IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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今年もよろしくお願いします。

ここまで遅れた理由ですが……また、歯の治療です。今回は虫歯、親知らず、知覚過敏のトリプルパンチですよ。


第二十六話 クラス代表戦直前

さて、いよいよ簪と颶風のデビュー戦当日を迎えた。一応、姉貴との最後の模擬戦のデータを元に最後の調整をしたけど速度の面はやはり使いこなすまではいかなかった。

兄貴の方も頼まれてエクスカリバーの最高速度を颶風と同程度まで引き上げたら、兄貴はあっさりと乗りこなした。……まあ、この倍以上の速さの物をISの補助なしで乗りこなすような人だから予想は出来ていたけど。

姉貴の機体、クラミツハの改良プランはぼちぼちと。

いや、詳細なデータを虚さんに見せてもらったんだけど、良くあの機体で颶風に勝てたなという感想しか出てこない。元々未完成の機体を学生の身の力で完成させたという経緯があるから、性能的に颶風に劣るのは予想していたけど、その差は想像以上だった。

 

元々、第三世代機は機体性能よりも特殊兵装に重点を置いた設計になっている物が多いから機体の基礎性能関しては第二世代機との差はほとんど無い。第三世代初期のブルーティアーズやクラミツハよりもカスタムしたクァドラン・キルカの方が基礎性能だけは上回っているだろう。

ただし、ウチの新作のレアや兄貴のエクスカリバー、簪の颶風は特殊兵装をメインではなく、あくまで+αとして考え、そこよりも性能向上を優先しているので、基礎性能の高さは他国の追随を許さない。

学生だけで第三世代機を作り上げた事は偉業と言っても良い。オイラ達みたいな特殊な環境ならともかく、本格的にISに触って1年や2年で完成させたのだから、虚さん達開発チームの人達の能力の高さが分かる。クラミツハの性能だって決して低くは無い。当初計画されていたレベルは超えているのだから。

ただ、「ブリュンヒルデの後継者」とまで言われる姉貴の専用機と考えると低いと言わざるおえないのだ。それは開発チームを纏めていた虚さんもよく分かっていた。

なら、なぜ颶風に勝てたか。それは特殊兵装であるアクアナノマシンを活かした戦術と姉貴の卓越した腕前、そして経験差で性能差を補っていたからとしか言えない。

なので、オイラに与えられた仕事は現在の装備のままクラミツハの性能の底上げ。具体的にはクァドラン・レアと同程度を最低目標にして、その後は姉貴に合わせた微調整って感じで。

オイラ達新星インダストリーの技術者は専用機に対して微調整を細かく行なう。

専用機が動くようになるのは完成ではなく、一つの区切りと考えているからだ。そこから、乗り手が求めたり、機体の不具合を調べて調整し、また動かしてもらってを繰り返してクオリティを上げていく。そういう感じだから専用機に完成は無いと思う。

 

「……設計、どんな感じ?」

 

横にいた簪がそう話しかけてくる。今オイラが作業しているところは四組の代表、つまりは簪に与えられた控室。本来ならクラスメイトがいるべきところなんだけど、他の四組の皆にここに連れてこられた。

ちなみに、四組の皆はオイラ達が付き合っているのを知っている。というのは、毎日のようにオイラが簪に会いに行ってた事と一緒にいる所の目撃が多かったからどういう関係か聞かれ、簪が素直に答えたから。

皆応援してくれてるから、ここに別クラスのオイラが居ても気にしないんだろう。

 

「結構難しいっすね。とりあえず、良いパーツを使えばある程度の性能が見込めると思うっすけど」

「良いパーツ?」

「パーツは機械で作ってるんすけど、それでも精度にバラつきが出るんすよ。その中から高い物だけを選べば同じ機体なんだけど性能に差が出来るんすよ」

「そうなんだ。それってよくある事なの?」

「工業製品じゃある事なんじゃないっすかね。狙撃銃も小銃の中から精度の高い物を選んだものの改造ってものあるらしいっすし。ウチの場合、ISや戦闘機のアグレッサーチームに使われてる機体は良いパーツを使ってるっす。これを徹底するだけで結構変わるっす。例えば同じクァドランでも1,2~1,5倍って感じっすよ」

 

まあ、そんなのに満足できない超人達の集まりだからそこからさらに個人個人のカスタムがされてるけど。

ちなみに、颶風のパーツの精度は最初から極めて高い基準で設定しているので、そういう余地は無い。

 

「そんなに……。でも、代表候補生の専用機なのにそんなに低いの?」

「虚さんに聞いたら、開発計画の凍結の影響で予算に余裕がなかったのと、元々の開発元からの横槍でパーツを作ってる所から送られて来るものが悪かったっぽいっす。そういう業界は新参に厳しい面もあるから、良いのは来にくいっすしね」

 

ウチみたいに会社でパーツの製造から組み立てまでを出来る規模の会社はほとんど無い。ウチの場合、基準から省かれた物はジャンク品としてオイラ達の趣味の方に使われているから、無駄が出ない。

 

「色々有るんだね」

「色々有るんすよ」

「そういえばさっき、アグレッサーチームの機体は普通より良いパーツを使ってるって言ってたけど、ワルキューレはどうなの?」

 

『ワルキューレ』というのは、新星インダストリーの芸能部門に所属する五人組アイドルグループであり、彼女達の使うISの名前でもある。その特徴は『ISに乗って歌い踊る』という事。スポーツの側面もある物の、兵器としての面が大きく取られる中で認識に一石を投じる為に結成された。専用機の方は見栄え重視でウチの他のISと違って普通のISに近い感じになっているが、ホログラム投影機能によって曲に合った衣装を投影している。

見た目優先のイメージが付きがちだが、彼女達もミリアさんの厳しい訓練を潜り抜けているから、そこらの代表候補生よりも上手い。

 

「ワルキューレの機体のパーツ精度は多分世界一厳しいっすよ。ダンスっていう細かい動きをISを纏って表現しようと思うとそれ位はいるっす」

「だよね。訓練機で真似は出来ないもん。というか、整備士さん達に怒られる」

「あの繊細な動きは専用機だから出来る事っすよ。普通の機体でやったらそりゃ怒るっす」

 

ワルキューレの機体は一週間に一回の定期メンテナンスと一月に一回のオーバーホールをどんなに忙しくても行っている。基本的に毎週日曜日と月の最後の二日間がそれらに当てられている。

スケジュールにもよるけど、ツアーの後だとオーバーホールでほぼ全パーツ取り替えなんていう新しく作るのと変わらないんじゃないかって事もあった。

そんな事を競技用の訓練機でやったら、一回でボロボロになるのは当たり前。

 

「候補生の皆は訓練の合間にやろうとしちゃうんだよね。それでワルキューレの技術の高さに気付くんだ」

「素人から見ると戦う訳じゃないからできそうって思うんす。でも、乗ってる人間からしたら個人個人の能力、チームワークの高さに驚くんすよね」

「颶風でも出来るかな?」

「やろうと思えばできると思うっすよ。ただ、ワルキューレの機体は普通、火器管制やらに割いているリソースを全部綺麗に飛ぶ事に使ってるっすから、完コピは無理だと思うっす」

 

これは兄貴の得意技にも言える事なんだけど、あの飛行は乗り手の技量もさることながら機体が無いと完成しない。だからワルキューレのメンバーは「私達『ワルキューレ』は五人と五機がメンバー」と言っている。

 

「やっぱりかあ。ちょっと気になったんだけど、ワルキューレも年齢的には私達と同世代だし、美星に通ってるの?」

「クラスが同じになった事は無いっすけど、美星に居るっすよ。ワルキューレの機体整備は色んな人が請け負ってるっすから、それ関連で会った事もあるっすし」

 

ワルキューレの皆は美星の芸能科に通っている。そこ卒業の有名人といえばシェリルさん。といっても、シェリルさんは凄く忙しかったから、美星に通っていたのは中高合わせて1年行くかどうからしい。勉強も仕事の合間にグレイスさんに見てもらっていたとか。

ワルキューレのメンバーはシェリルさんほどは忙しくないから学校には通えているけど、それでも、学校で見る機会は少ない。それには、オイラもあんまり学校に行ってなかった事も関係しているとは思うけど。

 

「有名人も大変なんだねえ」

「同感っす。……簪、緊張してないっすね」

 

本番も近いけど、話している感じが普段とは変わらない。初の大舞台だから緊張していると思ってた。

 

「いや、緊張はしてるよ。だけど、悠樹の作ってくれた颶風と私が今日まで積み重ねてきた事を出せば良いって思ったら、あんまり緊張しなくて。それに、お姉ちゃんより強敵はいないでしょ?」

「まあ、一年だと機体も加味して兄貴やマリアといった同レベルくらいの人はいるっすけど、皆ここに出ないっすからね」

 

学年を無視すればフォルテさんやダリルさんも近いレベルといえる。だけど、挙げた人たちは全員今回の試合には関係ない。

 

「お姉ちゃんよりも強い人がいないって思ったら、しっかり力を出せたら勝てるって思って。だから、いつも通り、悠樹と話してたんだ」

「なるほど。だけど、油断は禁物っすよ」

「うん、分かってる。三組のルチア・フィオーレさんは専用機はないけどイタリアの代表候補生だから、技術はあなどれない。二組の鈴は代表候補生で専用機持ってて、なおかつマリアがコーチしてた強敵。一組の織斑君も専用機持ちだし、イギリスのオルコットさんを追い込んだ爆発力はあなどれない」

「……オイラの心配は無用だったっすね」

 

ちゃんと今日に向けての準備をしてきてた。油断なんてない。

 

「そんな事無いよ。その気持ちだけで嬉しいもん」

 

そう言ってもらえるのは嬉しいけど、恥ずかしくもある。

 

「それは良かったっす。オイラが出来るのは機体をちゃんとする事までっすから」

 

オイラは兄貴や姉貴みたいに練習の手伝いやアドバイスなんてできない。簪が今日まで積み上げてきた物を100%発揮できるように機体を整備する事だけ。

 

「だけど、悠樹が居てくれるから私は前だけを見て飛べるんだよ? 他の誰でもない世界で一番大好きな君が傍に居てくれるから」

 

……やばい、すっごく顔が熱い。

人は支えてくれる人がいるから全力を出せるとオイラは思う。その形は、家族、友人、理解者……これ以外にも色々ある。今の簪にとって一番の支えになっているのは嬉しい事にオイラらしい。だけど、それはオイラも同じ。颶風は簪が居なければ出来なかった。文字通り、簪が手伝ってくれたのもあるけど、それと同じ位に彼女の為に持てる最高の力で最高の機体を作ろうとしたから、今の颶風がある。

支えてくれる人が色々いるように、支える形も色々あっていいと思う。これがオイラ達の支えあう形だ。

 

「ありがとっす」

「こちらこそありがとう。これからもよろしくね」

「もちろんっすよ」

「それじゃ、行ってくるよ」

 

簪は立ち上がって控室からピットに向かった。……オイラの唇にキスしてからだったけど。

そういや、兄貴と姉貴も同じ事してたなあ。あの二人くらい仲睦まじい感じになりたいねえ。そういうのを比翼連理って言うんだっけな。でも、それならオイラは比翼恋理の方が好きかな。比翼は恋の理を表すってね。




三組のクラス代表は話の内容的に必要になったので即興で命名しました。今後出てくるかは未定です。

ワルキューレ

出典元 マクロスΔ

原作放映前ですけど名前を登場させてみました。今後本編で活躍するかどうかは本放送を見てからという事で。
ちなみに、これを書いていた時のBGMとして、いけないボーダーラインを聞いてました。


次回は戦闘になるかなと思います。
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