アストライア冒険譚   作:ものえの

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4.”魔女狩りの魔女”

 元気組一行は、ならず者の頭目から得た情報を元に墓地の地下奥深くへと歩みを進める。既に先行した冒険者達と思われる足跡が容易に発見出来た事もあり、敵襲を受ける機会が無かったのは幸いであった。しかしそれは同時にワッチの胸にある心の不安が得体の知れない怪物となり彼女を押しつぶそうしていた。リチャードが歩みを止めるとワッチに振り返る。

「な、何?」

驚くワッチにリチャードは落ち着いた口調で告げる。

「これが最後の通告だ。少しでも恐怖を感じたのなら地上に戻れ。これだけ進んで冒険者の姿を見ない、という事は最奥で全員が何者か討たれた証拠。この奥に潜む怪物は俺達の討伐すべき魔女では無い可能性だってある。俺を含めこの4人は個の目的の為に命を賭して戦う覚悟を決めた連中だ。だがお前は違うだろう?いくらエドゥ様やネッセが認めた、と言っても人は簡単に死ぬ。恐怖で足がすくむその一瞬がお前の命を奪うんだ。そしてそれは俺達の命にも直結する。」

「リチャードはアタシの事、嫌いなの?」

「勘違いするな。お前には間違いなく冒険者として開花できる才能がある。俺はただそれを血で汚して欲しく無いんだ。魔女狩りなんて穢れた血で。」

「アタシも、あるよ。覚悟。」

ワッチはいつになく真剣な表情でリチャードを見る。

「何だ、その覚悟ってのは。」

「『赦す』覚悟。魔女だって全員が悪人じゃない、って前にオリオンが言ってたよね。」

「そうだな。」

ワッチの言葉にリチャードもまた真摯に受け止め言葉を返す。

「だからアタシは魔女を『赦す』。その覚悟で魔女と戦う。」

「それは俺達を犠牲にしても、って事か?」

「出来ないって最初から決めつけたら出来ないまま終わる。出来ると信じ続ければ出来る道が見つかるかも知れない。うまく言えないけど、今の道はアタシが進むべき道だと思う。」

「貴方の負けね、リチャード。ワッチの覚悟、聞かせてもらったわ。」

ユウナがリチャードの肩を叩く。

「でもね、ワッチ。」

ユウナがワッチに見せた表情、普段の感情を抑えた抑揚の無い顔のそれが今まで見せた事が無い恐ろしい形相に変わる。

「私は明確な殺意で魔女を葬り去るわ。貴女の覚悟と私の覚悟、果たしてどちらが上回るか今から楽しみね。」

 

 地下墓地はやがて回廊へと変わり、一行を先に進める。回廊の奥には鋼鉄の扉、固く閉ざされ中の気配を探る事は出来ない様に思える。

「僕の出番、ですね。」

オリオンは片膝をつき、錫杖を地に立てる。目を閉じ、静かに呼吸を整えると、低く響く声で祈りを紡いだ。

「大いなる女神の御名において願い奉る──

我らに仇なす悪意の在処を示し、

その心根を我が眼前に照らしたまえ。

マリティア・センシア(悪意を感知せよ )」

錫杖の先端から淡い光が波紋のように広がり、周囲の空気を震わせる。光は壁も闇も越え、敵意を抱く者の存在を静かに暴き出す。

「・・・確認出来ました。敵対する個体1体。」

「1体だけか?」

リチャードの問いにオリオンは頷く。

「ええ。現在、明確に敵意を持った個体は1体のみ。ですが、この呪文では突入後に発動する罠や術者によって召還される魔物はカウントされません。迂闊に飛び込めばそれこそ魔女の術中に嵌る恐れがあります。後はリーダーである君の判断に委ねます。」

「その必要は無いわ。オリオン、全員に魔法防御の呪文を。」

「ユウナ、何か策があるのか?」

リチャードの問いにユウナは普段の感情を抑えた表情で答える。

「私自身が”策”だもの。まず私が魔女の仕掛けたであろう茨を全て凍てつかせて破壊する。リチャードは私の正面に立ち、魔女が放つ光線を全力で受け止めて。オリオンはリチャードの回復に専念、ゲンガン、ワッチは両側面から魔女を覆う茨の障壁を破壊して。茨の障壁は太刀や短剣といった斬撃武器には耐性が無い。けどその障壁を崩さない限り魔女本体にダメージを与える事は出来ない。障壁を破壊したその間隙に私の呪文で魔女を討つ。」

ユウナは大まかな戦略を4人に説明する。次にゲンガン、ワッチの2人に目線を移して説明を続ける。「私とリチャード、オリオンで魔女の攻撃を受け止める。けれどそれにも限界がある。魔女の次の手より早く私の呪文を撃つには、2人の連撃で茨を素早く断ち切り魔女の防御を崩す事が最も重要になるわ。」

ユウナの言葉に2人は大きく頷く。

「魔女の攻撃は把握している限り大きく二つのパターンがある。一つは魔女を起点として同心円状に茨が拡がって相手にダメージを与える”茨の波”。この攻撃はオリオンの魔法防御の呪文でダメージが軽減されるけど、相手を吹き飛ばす効果があるから攻撃を正面から受けると茨による波状攻撃で防御魔法の効果が一瞬で消えてしまうわ。光線を止めたら魔女に大きく踏み込んで接近する。魔女の足元からは”茨の波”は発生しない。ここは攻撃を叩き込む最大のチャンス。」

ユウナの説明の間、ワッチは喉がヒリヒリ乾くのを感じる。

「もう一つの攻撃は”茨の槍”。魔女が両手を交差させたらこの攻撃が来る可能性が高い。これは近接範囲攻撃だから全力で離れて。特に二人は軽装備だから簡単に貫かれて大ダメージを負うわ。逆にリチャードはこの行動と同時に突撃して盾で魔女の攻撃を阻止。アナタなら”茨の槍”を受けても簡単には倒れない。オリオンは退却組とリチャード、双方の回復になるけど耐えて頂戴。」

「ご期待に添えるよう、祈りに心血を注ぐまで。」

「ユウナ、お前はどう動くんだ?」

リチャードの問いにユウナは頷く。

「魔女の標的は私。だから私を狙って魔女は動く。リチャードにはその攻撃を受けて耐えてもらう。だから基本は私から離れないで。それに・・・。」

「それに?」

「私が知っているのは学院で学んだ高位の”赤き茨”の魔女が使うとされる戦術。でも大半の魔女は直線的な動きの茨を使った相手を拘束する術で集団をかく乱させる程度、それでも十分脅威だけれど。」

「そうだな。俺の相手はそういった連中が大半。稀に範囲魔法を使うぐらいか。」

「でも、『導師』と呼ばれる指導者クラスの魔女の実力は未知数。だから私の情報が絶対ではないことだけは肝に命じて。」

ユウナの言葉に4人は大きく頷く。

「では、拙者が扉を開け申す。」

「・・・その必要は無さそうだぜ。」

リチャードはズズズッ、と音を立て下に滑り落ちる扉を見やる。オリオンは儀仗杖を立て、女神に祈りを捧げる。

「天上の光よ、我らを護る盾と化し、

いかなる呪(まじない)も祓い給え──

サンクタ・バリア!」

しばしの後、聖なる印が床面に出現する。やがてそれは淡く明滅する金色の鎧となり仲間全員を包み込む。同時にユウナもまた魔導書を片手に呪文の詠唱を始める。

「氷の魔よ、その威、今ここに示せ──

ジェルム・コンストリンジェ──締め上げ、全てを凍てつかせよ。」

カンッ!ユウナが奏でる杖の音に合わせて出現する凍てつく空気。ぽっかりと空いた回廊の空洞に吸い込まれるように空気は融け込んでいく。次の瞬間、ドン、という激しい衝撃音が回廊全体に響き渡る。ユウナは誰よりも早く、回廊の奥へと足を進める。

「ご挨拶は済ませたわ。では行きましょう、魔女狩りに。」

 

 一行は回廊奥の部屋へと進む。氷結呪文の爆発によって部屋の中にあったと思われる多くのオブジェは破壊され、何も無い広い空間には、長椅子に座る臙脂のローブに身をまとい髑髏の杖を持つ一人の老婆が座っていた。

 

【挿絵表示】

 

 

「お邪魔するわ。」

まずユウナを先頭に、リチャード、オリオンと続いて一行は部屋の中へと進む。

「次はお前達かい。そろそろ本物だと嬉しいのだけどねぇ。」

部屋の奥から響く老婆特有の甲高い声。それが閉鎖空間特有の反響によってより一層不気味さを醸し出す。

「私の名はユウナ=ロレーン。お前達の呼ぶ”魔女殺しの魔術師”よ。」

「なるほど。お前があの護国卿の切り札だというのかい。これはミイナ様に良い土産が出来たというもの。」

「ミイ・・ナ?」

魔女は立ち上がると足元に赤い茨を召還する。

「じゃあ始めようじゃないか。魔女の”宴”をねぇ。」

魔女の右指先から赤く燃え上がる光線がユウナに向けて発せられる。それに応じでリチャードは盾を構え、ユウナをかばい魔女の前に立ち塞がる。

「ワッチは右から、ゲンガンは左から魔女を取り囲め!最初の計画通りだ。」

「ユウナさん、ご気分は?」

すかさずオリオンはユウナに駆け寄る。

「大丈夫よ。計画通り着実に追い詰めましょう。見る限り魔女の玉座からこちらまでの距離はおよそ10m。対して幅は6m程度。二人が立ちまわるには十分な広さ。これなら戦えるはずよ。」

「お話中悪いが回復も頼むぜ。今のところ魔女の敵意はこちらに向いている。ワッチとゲンガンに可能な限り攻撃の機会を作るんだ。」

オリオンはリチャードに手をかざし回復の魔法を唱える。ユウナも立ち上がると”氷の槍”の呪文で魔女をけん制する。

「うおおおっ!」

ゲンガンは名刀”霧絶”を手に魔女を守る茨に連撃を浴びせる。ワッチもまた短剣と黒曜石の短刀の二刀で茨を攻撃するも明らかに動きの固さが見えた。

「邪魔な連中だねぇ。これで吹き飛びな!」

魔女は光線を止めると髑髏の杖で床面をカツン、と叩く。

「これは、波の合図!」

魔女の足元に合った赤い茨が消え、同心円状に拡がる津波の様に元気組一行に襲い掛かる。ゲンガンは前ステップで茨を飛び越えそのまま魔女に斬りかかる。一方のワッチは茨を攻撃を交わすのが精一杯で攻撃の手の速度は明らかに低下していた。

「ゲンガンが攻撃している茨の障壁が順調に崩れている。私はその場所に狙いをつけて魔法を放つ。次の”茨の槍”発動時にリチャードは魔女に突撃して槍の発動を少しでも喰いとめて。」

「判った。オリオン、こっちは頼む。」

「はい、任せてください。」

一方、ゲンガンは茨を確実に削ぎ落していく。

「うっとおしい男だねぇ。ならこれならどうだい!」

再びユウナへ向けた光線を止めると魔女は両手を交差させ念を込める。その行動に合わせる様に、ゲンガンは距離を取り入れ替わりにリチャードが前に出る。

「うおらっ!」

「遅いね、小僧。」

リチャードのチャージが届くより一瞬早く”茨の槍”完成し、リチャードに襲い掛かる。「ちいっ!」

リチャードは素早く体勢を立て直すと、槍の追撃を盾で受け止める。魔女は槍を収めるとユウナに向けて指先を向ける。

「これを受けきれるかい?」

「させるかよ!」

リチャードが剣を抜き飛び掛かろうとしたその時、『ドサッ』という何かが落ちる音が響き渡る。リチャードが目を向けた先には茨の槍で串刺しにされ血の海に沈むワッチの姿があった。「ワッチ?!」

その間隙を縫い魔女は破壊光線を再びユウナに向ける。

「オリオン!」

「お任せください!リチャード、君も引くんだ。」

オリオンの声にリチャードも一度オリオンの元に引き下がる。

「オリオン、呪文詠唱の間、持ちこたえられる?」

「時間は?」

「10秒。」

「それなら問題ありません。」

「オリオン、ワッチがやられた!」

「”茨の槍”を回避できなかったのですか?」

「あの位置から察するに背後を取って魔女を無力化する気だったんだろう。だがあの血の量だ。助かる見込みは少ねぇ。」

「ならば拙者が!」

「ダメだ、これ以上行動を乱すな。今は魔女に専念するんだ。」

「リチャード、オリオンと交代。オリオンは再びパーティの回復を。ゲンガンは先の行動と同じ、茨の排除に回って。この魔女を倒さなければ誰も救えないわ。」

「・・・承知したでござる。」

ゲンガンは太刀を構え、再び魔女に斬りかかる。ユウナは両手を拡げ、魔力を媒介である杖に集中させる。

「万象を貫き、悪しき存在を裁くは銀。茨は戒めとなり、咎人を縛る枷となる。汝、その罪の深さを知れ──

 Witch Hunting Secrets,”Silver Thorn!”(魔女狩りの秘術”銀の茨”)」

ユウナの杖から放たれた銀色の光線。オリオン、リチャードの身体をすり抜け一直線に向かった先はこれまでにゲンガンが削って露わとなった魔女の急所。魔法の直撃と共に銀色の燐光が魔女の周囲を包みやがてそれは大きな銀色の茨でできた蕾となった。

「・・・やったのか?」

攻撃が止まった様子を感じ、リチャードが周囲を見渡す。

「そうあって欲しいわ。私にはこれ以上の魔法は無いから。」

「そうだ、ワッチの手当を!」

オリオンが叫んだ頃にはゲンガンがワッチを背負って戻って来ていた。

「まだ息はあり申す!」

「分かりました。至急回復魔法を・・・。」

オリオンがワッチに回復魔法を唱えた直後、ビシッという亀裂が入る音が銀の蕾から聞こえる。

「マジかよ・・・。」

リチャードが思わず絶句する。

「ここからは導師バーバラとの戦い、って訳ね。」

銀の蕾から姿を見せたのは、粉々に砕けた髑髏の杖を捨てた魔女。

「驚いたねぇ。この私に身代わりの杖を使わせるとは。確かにお前さんは魔女結社にとって脅威となる存在だ。」

バーバラは床に手を当て、一言二言呪言を吐く。それに呼応するかの様に部屋の空気が震える。凍結していた部屋のオブジェが溶け始め、部屋全体の温度が上り始める。ハーバラが手を当てた床から2本の赤い茨が左右に分かれて伸びてゆく。やがてそれは赤い茨を纏い斧槍を両手に握った甲冑兵となり、元気組一行を赤く光る眼で睨みつける。

「さぁ、導師の称号は伊達じゃないこと、教えてやろうかねぇ。」

 バーバラの合図に呼応し、二体の茨兵が元気組を襲う。

「させるかよっ!」

リチャードが前に立ち、敵の斧槍を受け止める。しかし、そのリーチ差はリチャードを防戦一方に追い詰める。方やもう一体の茨兵に対しゲンガンが立ち向かうが、太刀では甲冑相手に満足なダメージが与えられずにいた。

「オリオン、もう一度魔法防御を!茨の波が来るわ。」

「ダメです、詠唱が間に合いません!」

ユウナは杖をかざし高速詠唱を行う。

「杖よ、その輝きを持って我らを護らん。」

バーバラが放つ茨の大津波。ユウナの持つ杖の魔力によって壊滅は免れたものの、それは彼らの生命力を大きく奪う一撃となった。

「さあ捕まえたよ。」

バーバラが右拳を大きく前に突き出す。次の瞬間、ユウナが悶絶し杖と魔導書を落としてしまう。

「ぐ・・・うう。」

「お前以外にこの拳を見る者はいない。このまま二つにへし折ってやろう。」

仲間の危機のさ中、ワッチは現実とまどろみの境にあった。

(身体が動かない。アタシに出来ることは何だったのだろう。)

トクン、と波打つ鼓動。それはワッチの左手にある短刀から確かに感じ取れた。

(メイビー?・・・うんそうだね。諦めるのはいつでも出来る。だから・・・)

ワッチはゆっくりと立ち上がり左手の短刀を正面に構える。

「君を信じる!」

ワッチは全身のバネを使い大きく跳躍すると、バーバラが掲げる右拳に向けて短刀を大きく振り抜く。

「ぐぁっ!」

バーバラは大きくのけぞる。次の瞬間にはユウナを握り潰そうとした呪文は消失していた。

「ワシの巫術を破るじゃと?!」

「そう、この子には出来る。アタシは彼の声を聞いた。」

「その短刀、黒曜石!?」

バーバラは再び”茨の波”を起こしパーティの結集を妨害する。が、ワッチはそれよりも早くバーバラの至近距離まで詰め寄りゲンガンが攻撃し続けた障壁を一撃で破壊して見せる。

「お、おのれぇ小娘が!」

バーバラは巫術の構えを取り、新たな呪文を発動させる。

「茨の呪いに燃え尽きよ!”炎獄の柱”」

その言葉と共にバーバラとワッチが戦っていた周囲3メートル四方が炎の柱となって燃え上がる。

『ワッチーっ!』

誰の声か、悲鳴にも似た叫びが虚空に響き渡った。一瞬の出来事、バーバラは先に転移魔法を利用し逃げ場を確保した上で炎獄の柱を発動していた。しかしワッチの先読み──いや魔女の行動を見抜く力がバーバラの転移魔法の位置を読み切っていた。

「その目、”魔女の目(Witch's Sight )”さえも得たかぁ!」

「逃がさない。ここで仕留める、”茨の獣”!」

程無くして炎が消失した後、残された一行が見たのはワッチの短刀による一撃を受けてゆっくりと崩れ落ちるバーバラの姿だった。そしてバーバラが崩れ落ちたとの同時に茨兵もまた姿を消していった。一行は崩れ落ちたバーバラの元に集まりその姿を見る。驚くべき事に、バーバラには血の汚れ一つも無く、むしろ勝者であるはずのワッチの方が血で汚れていた。

「死んだ・・のか?」

呟くリチャードにワッチは首を振る。

「生きているよ。バーバラさんを魔女として狂わせた”茨の獣”はメイビーが捕らえた。」

「何ですか?その”茨の獣”とは。」

「”赤き茨の君”が持つ力をこの世界に顕現させる精霊さ。その獣と同化した者のみが導師の資格を得る。」

オリオンの問いに答えたのはバーバラだった。既に仮面は外れておりその表情は穏やかで何処にでも居るごく普通の老婆に戻っていた。

「では”赤い茨の君”とは?精霊の君とどう関係があるのかしら。」

「精霊界の知識はあるようだね。その通りさ。魔女結社”赤き茨”は精霊界に居られる”赤き茨の君”を崇め大いなる炎で大地を舐めつくしその力をより強固にする。それ以外に目的など無いさ。」

「もう一つ。ミイナとは何者?」

「いずれ分かることさ。魔女結社を全て滅ぼすつもりなんだろう?少なくともワシよりは格上のお方さ。」

「ねぇ、少し休ませてあげてもいい?」

ワッチは元気組一同の顔を見やる。

「駄目だ。このままギルドまで戻ってエドゥ様に引き渡す。それでこの依頼は終了だ。」

リチャードの突き放すような言葉がワッチの胸を締め付ける。

「そうじゃよ、ワッチさん。ワシははっきりと魔女としての行いを記憶しておる。そして多くの護国兵団を死に追いやった。全てはワシが望んだ結果に過ぎん。じゃが、アンタはその均衡を捻じ曲げた。本来、死でしか贖えない代償を『赦す』という形で生かす。その道を進むなら、アンタも魔女だ。世の理に挑む”魔女狩りの魔女”。」

「アタシが・・・魔女?」

動揺するワッチにユウナがすかさず割り込む。

「これ以上、この老婆と話すのは危険よ。ワッチ、貴女は私達をこの魔女の手から救ってくれた。今はそれだけを心に留めておいて。」

こうして元気組一行は初めての魔女討伐を『生きたまま捕縛』という誰も成しえなかった形で成功を収めた。

冒険者ワッチ━━━その名が後世の書に記述される事は極めて少ない。しかしこの五王国末期の時代、確かに魔女と死闘を繰り広げた少女の姿があった。その少女の名はこう記録されている。

Witch Hunter Witch━━━ ”魔女狩りの魔女”と。

 

                                       ==Next Stage ACT2==

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