優斗からのキスから数日後のことだった。体調が悪くなったと嘘をついて打ち上げに参加せずにそのまま休日に入った僕は、あれから優斗とは話せていなかった。休みが明けてからも朝登校してから放課後までどんな顔をしていいかわからず僕は優斗を避けていた。なぜか朱莉も僕らに話しかけてくることはなかった。2人と会話すること無く僕が自宅に戻ると、玄関のインターホンが鳴った。ドアを開けると、そこに立っていたのは朱莉だった。彼女の顔は、いつもの明るさを失い、目に明らかな怒りが宿っていた。
「……未来。私に言うことない?相談したいこととか……隠してること……あるよね?」
朱莉は玄関に入るなり、有無を言わさぬ口調で僕を問い詰めた。僕の心臓が、ドクンと嫌な音を立てる。
「……隠してる……こと……?」
僕は、彼女の剣呑な様子に一瞬何のことか分からず困惑した。
「とぼけないでよ! 私、見たんだから! 文化祭の打ち上げの日に教室で優斗とキスしてたじゃない! あれを見た時、どんな気持ちになったか、未来にはわからないでしょ!?」
朱莉の声が、少しずつヒートアップしていく。その瞳からは、悲しみと、そして僕への裏切り感が滲み出ていた。僕は、朱莉の言葉にハッと息を呑んだ。まさか、あの時のことを朱莉が見ていたなんて。頭の中が真っ白になる。彼女は、僕がこの事を何も話さなかったことに怒っているのだ。
「どうして!? なんで優斗と!? それに…… なんで隠すの!なんで私には何も言ってくれないの!?」
彼女の言葉は、まるで鋭い刃物のように僕の心を切り裂いた。
隠していたわけではない。ただ言えなかったのだ。3人の関係をこれ以上複雑にして壊したくなかった。彼女を傷つけたくなかった。あの日僕が絶望していた日に駆け付けてくれて、心配してくれた優しい彼女を裏切りたくなかった。いや……これはただの言い訳だ。僕は後ろめたかったのだ。心の底で彼女に惹かれ恋焦がれておきながら優斗とキスをしたことを。確かに優斗とのキスはいきなりで一方的なものだった。けれど彼をそこまで追い詰めてしまったのは他でもない僕の責任だった。
「あれ……は……あの……隠してたわけじゃっ……それに私からしたわけじゃなくて……」
それでも咄嗟に僕の口から漏れ出たのは言い訳の言葉だった。場違いにも元の世界で浮気を疑われた際にその時も咄嗟に言い訳したことを思い出す。そしてやはりその時の妻と同様に朱莉の瞳が怒りに燃えるのが見えた。僕はあの時と同じ過ちをおかしていた。ただその後の朱莉の行動は完全に僕の予想の範疇を超えていた。
「未来は……隠し事が多いよね……」
朱莉の声が、悲痛に震える。その言葉が僕の心を軋ませる。
「……っ!」
不意に朱莉の手がスッと上がるのが見えて僕は叩かれると思い咄嗟に硬直し衝撃に備えて目をつぶった。
「……んっ!?」
しかし予想していた衝撃はなく、僕を襲ったのはより大きな混乱だった。手の平が頬に振り下ろされることはなく、かわりに押し付けるように勢いよく、僕の唇に柔らかい感触が襲った。勢いで僕の身体は後ろに倒れ壁に背中が当たる。それでも朱莉は止める事無くより一層唇を押し当て、更に僕の口内へと舌を侵入させた。
「ふっ、んっ!?んーっ!!あか……り…やめっ!?」
僕は朱莉の体を離そうと肩を押す。しかし力の入ってない僕の手はいとも簡単に朱莉につかまれ封じるように壁に押し付けられた。しばらくして唇を離した朱莉は僕の目を見て口を開いた。
「未来は隠し事ばっかりだけど、本当に隠しきれてると思った?あんなに私のこと好きでたまらないって目で見て……それに何度も私の体みてたよね?気づいてないと思ってたの?」
男子の目線に女子は敏感だ。それは自分自身も何度も経験していたことだった。優斗が僕の胸に目線がいったことも、腰に触れて赤面したこともそれに日々の男子生徒の視線も。女の子になりきれてない僕ですら気づくのに、朱莉が僕の視線に気付かないなんてある訳が無かった。僕は自分の体が女なのを良いことに無意識に朱莉を何度も見ていたのだ。当然その視線に朱莉は気づいていながら今まで黙認していたのだ。
「それなのに……未来はいつも無防備で……隙だらけで……挙句の果てにキスまでされて……」
朱莉は僕の目をしっかりと見つめた。いつも優しく僕を見守ってくれていた朱莉の目は僕が見たこともないような怒りに染まり、ギラギラとした嫉妬と欲望の色が見えた。
「最初は私の勘違いかとおもった……それでももし未来が気持ちを打ち明けてくれたらどうしようかって、なんて返事しようかって……いっぱいいっぱい悩んでっ!それなのに!なんでっ!?」
朱莉の目から涙がこぼれる。彼女は僕が何も言わなかった気持ちに気づいてくれていた。僕がこの関係を壊すのが怖くて隠していた気持ちにも正面から向き合い、悩んで、受け止めるために心の準備までしてくれていたのだ。それなのに僕は気付きもしないで自分を守ることに精一杯で、また彼女を傷つけてしまった。
「ごめんね……朱莉」
「今更謝ったって……っ!」
朱莉が拗ねたように叫んだが、僕がいつの間にか解放されていた手を朱莉の頬に持っていき優しく触れた瞬間口を閉ざした。
「うん……遅いよね。今更なんだけど、でも言いたいんだ。……好きだよ」
吐息がかかるほど顔を近づけて僕はついに今まで隠していた、いや、隠せていると思いこんでいた本当の気持ちを伝えた。
「本当……遅すぎるわよ」
僕と朱莉はどちらからともなく優しく口付けをした。
実は現在12話くらいまで執筆中なのですが、作者の手の中には10話時点で幸せを謳歌している未来が泣きながら懇願する姿が見えます。このまま幸せルートまで駆け抜けようか……しかしながら長年このサイトを読み続けている私は知っています。曇り大好きにちゃにちゃ民が多いという事を。ては運命を左右する……かもしれないアンケートのお時間です。
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何いってんだ主人公なんて曇らせるもんだろ
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主人公曇るのは当たり前。周りも曇らせろ!
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路線変更!知らない内に周りだけが曇ってる
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多分選ばれない。みんな幸せハッピーエンド
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多次元宇宙!全部書きな(作者にムチ打ち)
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しらね。作者の好きにしなよ←オススメ★