの愛機、本作ではミセスバルキリー、ミリアの愛機。
クァドランの軌跡はここから始まる。

クァドラン・ノナ

出典 ゲーム版超時空要塞マクロス

原作ではクァドランの簡易生産版、本作では新星インダストリー、そしてクァドランを世界シェア一位に押し上げた功労者。現在はローやキルカに置き換えが進んでおり、本社に何機か静態保存されている機体があるのみ。

クァドラン・キルカ

出典 『マクロス7 銀河が俺を呼んでいる』

原作ではマックス、ミリア夫妻の五女、エミリアの搭乗機。本作ではミセスバルキリー、ミリアの第二回の搭乗機。
現在、世界中の様々な国で専用機として使用されている高性能機で、カスタム性の高さで個人個人の特徴を出せる。ラファール涙目である。
性能の高さのせいで第二回モンド・グロッソでは「機体がキルカで武器だけ各国独自」という選手が何人も出場する事態にまで陥った。

クァドラン・レア

出典 『マクロスF』

原作ではクランを始めとしたゼントラーディーのパイロットの使用機。本作では新星インダストリーで開発中の第三世代量産機を目指した、試作機で現在、テスト中。高機動、高火力、重装甲の三拍子そろった好機体の予定。


キメリコラ夫妻

元ネタはクァドラン・ローの設計などをした『キメリコラ第74710020692ゼントラーディ全自動兵器廠』から。ファーストネームのネタを分かった方は……友達になれると思います。


次回からクラス代表決定戦が始まると思います。
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