カナと再会して、一月経ち入学式の日になった。
思えばこの一ケ月は色々あった。アルトとシェリルにカナとの事を報告したら、普通に祝ってくれた。シェリルには「十年以上もイサムただ一人を想ってくれる、刀奈を泣かせたら、許さないから!」と言われてしまった。
それに俺は「んなもん、言われなくても分かってる。もし俺が今度アイツを泣かせるとしたら、そりゃ、嬉し涙だぜ」と言い返してやった。
そしたら、シェリルの奴、「今の録音して刀奈に送ったから。学校での再会を楽しみにしてなさい」と返ってきた。……この後アルトに「お前の彼女、悪魔だな……」って言ったら、「小悪魔の間違いだろ? それにそういう所も可愛いんだよ」とのろけやがった。
舌打ちしたら、「お前もその内そうなるさ」と自信満々に言われた。ぜってー、その予言どおりにはしねえ。
後は俺のISの専用機を作られたから、それの試験をしたり、本職のテストパイロットの方の仕事で新型機の試験をしたりで割と忙しかった。
……つーか、ISのコアに余裕がないからウチのテスト機一機潰したせいで、俺にそっちの方のテストも回って来てんだよ! 俺を過労で倒れさすつもりか! お蔭さまで給料は跳ね上がったけどさ。これでカナとのデートの時、金を気にしなくて済むぜ。
ちなみに、その金の一部を使って、IS学園の制服を仕立て直した。親や職場の影響で軍服っぽさのある二列ボタンのブレザーに改造した。
んで、IS学園の俺のクラスに来たんだけど……帰りてえ。カナにこの後会えるっていうのと、知り合いがクラスに居るから何とか持ちこたえているけど、居心地が悪い。
同僚のミハエル・ブラン、通称ミシェルなんかは「羨ましいねえ、変わってくれ」って言ってたけど、出来るならこの状況は変わって欲しい。
俺はまだ席が窓側の一番後ろという角の席だからそこまでだけど、もう一人の男の織斑一夏は何故か一番前の中央にいる。……しんどいだろうな。俺は絶対嫌だね、あんな所。
「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー」
入ってきて教壇に立ったのは山田先生。先生が担任なのかね?
「えー、このクラスの副担任を務めさせていただきます、山田麻耶です。一年間よろしくお願いします」
どうやら、山田先生は副担任らしい。なら担任は? そう考えた時、俺の頭の中には一人の女性が浮かぶ。……うん、大いにあり得るな。
「「「「「…………」」」」」
しかし、山田先生の挨拶はクラスメイトの耳に届いているかは怪しい。皆俺と織斑が気になるようだ。まあ、俺と織斑の席の位置の問題で、注目は織斑の方に集まっているが。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。出席番号順で」
うろたえながら、進めていく山田先生。見てて俺も理由の一端だし同情はするけど、助けは出せない。俺も結構いっぱいいっぱいだから。
「次、大村勇君」
「ういっす。大村勇だ。何の因果かよくわからねえけど、ISを動かして、今ここに居る。だから、知識とはそう言うのは期待しないでくれ欲しい。後、歳は皆の三つ上だが気にせず話しかけてくれると嬉しい。以上」
まあ、自己紹介はこれ位で良いだろう。気になる奴が居たら、後で聞きに来るだろ。
さてさて、織斑はどんな挨拶してくれんのかね?
「えーっと…織斑一夏です。よろしくお願いします」
オーソドックスに名前を名乗った後、教室が静寂に包まれる。周りはその後を期待している。まあ、かなり無口な奴ならともかく、普通は一言二言添えるもんだろう。
「以上です!」
予想の斜め上を行った織斑の挨拶に、ぶっ倒れるクラスメイト。……知り合って数時間っていうのに息ピッタリだな、オイ。
そんな事を考えているとパアンッと良い音が響き渡った。見るとちふ、いや織斑先生が織斑の頭を叩いていた。
「げえっ、関羽⁉」
「誰が、三国志の英雄だ」
つーか織斑、それは赤壁から逃げる曹操のセリフじゃねえの? それと、西洋人は分かんねえと思うぞ、その例え。
後、織斑先生の声どっかで聞いた事があるんだけど……。あ、クランか。ミシェルの彼女の。特にキレてる時のクランに似てんだよな。つーか、ミシェル、クランみたいなナイスバディで美人の彼女が居ながら癖みたいにナンパするのやめろよ、マジで。こっちにもとばっちり来るんだよ! ……まあ、それで聞くなら苦労はしねえけど。
「諸君、私がこのクラスの担任、織斑千冬だ。私の仕事は君達一年を二年になるまでに使い物になる操縦者に育てる事だ。私の言う事は良く聞き、理解しろ。逆らっても良いが、私の話はまずは聞け。いいな」
おおよそ学校の先生とは言い難い自己紹介だな。まあ、織斑先生の前職の軍の教官的には似合うけどさ。
「「「「「キャーーー!!!」」」」」
織斑先生の登場で教室が
耳が痛い事を気にしていたら、いつの間にかSHRは終わっていた。しかし、休み時間の方が圧倒的に居心地が悪い。だって、教室の出入り口に他のクラスや上級生まで来てるし。
「注目の的ね、イサム」
「アイシャか。正直、覚悟はしてたんだけどさ、想像のはるか上を行ってるぜ。クラスメイトに知り合いが居るだけでかなり助かる」
俺の席に来て話しかけたのは会社の同僚、アイシャ・ブランシェット。高校生ながら、すでにウチの技術部門の新鋭として評価されている、いわば天才だ。美人でスタイルも良いが、若干性格が難点と俺とアイシャの共通の友人の一人で俺の後輩にあたる、リオン・榊は言ってる。
「なら貸し1ね」
「分かってる、リオンの事だろ?」
理由は詳しく聞いた訳ではないが、アイシャはリオンに惚れている。ただ、性格こそ社交的だが、仕事と勉強に生きてきたアイシャにとって人を好きになった事は初めてらしい。いくら天才の頭脳があったとしても、恋愛には役には立たなかったらしい。
「それに……ロッドとミアにも頼まれてるからな」
ロッド・バルマーは俺達の友人の一人でリオンの幼馴染、ミア・榊は苗字で分かるが、リオンの妹だ。二人の話ではリオンは鈍感に部類されるらしく、人からの好意に疎い。二人はリオンが大事だからこそ幸せになって欲しいと言っていた。
本人にアイシャの事について探りを入れた所、まあ、脈ありと判断しても良いんじゃないかと思う。
「そっか。よろしく頼むわ。後、会社からの指示は覚えてるわよね?」
「ああ。良いパイロットを探して来い、だろ? 出来れば、しがらみの少ない人間を。技術者系はお前に任すぜ?」
「もちろん。個人的な研究費がかかってるからね」
俺達が受けた会社からの指示は主に二つ。1つはデータ収集。もう一つは人材の確保。新星インダストリーの人材は色々な所からのヘッドハンティング、お膝元での人材育成の二つで確保している。俺達や俺達と近い年代の同僚は後者からだ。前者は、フォッカー隊長やヤン主任などの軍や軍事企業からの転職が多い。
今回はその融合版を試すという感じらしい。つまりは、IS学園で見つけた人材をスカウト、お膝元で短期間、もしくは大学で専門的に育成という形だ。
「ホントに居た。久しぶりね、イサム」
教室の外から、入ってきて俺に話しかける一人の女子生徒。
「久しぶりだな、マリア。半年振りか?」
「ホント、久しぶりだね、マリア!」
「アイシャ! 久しぶり!」
マリア―フルネームはコミリア・マリア・ファリーナ・ジーナス―は俺の友人の一人でアメリカの代表候補生。ファミリーネームで分かる通り、父親はマックスさん、母親はミリアさん。
血統書付のサラブレットという言葉がふさわしいレベルだ。一時期、美星に留学していた関係でアイシャとも知り合い、アメリカに戻ってからも連絡を取り合っているらしい。
「それで、マリアはどこのクラスなの?」
「隣の2組よ。……後、あんまり私のファミリーネームを出さないでね。自己紹介も『コミリア・マリア・ファリーナ』でしたし」
「なんでだ? お前、ご両親の事尊敬してんだろ?」
「そうだけど、ここでは、良い意味でも悪い意味でも『ミセス・ヴァルキリー』のネームバリューは大きいのよ。頑張ってもやれて当然って思われるのはごめんだわ」
それは、もう一人の男性操縦者である織斑にも言えるだろうな。
「分かった」
「まあ、どの道、マリアって呼ぶから変わらないと思うけどね」
「お願いね。それと、ISについて困ったらいつでも頼ってね、イサム。…と言っても、ここに彼女いるんでしょ?」
周りを気にして近付いて小さい声で聞いてくるマリア。
「そうだけど、何処で聞いたんだよ、それ」
「パパに決まってるじゃない」
いや、確かに俺がアルトやシェリル、その他、友人に話して気付いたら、会社のほとんどの人間に知られてたけどさ。まさか、あの超然とした感じの、マックスさんがマリアとそんな話をしてるなんて思わなかったよ。果てしなく意外だ。
「しかも、『ブリュンヒルデ』の後継者で次期日本代表筆頭候補の更識刀奈でしょ? 私が一緒に練習したいくらいだよ」
「んじゃ、紹介しようか?」
「良いの?」
「おう。カナには俺のダチを紹介したいしな。その一環って事で。昼飯の時か夕飯の時にでも会うだろうよ」
何だかんだで、友人が男女問わず増えたからな。
「ありがとね。っと、そろそろ、休み時間が終わりそうだし、クラスに戻るわ。じゃあね、アイシャ、イサム。お昼にまた来るわ」
「了解だ」
「待ってるわよ、マリア」
そう言って、マリアは教室に戻っていった。
「私も席に戻るわ。織斑先生の一撃を食らいたくないしね」
「はは、そうだな。鉄拳とかはフォッカー隊長やオズマさんの特訓の時受けてるけど、出来るなら避けたいしな」
アイシャも自分の席に戻っていった。
俺がアイシャやマリアと話している時に織斑は席を外して外に行っていたらしく、チャイムに間に合わなかったので織斑先生の一撃を受けていた。……やっぱ痛そうだよな、アレ。
IS学園は初日から授業がある。
一応体裁上IS学園は高等学校なので、普通の高校の内容の一般教科を勉強する必要がある。それにプラスしてIS関連の勉強に実習なので、こうでもしないと時間が足りないのだ。IS学園が全寮制の理由の一部分に勉強時間が確保があるのは間違いないと思う。
まあ、一度高校を卒業している俺としてはそんなに問題にならないけどさ。
しかし、今の時間はIS関連の授業。一応予習はして来たけど、ISは完全に門外漢だった俺としてはしっかり聞かねえとな。……分かんねえところは今のとこ無えけど、しっかり、予習復習しねえと。ISを扱う為にも知識はあって損は無いし。
「織斑君、分からない所ありますか?」
前で授業を進めていた山田先生が一旦止めて織斑にそう聞いた。集中していて気付かなかったけど、アイツは何かやってたらしい。
「先生! ほとんど全部分かりません!」
……分からない事を素直に言えるのは良いと思うけど、ほとんど全部分からないって。こんなのまだまだ参考書の最初数ページ読んでりゃ理解できんじゃん。
「……織斑、入学前に配布された参考書は読んだか?」
教室の端で授業を見ていた織斑先生が織斑に聞いた。声のトーンが普段より一段下だ。噴火直前の火山、大地震の前の余震といった所か。
「古い電話帳と間違えて捨てました!」
駄目だ…もう、我慢の限界。
「アッハッハ、面白え~」
ツボに入ったので腹を抱えて笑える。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者!」
鉄槌(出席簿)を織斑の頭に落とす、織斑先生。
「後、大村はいつまで笑っている!」
返す刀で出席簿を俺に向けて投げる。
「危ねっ⁉ 織斑先生、俺じゃなければ当たってましたよ」
飛んできた出席簿を両手で挟み込むようにキャッチして俺は言い返す。
「お前ならその程度余裕だろう?」
「そんな信頼要りませんよ。ゴミ箱にでも捨ててください。後これはお返しします」
織斑先生と同じ要領で出席簿を投げ返す。織斑先生はそれを受け止め、教壇に立ち話し出す。
「ISはその機動力、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういう物だ。……しかし、ISとて無敵ではない。エネルギーが切れれば既存の兵器より脆いし、この世には戦闘機でISを倒すような人間もいる。ISは乗り手ありきなのは既存の兵器と何も変わらない。各々精進するように」
言いたい事を言って織斑先生は元居た所に戻っていった。……つーか、俺を見ながら言わないで下さいよ。無駄な敵は増やしたくねーんですけど。
恐らく、誰も想像していなかったメンバーチョイス。良い意味で裏切れていたら良いなと思います。
アイシャ・ブランシェット
出典 『マクロス30』
実はマクロス世界トップレベルのチートキャラ。バルキリー操縦が出来て、整備が出来て、考古学者で、新型機を自作してます。多分、彼女を超えれる可能性があるのはガルド位。
ラウラとの中の人ネタはやるかどうかは未定。
コミリア・マリア・ファリーナ・ジーナス
出典 『超時空要塞マクロス』
名前を借りたほぼオリジナルキャラ。
世界初の星間混血児であり、生まれてすぐにバルキリーに搭乗する。
ちなみに、マクロス7のヒロイン、ミレーヌとは姉妹で歳の差は20。
一応、この世界でも七人姉妹の長女で
長女コミリア・マリア(高1)
↓
一個下の年子で次女ミラクル(中3)
↓
さらに一個下の年子で三女ミューズ、四女テレーズ(中2)
↓
さらにさらに一個下の年子で五女エミリア、六女ミランダ(中3)
↓
さらにさらにさらに一個下の年子で七女ミレーヌ(小6)
という設定にしています。
アメリカ生まれのアメリカ育ちのアメリカ国籍だが、新星市の生活が長かったので、かなりの日本人。
(分かりやすく学年設定を加えました)
次回はISメンバーと出会うお話になると思います。