If I could turn back time 作:暇をなくした暇人の集
病的に白い肌に蒼い瞳、よく研磨されたステンレスのような輝きを放つ銀髪。整った顔立ちにすらりとした手足。これが私だ。
私の名前は十六夜咲夜。明日で11歳になる、孤児院暮らしのよく居る不幸な少女の一人だ。
院長によると、どうやら私は三歳の誕生日の翌日、つまりハロウィンの翌日にこのウール孤児院に預けられたらしい。奇妙なことに、私は両親に関する記憶を思い出せない。特に外傷もなかったようなので、虐待を受けていた訳ではないらしい。
そう考えるとわたしはこの孤児院の中では幸せな方なのかもしれない。同室のサラのように暗闇に父の影を見て恐怖に震えることもないし、三階に居たジョンのように出所した叔母に刺されるというようなこともないからだ。
・・・大人は本当に勝手だ。私たちが一体何をしたんだろう。何故私たちはこんなに苦しまなければならないんだろう。孤児院の子供は往々にして学校で苦しみを味わう。作文、美術、音楽、昼食の時間。同級生たちが家族の絵を描き、家族旅行の作文を書き、家族愛を謡った曲を歌わされ、周りが保護者手製のサンドイッチに不平を言う横で不味い缶詰やパサパサのパンを齧る。
嫌な出来事があっても、毎日忙しい上に人員不足の職員に泣きつくのは気が引ける。
その結果、自傷行為に及ぶ。
しかし私は、自身の能力のおかげで最悪の事態を避けてきた。
私は時間を操れる。
最初に気付いたのは7歳の時だ。その時私は学校の隅で上級生から虐めを受けていた。何とかして逃げようとしたところ、自分が触れている物体以外の時間が止まったのだ。
触れている物体と言っても、近くの空気や地面の時間は何故か動いており、窒息死や凍死することは無かった。
次の日から私は虐られなくなった。彼らが接近したら逃げるのだ。不意打ちを食らうこともあったが、完全に捕まる前に周りの時間の流れを遅くすることで振り払い逃げた。やがて私は最上級生になり、虐めとは一切縁の無い人間になった。
また、成績も学年トップになった。
簡単なことだ。私が望めば勉強時間は好きなだけ増え、解を確かめたければ検算する時間も増える。
しかし、どれだけ努力しても時は戻せなかった。
今日、私はあの牢から卒業した。
だからといってこれから先の人生が希望に満ち溢れているというわけでもない。
この孤児院では、国からの措置費や地方自治体からの補助金は大部分がこの孤児院の土地代に回されているため慢性的な資金不足に陥っている。
そんな中でも職員達はなんとか私たちを進学させてあげようと学費の安いストーンウォール校に入学させる。
しかしそこは学力は低い上に新聞の社会面でよく見かけるような学校で、大学への進学率は極端に低い。
とはいえ希望はある。学力調査でハイスコアを出せば奨学金を得ることが出来る。むしろそれしか希望はない。
そんなわけで、私はこの狭い部屋でおさがりの教科書を開いているのだ。
より良い未来を掴むために。