IS~大空を翔ける時代遅れの大馬鹿野郎~   作:ピーナ

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


第八話 綺麗な空色を見上げて

「あー……飛びてえ。19もあるし、放課後飛ぶか」

 

この上なく綺麗に晴れ渡った春の青空を見上げながら、俺はそう呟いた。

IS学園に俺が入学するに当たって、ウチの会社はIS学園、IS委員会、アラスカ条約に批准しているすべての国家に取引を持ちかけた。

それは『IS学園の敷地を新星インダストリーが自費で増築し、ISの研究設備を用意する』というもの。委員会と各国には俺の搭乗データの効率的な収集をし、公開するため、それとIS用の様々な装備のテストのため、と説明した。

新星インダストリー製の装備は各国で使用され、評価も高い。まあ、中には俺が試験で使った『五月雨』のような使い手を選ぶ色物装備もあるが。

さらに、前アメリカ代表のミリアさんの乗っていた機体を作ったのもウチのアメリカ支部の人間で、そこから派生した『クァドラン』シリーズは現在量産機のシェア世界一位を記録している傑作機もある。現在は第二世代機『クァドラン・ロー』および、そのカスタム機『クァドラン・キルカ』が作られ、第三世代機『クァドラン・レア』が実機テスト中だ。

専用機として俺かアイシャに『クァドラン・レア』を渡す話もあったが、一番適性を見せたクランがテストパイロットを務めている。

そんな事もありながらウチのIS関連の商品の売上は世界トップになっている。

そんだけ、色々な所と結びが強いので、この案は承認され、現在も突貫で工事が行われている。

……多分、俺の祖父さんである会長や、伯父さんである社長が交渉という名の脅しをかけたのではと俺は予想しているけど。

規模はかなりデカい(この学園の敷地の5分の1くらいの敷地らしい)が、それはデータ収集のために広めのアリーナと輸送用の飛行機を飛ばすための滑走路の為だ。

敷地が広いので宿舎も完備しそこが完成したら、俺とアイシャはそっちに引っ越す事になっている。でも、学園が全寮制なのもあって、宿舎は後回しになっている。まあ、別に作らなくても良いんじゃないかと思う。

そこには俺の使ってる戦闘機も置いてある。試作19号機、愛称(ペットネーム)は『エクスカリバー』。前進翼を採用した独特なデザインなのでかなりインパクトが強い。が、抜群の性能を誇る俺の相棒だ。

自由自在に飛べるって意味ではISでも良いんだけど、あのアリーナの籠っぽい感じが好きになれねえんだよなあ。

そう考えていると、俺の顔に影が差す。太陽の位置的に誰かが屋上にやってきて、俺の頭の上に立っているらしい。影で顔が見えにくいけど。

 

「やっぱりここに居たのね」

 

一言で俺は誰が来たかを悟る。

 

「ん? カナか。どうしたんだ?」

「どうしたんだ? って、探しに来たのよ。もうお昼だし。事情は本音ちゃんに聞いたわ」

 

本音……ほんね……何処かで聞いたような……ああ! 俺はポンと手を叩く。

 

「最初会った時言ってた、カナの幼馴染か! そういや、ウチのクラスに居たな。えーっと、布仏本音ちゃんだっけな」

「そうそう。……それにしてもよく覚えているものね」

「そりゃ、好きな人との初めての会話だからな。一字一句は無理だけど、大体の内容はな」

「そっちは私もそうだけど、最初の自己紹介で名前を聞いただけなのに覚えていたなって思ってね」

「いや、あのしゃべり方と、制服の改造具合で印象が強かったんだよ」

 

あの袖のダボダボ具合のインパクトは強い。中々忘れんだろう。

にしても、幼馴染が揃っているとは……普通にすげえな。この分だと話に出て来たカナの妹と本音ちゃんの姉も居そうだな。

 

「まあね。でも、あれが本音ちゃんだし。……あの子が真剣に怒った時だけ口調が普通になるけど、それは凄い怖いわよ」

「あー…あれだな、温厚な奴ほど怒ると怖いって事だな。一種のギャップ」

 

なんなんだろうな、あれ。普段温厚なのを見慣れている対比で怖いのか、それともただただ怒らせると怖いのか……。まあ、そう言う人は怒らせないに限る。

 

「そういや、アイシャやマリアとは会ったのか?」

「会ったわよ。二人とも美人よね~」

「世間一般から見たらそうだろうな。俺もそう思うし。まあ、でも俺の中の一番はお前だよ。これは俺がお前に会った日から変わらねえ」

「……バカ」

 

そう言ってプイと顔をそむけるカナ。……行動の一つ一つまでカワイイと思ってしまう俺は、心底カナに惚れてるんだなと思う。……アルト、お前の予言は正しかったよ。今度会ったら何か奢るわ。

と、そんな事を考えていると、一陣の風が吹いた、普通なら気にしない所なんだけど、その風はカナの後ろの方からの風だった。んで、俺はいまだに寝転んでいる。つまり偶然ながら『イタズラな風』になった。風、Good job! としか言いようがない。

 

「イサム」

「何だ?」

「何色だった?」

「水色ってか空色。……あっ」

「バカ~~~!」

 

その時俺が最後に見たのは俺の顔に近付いてくるローファーとその奥に見える、桃源郷だった。

ミサイルだろうが、機銃だろうが戦闘機が有れば避けきる俺の目を持ってしても、この攻撃は避けられなかった。まあ、良い物見れた対価と思えばいいか。

 

 

 

「カナ、悪かったって! マジで!」

 

俺はさっきの事で平謝り中。まあ、カナの不注意が原因だったとはいえ、怒る事をやったのは事実だからな。こんな事でいつまでも仲たがいしていたくないし。

 

「………」

 

唇を尖らせてそっぽを向いてるカナ。うん、カワイイ。でも、話しかけても答えてくれんのは辛いし寂しい。

 

「ホントゴメン! 何でも一個言う事聞くから!」

「……ホントに何でも聞いてくれる?」

 

……これは墓穴を掘った。カナ、悪い笑顔になってるし。いつの間にか手に持っている扇子には「作戦成功!」って書いてあるし。

 

「……ハメたな?」

「ふふふ、何の事かな~」

「はあ……良いぜ、何でも聞く。それくらいサービスだ。ただ、あくまで常識の範囲内で頼むぜ?」

「分かってるわよ。でも、後にしましょ。皆待たせてるし、時間はたっぷりあるわ。お昼食べてからで「くぅ~」」

 

喋っている途中に空気を読まずに鳴くカナのお腹の虫。そのせいで顔どころか首筋までを真っ赤にするカナ。色白だから分かりやすい。

 

「アッハッハ! 面白え、マンガみたいなタイミングだな!」

 

笑いを堪えきれず笑い出す俺。

 

「バカ~~~!」

 

俺の胸をポカポカ叩くカナ。一発一発は痛くないけど、流石に連続でやられると少しは痛い。が、無視できるから俺の笑いとカナ自身が落ち着くまでこうさせておこう。

少しして、

 

「はー、笑った。飯行こうぜ」

「……むー」

 

また機嫌を悪くするカナ。……困った。昼飯食いたいんだけどな。うーん……運ぶか。

俺はその場でしゃがみ、カナの膝裏に腕を入れて、持ち上げる。横抱きの形、所謂、お姫様抱っこって奴だ。

 

「にゃ⁉ にゃにをしてるの⁉」

「カミカミだぞ、カナ。それと、俺もいい加減腹が減ったから、このままカナを運ぼうと思ってな」

「降ろして!」

「落ち着いたらな」

 

俺の言葉を聞いて、カナは二度、三度深呼吸して、ちょっとは落ち着くカナ。

 

「イサム、妙に女の子の扱い手馴れてるけど……」

「そうか? まあ、付き合ってんのばれてから、色んな奴がお節介で色んな事教えてくれたからな。こう見えて緊張してんだぜ。丁度良い位置に居るし、俺の胸に耳を当ててみ?」

 

お節介筆頭はフォッカー隊長とミシェル。ミシェルの場合はからかい半分だった気がするけど。

隊長は面倒見良いし、弟分への優しさだと思う。

 

「……凄く心臓の音が速い」

「だろ? ちょっと前に高校で食堂の食券を賭けたポーカーが流行って、勝つためにポーカーフェイスの練習したから、表情は出にくいんだよ」

 

まあ、それでも、無茶な賭け方してたから、総合的にはとんとんって感じだったけど。

 

「賭けポーカーが高校で流行るってどうなの?」

「どうなんだろうな? まあ、ウチの高校、美星は自由な校風が売りだからな。世間一般が想像する高校とは違うだろうよ。さて、今度こそ飯行こうぜ」

 

そう言って俺はカナを下す。

 

「そうね。その前に皆がどこにいるか聞かないとね。ちょっと待ってて。……って、メールが来てるわ。皆食堂に居るって。行きましょ」

「はいよ。案内頼むぜ、カナ」

 

俺はカナの後について行く。

 

「イサム」

「ん? 何だ?」

「横に来て」

「はいよ」

 

後ろに居ようが横に居ようがそこまで関係ないと思うので、カナの言うとおり彼女の横に並ぶ。

 

「えい♪」

「ちょっ、か、カナ? 当たってるって!」

 

横に並んだ瞬間、俺の腕に抱きついてきたから、思わず驚きの声を上げてしまう。

……正直、カナは抜群にスタイルが良い。男子は見惚れ、女子は羨むレベルだ。何が言いたいかというと、俺の右腕は凄い幸せな感覚を味わっているって事。

 

「うっふっふ~、イサム、当ててるのよ♪」

「そ、そうか……」

「……ダメだった?」

「い、いや、そうじゃない! どういう反応すればいいか分かんなかっただけだって」

 

美星学園は共学だが、俺のいた航空科パイロット養成コースは男所帯だった。俺の学年と一緒に過ごした上下二学年、累計五学年で女子は一人もいない。技術関係やオペレーター志望の女子と話す機会はあったけど、一番近い所はやっぱり男子ばっかりだった。

無論恋人が出来たのも初めてだから、こういうのへの対応は分からない。まあ、これから少しずつ慣れて行けばいいと思うけどさ。

 

「そっか、良かった。……どうだった?」

「悪くない。むしろ嬉しい。お前の温もりが伝わってさ、一緒に居るって感じがするぜ」

 

少し前なら考えられなかった状況で、偶然と俺達が歩み寄った一歩で作り出す事が出来たこの状況。楽しまないと損ってもんだろ。

 

「私もだよ。それじゃ、行こっか」

「おう」

 

そのまま、俺達は皆の待つ食堂に向かった。

浮かれていたからなのか、この後どうなるか、予想もしないで……。

 

 

 

「さて! なっちゃんとその旦那には色々、じっっっっっくり聞かせてもらうわよ!」

 

食堂前で、アイシャや、カナの友達と合流をした俺達は各々食べたい物を買って、空いていたテーブルに座る。その後、カナに紹介された新聞部副部長にして、二年整備課エースの黛薫子に俺達二人は詰め寄られていた。他の皆は笑ってるだけだ。

幸い、お昼は過ぎていたから、食堂に居る人はまばらだ。

 

「お、落ち着いて薫子ちゃん」

「こんな面白い話、落ち着いてられるかー!」

「まあ、話すのは構わんぜ。で、何処まで、カナに聞いたんだよ?」

「えっとね……」

 

そこから、薫子がカナに聞いた事を話し出す。といっても、大した事してないし、内容も間違いない。……話す事、無くね?

 

「概ねその通りだな。ただ、それ以上話す事がマジで無い。今後に期待しておいてくれ」

「ふむふむ、それじゃ、シェリル・ノームと早乙女アルトとの関係は?」

「カナ、その辺も話したのか?」

「ちょっとしたきっかけでね」

 

まあ、別に隠す事でも無いから良いか。

 

「二人とも親同士が知り合いで家族ぐるみの付き合いがあったから、ガキの頃から知ってる幼馴染って奴だ。今でも年に何回か会ってるな」

「どっちと先に知り合ったの?」

「シェリルだな。俺の親父とシェリルの親父さんが上司部下の関係だったから、生活範囲が一緒だったんだよ。今は俺がシェリルの親父さんの後輩だから、今でも親元に帰って来た時にシェリルとは会うよ。アルトは……いつだっけな。アルトの親父である当代嵐蔵の講演を見に行った時に紹介されたのは覚えてるんだよな。まあ、シェリルよりは後だ」

 

あんまり、何時初めて会ったかというのを俺は大事に思っていない。ガキの頃出会って、そこからずっと付き合いのある親友。それでいいと思っている。

 

「後、出会った頃はアルトの事を女だと思ってた」

「あー、私も最初はそうだった」

「だよなあ。あのころのアルトは清楚な女の子って感じだったし」

「芝居の稽古の一環でそういうのを叩きこまれたって言ってたね。その反動か、イサムと出会ってから粗暴な喋りも身に着いたとも言ってたけど?」

「あー……『男なのに女の喋り方すんのはどうなんだ?』とは言った。気付いたら、その辺上手く演じ分けてた」

 

そういう所、アルトは天性の役者なのだと思った。

 

「まあ、役に入ったアルトはヤバいわね」

「ヤバいな」

「なっちゃん、いーさー、どのくらいヤバいの」

「本音さんや、いーさーと言うのは俺の事で?」

「そうだよ~」

 

来る途中で、本音はあだ名呼びがデフォルトだとはカナに聞いていたけど、突然はビックリするな。いーさーってのは俺の名前から取ったんだろうな。

 

「そうね……そっちの気が無い私が思わず襲いたくなる位はヤバいわね」

「知らずに見たら、絶対惚れる位にはヤバい」

「……何というか、凄い評価ッスね~」

「いや、妥当だと思うわよ」

「妥当だろ。アルトの舞台を初舞台から毎回観てる感じだとそう思う」

「一度見てみたいわね~」

「と言っても、次の公演は夏よ? 春はちょっと前に千秋楽迎えちゃったし、映像はあんまり出回ってないし」

「俺持ってるぞ。アルトが後で自分の演技を見直すために撮影したのを貰ったんだ。今は一つしかないけど、実家には結構な量置いてある。観るか?」

「「「「「ぜひ!」」」」」

 

全員が食いついてくる。まあ、興味があるならぜひ見て欲しい。

 

「でも、ものによっては長いわよね。イサム、演目何なの?」

「大丈夫、『藤娘』だから30分もあれば十分だ」

「良いチョイスね。アルトの十八番だし。私も好きだし」

「アルトと言うより、早乙女の家の十八番だろ。アルトのも好きだけどガキの頃見た嵐蔵さんの印象もかなり強いぜ」

 

思えば、アルトの家に遊びにいって嵐蔵さんの『藤娘』を観たのが、俺の歌舞伎の出会いだった。

多分、普通のガキだったら何も思わなかったけど、転生したから、日本舞踊の美しさに魅せられたのだと思う。

 

「それじゃ、時間を作って皆で鑑賞会しましょうか。視聴覚室でも借りて」

「良いのかよ? 私用で学校の設備使っても」

「生徒会長権限で」

 

開かれた扇子には『職権乱用上等!』と書かれている。……どうなのさ、それ?

 

「ていうか、あそこでたまにDVD持って来て見てる子居るらしいわよ」

「フリーダムだな、IS学園……」

 

まあ、確かに視聴覚室ってあんまり使われんよな。特に放課後は。

 

「さて、ごちそうさん。荷物取りに教室戻らねえとなあ。あっ、そうだアイシャ、今日の授業の所教えてくれ」

「仕方ないわね。本音も手伝ってくれる?」

「あいあいさ~」

「よろしく頼むぜ、二人とも。んじゃ、また夕飯時にでも会おうぜ、カナ、薫子、フォルテ、マリア」

「いってらっしゃい、イサム」

 

俺達三人は食堂を後にした。

しかし……好きな人に送り出されるってのは良い物だな。




もう新年明けて一週間位経ちますね~。早い物です。
僕は今年は寝正月でした。一日の半分は寝てた気がします。多分、体調があまり良くないのも理由だと思います。


エクスカリバー

出典 『マクロスプラス』『マクロス7』など

プラス、7の主人公機。個人的に一番好きな機体。(二番目が複座仕様のフェニックス、三番目がゴーストブースター付のフェニックス)
『じゃじゃ馬』『テストパイロット殺し』とまで称されるレベルの驚異的な運動性を誇る。
7の主役機、通称『ファイアーバルキリー』の速度は何故か15年後のFの時の最新鋭機達よりも速い。
ちなみに型番はVF-19なのだが、VF-○9と最後に9が来る機体は愛称が剣の名前で前進翼という共通点がある。(VF-9 カットラス、VF-19 エクスカリバー、YF-29 デュランダル)
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