「~~~♪」
今、オイラは簪さんの専用機『打鉄弐式』の開発をしている。
いやー、同僚の方々に話しを聞いて回ったけど、日本政府直轄の研究所は仕事が杜撰過ぎる。弐式の開発が始まって打ち切りまでの期間は4か月位だったらしいけど、それで、設計図しか仕上がってないってどういう事さ。いや、これは正直デザイン案ってレベルだ。
しかもその理由が『日本のISである、打鉄の後継機に相応しいデザインの話し合い』って簪さんを蔑ろにし過ぎだろ。完全にお役所仕事だな。政府直轄の研究所から引き抜かれてきた人曰く「日本はIS先進国と言われるけど、その理由は半官半民の倉持技研の第二研究所が優秀だから。それ以外の政府直轄の研究所はまともに機能してない。能力じゃなくて縁故採用ばかりだし」との事。
まあ、それだから全部白紙にして一から設計するけどさ。だから、もう『打鉄弐式』とは呼べないかな?
設計するに当たって、オイラは簪さんの搭乗データを徹底的に集めた。日本政府に報告されている分も取り寄せたけど、特設アリーナを使ってオイラが必要な物を集めた。幸い弐式は簪さんの頑張りで問題なく動かせは出来るし。
簪さんは遠近両方を器用にこなすバランス型。お姉さんの刀奈さんもそうだけど、刀奈さんはどちらかというと接近戦が得意で簪さんは遠距離戦が得意と好対照だった。近接戦では薙刀が得意なんだとか。……袴姿の簪さん、見てみたいねえ。
ぶっちゃけ、共通点がコアと、マルチロックオンミサイルの山嵐と薙刀位。どっちかというとクァドランの発展機と言った方が良いかも。でも、これは今までの簪さんの頑張りを無駄にしそうだったから、謝ったら、「良いよ。その代わり、最高のISを作ってね」と返された。ご期待に応えるとしましょうか、今の僕の全力で!
「ゆーゆーノリノリだねえ~」
「でも、鼻唄歌ってる時が悠樹君の一番調子の良い時。最近見てて分かった」
「簪の言う通り。鼻唄歌ってるのと、独り言が擬音に占拠されるのが悠樹の全力全開の証拠だからね~」
「聞こえてっるっすよ~」
後者の方は自覚は無いけど、前者に関してはテンポよく作業が進んでいると勝手に口ずさんでるんだよな~。
今、この場では僕以外に乗り手でもある簪さん、お手伝いとして本音さん、同僚で能力に信頼のおけるアイシャに来てもらっている。
簪さんにはオイラ達に任せて自分の腕を磨いてほしいと言ったんだけど、「こういう事も好きだし、勉強になるから、見てたい」と言われてしまった。彼女がそれで良いのならオイラ達は何も言えない。
「でも、知らない曲。本音、知ってる?」
「私も知らない~。アイちゃんは?」
「私は知ってるよ。って、言うより新星市の人しか知らない曲だと思うわよ?」
まあ、この曲を歌ってる人ってプロって訳じゃないし、デビューする気もさらさらないからなあ。曰く「俺は歌いたい時に歌いたいように歌うだけだぜ」らしいし。
「ど~いう事?」
「この曲を作ったのは兄貴の同級生の人で一般人っすから。熱気バサラって言うッス」
傍から見ると飛行バカの兄貴と音楽バカの人だからすげー仲良しなんだよなあ。兄貴自身「俺の親友四天王の一人だな」って言うくらいだし。ちなみにその人以外はアルトさん、シェリルさん、ミシェルさん。
「っていうか、イサムは学園祭の時はバサラさんの後ろでバックバンドやってたし」
学園祭の美星学園航空科の二大出し物の片方だからね~。開始のアクロバットショーとバサラさん率いるバンドのライブ。担当がリードギター&ボーカルがバサラさん、リズムギターが兄貴、ベースがミシェルさん、ドラムがクランさん、キーボードが美星の教員でバサラさんの保護者であるレイ・ラブロックさん。
まあ、このライブがびっくりするほど人気がある。このバンドでの演奏が行われた兄貴達が中一の時のライブで一発で皆の心を掴み、年々時間が増えていき、去年は文化祭中では見れない生徒が出るからという理由で後夜祭を丸々ライブにしてしまったほどだ。
さらに去年はサプライズでシェリルさんも来て、例年以上に盛り上がった。
しかも、その後、航空科の有志がその時のライブ映像を編集したDVD&ブルーレイが販売されるんだけど、それが飛ぶように売れる。万単位で売れる。オイラも兄貴が貰ってくるのを分かっているのに買ってるし。
「実はシェリル・ノームの『私の歌を聞け!』ってバサラさんへのリスペクトっすからね~」
これは美星の皆が知っている。シェリルさんがデビューしてから、両親が新星に居るから、毎年学園祭に来ている。その時にこの事を皆の前で言ったのだった。その後、兄貴がシェリルさんと話してた時に「何時か、バサラに曲を作ってもらいたいわね」って言ってたし。
「……悠樹君シェリル・ノームの事知ってるの?」
「知ってるも何も、家族ぐるみの付き合いっすし。シェリルさんのお父さんは兄貴の同僚で父さんの後輩だし、兄貴なんか最初の親友ってまで言ってるレベルっす。というより、刀奈さんも親友らしいっすよ?」
「……そうなの?」
「私もこの前初めて聞いたよ~。お嬢様も教えてくれればいいのね~」
多分、刀奈さんの中では『歌姫、シェリル・ノーム』ではなく『親友、工藤シェリル』の感覚なのだろう。兄貴もそんな感じだし。
「会ってみたいな……」
「そんなのこれから機会なんていくらでもあると思うっすよ? 仲直り出来たんっすから」
オイラは仲直りする前の簪さんと刀奈さんの事は知らないけど、二人の幼馴染である本音さんと虚さんにはお礼を言われた。オイラ自身としてはそうなったのは簪さんと刀奈さんの勇気が生んだ結果。オイラはそれを後押ししただけ。それに、簪さんは笑顔の方が可愛いし、僕も観ていて嬉しくなるし。……ん? なんで、嬉しくなるんだろ?
「それで、ゆーゆー。さっきの曲はなんていうの?」
「さっきの曲は『SEVENTH MOON』って言う曲っす。大体何かをやってる時の鼻唄はこの曲っすね」
「そういえば、新メンバーが入るって噂を聞いたけど、その辺どうなの?」
「どうなんっすかね~。オイラもその噂聞いたけど、詳しくは知らないっす。兄貴なら詳しいっすかね~」
「呼んだか?」
クラス代表が決まってから俺の放課後は大まかに二つに分かれている。
1つはISの訓練。一人でやる事もあれば、カナと一緒にやったり、マリアと一緒にやったり、フォルテと一緒にやったり、虚に紹介された三年生唯一の専用機持ちダリル・ケイシーとやったり、皆でやったり、時々簪も参加したりと日によってメンバーは違うが、充実した訓練が出来ている。皆、教え方上手いし。
実は一夏も誘おうと思ったけど、なんか一夏の周り、篠ノ之とオルコットが熱心(過激?)なコーチをしているので、邪魔するのもどうかなと思ったので誘っていない。
もう一つは生徒会の業務。そこそこ量があるが、虚が「お嬢様もイサムさんもISに乗って技術を磨く事の方が大事です。これ位は私にお任せください」といって、全てこなしてしまう。
虚はそれに合わせて、整備課主席なので後輩や同級生に頼られる場面も多い。だから、週に2~3日は俺達も手伝っている。これは俺達が話し合った結果だ。
今日は生徒会の業務の日で一足先に仕事を終わらせた俺は丁度良い時間だし悠樹達を夕飯に誘いに来たのだった。
そしたら、何故か悠樹が俺の名前を出してたので話に入ったのだった。
「おお、兄貴、丁度良い所に。今、バサラさんの話をしてたんっすよ」
まさか、ここでアイツの名前を聞くとはな。……ああ、でも、悠樹は調子が良いとバサラの歌を口ずさんでるもんな。それからそういう話になったんだろう、多分。
「んで、新メンバーを入れるって噂があるんだけど、その辺どうなのよ?」
「ああ、それ本当だぜ。なんか、春休みにマリアの一番下の妹がバサラのとこ来てて、バサラが気に入ったからボーカルとして採用した。今は何曲かバサラが作ってる。多分、今年の学園祭でやるんじゃねえの。俺は出ないけど」
クランもIS学園に通っていた三年間文化祭前は練習の為に毎週新星に帰ってきて練習してた(それは口実で本音はミシェルに会いに来てただけだろうけど)から、出来なくはないけど、俺が舞台に上がると色々迷惑掛かりそうだしな。アイツらの演奏をオーディエンスとして楽しむさ。六年間でしたかったことの一つでもあるし。
「もったいないっすね~」
「練習は楽しいし最高の報酬があるからな。でも、俺が出るとなると警備とか面倒が増えるだろ」
「確かにそうかもっすね」
「それでイサム、練習の報酬ってなんなの?」
「ああ、バサラの奴練習前後とかにアコギで一人で弾き語りで歌ってる時があるんだよ。それが、バンドの時と違った魅力があって、良いんだよ」
弾き語りの方は練習前後とか気分転換の時にしか人前ではやらない。しかし、そこにもバサラの良さが詰まっている。個人的にはバンドの時は『STARLIGHT DREAM』、アコギの時は『MY SOUL FOR YOU』が一番好きだな。
「それは聞いてみたいな~」
「まあ、アイツは気紛れだからな。その気にならねえと歌わないよ。歌いたい時に歌う、自由奔放な奴だよ」
だけど、それだけ音楽には凄い情熱を持っているし、それを形にしたアイツの曲にはパワーがある。
「自由奔放は兄貴も同じっすよ。バサラさんは歌、兄貴は飛ぶ事って違いだけっすけど」
「はは、自覚はある。中学の頃は機体の無断使用の常習犯だったし」
あの頃は怒られて形だけの反省文書くのが日常だったな。問題児だったけど成績優秀だったから。それからすぐ、スカルの所属候補に選ばれたから、飛んでいる時間が増えたので、そんな事をする必要が無くなったし。
ちなみに、中学の卒業の時に「中学一年の時のお前が美星の中等部高等部合わせての1年間に提出した反省文の数歴代トップだったぞ」と生活指導の先生に怒られた。それも今となっては良い思い出だ。
ちなみに問題行動の多さで俺、ミシェル、バサラは『美星学園の三悪人』と教師の方々に呼ばれていたとその時に教えてもらった。
「……なんか意外。お義兄ちゃん、大人って感じだったし」
「まあ、あの頃はガキだったからな。といってもまだまだだろ。親父や隊長たちから見たら若造だし」
「オイラも言われるっすね~。ガキだとは思わないっすけど、大人でもない感じっす」
「私達中学の時から大人に囲まれてるから、同い年の子から見ると大人っぽく見られるけど、やっぱり周りの大人を見ると自分はまだまだだと思うから、イサムの若造っていう表現がぴったりだと思うわ」
俺達は早ければ中学生から、遅くても高校へ上がる直前から新星インダストリーに関わる。そこで様々な大人たちと接する。その事で今の自分に足りない物を見つけたり、目標とする人と出会ったり、反面教師にしたりして自分を磨いていく。色々吸収できる時期に様々な人に出会えたから、今の俺があると言える。
「学校と会社で出会った大人たちが今の三人を形作ったって事だね~」
「その通りっす。オイラ達が育った所で一番楽しい場所っす」
「一回行ってみたいな……」
「なら来るか? 夏休みにでもさ」
「良いの?」
「ああ。カナの機体を作った人たちを案内するついでになるけどな」
虚経由でカナの機体開発に参加した三年生のメンバー全員が一度会社の見学に行きたいと言っていたので、会社の方の予定が決まり次第、見学に行くことになる。
「私も行く~」
「何人でもどんと来い。金も掛かんねえしな」
移動はミデア使えば早いし、泊まる所も用意するって言ってたし、土産と飯位か? 金掛かるの。
「つーか、そもそもの要件忘れてた。飯行くぞ、飯。そろそろ整備室も閉まる時間だしな」
「あっ、ホントだ」
「誰も気付かなかったのかよ……」
四人の集中力は凄い物がある。集中しすぎて整備室の使用時間(つまりアリーナの閉館時間)を超えて何度か見回りに来た先生に怒られてる。まあ、そんだけ真面目にやってるから、先生方も怒るに怒れない部分があるみたいで、形だけらしいけど。まあ、訓練終わってだらだら喋ってるんじゃなくて集中してて時間が過ぎてるのに気付かないだからなあ。教師としてはやる気はあるのは良いけど、規則は規則だからって感じだろうな。
なので、俺やカナ、虚にマリアは夕飯に誘いに来る。俺達三人は弟や妹だからともかく、マリアは完全にアイシャの保護者と化してるよなあ。この前「アイシャったら、毎晩遅くまで起きて、体壊すよ!」って言ってたし。七人姉妹の長女は伊達じゃないらしい。
「そー言われたら、お腹が空いてきたよ~」
「そうだね~。ちゃっちゃと片付けてご飯に行こうか」
四人はテキパキと片付けを始める。といっても、今日は展開していないけど、ISは簪が待機状態に出来るし、まだ設計とソフト面の事しかやっていない(機体のパーツは既に会社に発注済みでもう少ししたら届く)から、そこまで時間も掛からない。
「兄貴、終わったっすよ~」
「んじゃ、行くか」
俺もデスクワークで結構頭使ったから時間的にはちょっと早いけど、腹は減ってんだよな。さてと、今日は何を食べるかね~。
という訳で好きな楽曲のお話でした。Fire Bomber他にも『HOLY LONELY LIGHT』『REMEMBER 16』『TRY AGAIN』『Waiting for you』などなどが好きです。
熱気バサラ
出典 マクロス7
先にも後にも出てこないであろう、『ロボット物でありながら戦わない、歌う主人公』
戦う事に迷うのではなく、ミサイルを撃った事で悩むレベル。
本作では主人公の同級生で親友。違う道ではあるが、一つの物に打ち込む姿勢に共感している。
本編で登場は……未定です。
Fire Bomber
出典 マクロス7
熱気バサラ率いるバンドで、マクロス世界では歴史に残るバンド。
原作の編成はボーカル&リードギターのバサラ、ボーカル&ベースのミレーヌ、キーボードのレイ、ドラムのビヒーダ。
本作の編成はボーカル&リードギターのバサラ、リズムギターのイサム、ベースのミシェル、ドラムのクラン、キーボードのレイからイサムが抜けて新ボーカルとしてミレーヌが入っています。
編成などは結構適当です。
本作では美星学園の中等部高等部合同の学園祭にのみ現れるバンドで美星学園及び新星市内では抜群の人気を誇ります。
次回は鈴登場回を予定しています。