異世界の歌姫(ディーヴァ)    作:弾暴

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微エロ回
引き続き物語には関係ないイチャイチャ回です。


幕間:初夢に溶ける夜

年が明けて数日が経ち、冬休みも残り少なくなってきたある夜。朱莉と過ごす穏やかな日々の中で、僕の心はすっかり満たされていた。公園での甘い時間も、家で映画を見て彼女に抱きしめた夜も、どれもがかけがえのない宝物だ。そんな温かい日常に包まれながら、僕は深い眠りについた。

意識が、ふわりと浮遊するような感覚。目を開けると、そこは真っ白な空間だった。どこまでも続く白い霧に覆われ、まるで雲の中にいるみたいだ。一体ここはどこだろう、と首を傾げたその時、霧の中から、聞き慣れた声が響いた。

 

「未来、どこ見てるの?」

 

その声の主は、朱莉だった。白い霧の中から、彼女がゆっくりと姿を現す。いつもの制服姿ではなく、透けるような薄い布地のドレスを身につけていた。それは、ほとんど何も隠さないほど薄く、光を透かして、彼女の肢体のしなやかなラインを鮮明に浮き上がらせていた。肩から腕にかけての柔らかな曲線が露わになり、足元まで伸びる裾は、霧に溶け込むように揺れている。その姿は、まるで夢の中に現れた、官能的な女神のようだった。

 

「朱莉…?これ、どういう…」

 

僕が戸惑っていると、朱莉は悪戯っぽく微笑んだ。その笑顔は、いつもの何倍も扇情的で、僕の視線は彼女の全てに釘付けになる。熱いものが、僕の体の奥からこみ上げてくるのを感じた。

 

「何って…夢に決まってるでしょ? しかも、未来の夢だよ。ふふ、すごく熱い視線……こういう服が好きなの?」

 

そう言って、朱莉は僕に一歩、また一歩と近づいてくる。足音は聞こえないのに、彼女の存在が僕の意識を支配していく。甘く、陶酔させるような香りが、鼻腔をくすぐった。

 

「ねぇ、未来。もっと私のことを見て。私は全部…あなたのものだから、思い通りにしていいんだよ?」

 

朱莉は、僕の目の前でぴたりと立ち止まった。そして、するりと僕の頬に手を伸ばす。その指先が、肌に触れた途端、電流が走ったように体が震えた。彼女の指先が、僕の顎からゆっくりと頬を撫で上げ、耳元に触れる。

 

「だって、未来の夢なんだから、何でもありでしょ? ねぇ、望むままに、私の全部を感じて?」

 

彼女の瞳は、吸い込まれるように僕を見つめている。いつものまっすぐな眼差しだけど、どこか挑発的で、僕の心の奥底を覗き込むような、ねっとりとした光を帯びていた。僕は、心臓の音がうるさいくらいに高鳴っているのを感じた。

朱莉は、そのまま僕の首筋に指を滑らせ、シャツの襟元へと手を差し入れた。ぞくぞくとした感覚が、背筋を駆け上がった。彼女の吐息が、僕の耳元にかかる。熱い。

 

「もっと、私に触れてよ、未来…私の、全てを…」

 

囁くような声が、僕の耳の奥で響いた。その声は、僕の理性を溶かし、僕の奥底に眠っていた本能を激しく揺さぶるようだった。僕は、まるで抗えない引力に引き寄せられるかのように、ゆっくりと朱莉の腰に手を回した。透ける薄い布地の下の、柔らかな肌の感触に、体中の血が沸騰する。

朱莉は、僕の行動に満足したように、くすりと笑った。その笑い声は、甘く、誘惑的だ。そして、僕の顔を両手で挟み込むようにして、ぐっと引き寄せた。

 

「知ってる? 未来の夢の中の私って、もっと、もっと大胆なんだよ? 想像以上でしょ? …ほら、もっと味わって?」

 

そう言って、朱莉は僕の唇に、ためらいなく自分の唇を重ねた。夢の中のキスは、現実よりもずっと甘く、ずっと深く、僕の全てを奪っていくようだった。彼女の舌が、僕の口内を優しく、しかし確実に探ってくる。僕は、その甘美さに抗うことなく、ただ彼女のキスを受け入れた。僕の意識は、朱莉の甘い香りと、柔らかな唇、そして絡みつく舌の感触に埋め尽くされていく。このまま、どこまでも、彼女の甘い泥の中に溶けていってしまいたい。

朱莉の腕が、僕の首に回される。二人の体が、隙間なく密着した。彼女の柔らかな胸の感触が、僕の胸に直接響いてくる。熱い。僕の体が、彼女の熱に呼応するように熱を帯びていく。彼女の指が、僕の髪を撫で上げ、耳の後ろを優しく掻く。その度に、ゾクゾクと全身に快感が走った。

 

「ねぇ、未来。もっと、来て…私と、一つになろう? 私の全部、受け止めてくれるよね?」

 

朱莉の誘うような声が、夢の深淵へと僕を誘う。僕の理性は、もうほとんど残っていなかった。彼女の求めに応じるように、僕はさらに朱莉を抱きしめた。彼女の薄いドレスの隙間から、肌の感触がよりはっきりと伝わってくる。熱く、そして粘りつくような快感が、僕の全身を駆け巡った。

夢の中の朱莉は、僕の熱に煽られるように、さらに甘く、そして積極的に僕を求めた。彼女の指が、僕の服のボタンに触れ、ゆっくりと、一つずつ外していく。肌を撫でる冷たい空気が、かえって僕の体を熱くさせた。

 

「ふふ、未来…もっと、私を感じて…」

 

彼女の囁きは、僕の耳元で甘く響き、抗えない陶酔へと誘う。僕は、ただ、彼女の導くままに身を委ねた。夢の中の僕たちは、互いの体温を感じながら、限りなく深く、混じり合っていく。そこには、何の羞恥もなく、ただ純粋な喜びだけがあった。白い霧が、僕たちの全てを包み込み、外界から隔絶された、二人だけの世界。僕は、朱莉の全てを受け入れ、彼女の誘いに溺れていった。

その時、遠くから、微かに朝を告げる鳥の声が聞こえたような気がした。夢の中の朱莉が、少し残念そうな顔をした。

 

「あぁ、もう朝になっちゃうのかぁ…残念。これからがいいところだったのに」

 

彼女は、僕の唇からゆっくりと離れ、僕の額にそっとキスをした。

 

「でも、大丈夫。きっとまた、夢の中で会えるから。今度は、最後まで覚悟しといてよ?」

 

そう言って、朱莉の姿は、ゆっくりと白い霧の中に溶けていった。僕の手から、彼女の温もりも、柔らかな感触も、あっという間に消え去る。僕の意識は、暗闇の底へと引き戻されていった。

そして、目が覚めた。

窓の外は、まだ薄暗く、夜明け前の静けさに包まれていた。僕は、自分の部屋のベッドに横たわっている。心臓が、まだ大きく高鳴っていた。体は火照り、指先には、朱莉の柔らかな肌の感触が、確かに残っているような気がした。

 

(夢……?)

 

まざまざと蘇る、夢の中の朱莉の姿と、彼女の甘い囁き。そして、あの過激なやりとり。頬が、カッと熱くなるのを感じた。これは、初夢なのだろうか。新年早々に僕はなんて夢をみているんだ……布団の中で、僕は顔を赤くして丸くなった。隣に朱莉がいたら、一体どんな顔をして、僕をからかうのだろう。想像するだけで、さらに熱くなる。

この夢が、現実ではないことに安堵しつつも、どこか名残惜しさを感じている自分に気づき、僕はさらに顔を覆った。朱莉が夢の中で言った「また会える」「覚悟しといて」「今度は、最後まで」という言葉が、頭から離れない。

この初夢が、一体何を意味するのか。僕と朱莉の未来は、夢の中のように、もっと大胆で、甘いものになるのだろうか。

僕は、カーテンの隙間から差し込む、かすかな朝日に目を細めた。新しい一年の始まりに、こんなにも刺激的な「予感」を抱くことになるとは、思ってもみなかった。

その日の午後、僕は朱莉と会う約束をしていた。夢の余韻がまだ僕の頭の中に残っていて、朱莉の顔を見るのが少し気まずい。きっと、僕の顔はまだ少し赤いだろう。

約束の時間になり、いつものカフェで朱莉を待っていると、彼女が扉を開けて入ってきた。いつもの制服姿で、冬の光を浴びて、僕に満面の笑みを向けている。

「未来!お待たせ!」

彼女の声は、いつもの明るい朱莉の声だ。夢の中の挑発的な朱莉とは、少し違う。だけど、その笑顔は、僕の心を温かくする、紛れもない彼女の笑顔だった。

 

「朱莉…」

 

僕がそう呼ぶと、朱莉は僕の隣に座り、僕の顔をじっと覗き込んできた。

 

「どうしたの? 未来、顔赤いよ? 風邪でも引いた?」

 

心配そうに僕の額に手を伸ばす朱莉に、僕は思わず身を引いた。彼女の温かい手が、夢の中の感触と重なって、心臓が大きく跳ねる。

 

「だ、大丈夫だよ! ちょっと、その…寝不足で…」

 

僕は必死に誤魔化した。朱莉は、そんな僕の様子を見て、不思議そうに首を傾げた。

 

「ふーん? 変なの。なんか今日の未来、いつもより熱っぽくてなんか可愛いね?」

 

そう言って、朱莉は悪戯っぽく僕の頬をつんと突いた。その仕草に、僕はさらに顔を赤くする。夢の中の朱莉が言った「可愛いね」という言葉が、頭の中でリフレインする。

 

「か、可愛くない……ってば…!」

 

僕が必死に否定すると、朱莉は楽しそうに笑い声を上げた。その笑顔は、僕の心の中の戸惑いを、少しずつ溶かしていくようだった。

 

「あっもしかして初夢で何か面白い夢でも見たのかな? もしかして私の夢、見ちゃったとか?」

 

朱莉が、僕の顔をじっと見つめながら、そう尋ねた。その言葉に、僕の心臓は最高潮に達した。まさか、夢の中の出来事を、彼女が知っているわけがない。だけどなぜか、彼女の視線が、僕の心の奥底を見透かしているような気がして、僕は視線を逸らした。

 

「え、あ、いや…別に、何も…」

 

しどろもどろに答える僕に、朱莉はさらに顔を近づけてくる。

 

「ふーん? 本当に? なんか、未来の顔見てると、なんかエッチな夢でも見たのかなって、思っちゃうんだけど?」

 

朱莉の言葉に、僕はもう何も言えなくなった。彼女は、僕の心の全てを、見透かしているのかもしれない。

 

「あっそういえば冬限定のホットドリンクあるんだよね。それ頼もうかな」

 

話を変えようとメニューを開き視線を落とす。あからさまに話を反らした僕の反応に「ふーん……」と一言こぼすと身を乗り出して僕の耳元に唇を寄せた。

 

「ねぇ未来。今夜も、私の夢見てくれる? 今度は、もっとすごいこと……しちゃおっか? 」

 

朱莉が、僕の耳元で囁いた。耳にかかる息のくすぐったさと熱さに思わず体を起こし熱くなった耳に手をやった。その声は、夢の中の彼女の声と、寸分違わぬ甘さだった。僕は、顔を真っ赤にして、ただ口をパクパクさせながら見つめることしかできなかった。

そんな僕を尻目に手を挙げて店員さんを呼ぶと「ほら未来もいつまでも呆けてないで注文しよ」と微笑んだ。夢と現実が曖昧になるような、不思議な感覚。朱莉は僕の全てを包み込み、そして僕の知らない僕の感情までをも引き出していくのだった。

 

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