シータ(偽)で二代目仮面ライダーベイク 作:マ寿司ターロゴス
「はぁ…はぁ……ハァ」
荒い息を吐きながら、ヨタヨタと下水道を歩く。
マジで疲れた。つか、真面目に死ぬかと思った……なんやねん、あれで敵幹部?あの強さでラスボスじゃないとかこの世界インフレやばすぎだろ。
仮面ライダーシリーズはインフレ激しくなる傾向すげぇけどさ、こんな見るからに中盤って辺りであんなバケモン出てくんの絶対おかしいって。
壁に手を当て、息を整える。
時折視線を背後に向け、気配を探ることも忘れない。
今あのゴリラ女に追い付かれたらおしまいだ。
「ぜってぇ、逃げ切ってやる…!」
「ヤミ」
こんなとこで終わってたまるかっ!
俺は、クリスマス
決意を新たなに歩を進め、やがて凡そ12番目の梯子に辿り着く。
静かに、音を立てぬよう細心の注意を払い、一段一段上がっていく。
「……」
「ミッ」
ゆっくりとマンホールを持ち上げ、周囲を確認。
ここは、どうやら住宅街らしいな。人の目は……ないな。
素早くマンホールを跳ね除け、元に戻す。
服に着いた埃を払い、歩き出す。
「川探さねぇと……」
埃とかはともかく、汚れと臭いはどうしようもない。
当然一文無しの俺が予備とか持ってる筈もねぇんだし、とっとと洗って落としちまわねぇと。
幸い、今は夜だ。人目を避けて動くにはこれ以上もない。
念の為、ベイクマグナムを懐に隠し、小走りで駆け出す。
グラニュートには鼻のいいやつもいる。万が一下水道の臭いを嗅ぎ分けられたーだなんて、漫画みたいな展開になるのは御免だからな。
「ヤミ(仮)、お前も頼む」
「ヤミ!」
頷くように体を折り曲げ、ぴょん!と飛び出していくヤミ(仮)。
あいつあんなナリして結構足速いし、索敵とか結構得意そうなんだよな。
……ヤミ(仮)が戻ってくる前にゴリラ女に遭遇したら俺が詰むっていう弱点はあるけども。
ヤミ(仮)とは逆方向に向かって走り、入れそうな河川敷を探していたところ、程なくしてヤミ(仮)が戻ってきた。
「見つけたか?」
「ヤミ!」
「よし、案内頼んだ」
「ヤミヤミ!」
どうやって走ってるのか不思議に思う動きで疾走するヤミ(仮)の後ろ姿を追うこと数分、そこにはまさしく理想的な河川敷があった。
「こりゃあいい。ヤミ(仮)、ナイス」
「ヤミ!」
早速服を脱ぎ、順番に洗って乾かしていく。
目に入る肌色にはあまり意識を向けないよう気を遣ってることもあって、大体臭いが落ちたなと頷いた頃にはこう、精神的なものが結構……とにかく、消耗が激しかった。
俺、一応男の筈なんだけどなぁ。
まぁ、ストマック社のアルバイトの連中にも中身男で擬態女のやついたし、そいつらと同じと思えば、なんとか。
「ヤミ、ヤミヤミ!」
「ん?どした?」
「ヤーミッ!ヤミィヤミィ!」
「上か?上に何が……ほぉー」
見上げた先には、満点の星空。
どうやら、消耗していたのは精神力だけじゃあなかったらしい。
こんな真っ暗になるまで一心不乱になって洗濯してたんだなぁ、俺。なんか泣けてきたぜ。
「けど、綺麗だよな」
「ヤミ」
「ハッ、ありがとな」
「ヤミ!」
ヤミ(仮)との友情()を改めて再確認して眠りにつき――迎えた翌朝。
「シータ姉さん…」
「お前っ!?」
俺は今、変なパーカー着たグミモチーフのライダーさんと向かい合っております。
ダレカタスケテ……
ところ変わって、シックでお洒落な喫茶店。
「……」
「……」
き、気まずい…!互いに無言の空気が重すぎる!
あれか?開口一発「どういう風の吹き回しだ」だとか、「なんでいきなりこんなことを…」だの、「てっきり今度も不意打ちしてくるもんだと思ってたのにな」って睨んだのが悪かったのか…?
で、でも、あんなことあった訳だし?何よりグミライダー本人が頭下げて謝ってきたんだから別に間違ったことはしてない筈だ。
そうだ自信を持つんだ俺よ。
如何に相手が正義の仮面ライダーといえども、理不尽にはきちんとNO!で返すのが大和魂というものなのだから。
これまで助けてきた人達に誓って、叫ぼう。声高々と。
俺は間違っていない。道を違えたりはしていないのだと。
自己弁護を終え、俯いた顔をゆっくりと持ち上げる。……気まずい空気が鼻を通り抜けた。
どうする?どうするのが正解なんだこれ?向こうから声掛けてきてこの状況だけど、俺が話題投下するべきなのか?
えぇい、ままよ!
「なぁ」
「話したいことが…」
「「――あっ」」
き、気まずい…!
「先に、言えよ」
「ありが、とう」
おずおずと顔を上げ、グミライダーが話し出す。
その内容は……まぁ予想通りというべきか、ストマック家の事だ。
ストマック社の長にして、家長たるランゴが主に放っているらしいエージェントとかいう眷属達、以前戦った圧倒的な力を持つゴリラ女、なんとあのヴラムとかいうプリンのライダーを作り上げた張本人なニエルブ。
そして、あの錯乱
「あいつ、男だったんだな」
「えっと、シータ姉さんも、知ってた筈だよね」
「そのこと、なんだがな…」
「?」
俺は歯切れ悪く話し始める。
グラニュート界に住む一般グラニュートだったこと、路地裏で壊れた人形のようなもの*1を拾ったこと、修理の途中で己のガヴがその人形を呑み込んでしまい妙な感覚に襲われ、体がこうなったこと。
あとはちょちょいとこれまでの経緯を添えてみれば……グミのライダーの顔色がみるみる悪くなって行った。
「じゃあ君は、シータ姉さんじゃ……」
「ないな。最近そう呼ばれ過ぎて感覚狂ってきてるが」
「っ!ご、ごめん!」
バッ!と効果音がつきそうな勢いで頭が下げられる。机スレスレでヒヤッとした。
「危ないからやめなさい」
「ごめんなさい…」
「まぁ、なんだ?ある程度そっちの事情も理解してるからな。これまで人々を守ってきた実績に免じて、だ。許してやるよ」
拗れて爆散ENDとか御免だし(本音)
「ありがとう、シータ姉さ……あ、いや、ごめん」
「あー、うーん……もういっか」
「もういいって、なにが」
「呼びにくいんだろ?暫くはシータ姉さんでいいさ」
名前ごっちゃになるとめんどくさいよな。分かる分かる。
それに本物はもうご臨終してるそうだし、別に構わんだろ。そもそもが
「でも、それじゃ君は…」
「このままシータ呼びしてくれた方が、
「都合がいいって…」
「エージェント、だったか?そいつらもシータ様呼びして無駄に攻撃してこなかったしな。あとニエルブとかグロッタの反応もある」
ランゴは……まだちょっとわかんねぇけど。
いや、使えないと判断したら速攻で放り捨てたみたいなこと言ってたし、あいつにはあんまり効果ないか?うーむ。
「ま、まだ俺の本名は明かさねぇよ。そもそもの今じゃあ、信頼もクソもないからな」
「そっ、か……うん…わかった。じゃあよろしく、シータ姉さん」
「ん、よろしくな。井上ショウマ」
最後は握手で〆っと。
いやー、いいお話だったなぁ。まさしくパーフェクトコミュニケーション!ってやつよな。
「そういや、さっきから気になってたんだけどさ」
「どうしたの?」
「お前、なんでシータって呼び捨てしねぇで"姉さん”なんてつけるんだ?」
見た感じ血縁関係とか特になさそうだろ、といえば、またしてもみるみる曇っていくショウマの顔。
「ど、どうした!?なんか地雷踏んじまったのか!?だったらマジですまん!」
「い、いいよっ…全然、大丈夫だから!」
「そ、そう、か…?でも、ならなんで」
「それは……」
口篭り、僅かに視線を彷徨わせた後、真っ直ぐ俺の目を見てきたショウマ。
なにやらのっぴきらない事情がそこはかとなく香ってくるんだが……まぁ、気になるし、意味ありげに頷いておく。
「……嫌な気持ちになったら、ごめん」
「嫌な気持ち、だと?」
のっぴきならない事情が?とは思ってたけど、もしや…想像以上にレベルの高いお話かこれ!?
な、なんだ…いったいどんなやばい話が…!
「実はさ、俺って…井上以外にも苗字があるんだよ」
「――ん?」
葛藤を振り切るように放たれた言葉に、ん?隣、首を傾げる俺。
いやー、別におかしなことでも、ないよな?
父方と母方で二つの苗字があるだとか、義両親に引き取られて苗字変わったーとかもある訳だし。
それをなんでまた、そんな重々しく言うんかね。俺には全く理解できん。
「あっ、戸籍上でとかそういう系か?」
「えっと、そういう意味でも…なくてさ」
「違う、のか」
ならどういう意味なんだ?ってかそもそもこれって本当に重要な話なのか?
本人は深刻に捉えてても、その実他人からしたら実にくだらない話だったとかいう類だったりしないかこれ。
「で、その…俺の、もうひとつの苗字なんだけど……」
苗字だけでこの顔。
これマジでその説合ってる可能性高くないか?
「うん」
ま、もしそうだとしても、笑わないでじっくり聞いてやるか。
「………。
………、…?……。……………
早速ですがまた続き思いつくまで失踪します!サラバダー!