IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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ようやくの鈴登場回です。

ここ最近、鈴が結構好きになって来たので中々良い立場に居ます。


第二十一話 編入生登場

俺達が整備室から食堂へ移動する途中、

 

「本校舎一階総合事務受付……って、それがどこにあるのよー!」

 

という叫び声が聞こえた。

そういや、虚が転入生が来るとか言ってたっけ。なら、一応生徒会の役員としてスルー出来ねえな。幸い進行方向だし、話だけ聞くか。……俺としては腹減ってるしカナを待たせてるから飯、食いに行きてえんだけど。

そのまま歩いて行くと、道の真ん中にツインテールの小柄な女子が立っていた。横にはボストンバックが置いてあるから、この子が件の生徒なんだろう。

 

「中国の代表候補生で明日付で編入の凰鈴音……でいいか?」

「誰よ! ってデカッ!」

 

……まあ、俺は背丈がある方だとは思う。ただ、初対面の相手にその反応はどうなんだ?

『ある方だと思う』と言うのは高いが実感が無いのだ。

俺の今の身長が181、これはスカルで下から二番目。身長の低い順で輝さん、俺、マックスさん、シンさん、オズマさん、隊長、イワノフさんになる。輝さんからオズマさんの差が10センチ程度(輝さんは178、オズマさんが186だったかな?)で隊長とイワノフさんが二メートル越えなので飛びぬけて大きい。学園の親友だったミシェルやバサラも俺より身長あるし、アルトも同じくらいだから、どうも自分が背が高いという感覚が無いのだ。

ようやく最近、ここに来てその実感が湧いてきた。知り合った中で一番高いダリルで170無いし、同じ男子の一夏や悠樹も170前後なのをみてだ。

 

「俺は二番目の男性操縦者でここの生徒会役員をやってる大村イサムだ」

「そう。私は凰鈴音。鈴で良いわ。……にしても、何で出迎えが無いのよ」

「OK、俺もイサムで良いぜ。それとな、出迎えが無えのは仕方無えんだよ。先生方は俺や一夏の諸々の手続きやら、来週末に迫ったクラス代表戦やらで忙しいから」

「タイミングが悪かったって訳ね。……あの研究所の奴ら」

 

どうやら本国で何かあったらしい。開発の方に操縦者が振り回されるのはどこもかしこも似たような感じなんだなあ。

 

「中国の研究所は評判が悪いらしいっすからね」

「会社の人達に聞いた話だと剽窃……パクリが多いらしいし」

「パクリの噂は私も聞いた事あるけど、真実かどうかは知らないわ。ただねえ……何で、専用機開発の人間が定時上がりで納期を守る努力をしないのよ! 政府も政府で、尻を叩くんじゃなくて納期を伸ばす方を選ぶし! おかげで入学が遅れたじゃないのよ!」

 

これは酷い。『予定は未定』とは良く行ったもので、こういう物に関しては開発が遅れる事が当たり前。だけど、それに努力するのも当たり前である。もしかしたら官営の研究所だから、これでも許されてるんだろう。政府の方は……言っても無駄と悟っているのか、それとも遅れる事で何か得をするのか、その辺は分かんねえけどそんな感じだろう。

 

「……その気持ち分かる。でも、私みたいに開発を中断させられなかっただけマシ」

 

そう言うのは同じ感じの被害者でもある簪。うん、言葉の重みが違うぜ。

 

「どういう事?」

「えーっとね~、かんちゃんの機体は開発が延び延びになってた上、おりむーの専用機開発の為に中止になったんだよ~」

「何よそれ! 素人に専用機なんて宝の持ち腐れじゃない! 最初は訓練機を専用機扱いするくらいで良いわよ。しかも、国の次代を担う代表候補生の専用機の開発を打ち切るとか馬鹿じゃないの!」

 

中々酷い言い様だが、鈴の言葉に完全同意だ。皆も頷いている。

 

「まあ、簪のはコイツが現在進行形で解決中だからこの辺にして、総合事務受付だっけか? そこに案内すりゃいいんだろ」

「……って、なんで男がもう一人いんのよ⁉」

 

今になって悠樹に気が付いた鈴が驚きの声を上げた。

 

「今さらっすか? ま、諸事情あるんすよ。オイラは大村悠樹、新星インダストリー開発部第10班の班長で、今はIS学園に出向中っす。ねじからISまで作って欲しい物があったらご用命を。良心価格で作るっすよ~」

「……ただじゃないんだね」

「そりゃ、プロっすから。たとえ誰からの依頼でも、きっちり契約して、しっかり仕事して、ちゃんと報酬を貰う。まあ、相手によってその報酬が変わるっすけどね」

 

その分、責任も発生するけどな。だけど、それをきっちりする事でプロフェッショナルとしてのプライドが生まれると思う。過ぎたプライドは邪魔になるけど、無いのはそれで問題だ。プライドがあるからこそ、それに恥じない様にしようと思うし、それに見合う力を得ようと努力すると思う。

 

「ちなみに報酬は幾ら位~?」

「そうっすね……。全財産の半分、びた一文もまけないっす」

「お前は無免許の医者か!」

「オイラは自称・IS関係の名医っすからね。冗談はさておき、会社経由ならそんなの考えないっすけど、個人的なのはその時の気分とかじゃないっすかね。気分が良かったり、気に入った人だとただ同然の値段っす」

 

アイシャが個人的にやっているマルチパーパス・コンテナユニットの開発の手伝いの時悠樹が請求したものは、完成までの間の昼食代(現在進行形。しかも、一緒に食べた時だけ)だからな。気紛れだよな。

 

「というより、早く行かないと事務の受け付け終わるんじゃない?」

 

事務の受け付けは訓練機の返却報告を受け付けるためにアリーナの閉館時間の18時から余裕を見て1時間後の19時になっている。

俺達がアリーナを出たのが閉館ギリギリでそこから話していた事を考えると、アイシャの言う通り時間にそこまで余裕がない。受付の人に迷惑も掛かるしな。

という訳で、俺達は鈴を事務の窓口に案内した。ちなみにその間に自己紹介をしていないメンバーの自己紹介もした。

 

 

 

事務の窓口に案内する道中、アリーナから篠ノ之とオルコットが出て来たのを見て、怒髪天を突く状態になった鈴。窓口に居た事務員さんが一夏がクラス代表だという事を知って自分のクラスの代表に変わってもらうと考えているらしい。いつものメンバー(生徒会メンバーや訓練をしているメンバー)と合流をして、飯を食いながら

 

「……という訳で、変わって!」

 

頼みこんでいる鈴と頼み込まれているマリアを見ている。

 

「うーん、私としては変わるのはやぶさかじゃないけど……一応、私もクラスの皆に信用されて選ばれた身だから、私の一存でOKは出来ないよ」

「そうよね……。ゴメン、無理言って」

 

暴力的な篠ノ之やオルコットと違って、こういう素直な所は好感が持てるな。そんな事を考えていると俺の携帯に着信が入った。

 

「悪い、少し席外すわ」

 

食堂の外に出てからその電話に出る。

 

「もしもし」

『久しぶりだな、イサム』

「っていうほどでもねえだろ、クラン」

 

電話の相手はクラン・クラン。親友(悪友?)ミシェルの彼女であり、俺自身もかなり長い付き合いのある地元の友人。しかし、普段は大体メールで済ますのに態々電話とは何か大事な用あるのか?

 

「また、ミシェル関係の相談か? それなら、飯時だから、後で掛け直すけど」

『いや、そっちの方は最近大丈夫だ。……私だけを見ていてくれている』

「おーおー、お熱いこって」

『お前が言うな、千冬さんから聞いたぞ』

 

あー、そういや俺の腕を聞いたとか言ってたっけ。その時に話したんだろうな。一応、カナから見るとクランは先輩な訳だし。

 

「まあ、式には呼んでくれ」

『残念ながら、それはまだまだだな。アイツも本気でスカルを目指しだしたし』

「今までが手抜きだっただけだろ。アイツがその気になれば高校在学中に慣れてたと思うし」

 

これは、俺達の飛行を見ていた隊長の評価だ。俺も同学年ではたった一人のライバルだと思っているし。

 

『今までが90%程度だったのが、120%になったと言う所だと思う。それで、用件だが……』

「おお、そうだった。んで、なんの用なんだ?」

『レアの実働テストが昨日終わった。制式の1号機が来週頭にロールアウトだ。それで、来週一杯、マリアをこっちに呼び戻す事になっている』

「もうか。案外早かったな。……って、ちょっと待て来週末は」

『ああ、クラス対抗戦だ。お前や悠樹、アイシャからマリアがクラス代表になった事は聞いている。クラス代表の代役を探さないといけないから、早い内に連絡を入れたんだ。正式な書類は会社から学園に明日か明後日には届くはずだ』

 

クラス対抗戦は来週の土日を使って三学年全てで行われる。土曜日の午前中にアリーナの最終調整をして一年生は土曜日の午後、二年生の午前中、三年生が午後に行う。二三年になると整備研究科が出来てクラスが減ると思ってたんだけど、どうやら操縦科4、整備研究科6の割合でクラスを分けられ、代表の実力、整備課の手際、アリーナ外の情報戦など既に駆け引きが始まっているらしい。

 

「分かった、マリアに伝えとく。……しかし、お前マリアと面識なかったっけ?」

 

学年の事とマリアの新星市に居た時期を考えると、一緒の街に住んでた時期はあるんだけど。

 

『一応あるが、連絡先を交換程の仲じゃなかったんだ。マリアはアメリカに行ったし。今後色々聞かないといけない事も出てくるから、こっちに戻って来た時に交換はしようと思っているけど』

「そうか。ま、丁度一緒に飯食ってるし、マリアに伝えとくわ」

『頼んだ。後、お前達の式も楽しみにしている』

「それは俺がここを卒業してからゆっくり考えるとするぜ。そん時は呼ぶさ」

 

それを締めの言葉にして電話を切る。

付き合いの古い友人であり、カナの先輩でもあるクランを呼ばないって選択肢は無いだろ。そもそも、俺の片想いを一番応援してくれていた一人だしな。

ちなみに、他にはミシェル、アルト、シェリルかな。

とりあえず、俺は食堂に戻り、残っている物を食べながら話始める。

 

「マリア、クランからの伝言だ」

「先輩からの?」

 

マリアはというより、ここに居るメンバーの大半はクランの事を『先輩』と呼ぶ。知っている二年生以上や美星のアイシャ、マリア、悠樹は分かるが1年で面識のない簪や本音までだ。

 

「ああ、レアが完成した」

「ホント!」

 

立ち上がり、俺に聞いてくるマリア。他のメンバーは名前だけ俺達が何度か出しているから驚いている。事情の知らない鈴は、

 

「レアって何?」

 

と聞いてきた。レアは『新星インダストリー第三世代量産機計画』として既に発表しているから別に説明しても問題は無い。

 

「レアはウチの、新星インダストリー開発の第三世代ISで正式名称は『クァドラン・レア』。試作機は今年の頭位には完成してたんだけど、イサムの発見やら色々あったから開発やテストの日程が延びてたんだよね」

「っていうか、俺の奴でためしに投入したものも後でドンドン使ったから延びたんだろ」

「悪乗りっすね」

 

しかもめちゃくちゃに追加してもバランスとかを完璧に仕上げてくる辺りたちが悪い。時間が掛かった分良い物を作るからな。

 

「クァドランシリーズの新作……。私も本国で訓練してた時はキルカにお世話になったわ。他の子には不評だったけど、性能高いし、自分の戦い方にあった装備も選べるし」

「クァドランが人気高いのはアメリカだけだよ。それ以外の所だとラファールや打鉄の方が人気あるもの」

 

自虐気味にそういうマリア。

これは単純に全身装甲のクァドランが部分装甲のラファールや打鉄よりデザイン性に劣るという物で、あくまで世間一般の評価だ。ここに居る専用機持ち達はその専用機を持つまでの間、クァドランを愛用していたと言っていた。「師匠たちに良い土産話が出来たッス」とはバーナードさんとクリスティーナさんの愛弟子、悠樹のセリフだ。

 

「ただな、制式版の組み立ての完成が来週頭、そこから一週間くらいは本社でテストだと」

「それって、丁度クラス対抗戦に被るじゃん……」

「だけど、良いタイミングで代役をしてくれそうな奴が居るだろ?」

 

俺とマリアの目線はラーメンのスープを飲んでいた鈴(ちなみに醤油ラーメン)に注がれる。

 

「という訳で私の代役で出てくれない?」

「私としては嬉しいけど……なんとか、短くとか伸ばしてもらうとか出来ないの?」

「それは難しいっすね。裏事情を言うと今の予定でかなり伸びてるんっすよ。これ以上はキツイっすし、宣伝打てる機会がこの後にあるからそれに向けて早い内に受領させたいのが会社の考えのはずっす」

「そうねー。本当なら、今年の二月にロールアウト、三月いっぱいテストして、最初からマリアの専用機って予定だったし」

「私も遅れるって話を聞いた時は、一学期中は無理かなって思ってたんだけど……」

「アクシデントがあって一月で何とかなるって、十分凄いわよね……」

 

アクシデントが起きて、開発が遅れるのはよくある事だ。期限通りに進むという事はほぼない。こういう物の期限はあくまで努力目標だし。ただ、こういうのは何カ月単位、悪ければ年単位で伸びるものでもある。ほぼ一月で収まるのは……関係者の能力の高さだろう。

 

「まあ、ただ来週一週間は、厳しい日程になるだろうし……」

「「ご愁傷様」」

 

そう言ってマリアに手を合わせる、悠樹とアイシャ。まあ、かなり詰めた日程になるだろうとは予想できる。

 

「だよね……」

 

マリアの呟きのタイミングでメールが。ふむ……なかなか面白い事になった。

 

「兄貴、悪い顔してるっす」

「クランから、追加の連絡だ。アイシャもテスト手伝うようにだってよ」

 

俺の言葉に一瞬でノックアウト(物理)してしまうアイシャ。まあ、手が足りないんなら呼び出されるわな。

 

「何で悠樹は無いのよ~」

 

突っ伏した顔を上げてアイシャは泣き言をいう。

 

「そりゃ、悠樹は簪の専用機を作る仕事があるからだろ」

「まあ、今はちまちま調整しつつって感じっすけどね~。余裕があったっちゃあったんすけど、明日か明後日にはパーツが届くから組み立て始まるんすよ。専用機開発の方は」

 

もうそこまで来てんのか。こりゃ代表戦までに間に合いそうだな。

 

「それと悠樹はイサムのも診ないとだもんね。今は刀奈先輩のもか」

 

今の悠樹のここでの仕事は、簪の専用機制作と俺とカナの専用機の整備。

特に、俺のはアイツ開発の技術満載だからな。この学園で一番優秀なはずの虚ですら「正直、既存のISと別物ですね。理解には時間が掛かります」と言ってたし。……まあ、俺からしたら、そのほぼ別物を時間を掛ければ理解できる虚も十分凄いと思うけどな。

 

「話を戻して、それは明日の朝のホームルームでクラスの皆に聞きましょう?」

「そうね。理解が得られなかったら……別の案を考えるわ」

 

まあ、代表候補生の代役として専用機持ちの代表候補生が来てくれたんだから、反対は無いだろ。

まだ時間があるから訓練も出来るだろうし。

さて、代表戦どうなるかねえ……。




鈴の登場、そしてクラス代表変更の理由を紹介した回になりました。

本作での鈴

原作では突然の編入と言う形になっていましたけど、本作では「最初から入学の予定だったけど、中国の研究所の事情で一月ほど遅れる事になった」としています。
こうしたのは本編内で何故鈴が国家代表候補生になったかが書かれていなかったからです。
代表候補生になったのは「高校入学で日本に戻る為」、最初から入学という事にしたのは「日本にさえいれば一夏に会えるから」という方が動機は不純でも行動力のある鈴っぽいかなと思ったからです。

身長設定

スカル隊及びマクロスキャラの身長設定は適当です。一応調べたら初代マクロスと7は身長が出てきました。(輝 175、劇場版では178、マックス 181、フォッカー 216、バサラ184)輝とマックスは初代だとまだ十代なのでこの作品では少し身長が伸びたという事にしています。
実際の所主人公系のキャラは180前後といった所だと思うので、こんな感じかなと思います。
ISの方もはっきりとした身長設定は無いと思うので適当ですけど、女子ばっかの所と一夏が平均的な男子位だと仮定すると180超えていたらデカいと思います。

クァドランの不人気

僕個人としてはクァドランはいくつかあるゼントラーディー系の機体の中で圧倒的に好きな機体ですけど、スタイリッシュのIS相手には人気ないかなあと。特にデザイン性を重視しそうな女性相手だと。一般の評価と関係者の評価の差が激しい機体。それがクァドランです。
ちなみにクァドランの人気を上げるために新星インダストリーは『くあどらん』なるマスコットキャラを作ったとか作ってないとか……。


次回は鈴編入初日の朝を予定しています。
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