IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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タイトルに関しては読めば分かります。


第十九話 蒼空の大鷲

「では、一年一組のクラス代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりで良い感じですね~」

 

クラス代表決定戦+αを終えた翌日の朝のHRで俺達のクラスの代表が副担任である山田先生から告げられた。

……勝ったのはオルコットのはずなんだけど、何で一夏が代表になったんだ? あの試合で代表を決めるんじゃねえの?

 

「あのー、俺は昨日の試合で負けたんですけど、なんでクラス代表になってるんでしょうか?」

 

恐らくクラスの誰もが疑問を思っている事を当事者である一夏が山田先生にそう尋ねた。

 

「それは―」

「それは私が辞退したからですわ!」

 

……なんで辞退したんだ? オルコットは立候補したわけだし、決定戦には勝った訳だからそのまま代表になるのが普通の流れだろ。

 

「まあ、勝負は一夏さんに勝ちましたけど、なにぜ私セシリア・オルコットが相手だったのですから、それは仕方が無い事ですわ。しかし、一夏さんの事も考えると、ここはお譲りするべきだと思いまして」

 

スポーツでもなんでも経験に勝るものは無い。それはIS操縦も同じ。だから、訓練機の貸し出しがあって、連日予約が一杯なのだ。専用機なら、その貸し出しの書類(一回につき10枚ほど書かないといけない)の用意の手間が無いので比較的簡単に経験は積める。

その中で実戦経験と言うのはやはり格別な物だと思う。

クラス代表になればクラス同士の対抗戦など普通の生徒よりも豊富に経験が積める。素人ながら専用機を持つ一夏にはある意味ぴったりだとは思う。

……しかし、オルコットが譲った理由が『男性IS操縦者の情報収集の為』だと勘繰ってしまうのは俺自身が、一応社会に出る経験をしていたからだろうか? まあ、その理由は本人の心のみ知るといった所だろう。

その後、幼馴染と一夏が言っていた、篠ノ之箒とオルコットが何か言い争いをしてたけど、そこは我らが担任、織斑先生が鎮圧。

 

「それと、もう一つ連絡があります。IS委員会の要請によってこのクラスに一人仲間が増えます」

「「「「「ええーっ!!!」」」」」

 

山田先生の発表でクラスの大半が驚きの声を上げる。俺は誰が来るか分かっているから、うるせえなとしか思わない。女子の体の中には声を巨大化する音響装置(特殊機能として自分の感情によってボリュームが勝手に上がる)でもついてるのか? って思うくらい大きい。

 

「うるさいぞ! ……入ってこい」

 

クラスの騒ぎを鎮圧してから、織斑先生は呼び込んだ。

入って来たのは一夏と同じ制服を着た生徒。身長は一夏と同じか少し低い位。でなによりそいつの特徴は縦で二色で分かれている髪色だ。ちなみに上が白で下が赤。

 

「ども、大村悠樹っす。よろしくっす。この通り、男子なんで、ここに居る突然変異二人とは違ってISには乗れないっすけど、一応、新星インダストリーでISを始めとした色々な物を作っている技術者の端くれっす。なんで、理論、技術関係なら皆さんのお手伝いできると思うっす」

 

……いや、お前の言葉偽りありまくりだからな。少なくとも、誇張表現抜きで世界トップのウチの会社の技術部のトップの能力を持つキメリコラ夫妻が悠樹とアイシャの二人を指して「私達の次の世代を引っ張っていく逸材」って手放しで絶賛する人間を『技術者の端くれ』って言っちゃ駄目だろ。後、突然変異言うな。自覚は若干あるけどさ。

 

「き」

 

あっ、これはヤバい奴だな。そう思って俺は耳をふさぐ。

 

「「「「「キャーーー!!!」」」」」

「「ギャーーー!」」

 

やっぱり来たな。黄色い歓声。耳塞ぐのが間に合って良かった。遅かったらさっき悲鳴を上げた男子二人みたいになってたからな。

 

「……はあ。歓声を上げるのもいいが、うるさ過ぎるぞ。他のクラスの迷惑を考えろ」

 

いや、まったくもってその通りです。昨日、「簪ちゃんと仲直り出来たから一緒にご飯を食べたい」とカナが言ったので一緒に夕食を食べた時に「そういえば、初日の一組の歓声、聞こえていたよ?」と簪が言っていた。

まあ、普通の教室に態々防音設備なんて必要ないし、有ったとしてもあれほどの歓声だから意味をなさないだろう。

 

 

 

悠樹が編入してきて数週間。もうすぐ新学期が始まって一月が経とうとしていた。悠樹は既にクラスに溶け込んでいる。

そんな今日は初めてのISを使った実習。と言っても、実際に動かすのは俺達専用機持ちだけで、どちらかと言うと今日の授業は実習についてのオリエンテーションの要素が強い。だから普通最低二限ぶち抜き、下手したら一日使う実習も今日は一限しかない。

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。大村兄、織斑、オルコット、見本として実際に飛んで見せろ。まずはISの展開からだ。やれ」

 

呼ばれて前に出た俺達三人はISを展開する。速さはオルコット、俺、一夏の順。一夏は展開を始めるまでの時間が遅かったから織斑先生にお叱りの言葉を貰っていた。ISや武器の展開は基礎の基礎だし、クランにみっちりやらされたから、そこそこ自信あったけど、流石に搭乗時間の差が如実に出た。

 

「大村弟、それぞれ何秒だ」

 

悠樹は実習の際、データを収集して織斑先生に報告するアシスタントみたいな立ち位置になるらしい。

 

「オルコットさん1秒、兄貴1,3秒、一夏2秒っす。代表候補生の平均が約1,4秒って言われてるっすし、展開に関しては及第点じゃないっすか?」

 

一夏は少し遅く感じるかもだが、搭乗時間が圧倒的に短い事も加味すると十分だろう。

 

「そうだな。よし、三人とも飛べ」

 

織斑先生の合図で俺達は飛び立つ。

順番はさっきの機体の展開の時と同じ。しかし、ある程度高度を取った事を確認した俺は加速して、一気にオルコットを抜き去る。

 

「やはり、速いですね」

 

俺の後に到着したオルコットがそう話しかける。

 

「そうか? 俺としては中学の頃から、超音速の飛行機バンバン飛ばしてるし、マッハに乗るか乗らないか位のスピードは速いとは言えねえけど」

 

スカルは言うとめんどくさそうだから、俺は新星インダストリーの戦闘機開発のテストパイロットをしていると話した。

 

「感覚の違いですわね。私達からすると、音速を超えようと思うと高機動パッケージやブースターの増設などが必要で普通の状態では超えれない壁ですから」

 

ちなみにエクスカリバーを除いた現行機でデフォルトで音速を超えられるのはイタリアの最新鋭機『テンペスタⅡ』だけだと言われている。ちなみに変形させたエクスカリバーはそれを超えるスピードを軽々出せるけど、人型の時はテンペスタと同等位。

 

「俺等からすると超音速の世界が当たり前だからな」

 

ISに対抗するため、戦闘機も改良を加えられてきた。量産されているウチの看板商品のサンダーボルトは最高速度マッハ2,8、巡航速度でもマッハ2となっている。

コスト度外視の俺のエクスカリバーはマッハ5まで叩き出せる。この差は機体の材質とエンジンの問題だ。サンダーボルトもエンジンのスペック上全力を出すとマッハ3,5まで出るが、そこまで出すとエンジンに非常に悪いし機体そのものに悪影響を与え、機体寿命が短くなる可能性もある。それと燃費が激悪だし。

俺達スカルを始めとした、アグレッサー部隊のトップチームの専用機に使用している材質やエンジンを使えば問題ないし、それ以上も出せるが、そうすると、コストが跳ね上がる。(同じサンダーボルトでも価格が10倍くらいになるらしい)後、乗り手もかなり限られて来るし。

 

「それにあくまでも速いのは直線だけで、曲がる時は減速するからな」

 

速いまま曲がるのは出来なくはないが体にも機体にも負担が大きいし、ドッグファイトになったらデメリットしか生まない。

 

「しかし、一夏さんの時にした戦法はかなり有効ですわね」

「ISとやりあうなら速度を活かした一撃離脱になるだろうな。死ぬほど怖いけど」

「……なんか、二人とも楽しそうだな」

 

そう言いながら、一夏は遅れてやって来た。

 

『何をやっている。スペック上はエクスカリバーには劣るがブルーティアーズの上だぞ』

 

早速叱責を受ける、一夏。織斑先生が厳しいのはこの約一月で分かったけど、一夏にはそれが顕著だよな。まあ、そんだけ期待してるって事だろうけど。

 

「と言われても、空を飛ぶ感覚もあやふやだし、何で飛んでいるか、いまいち分かってないんだよなあ」

『何なら、説明しても良いっすよ? 反重力力翼と流動波干渉の話で正味三時間ほどっすけど』

 

悠樹とアイシャは人に教えるのが上手い。この事をアイシャに聞いたら、「美星中等部技術科三年の最初の2か月くらいは新入生に教える事だから、慣れるのよ。自分の理解にも繋がるし」らしい。

そういや、俺等もそんな事やったな。俺等の場合だと体を使う事だから、若干事情が違うけど。

 

「いや、遠慮しとく」

『そうっすか~。聞きたくなったら言ってくださいっす』

 

絶対に聞きに行く事は無いだろうな。俺も聞きたくねーもん。たとえ教え方が上手くても小難しい話は頭が痛くなるしな。

 

『大村』

「なんっすか?」

『お前の技術の一端を見せろ』

 

なんて無茶振りを……。やっぱ、鬼教官だわ、あの人。

 

「了解。……さて、どうしたもんか」

『兄貴の得意なアレをやれば良いんじゃないっすか? 曲芸飛行用のスモークもあるっすし』

「ああ、アレな。やってみるか」

 

そう言って俺は変形してさらに高度を上げる。

 

 

 

「始まったっすね~」

 

空を見上げながらオイラはそう呟く。

 

「だね~。まさか、IS学園でイサムのアレが見られるとは思わなかったよ」

 

いつの間にか傍に来ていたアイシャがオイラと同じように空を見上げながら呟いた。兄貴はエクスカリバーの戦闘機形態で大空をキャンパスに見立て、鳥を、兄貴のコールサインでもある鷲を描いて行く。

他のスカルのメンバーをして「アレが出来るのは世界でイサムだけだ」と言わしめる唯一無二の大技だ。これとコールサインから「蒼空の大鷲」の異名まで付けられている。

 

「凄いね、いーさー」

「あれの凄い所はPICをほとんど使っていない事っすね。変形で出来るスラスターでの方向転換を細かく連続でやってあんな複雑な機動を描く。言うには簡単っすけど兄貴の常人離れした耐G能力と反射神経、判断力、空間把握能力とエクスカリバーの驚異の運動性があって出来る技っす」

「多分、ISでなら難易度こそ下がるけど、体が持たないわ。常時、瞬時加速レベルの速度で飛び続けながら複雑な機動を描くから。……っと、そろそろ終わるわね」

 

青い空に描かれた鷲とさらに高度を上げてから、急降下してくる兄貴。そのまま、目を仕上げて、一気に着地。我が兄貴ながら無茶苦茶だ。

 

「っと、織斑先生、こんなもんでどうでしょ?」

「見事だ。あそこまで高速かつ精密な機動は国家代表レベルでも出来る奴は居ないぞ」

「まあ、訓練の賜物っすよ。後は機体の問題もあるっすね」

 

兄貴は戦闘機乗りとして特上の物を持っているらしい。これは残りのスカルのメンバーの総意だ。だけど、兄貴はそれに驕らない。ひたすら飛び続ける。「あのオッサン共を確実にぶっ倒せるようにならねえとな」と言っていたけど、兄貴は全員を尊敬している。そんな兄貴の本心は「空が好きで飛ぶことが好き」たったこれだけなのだ。だから、訓練ではなく楽しんでいる。刀奈さんと過ごす時間と同じ位空を飛んでいる時間が兄貴にとって大切な時間なのだ。

 

 

 

俺が特技を披露した後、急降下からの完全停止を行った時に一夏が墜落して地面に穴を開けたり、武装展開でオルコットが近接武器の展開に戸惑ったりしていた。

 

「最後に大村、武装を展開しろ」

「了解」

 

そう言って、流星を構える。

 

「展開速度、構え共に問題ないな。精進しろ」

「はい」

 

この辺はこれしか武器が無いからひたすらクランに練習させられた。

 

「後の武装はクァドランと同じで機体に内蔵されている物だったな」

「そうっす。腕部のガトリングガンとか肩部のインパクトカノンは変形の邪魔になるっすから、オミットしたっす」

「近接武器は無いのか?」

「一応はあるっす」

 

そう言って俺は腿の部分の装甲を稼働させてアサルトナイフを取り出す。

 

「後、ピンポイントバリアを拳や脚、流星に纏わせて攻撃できるっすね」

 

まあ、ナイフは緊急時の救命活動用の方が大きい。何処かに閉じ込められたりした時に切り裂くとか。

バリアを纏っての打撃戦は完全に最終手段だ。中~遠距離で制圧するのが望ましい。

 

「そうか。む、そろそろ時間だな。織斑はグラウンドの穴を直しておくように。大村、罰だから手伝うなよ?」

「腹減ってるんで、手伝う気無いっす」

 

さて、飯でも行きますか。久しぶりにあんな事したからエネルギー切れ寸前だよ。

 

「兄貴~」

「なんだよ、悠樹」

「今日のこの絵どうっすか?」

 

そう言って空間ディスプレイに一枚の画像を表示させる。

それは、今日俺が大空に描いた大きな鷲の絵。

 

「中々の出来じゃねえの。カナに生で見せられないのがもったいねえな」

「……ホント、先輩とイサム、ラブラブね~」

「もう慣れてきたっすよ、オイラは」

「気にしちゃ負けなんだよ~」

 

良いじゃないのさ、これ位は。




全開の予告通り、マクロス(プラス)っぽい事出来ました!

もちろん、今回の元ネタはエクスカリバーで竜鳥を描いたあのシーンです。これがやりたかった。ちなみにこれはアクロバットショーでの持ち技で、色んな所で盛り上がります。

次回は……簪の専用機の進行についてのお話になると思います。
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