38.~異世界、大聖堂の学校、教室~
のび太:えっと、わかりません!
学問の先生:これもわからないのかぁ…
クラスメイト:アハハハ
パパ、ママ、先立つ不孝をお許しください
でも、この世界に来て僕は「聖女様」と呼ばれる
とても素敵な女の子を助けられました
そして聖女様のおかげで大聖堂の寮に住むことになり
学校にも通わせてもらえてます
成績は、相変わらずですけどね…
39.~異世界、大聖堂の学校、剣術道場~
のび太:えいっ!
ジャック:甘い!今度はこっちからだ!
のび太:おっとアブナイ
ジャック:くっ、躱したか!
剣術の教官:そこまで!ジャック、そこまでだ!
僕はもうノロマで弱いのび太じゃないんだよ!
とても速く走れるし力もすごく強いんだ!
ただ剣術って授業は単に力が強いだけじゃダメ
しっかりとした技の訓練が無いといけないみたい
力任せのゴリ押しは出来るんだけど
訓練をしっかりしてきた人には、なかなか勝てないんだ
40.~異世界、大聖堂の学校、魔法演習場~
魔法っていう授業もあるんだ
僕はこの魔法にも才能があるみたいなんだけど…
メアリ-:ファイアボール!
メアリーの放った火球がミスリル製の的に当たると眩く光る
魔法の教師:素晴らしい、さすがメアリ-嬢!
次、のび太!
のび太:ファイアボール!
ドーーーン!
のび太の放った火焔は的を掠め、その先の壁に直撃して爆炎を上げる
メアリー:きゃぁ!
魔法の教師:の、のび太君、な、何ですか、今のは!?
もっと魔法の基礎を大事に!
のび太:はい、頑張ります…
41.~異世界、聖都の冒険者ギルド~
あと僕は「冒険者」になれたよ
普通、僕みたいな子供はF級かE級なんだけど、
僕はホブゴブリンっていうモンスターを倒したからって
ダンカンさんがD級冒険者に推薦してくれたんだ
D級冒険者ならモンスター退治みたいな
報酬が良いクエストも受けられる
報酬が良い分、危険なんだけどね…
でも大丈夫、僕には神様がくれた強い体があるんだから
もう、いくつかのクエストをこなしたんだ
冒険者ギルド受付嬢:お疲れ様です
報酬はこちらになります
のび太:結構稼げたぞ、うふふふふ
42.~異世界、聖都の雑居区域~
冒険者ギルドで報酬をもらい
ほくほく顔で家路を辿るのび太
その途中で聖女を発見
聖女のいるテントには長い列が続く
聖女:あら、のび太様、ギルドからのお帰りですか?
お疲れ様です
のび太:聖女様、この行列は何ですか?
聖女:炊き出しですよ、定期的に皆さまに
スープとパンとゴハンとを出してます
貧乏人:聖女様、パンはありますでしょうか?
聖女:パンはなくなってしまって
ゴハンならあるのですが…
43.
貧乏人:そうですか、では、スープだけで…
聖女:ごめんなさい、ではスープをどうぞ
のび太:今の人、スープしか受け取らなかったですよ?
聖女:ゴハンを食べたがる方はそうおりませんから
いつも余ってしまいます
のび太:え、そうなんですか?僕、ゴハン大好きですよ
食堂のメニューに全然なくて
ゴハンが恋しいんです
侍女:え、ゴハンが?
のび太:え?え?なに?
44.
周りの反応にのび太が狼狽えていると離れたところから声
アレックス:おい、おまえコメなんか食うのかよ
ジャック:"コメバミ"のD級冒険者がいるとは
信じられん
メアリ-:珍しいを通り越して奇妙としか言えませんわ
アレックス、ジャック、メアリーこの3人は
学校の最高学年なんだけど
厄介な奴らなんだ、貴族の家柄なんだってさ
なかでもアレックスは勇者の再来じゃないかって言われてるんだって
アレックス:下級生にD級が現れたとか聞いたが、
まさかの「コメバミ」とは!
ダンカンさんの眼も曇ったな
聖女:皆さん、なんてことを言うのです!
45.
アレックス:聖女様、君だって米は食わないだろ?
聖女:そうですが…
アレックス:のび太とか言ったっけ?
オマエの事は聞いてるぜ
剣と魔法が少しはできるようだが
学問はてんでダメらしいな
コメバミなんて卑しい上に頭も悪いとはな!
のび太:なんだと!
アレックス:やるか!?
聖女:辞めて下さい、二人とも!
のび太:ごめんなさい、でも、何でお米はダメなんです?
聖女:……のび太様、こういうお話があるんです
46.
昔、麦が殆ど穫れないある貧しい村の男が、
自分の村でも作れる作物はないかと旅をしていましたが
旅の途中で倒れてしまいました
魔人たちはそんな彼を見つけると介抱し、
更におコメとその栽培方法などを彼に授けたのです
男は喜んで村に帰り米を植えたところすくすく育ちました
他に採れる作物がほとんど無い村でしたので
村人も領主達も米をたくさん食べられ、たいそう喜んだようです
47.
ところが、その後しばらくの月日が流れると、
領主やその兵士たちの足腰が不自由になり、寝込んでしまう者まで現れました
そこを隣国に攻められ、領主は戦争で負けてしまったのです
新領主は見たことない米について男に尋ねると
男は魔人からもらったものだ、と答えたのです
すると新領主達や村人達、そして男の家族までもが、
魔人に呪われた作物を持ち込んだ、と大いに怒り、
男を村から追放してしまったそうです
48.
聖女:とはいえ、その村でまともに収穫できるのは
お米だけ、新領主達や食うに困らない村人は
お米は全く食べず、貧しい方々も
お米を食べることを嫌がるようになりました
のび太:え!?そうなの?
アレックス:そうさ、魔人共に係ると
そういう目にあうんだ
聖女:そんなことはありません!
アレックス:なぁ聖女様?戦争に負けたのは
魔人の作物のせいだろう?
聖女:その前に魔人は倒れた男を救っています!
魔人はけして邪なばかりではありません!
49.~異世界、大聖堂の学校、教室~
また少し日にちが経ち…
学校の先生:1000年前の聖戦が云々~
のび太oO(1000年前の聖戦、授業でよく出てくるな)
聖女:のび太様、ずいぶんと
難しい顔をしてらっしゃいますね
のび太:あ、聖女様、教えて欲しいことがあるんだけど
聖女:私に答えられることなら、喜んで
のび太:聖戦って何です?
聖女:まぁ、うふふふ
のび太:わ、笑わないでよ
聖女:あら、これは失礼しました
聖戦とは人間が魔族から解放された戦を言います
50.
約1000年前まで、私たち人間は魔獣たちの影におびえ、
魔人たちに奴隷のように扱われておりました
そんな中で1人の青年が立ち上がりました
彼は多くの魔獣を討伐し、魔人の拠点を次々と陥落させ、
ついに人間は自由を手にしました
私たちはこの青年を「勇者」と称え、この戦いを「聖戦」と呼ぶことにしたのです
のび太:じゃぁ魔族はもう居ないの?
聖女:いいえ、聖戦で魔族達はその数を
大きく減らしました、が、魔人たちの首魁の
魔王の手腕により数を徐々に増やし、
ここ100年で1000年前と同程度になった
と、言われています
のび太:魔王、やっぱり居るのか…
51.
聖女:…のび太様、魔族は再び私達を
支配しようとしてるのでしょうか?
のび太の脳裏にゴブリンたちとの闘いの光景がよぎる
ゴブリンは魔人と呼ばれる種族の一つ
のび太:…僕は、そう思います
聖女:そう、ですか…、のび太様、以前に
お米の話をしたのを覚えてらっしゃいますか?
のび太:覚えてるけど
聖女:あの話でもあったように
魔人は人間を助けてくれているのです
のび太:でも、魔人の作物のせいで
戦争に負けてしまったのですよね?
聖女:その通りですが…
のび太:やっぱり魔人たち魔族は、僕たちの敵なんです!
52.~異世界、聖都の外に広がる森~
それからまた数日
冒険者ギルドのクエストを受けたのび太は単独で聖都近郊の森に
のび太:あと1体で討伐クエスト完了なんだけど…おや?
ジャック:向こうに逃げたぞ!
アレックス:くそっ、すばしっこい奴だ
メアリ-:お待ちなさい!
のび太:例の3人組じゃないか、何してるんだ?
目を凝らすのび太、アレックスら3人は白い小動物を追いかけてる模様
53.
のび太:あの3人も討伐クエストかな?でも、この森で
あんな討伐クエストあったっけ?
小動物:キャィン!
のび太の方向に懸命に駆けて来た小動物は
足をもつらせて転倒
よく見ると怪我をしており、そのまま蹲った
のび太:こ、黒狼の子供?いや、色が…
アレックス:おい、のび太
そいつは俺たちの獲物だからな
ジャック:獲物の横取りはマナーに反する
のび太:獲物?討伐クエストは大人の
黒狼だけのはずだろ?
この子はこんなに小さいじゃないか!
54.
アレックス:そいつが黒狼だったらな
メアリ-:色をよくごらんなさい、黒ではないでしょう?
のび太:こ、こんな子の討伐クエストは出てなかった
アレックス:ギルドのクエストは
討伐や雑用だけじゃないんだぜ?
B級のクエストに変種捕獲ってのがあってな
のび太:ヘンシュホカク?なにそれ?
ジャック:君は受けられぬクエストだ
知らないのも無理はない
冒険者ギルドのクエストは
自分の級の一つ上までしか受けられなくて
クエストリストも一つ上の級のものまでしか
見せてもらえない
昔、無断で挑戦した冒険者が
大怪我したことがあるせいらしい
僕はD級の冒険者、C級までのクエストしか知らない
55.
アレックス:白い狼なんてまさにそれだろう?
のび太:まだこんなに小さいんだ
親狼の許に帰してあげなきゃ
アレックス:変種捕獲のクエストは特別でな!
のび太:だめだ!この子は親狼のところに返す!
アレックス:そうか、言っておくが止めてくれる聖女様は
今はいないぜ?
のび太:そうみたいだね、だから僕は…
子狼を抱きかかえるのび太
のび太:逃げることにするよ!
そのまま森の奥へ走り出す
56.
アレックス:な、ま、待て!
ジャック:アレックス、あいつは足が速い
追いつけんぞ!
メアリ-:逃がしませんわ、フリーズ!
のび太:あっ!
メアリ-の魔法が発動
のび太の足下の地面が氷り付く(※1)
滑って転ぶのび太
抱きかかえられていた子狼は放り出され
氷り付いた地面の上を滑っていく
アレックス:のび太は放っておけ、子狼を捕まえるぞ!
3人は子狼に走り寄る、のび太は素早く立ち上がり3人に追いすがる
57.
のび太:そうはさせないぞ!
ジャック:行かせん!
アレックス:ジャック、そいつは任せた
さっきまで蹲っていた子狼、回復したのか逃げようと試みるも…
アレックス:追いついたぜ!
子狼にアレックスの手が掛かる
のび太:その手を放せアレックス、ガストーン(※2)!
のび太の魔法が発動、石を巻き上げた突風がアレックスに向かう
58.
子狼:ガブッ!
アレックス:いてぇ!
子狼に噛まれたアレックスが力任せに子狼を振りほどく
と、アレックスから逸れた子狼を、のび太の魔法が弾き飛ばした
子狼:ぎゃいん!
とすん、ゴロゴロゴロ、ボチャン!
一同:あ!!
吹き飛ばされた子狼は地面に落ちてバウンド
転がっていくと近くを流れる川に落ち流されていった
のび太:あぁ、そんな…
59.~異世界、深い森の中~
聖都から遠く離れた川の畔、小さな白い狼が引っ掛かっている
ロリババァ:怪しげな気配を感じて彷徨うてみれば…
白狼をロリババァは拾い上げる
ロリババァ:まだ息はあるの、放てはおけぬ
彼奴の棲み処は遠いが仕方あるまい
寄り道するか
白狼を懐に抱くと、ロリババァは森の深淵へと踵を返す
60.~異世界、深い森の更に深淵~
ロリババァ:はて、道に迷ったかの?
ブラックウルフ:ガルルルル
ロリババァはブラックウルフをギロリと睨みつける
ブラックウルフ:ギャフ?キャインキャイン!
ロリババァ:待たぬか!
ブラックウルフ:ウガッ?
ロリババァ:ここいらにフェンリルの棲み処があろう
是を彼奴の許に届けてやってはくれまいか?
弱っておるが優れた術者がおれば
どうにかなる、そう伝えよ
ブラックウルフ:ガウ!
ブラックウルフはロリババァから白狼を受け取ると森の更に深淵へ駆けていった
61.~異世界、獣王フェンリルの棲み処~
サキュバス(※3):フェンリル様、申し訳ございません
御子殿の行方、未だ不明の由
獣王フェンリル:よい、本来は我らの問題
お前達の手を煩わせてしまった
そなたらが主、ベルモデウス殿(※4)に
多大なる感謝を
サキュバス:その御言葉、しかと我らが主に届けます
ダークウルフ:ガウ!
獣王フェンリル:どうした?騒々しい!
小さな白狼を咥えてフェンリルの間に走り込んできた一匹のブラックウルフ
ブラックウルフ:ガウガルゥ、ガウ!
62.
白狼を見て驚くサキュバス
サキュバス:御子殿!
獣王フェンリル:な、なんと…
ブラックウルフ:ガル、ガウ、ガル
サキュバス:フェンリル様、私共の力があれば
御子殿は大丈夫です!
獣王フェンリル:この魔術痕、人間によるものか…!?
サキュバス:フェンリル様、落ち着きを!
獣王フェンリル:我が子をこのような目にあわされ
黙っておれるか!
ベルモデウス殿に伝えよ
我らは盟約を破る!
我が眷属たちよ、我に続け!
この爪、この牙
人間どもに突き立ててくれようぞ!
サキュバス:いけない!
ベルモデウス様にお伝えしなければ!
63.~異世界、魔王の城~
ハルピュイア(※5):サキュバスより伝令!
魔王ベルモデウス:どうした?
ハルピュイア:フェンリル様、眷属方を率い
人間の街に侵攻!
魔王ベルモデウス:なんだと?フェンリルめ
血迷うたか!?
誰かおらぬか、フェンリルを止めよ!
ゴライアス(※6):四天王が一、ゴライアス、これに
ソロモン(※7):同じくソロモン、ここに
魔王ベルモデウス:よくぞ来た!そなたら手勢を率い
フェンリルが乱心を止めよ!
ゴライアス&ソロモン:御意!
ハルピュイア:僕も行くっす!
魔王ベルモデウス:フェンリルの奴め、早まった真似を…
64.~異世界、聖都の外壁楼上~
見張り①:ふぁぁぁ、しっかし暇だな~
見張り②:まったくだ、でも楽な仕事じゃないか
ワォォォォォン!!
見張り①:な、なんだ!?
見張り②:お、おい、見てみろデカいオオカミが…
見張り①:まて、後ろにもっと狼、いや、魔獣らが!
見張り②:ま、魔獣の群れだ!至急、連絡を!
冒険者ギルド長:冒険者に特別動員指令!
魔獣の群れが襲来!
D級以上の冒険者は街の防衛に当たれ!
※1:フリーズは生きている動物には直接発動できないという設定
※2:gust(突風)+stone(石)
※3:妖魔族、魔王の四天王の一人、美しい妖艶な女性
※4:魔人たちを統べる王、"ベルモデウス"の名は代々引き継がれている
※5:獣人族、魔王の四天王の一人、翼と鉤爪をもつ小柄な女性
※6;巨人族、魔王の四天王の一人、全身を硬い殻に覆われた大男
※7:ダークエルフ族、魔王の四天王の一人、青年の姿だが年齢は数百歳