アストライア冒険譚   作:ものえの

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※次回投稿は7月23日 20時30分前後を予定しています。


第二章 我ら『元気組!』
1.一つ目の出会い


 時は現在、クリスト王国第二の都市バルダ。商人達の馬車が絶え間なく往来する道路をかき分け褐色の少女が疾走する。彼女のはワッチ。今、正に冒険者としての道を踏み出した盗賊ローグである。

 

彼女の向かう先は、バルダでも最大級の規模を誇る酒場『一攫千金』。身も蓋も無い店名だが逆に言えばごろつきに近い冒険者の心情を最も明確に現した店名とも言える。

 

「こんちわー!エリー、髭爺居るぅ?」

 

ワッチは威勢よく酒場のスイングドアを開いて中に入る。しかし酒場の雰囲気はいつもと違いぎらついた目をして掲示板を眺めるならず者であふれ返っていた。

 

「あら、カティじゃない。どうしたの、こんな早くから。」

 

ワッチを出迎えたのは酒場で働く娘と思われる女性。その笑顔は荒くれ者の多い冒険者でさえ心を和ませる不思議な魅力を持っていた。

 

「ふふん、今日からその名前でアタシを呼ぶのは止めてくれないかな。」

 

ワッチは右手の二指を立てエリーの口元を指差す。

 

「どういう事?」

 

「今日からアタシは数々の難事件を解決する冒険者として旅に出るんだ。」

 

「あら、御父様が認めてくださったのね。ではどう呼べは良いのかしら、冒険者さん?」

 

エリーの言葉にワッチは改めて胸を張る。

 

「冒険者ワッチ。それがアタシの新しい名前さ!」

 

「威勢の良いのはいいけどね。今、冒険者ギルドは新規登録出来ないのよ。」

 

「え、どゆこと?」

 

エリーが酒場でたむろっているならず者達に目を向ける。

 

「魔女結社『赤き茨』がバルダでの活動を宣言した事でね。」

 

彼女はため息を一つ付くと話を続ける。

 

「仕事を求めて腕に覚えのある人達が急に増えたの。」

 

「そっか、髭爺って顔が広いもんね。」

 

「おまけに近いうちに王都から女王陛下の勅命を受けた冒険者も来るっていうし。」

 

「うわ、その人たち何か凄く強そう!」

 

不穏な話のはずなのに明るさを失わないワッチの言葉にエリーは思わず笑ってしまう。

 

「それで今はその冒険者達の受け入れを優先する為、新規登録をお断りしている訳。」

 

「そんなぁ。ねぇ友達のよしみで髭爺に会わせてよ。」

 

引き下がる気配の無いワッチにエリーはやや強い口調でたしなめる。

 

「これ以上私の仕事を増やさないで頂戴。それに冒険者になる為にはまず仲間を集めて小さな仕事の情報を得る事がとても重要。あのテーブルの人達はその”金になる情報”を得ようと今必死に耳をすましているのよ。」

 

ワッチが酒場に入った時に感じた違和感。彼女のイメージは笑いながら仲間と食事をし次の探検先を決める、そんな明るいイメージだった。だが、今彼女の見ているテーブルはお互いを権勢しつつ情報の奪い合う、という戦場。だが彼女はおくびれる事無く、エリーに問いかける。

 

「じゃあ、幼馴染のよしみでさ。魔女以外の情報って知らない?」

 

「魔女以外?そうね、例えば西方のサラゴナ周辺に出没する豪傑とかかしら。」

 

「豪傑って剣や斧をブンブン振り回す人?」

 

「ま、まぁ間違ってはいないけど。主に立派な装備で身を固めた冒険者に勝負を挑んてくるそうよ。でも金銭には目もくれず、奪われるのはもっぱら武器ばかりとか。」

 

「その話、詳しく聞かせてもらってよいかな?」

 

『?!』

 

二人の話に割って入ったのは一人の大男。その鍛えられた筋肉は布地の服からもはっきりと見て取れた。

 

 

 

「うわ・・・でっか。」

 

「失礼ですが、ギルド会員の方ですか?」

 

エリーの問いに男は首を振る。

 

「いや、拙者はその『ぎるど』とやらには縁もゆかりも無い。だがこの場に行けば拙者の探す男の情報を得られると聞いて伺った次第。」

 

「でしたら、情報料を頂かない限りお教えする事は出来ません。」

 

エリーの回答に男は納得した表情を浮かべ元のテーブルへと足を向ける。

 

「ねぇ、オジサン強いでしょ?」

 

ワッチが男の大きな背中に声を掛ける。

 

「世の中には豪傑と呼ばれる猛者は夜空の星の数ほど居る。が、拙者は己を弱いとは思っては居らぬ。」

 

「じゃあ、アタシとパーティ組もうよ。アタシもオジサンの人探し手伝うからさ!」

 

「ぱーてい?」

 

「ギルドに冒険者登録する際の集まりの事です。私もギルド登録をお勧めしますわ。」

 

エリーの言葉に男は自身の手を見つめる。

 

(今までは一人だからこそ拙者は生き延びる事が出来た。だが、仲間を背負ってでも果たしてそれが可能なのか。)

 

「やっぱりダメかな?」

 

ワッチは残念そうな表情で男を見つめる。

 

「いや。お嬢、お主と組もう。」

 

「ホント?やった、初めての仲間だぁ。」

 

「拙者の名前はゲンガン。東の国から海を越えて来た武士もののふだ。」

 

「アタシの名はワッチ。素早い動きが得意な冒険者だよ。」

 

「ではワッチよ。最初に頼みがある。」

 

「何?」

 

「拙者の事はゲンガンと呼んで欲しい。齢24、オジサンと呼ばれるのは少々心苦しい。」

 

「にじゅうよん?!貫禄ありすぎだよ、ゲンガン。」

 

「では、よろしくお願い申す。」

 

まず一人。幸運にも一人の武士と組むことになったワッチ。運命の輪はゆっくりと彼女を仲間の元へ導き始める。

 

【挿絵表示】

 




==次回予告==

王都を出発し、バルダの街へと向かうリチャードら3人の冒険者達。

戦友との再会、そして彼らを通してリチャードという男の複雑さを知る。

次回 第二章 第2話

慕う者慕われる者

お楽しみに!

※画像はワッチ&エリー。酒場の厨房で談笑している様子。

親友というより姉妹に近い距離感を意識しました。

皆さんのイメージ補完のお手伝いになれば嬉しいです。
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