If I could turn back time 作:暇をなくした暇人の集
私は渡された入校許可証に記された名前に驚き、そして呆れた。
「校長先生が自ら出向くなんて、どれだけ暇を持て余してるんです?」
「勿論毎回儂が行く訳ではないのじゃがのう。今回は旧友との再会も兼ねて訪ねて来たのじゃよ。」
恐らく旧友とは院長のことなのだろう。
・・・あれ?ということは、
「もしかして院長って魔法使いだったんですか?」
「正解じゃよ咲夜。」
「もしかして手紙を燃やした一人目って院長ですか?」
「またしても正解じゃの。あの頃は戦後の混乱で胡散臭い宗教やらが流行っていた時期での、入校許可証もそのうちの一つだと思い込んだ彼が暖炉の焚き付けに使ってしまったのじゃ。あの頃のホグワーツの混乱は酷いものじゃった。いやはや懐かしいの、儂の髭がまだ黒い頃の頃の話じゃ。」
ああ、やっぱり院長か。すると二人目は誰なのだろう。
しかし、ホグワーツが混乱とはどういう意味なのだろう。
「えーと、魔法を使えない一般の人にとっては動乱の時代だったのは理解できます。でも魔法を使える人達にとっても混乱の時代だったんですか?」
「少し本題から離れてしまうが君の疑問に答えることにしようかの。
魔法を使えない人々・・我々は彼らを"マグル"と呼んでおる。マグルの戸籍を持っている魔法使い達の中にはは政府から徴兵されて戦死してしまった者も多い。」
「でも彼らには魔法があるでしょう?魔法では防げなかったんですか?」
「その疑問に対する答えは"はい"でもあり"いいえ"でもある。
祖国を守ろうと参戦した魔法使いが居たのは英国だけでは無かったのじゃ。
マグルがマグルを死に追いやる方法を知っているように、魔法使いは魔法使いを倒す手段を知っておる。
彼らはマグルからは身を守れたが、魔法使いからは身を守れなかったのじゃ。
まあこのことはホグワーツに居る聡明な教授達がいつか教えてくれるじゃろう。」
「魔法使いも楽じゃないんですね。」
「マグルには魔法使いが楽に見え、魔法使いにはマグルが楽に見える。互いを照らす灯が太陽から戦の火に変わっても隣の芝は青いまま変わらぬようじゃの。」
「成程、理解できました。」
・・・ん?第一次大戦って確か1914年だったはず。
「いや貴方、一体何歳なんです?」
「さて、この歳になると年齢など気にしなくなってくるものじゃよ。ただ、院長に初めて会ったのは40歳ぐらいの頃だったのは覚えているのじゃが。」
「いやいや、普通に100歳超えてるじゃないですか。もしかして魔法使いではそれが普通なんですか?」
「残念ながら魔法界には戸籍というものがないのでの、平均寿命は不明なのじゃ。ただ、儂の旧友のニコラスフラメルという男は既に600歳を超えていたはずじゃよ。」
「もう人間とは呼べないような気がするんですが。」
「まあ彼は特別でな、詳しくは魔法薬学の授業か魔法史の授業で教えてもらえるじゃろう。
・・・さて、儂はそろそろ失礼させて頂こうかの。
明日、ハグリットという男が君を迎えに来る。
彼とともに必要なものを買いに行くと良いじゃろう。」
「いやでも、私そんなお金持ってないですよ。孤児院も出せないでしょうし。」
「大丈夫じゃよ、咲夜。ホグワーツの扉は学びを求めるものに開かれる。
銀行で"マーリン基金"の申請をしておいた。
君の学費はそこが負担してくれるようになっておる」
「わかりました。じゃあ、ありがとうございました。学校でもよろしくお願いします。」
「良い学校生活を、咲夜。」
彼はそう言うと膝に居る不死鳥に何かを話しかけた。すると彼と不死鳥が炎に包まれ、あまりの眩しさに私は目を閉じた。やがて眼を開くと、そこには誰もいなくなっていた。
ただ、今の出来事が現実であったことを示すように、入校許可証と不死鳥の尾羽が机の上に置かれていた。