シータ(偽)で二代目仮面ライダーベイク 作:マ寿司ターロゴス
「んぉ?なんだこれ」
どっちかっつーと……前世であった人形とかそんな感じに見えるし。
けど、懐かしいもんだなぁ。
この世界、結構過酷だし、こんな玩具買う余裕なんて無かったもんな。
割れてしまったのか、いくつかに別れてしまった人形を見つめ、ちょっとセンチメンタルな気分になった。
「……」
辺りを見回す。……俺以外、誰もいない。
壊れてるし、こんな路地裏に落ちてたってことは……捨てたってことでいいんだよな?
「じゃあ……」
俺が貰っちまっても、いいよな?
「へへっ」
割れた人形を握り締め、薄暗い路地裏を後にする。
ついその時、割れた人形を探して、狼のような面をしたグラニュートが戻ってきたことに、気付くこともなく―――
「かーっ、なっかなか上手くいかねぇ」
ルンルン気分で家へ戻り、手工具で何とか人形を元に戻せないかやってみたんだが……結果はこの通り。
「繋ぎ合わせるのは簡単なんだがなぁ」
問題はその後。繋いだ跡をどう隠すか、なんだよな。
このままだと繋ぎ目バレバレだし、なんなら入ってたヒビもそのまま。
なんとかしたいとこなんだが、ここにある道具じゃこれが限界。本当、どうしたもんか。
「プラ板もねぇし、パテもねぇ。ボンドあるだけでも大分楽なんだが……やっぱりそれもねぇ」
この世界技術レベルが割と低いし、誰かが作るの待ってたらどんだけかかるか分かったもんじゃない。
でも俺、ボンドの作り方とか知らんのよな……そもそも、気にしたこともなかったし。
よくある話じゃここで知識チートして大儲け!ってとこなんだろうけど、単なる一般人にそんなことできる訳ねぇんだよな!
あの連中もやっぱ逸般人だろ!――主人公だったわ!
けど、本当にどうする?すり潰して粉にした石詰めて、水多めの泥びちゃってしたらとりあえず隙間は埋められるけど……なんかなぁ。
「やめやめ。休憩だ休憩」
ずっと根を詰めてたってできる訳でもねぇからな。一旦水でも飲んで落ち着こう。
グビグビと喉を潤し、机の上に置いた人形を手に取る。
……やっぱまだ色々気になるよな。
「まだ隙間埋めきれてないし、固定はしたけどまたポロッと行く可能性もある」
改めて見ると、めちゃくちゃ雑な修理が施された人形に、前途多難のの四文字が頭に浮かぶ。
はぁぁぁ…と大きく溜め息を吐き、人形を再びテーブルに置く。
しかし、置き方が悪かったのか、人形はパタリと倒れ、そのまま机の上から転がり落ちた。
「やべッ!?」
まだ接着剤代わりの泥も乾ききってない中でこの高さから落ちたりしたら――!
慌てて手を滑り込ませるも、人形は受け止めようとした手をすり抜け、あろうことか、俺の腹にぽっかりと空いたもうひとつの口――"ガヴ”へと一直線に吸い込まれていったのだ。
「ンン!?」
ウェ!?な、何この感覚!?
なんかとてつもなく気持ち悪い変な感じがする……なんとも言い難い異物感に、すぐさま吐き出そうと力んだ瞬間、また新たな悲劇が起こる。
ゴクッ
「えッ」
口内に広がる甘み、苦み、辛み、酸み。……あとえぐみとか渋み。
「おッ、オェェェォェェ…!」
四つん這いになって、必死に込み上げてきたものを吐き出そうとするも、いくらえづいても口からは何も出てこない。
「な、なんで……ぅぅ」
気分が悪すぎることもあって、声が明らかに変なことになっていることにも気付かない俺。
「ウッ、お、おえぇ……」
オロロロロロと出ない吐瀉物を必死に吐き出そうとして、ダラダラ垂れた涎を袖で拭おうとして、そこで初めて気づく。
あれ…?この服こんな黒かったっけ?
どっちかっつーと、茶色とかそっち系の色だった筈………ってなんじゃこりゃぁぁぁぁ!?
「ぇぇえええ!?待って、声もなんか変なんだけど!?」
ドタバタと、あちこちぶつけながら鏡の前へと向かい、そこに映る姿にまた呆然とする。
「女、の子?」
白と黒。ちょうど半分辺りで別れたその髪は、片側だけが伸ばされた特異なヘアスタイルとなっていて、その顔は紛れもなく美少女――ハッ、俺はいったい何を……
てか、これ……どうなってんだ?これじゃまるで……
「
髪とか目の色とかはなんか変な感じだが、顔立ちも日本人っぽいしなぁ……なんか懐かしくなってきた。
日本、日本か。
転生してから全く食う機会無かったから忘れてけど、そういや俺って寿司が大好きだったんだよな。油が乗ったはまちとかあったら食わん選択肢なんて無かったわ。
嗚呼、久しぶりに食いてぇなぁ……具体的にどんな味とか覚えてねぇけど。
「ハァ……」
めっちゃ沈んだ気分になってしまい、また水でも飲んで気を紛らわせようかとドアを開け、硬直。
「―――」
パクパクと、意味もなく口が開閉するのを自覚する。
でもしゃーないと思うんだよ。だってさ……ここ、どこやねん。
「なんだよ、ここ」
暗いけど、そこそこ広い部屋。
体もなんか変なことになってるし、変なとこにも来ちまったし、マジで一体全体どうなってんだこりゃ……
なんか目全体が遠くなるような、なんか妙な感覚――これが俗に言う遠い目か――になりながら部屋を見回していると、急に右肩の辺りに軽い重さが加わった。
「ヤミィ」
「え、なにこれ」
箱?箱かこれ?なんか穴っぽいの空いててそっから目みたいなの見えるけど、箱なのかこれ?えっ本当になにこれ???
「ヤミィ?」
「……鳴き声してるし、やっぱり生き物なのか」
てか変な鳴き声だなぁ。闇とか言ってるぞこいつ。
ま、
「しっかし、本当ここどこなんだか」
明らかに一庶民の俺と釣り合うような部屋じゃねぇんだよな。よく分からんけど、こういうとこって、大体上流階級の家の奴らが住む所な感じがする。
「ヤミィ」
「んお?ついて来いってか?」
「ヤミ」
肩から飛び降り、ちょこちょこと進み始めたヤミ(仮)の後ろをついていくと、ヤミ(仮)はあるひとつのデスクの前で立ち止まり、デスクをよじ登り始めた。
なんか目当てのもんでもあるのかとデスクの上を覗き込めば……そこには玩具のような物が一つ。
「なんだこれ」
形的に、これは……銃か?なんか目っぽいパーツもあるけど、銃っぽい見た目してるよな。
「ヤミィ」
うんうんと頷くように体を傾けるヤミ(仮)。かわいい。
「なぁ、これを俺に見せて、どうしたい―――「シータ様!?」――へっ?」
驚愕という感情がこれでもかと滲み出た叫びに、思わず肩がビクついた。
恐る恐る声の方へと目を向ければ、フードを被った仮面の男が二人。
「馬鹿な。シータ様は、赤ガヴにやられた筈……」
「だが、この方はシータ様だぞ」
「どういうことだ。いったいなにが」
混乱してるとこ悪いんだが。俺も訳分からん。
シータってなんだ?この姿の名前か?様付けしてるってことは、こいつらよりも地位が高かったってことなのか?
「シータ様」
「えっ、あっ、んん?」
「少々お待ちください。ランゴ様をお呼び致します」
「ら、ランゴ…?」
誰やねんそれ……つかその前に。
「てか、そのシータ様ってどういうことだ?俺はそんな名前じゃない筈なんだが……」
「シータ様?」
「まさか、ミミックキーを!?」
「待て、気配はシータ様そのもの。見た目を変えただけでは偽れない筈だ」
「じゃあどういうことだ」
「……分からん。我々では判断がつかない。ニエルブ様をお呼びする必要がありそうだ」
なんか目の前で色々話してるんだが……マジで何言ってんのかさっぱり分からん。また知らん名前増えてるしさ。誰だよニエルブって。
一人遠い目をしていると、なにやら話が纏まったのか、フード男が二人とも俺の方へと向いた。
「申し訳ありません。少々お待ちください」
「うん……」
うわ、思ってた数倍疲れた声出た。
「……で、いつまで隠れてんだ?ヤミ(仮)」
「ヤミィ!?」
心外!といった様子でデスクの影から出てきたヤミ(仮)は、必死に何かを伝えようと体をグネグネねじっている。
ごめん。さっぱり分からん。
「ヤミィ…」
不貞腐れたようにいじけたヤミ(仮)。
私、不満です!と体全体で示すヤミ(仮)にほっこりしていると、ヤミ(仮)があの玩具のような銃の前で足を止めた。
「これか?」
「ヤミィ」
「これがなんだってんだ?」
「ヤミィ、ヤミヤミィ」
「……」
「ヤミヤミ、ヤミィヤミィ」
「……」
「ヤミィ?」
やっぱり、何言ってんのかさっぱりわかんね。
「ヤミィ……ヤミ!」
「持てってか?」
「ヤミィ」
人様の物を勝手に持ち出していいのか、そもそもが不法侵入なのに更なる罪を重ねるのかなどなど、内なる天使が語りかけて来そうなことをやりまくっている俺だが……ぶっちゃけるとそんなこと考えてる余裕もなかった。
洪水どころか激流レベルの情報量だろこんなの。無理だよこんなん押し流されるしかないって。
などなど、ここにはいない誰かへの言い訳をした瞬間、突然目の前が輝き出す。
「あー、今度はなんだ?」
変わった体、飛ばされた部屋と来て、次はなにが来るんだ?過去にでも戻ったりするんか?俺もう疲れたんだが……
「ヤミィ」
「ん……あぁ?」
ヤミ(仮)の鳴き声が聞こえて、無意識に閉じていた目を開いた。
「……ここは」
「ヤミィ」
滑り台、ジャングルジム、鉄棒に、ブランコ。
見覚えがある。どれも、これも。ここは……公園か?
「懐かしいな……」
「ヤミィ?」
「あぁ。昔な、こんなとこに住んでたんだよ。だから懐かしくてさ」
「ヤミ」
あの時は、まさかこんなことになるとは思いもしなかったんだよな。それまでと一緒で、普通に働いて、普通に結婚して、普通に子育てするんだろうなって思ってたし。
ぶっちゃけ、グラニュートってなんだよ異世界転生とかなろう系か?とかめっちゃ思ったよな。
「あれは滑り台って言ってな。後ろの階段から登って、頂上から滑り降りる遊具なんだ。ここっていうか、大体の滑り台はみじけーけど、中にはめっちゃ長いのもあるんだぞ」
「ヤミィヤミィ」
懐古心が刺激されて、ついついヤミ(仮)にここにある遊具の解説をしていると、気付けば空が暗くなっていた。やべっ、話し過ぎたな……別にここ知ってる公園って訳でもねぇんだけども。
「そろそろ帰らなきゃまずいよな。帰り方分からんが」
「ヤミィ」
「………せっかくだし、ちょっとくらい歩いたって、いいよな」
こんな機会、もう二度と訪れないだろうしな。
「ヤミミィ」
ヤミ(仮)を肩に乗せ、二人で帳が落ちた夜の街を歩く。LEDの光で照らされた街は夜でも明るく、輝きを放っている。
見覚えのない街並みに、かつて住んでいた街の風景が重なり、ますます懐古心が刺激された。
懐かしい。ただひたすらに懐かしかった。親子が並んでおもちゃ屋から出てくる姿、仕事終わりのサラリーマン達が連れだって居酒屋へと繰り出していく姿、カップルがイチャイチャしながら歩く姿。……リア充は死ね。
「どうだ。綺麗だろ?」
「ヤミィ」
「夜でも明るい世界なんだよ。ここは」
「ヤーミ」
「ここがどこかは知らんけど、前とあんま変わってないみたいで安心したわ」
「ヤミヤミ」
そんな風にヤミ(仮)と二人で話していると、ふと違和感が頭をよぎる。なんつーか、なんか急に静かになったなっていう気がしてならない。
「……」
「……」
そろりそろりと振り向いてみれば……あら不思議、さっきまでいた人々が誰もいなくなってるではあーりませんか。
どういうことだ……いや本当にどういうことなんだ!?
何も無いのに人が消える訳ないだろ!でも周りなんも起きてな――いや待て。
「あいつ」
……グラニュート?なんでグラニュートがここに?
ここは前世の世界の筈だろ。グラニュートなんている筈ないのに。
「お、おい、お前」
「あァん?あァ、まだ残ってるやつがいたのか。安心しろよ、おめェもすぐヒトプレスにしてやるぜェ」
「ひとぷれす?――あぶねぇッ!」
なんだこいつ!?急に舌伸ばしてきやがった!
「避けんなよォ……ヒトプレスにできねェだろうが」
「そのひとぷれすってのがなんなのかは知らんけどよ、見るからにやばそうなのに当たる訳ねぇだろ」
「あァん?……チッ、おめェみたいなのは不味い闇菓子になるんだよ。っぱいらねェわ」
「はぁ?」
闇菓子?不味い?こいつ、マジで何言ってんだ……
「とっととこいつ届けて、闇菓子貰わねェとな。今日のはうめェかなァ」
「ッ!!おい、それ…!」
これが、こいつの言ってたひとぷれすってやつなのか…?なんだよこれ……まるで、人がそのままアクリルスタンドにされたみてぇだ。
これが、闇菓子ってやつなのか?……いや、届けて貰うって言ってた以上、闇菓子ってのはまた別にあるのか?
つか、それよりも、もっと重要なことがあるな。
「お前、それ、さっきまでここにいた人達だろ。顔が同じだ」
「あァん?人間共の顔なんてわざわざ覚えてねェよ。単なるスパイスだもんなァ」
「お前ッ!」
スパイスだと?こいつ、人間のことをなんだと思ってやがんだ!
こんなやつが同族だなんて……思いたくもねぇな!
なんとかしてこいつをぶっ飛ばしてやりたい。あいつに捕まってる人達を助けてやりたい。
でも、どうすればいい。言ってしまえば、あれは人質そのもの、下手に手を出せない……クソっ!
「ヤミィ!!」
「あん?」
「ヤミヤミ!」
ヤミ(仮)?どうしたんだ?ん?この銃が気になるのか?
ベイクマグナム!
「うわ!?」
「ヤミ!」
なんだこれ、なんか急に電源入りやがった……
「ヤーミッ!」
「あちょっ!」
SET!
「え、えぇ……なんか嵌り込んだ」
これ、大丈夫なのか?なんか音鳴ってるけど。
「ヤミィ!ヤミヤミミィヤミィ!」
「ん?うん?んん?」
相変わらず何言ってるのかはさっぱりなんだが……なんとなくこの上の銃口を三回持ち上げろって言われてる気がしてきたので、なんとなくでガチャガチャやってみる。
CHANGING!
「あっ、合ってた」
っと同時に、急に雰囲気が変わった音声が流れ始める。さっきのはなんか静かだったけど……今のは、なんつーか、激しいな?
なんか癖になるわ、この感じ。
「ヤミィ!」
「わかった!わかったって!」
っても、こっからどうすればいいんだよ。もっかいガチャガチャやればええんか?
「ヤーミ……」
「うわっ、なんかむっちゃ腹立つ」
なんだよそのダメだこいつみたいな目……ちっ、もうヤケクソじゃい!
「変身!」
FIRE!
「えっ、あっ……え?」
ビヨンドバイオロジー!ベイク!
………えーっと、今なにが起きた?
まず銃口からなんか飛び出てって、上行ってから噛み付いて来たよな?
んでもって、噛み付いて来たやつがどっかいったかと思ったら電熱線っぽいのに囲まれて、そっからさらに上からなんかドロドロしたのも流れて来て……爆発?マジで何があったんだ?
「ヤミィ!」
「あ、ヤミ(仮)……ってなんじゃこりゃ!?」
いや確かに思い浮かべたのはあの仮面のライダーだけどさ、ガチでなるとか想像もしてなかったんですけど!?てかかっこいいな!
「ヤミミ!ヤーミヤミィ!」
「あ、あいつ?――そうか忘れてた!」
クソかっこいいアーマーに興奮なんかしてる場合じゃなかったわ!
慌ててこっちの様子なんて気にもとめず、既に小さくなりかけていたグラニュートへと叫ぶ。
「待て!」
「ァん?ッ!!てめェ、グラニュートハンターだったのか!」
「グラニュートハンター?」
「チッ、グラニュートハンターが相手じゃ分が悪いィ……ここは逃げるが勝ちだなァ!」
「あっコラ!逃げるんじゃねぇ!」
咄嗟に銃をグラニュートに向け、引き金を引いた。
バキュン!という重い銃声と共に放たれた弾丸は、逃げ出そうとしたグラニュートに見事命中。跳躍で宙を舞っていたグラニュートを叩き落とす。
「ぐァ!?てめェ、銃持ってやがんのか…!」
「うぇ…結構反動強いなこれ……で、なんだっけ?」
「舐めてんじゃッ、ねェ!!」
「明らかに向かって来そうなセリフ言いながら逃げんじゃん……ほらよ」
「がァ!?」
背中を見せ、全力疾走の構えを取ったグラニュート目がけ、再度発砲。
ありゃ、足狙ったんだけど……腰の方に当たっちまったか。やっぱ銃は素人には難しいってことかねぇ。
「素手での喧嘩とかならしょっちゅうだし慣れてんだけど……いかんせん銃だからなぁ」
「ぐゥ…いてェ……ががァ!?」
引き金を三回引き、痛がりながら悶絶するグラニュートをさらに撃ち抜く。流石に動かねぇ的なら外さんわな。
「クッソが、もう許さねェぞ!」
「ッ!」
銃を両手で構え引き金を引く。
「当たらねェよ!そら、お返しだァ!」
「ガッ!?」
ちくしょッ!こいつ、はやいぞ!?
「離れろ!」
「おっとォ!」
引き金を引きながら薙ぎ払うも、グラニュートは軽やかに躱す。
「へへェ、お前、素人だろォ?扱いがなってねェぜ」
「こンの、いい加減に…しろやぁ!」
「ぐぼォ!?」
おぉ…?
結構いいの入ったんじゃねぇの?パンチ力も中々のもんってか、ますます仮面ライダーじみてきたな。
まぁでも、パンチとかも使えるってわかったのはでけぇな!
「そらよ!」
駆け出し、飛び蹴りを腹に叩き込んでやる。
「ぐふ!?」
大きく体をくの字に曲げ、口元から涎を飛ばすグラニュート。ぅぇっ、汚ぇな…!
「オラオラ!」
強く握りしめた拳を振り下ろし、体が浮かんだ状態のグラニュートを無理矢理地面に叩き付け、そこで発砲。
「こんの、アマァァァ!!!」
「ガッは!?」
馬乗りになり、連続で頭を殴ってやろうとするも、キレた様子のグラニュートが、頭突きを食らわせてきたことで、マウントポジションから逃げられてしまう。
こいつ、どんだけ石頭なんだよ!クッソいてぇ…!
ふらつく頭を無理矢理抑え、発砲するも、グラニュートは肥大化したその腕でもって弾丸を弾き飛ばした。
「チッ、なんとなくそんな気はしてたが……お前、海のギャングモチーフか」
「うみのぎゃんぐゥ???知らねェなァ…そんなもんは、よォっ!!」
「あぶねぇっ!」
高速のパンチを慌てて体を屈ませることで躱し、ちょうど目の前に来た膝を銃で撃ち抜く。
「がァ!?」
「へっ、膝小僧撃ち抜かれたんだ。そらいてぇだ……ろぉッ!」
怯んだ隙に、腹へと銃口を押し当て、力いっぱい引き金を引き続ける。
重い銃声が何度も連続して鳴り響き、激しい火花を散らしてグラニュートの体が吹っ飛んだ。
「グホォォァァァァッ!?」
「やべ!やっちまった」
勢い余ってジャングルジムへと突っ込んだグラニュートに、思わずしまったと口を抑えた。あーらら……
「ひぃー、派手に壊れちまった。弁償しようにもこっちの金とか持ってねぇもんなぁ……」
うわっ、めっちゃこれもう全交換ってぐらいだろ。パイプ全部にヒビ入っちまってるよ……
「ヤミィ!ヤミミミィ!」
「ん?どうしたよ。まだ終わりじゃないってか?」
「ヤーミ!」
「つっても、こいつもう動けねぇだろ。流石にトドメ刺すのはちょっと……」
だって……ここでトドメって、十中八九必殺技でしょ?
殺しへの躊躇を見せる俺に対し、銃に装填されたままのヤミ(仮)は、強い眼差しを向けてきた。
ここでこいつを逃がして、また別の人が被害にあっていいのか?そんなことを言われてる気がして、思わず目を逸らす。
「―――チッ、わかったよ!やりゃぁいいんでしょやれば!」
「ヤミィ!」
銃の上部分をさっきのようにガチャガチャ。
ベイキング!
んでもって、ここで引き金を……引くッ!
「人間襲うのは許せねぇけど、まだやり直せはしたんじゃねぇかとは思う。だから――」
――恨むなら、俺を恨め。
フルブラスト!
「あれは……酸賀?あの野郎、生きてたのか…!」
先程までシータ(偽)のいた研究室。
「……へぇ」
タブレットの画面を操作し、そこに映る映像を何度も見返すその男は、不意に不自然に隙間の空けられたデスクの上へと目を向けた。
友人の残した大切な研究資料――ベイクマグナムが置かれていたその周辺には、ベイクマグナムの現物と、彼の友人”酸賀研造"が残した研究データをもとに、彼自身が色々と書き加えた研究ノートが開きっぱなしのまま置かれている。
それらには一切目も向けずに、彼がただひたすらに見つめ続けるその映像には、まるでチョコチップクッキーが擬人化したかのような風貌の戦士が、シャコの形を模したような化け物を撃ち抜く姿が映し出されている。
「フフ……」
眼鏡の位置を調整し、尚も見つめ続ける目には、何らかの意思が宿っているように見えた。
「まさかシータが生きていたとは思わなかったよ。……あれを持ち出すこともね」
まぁなんにせよ、いいデータが取れた。男はそう口にし、研究室を後にする。
※シータ(偽)要素は完全に趣味です。