ゴーント家の長女、弟を溺愛する。   作:八重歯

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19 星に願いを

 

 

 夏の終わり、冬が少しずつ忍び寄る頃の夜。

 澄んだ空気は肌に冷たく、風は枝葉をそっと揺らし、月明かりが淡く部屋を照らしていた。

 しんとした静寂の中、私はなぜか眠れずに目を開けていた。

 

 手を伸ばし、ベッド脇のサイドテーブルに置いてある透明な瓶を軽く振る。中で眠っていた光虫が目を覚まし、小さな翅を震わせて光を放つ。淡い灯りは部屋をしっかり照らすには足りないけれど、読書をするには十分だった。

 

 本棚から一冊──魔法薬の本を選んで瓶を持ち、窓辺に歩み寄る。カーテンを開けると、夜空には細い三日月と無数の星々が瞬いていた。

 

 

「……綺麗」

 

 

 思わず声が漏れる。

 ガス灯の明かりがないからだろうか、夜空は澄みきっていて驚くほど星が鮮やかだった。

 これまで星座に興味はなかったけれど、ホグワーツでは天文学も学ぶのだし──少しずつ目を慣らしておくのも悪くない。

 

 丸椅子に腰を下ろし、窓を少し開ける。冷たい夜気が入り込み、カーテンを静かに揺らした。

 

 

「ん……姉さん?」

 

 

 舌足らずな声と眠たげな吐息。振り返れば、ベッドの上でトムが目を擦りながら身を起こしていた。

 

 起こしてしまった。──少し申し訳ない。

 

 

 トムは私の方を見て、少し目を開き息を呑む。「どうしたの?」と聞けば、トムはきゅっと唇を噛んではにかんだ。

 

 

「姉さんが迎えに来てくれた時に似てるなって」

「え?──ああ、そうね」

 

 

 あの日も夜で、風がカーテンと私の髪を揺らしていた。

 あの時と比べてトムは少し成長したし、精神的にもかなり落ち着いたと思う。もうモーフィンにも慣れて軽口を叩けるほどになったし、魔法の腕も上達している。──マールヴォロとは打ち解けれていない。けれど、あの人はもうあの態度を変えることはできないのだろう。

 

 トムは私のそばに来ると、窓枠に手を置いて外を見て、首を傾げた。

 

 

「何してたの?」

「目が冴えて眠れなくて。本でも読もうかなあって思って……空を見たらすごく綺麗で、見惚れちゃったのよ」

「空?」

 

 

 トムは不思議そうにしながら空を見上げて──そして息を呑んだ。トムの丸くて暗い灰色の目に、キラキラと輝く星が映る。私は椅子から立って隣に並び、空を仰いだ。

 

 

「すごい、綺麗だね」

「そうね。──あっ」

 

 

 夜空の片隅をすっと光が走った。

 

 

「え?」

 

 

 と、トムは空を見上げ首を傾げる。

 

 

「今、星が──あっ! ほら!」

 

 

 今度はトムも見れたようで、「わぁ!」と小さな歓声を上げていた。

 

 流れ星、初めて見たわ。今までゆっくり空を見上げる時間なんてなかったし、あまり興味もなかった。

 でも、トムの白い頬がうっすら桃色に染まって、目を輝かせているのを見ると──夜に星を見るのも悪くないな、なんて。

 

 

「姉さん、あれは何?」

「流れ星っていうのよ」

「流れ星……どこにいったの?」

 

 

 流れ星は、たしか落ちた星が燃えているから──消えるはず。

 昔の記憶をたぐり、そう思ったけれど。

 目を輝かせている可愛いトムに流れ星の原理を説明する気は起きなかった。

 

 夜風がトムの髪を揺らしているのを見て、私はベッドから薄い毛布を引き寄せ、トムと自分の肩にかけながら考えるように口を開いた。

 

 

「どこかしらね……きっと、空を旅していて、どこかで休憩しているのかもしれないわ」

「そうなんだ……」

 

 

 トムは毛布を小さな手で掴み、頷きながら呟く。

 その目はもう一度空を見て、その後遠くにある深い森を見た。

 

 

「あの森にも来るのかな?」

「そうね、もしかしたら……来るかもしれないわね」

 

 

 その言葉にトムの目がきらりと光る。

 毛布を握る手に力がこもり、何かを決意したような目で遠くの森を見つめていた。

 

──少し、ロマンチックすぎたかな。

 

 

「……さあ、トム。もう寝ないと明日起きれないわよ」

「姉さんは?」

「私はお姉さんだから、起きれるの」

 

 

 トムは納得したようなしてないような。口先を少し尖らせて「僕も夜更かしできるのに」と言いたげな目で私を見たが、私がにっこりと笑い肩を撫でれば──小さく頷いた。

 

 

「おやすみ、姉さん」

「おやすみ」

 

 

 トムはそう言ったが、私をじっと見つめてベッドに戻ることはない。トムの指が、何か言いたげに前髪を弄っていて──私は目元を緩め笑った。

 

 

「いい夢を見てね」

 

 

 そう言って、トムのおでこにキスを落とす。

 その瞬間トムは瞼を震わせ、目を伏せて──その後、嬉しそうに笑った。

 

 

「うん!」

 

 

 トムは機嫌良くベッドに戻り、素直に横になる。

 私はそれを見届けた後、椅子に座り外を見て──思わず口角が上がりにやけそうになる口元を本で隠した。

 

 

(キス待ち顔のトム、可愛すぎる……!)

 

 

 わかっている。私は“姉”であるけれど、トムは“母”も求めているのだと。

 私も見た目は五、六歳くらいだとはいえ、中身は大人だし──母親代わりとして振る舞っている。それでトムの精神が安定し、自尊心が満たされるのなら姉としてでも、母としてでもどっちでもいい。

 

 ああ、でも思春期が来たら嫌われちゃうのかなぁ。それは嫌だけど心が成長してるってことだもんね……。

 思春期のトム。それはそれで可愛いだろうなあ。

 

 

 そんな想像を膨らませていたから、その日手にした本は一ページも読まれることはなかった。

 

 

 

 

 

 次の夜。

 眠りの底にいた私の耳に、扉の軋む音がかすかに届いた。意識がふっと浮かび上がり、まぶたをゆっくりと開く。見えたのは、閉まりかけた扉の影。

 

 ぼんやりした頭を覚ますように瞬きを繰り返し、隣を振り向いた。けれど、そこにあるはずのトムの小さな寝床は平らで、布団の膨らみはどこにもない。

 

 水でも飲みに行ったのだろうか──そう思った矢先、遠くで金具の外れる「ガチャリ」という音が響いた。

 

 

 胸の奥がざわりとする。

 ……今のは、玄関の音。

 

 

 反射的に身を起こし、椅子に掛けてあったショールを肩に引き寄せる。窓辺へ駆け寄り、外をのぞけば、星明かりに照らされた庭に、寝間着姿のトムが立っていた。

 

 

「なんで──!」

 

 

枕元から杖を掴み取り、慌てて靴を履く。心臓が胸を急き立てるように脈打つ。ああ、もう、早くしないと。

 いくら星が道を白く照らしているとはいえ、幼い子が一人で歩くには危険すぎる。

 

 ──今までも、こんなふうに抜け出していたの? どうして? 外に出て、いったい何を……。

 

 

 居間を通り抜けたとき、足もとから『姫様!』と蛇の声が響いた。

 

 

『何、私急いでるの』

『ミルクがトムについて行きました。星を捕まえに行くとか──』

『え?』

 

 

 言葉に足が止まる。

 スモークと名付けられた蛇が、淡々と告げる。

 

 ──ああ、そうか!

 昨日の流れ星の話を真に受けて、森に“星”を探しに行ったのね。

 

 

「か、可愛すぎる──」

 

 

 胸を押さえて、思わず悶える。そうだ、トムは大人びて見えてもまだ子ども。空想の中で生きていて、その発想がたまらなく可愛い。──いや、冷静になれ! 可愛いけれど危険なのも確か。

 

 でも、一人じゃなく、蛇を連れているあたりが妙に賢いのがまた……可愛いわ。

 

 

『ありがとう、探してくるわね』

『気をつけて』

 

 

  心配そうに声をかける蛇たちに手を振り、私は夜気の中へと踏み出した。

 

 

 空には満天の星。

 道は光に縁取られ、月明かりが白く浮かび上がらせている。森はすぐそこ。一本道だから迷う心配はないけれど、それでもトムがつまずきでもしたら──そう思うと足が速くなる。

 

 なるべく音を立てぬよう、それでいて急ぐ足取りで進むと、やがて遠くに見慣れた小さな後ろ姿が見えた。

 

 

 家の近くにある、小さな森。広さはなく、危険な獣もいない。せいぜい蛇くらいだが、トムにとっては友人同然だ。ほんとうの危険は、もしもの不審者くらいだろう。けれど、こんな田舎にそんな者が現れたらすぐに村中の噂になるはずだ。

 

 ──それでも、心配は尽きない。ランプを持たない子どもが暗い森に入っていく。根に躓いて転ぶかもしれない。道を外れ、心細さに泣き出すかもしれない。

 

 私は杖を握り直し、静かにその背を追った。

 小さな肩に降り注ぐ星明かりを見失わぬように。

 

 

 

***

 

 

 夜更けに、そっと目を開けた。

 隣のベッドに視線を向けると、白い布団のふくらみがわずかに上下している。姉さんは静かに眠っていた。

 

 ゆっくりと身を起こし、窓の外を見やる。昨日と同じように、夜空には数えきれないほどの星が瞬いている。

 胸の奥が高鳴り、僕はぎゅっと拳を握りしめた。

 

 足音を立てないよう注意しながらベッドを抜け出し、そろりと扉へ向かう。

 取っ手を回すと、ギィ、と小さな音が鳴った。思わず肩をすくめる。……起こしてないよね? きっと大丈夫。

 

 

 暗い居間だけど、不思議とぼんやりと物の輪郭が見える。外から星と月が照らしているからかな?

 家具にぶつからないよう気を配りながら進み、蛇たちのゲージの前にしゃがみ込む。僕の気配に気づいたのか、蛇たちが頭をもたげ、舌をちろちろと出した。

 

 

『僕とお散歩、行こう?』

『え、もう夜だよ』

『いいけどさあ』

『眠くないし』

『俺はやだなぁ』

 

 

 好き勝手に囁く声がいくつも重なる。

 誰でもいいから──と手を差し伸べると、白い蛇のミルクが『私、行きたいな』と静かに言い、近寄ってきた。ガラス戸を開けると、するりと腕に巻きつき、ひやりとした感触が肌を撫でる。首元まで這い上がると、そのまま心地よい重みを残してとぐろを巻いた。くすぐったくて、僕は小さく首をすくめる。

 

 

『気をつけてなあ』

『早く戻ってきてねー』

『どこに行くんだい?』

 

 

 背後からの声に振り返り、僕は手を振って答える。

 

 

『星を捕まえに行くんだ──じゃあね』

 

 

 玄関の扉を開けると、ひやりとした夜の空気が頬を撫でた。土と草の匂いが混じった風を胸いっぱいに吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

 

 顔を上げれば、頭上にはきらめく夜空。

 そのただ中で、一筋の光がすっと走り抜けた。──流れ星だ!

 

 

『行こうミルク! もう待ってるかも』

『何があ?』

 

 

 僕は走りながら『星!』と答える。

 

 森の入り口に立つと、空気の匂いが急に変わった。

 冷たい風が顔をなでて、木の隙間からこぼれる星の光が、地面に白い点々を落としている。

 

 胸の奥がきゅっとなる。森はやっぱり暗くて──ちょっと怖い。葉っぱが揺れるたびに、誰かが隠れてるみたいに思えてしまう。

 でも、首に巻きついたミルクがいる。ひんやりして重みがあって、喉のあたりにぴったりくっついている。それだけで大丈夫な気がした。

 

 

 僕はこぶしをぎゅっと握る。

 ──星を捕まえるんだ。

 

 

 昨日、姉さんが夜空を見上げてた横顔はすごく綺麗だった。大人みたいで、少し──遠くに行ってしまう人みたいで。

 だから、星を捕まえてあげればきっと喜んでくれる。ずっとそばにいてくれる。僕のことを見て笑ってくれる。……その顔が見たい。

 

 

 ポケットから小さなガラス瓶を取り出した。光虫を入れていた小さな瓶。ここに星を入れて、姉さんに渡すんだ。

 

 きっと、笑って、「すごいね」って。──抱きしめてくれるかもしれない。

 

 

 それだけで頭の中はいっぱいになる。

 

 

 風が木を揺らして、ごそごそ音を立てた。胸が縮こまって息が止まりそうになる。けど、耳元でミルクが舌をちろっと鳴らした。その音を聞くだけで、少し安心する。──うん、大丈夫。僕はひとりじゃない。

 

 上を見れば、枝の切れ間から星がたくさん降りてくるみたいに光っている。地面までうっすら白くして、夜なのに昼みたいに明るく見えた。

 

 僕は瓶を胸に抱えて、じっと立つ。

 

 

 ──降りてこい、星。

 姉さんに見せるんだ。

 

 

 草がさわっと揺れ、葉っぱがこすれる音がする。心細さが押し寄せてきても、首元のミルクの冷たさを感じ直すたびに、息を深く吸えた。

 

 夜空を見上げながら、僕はただ待った。

 星が落ちてくる、その瞬間を。

 

 

 ふいに、夜空に光が走った。

 流れ星だ──!

 

 

 僕は思わず息を呑み、慌ててそのあとを追った。森の奥へ、走る、走る。

 首に巻きついたミルクが小さな声で囁く。

 

 

『転ぶよ! 気をつけて!』

 

 

 でも足は止まらない。瓶をぎゅっと握りしめたまま、上を見上げながら走った。

 

 

「あっ──!」

 

 

 足が根っこに引っかかり、ぐらりと体が傾く、膝を強く打った。鋭い痛みが走って、思わず声が漏れた。

 土に手をつき、ぎゅっと掴む。──痛い──けれど、すぐに押し返すようにして立ち上がった。

 

 

──痛い。でも、走らなきゃ。

 

 

 つまずきながらも必死に駆け抜けると、森が少し開けた場所に出た。

 胸がどきどきして息が苦しい。けれど、目はあたりを探していた。ここに落ちたはず。

 

 

「……!」

 

 

 星明かりに照らされて、白く光るものが地面にあった。

 

 僕は息を切らせながら近づいていく。

 膝の痛みなんて、もう感じなかった。胸がドキドキ高鳴って仕方がない。

 そこにあったのは、半透明の小さな欠片。やさしく光っていて、指先でちょんと触れると不思議と温かかった。

 

 

──これが、星なんだ。

 

 

 僕は両手でそっと包み込むように拾い上げる。

 震える手でガラス瓶を開け、慎重にその中へ落とした。

 

 瓶の中で淡く輝く光を見つめていると、胸の奥が幸せでいっぱいになる。

 これを姉さんに渡したら、きっと喜んでくれる。笑ってくれる。──その顔を思い浮かべただけで、痛みも怖さもすべて消えていた。

 

 

 

***

 

 

 

 「……トム?」

 

 

 暗い森の中、背を向けてしゃがみ込んでいる小さな影に声をかけた。

 さっき転けたのを見ていたから、泣いてしまったのかと思った。けれど、呼びかけられたトムはびくりと肩を揺らし、振り返る。そこに涙はなかった。

 

 驚いたように目を見開いたあと、ぱっと表情が変わる。興奮で頬を赤らめ、目を細めて満足そうに笑いながら──「姉さんっ!」と声を弾ませて駆け寄ってきた。

 

 

「姉さん、見て。星、捕まえた!」

 

 

 小さな手に握られた瓶を、誇らしげに差し出してくる。

 中には淡く光を放つ石が入っていた。おそらく、光を蓄える魔法石の一種だろう。……星そのものではない。

 

 本当なら、夜の森にひとりで来たことを叱らなければならない。どれほど心配したかを伝えなければならない。

 けれど、胸を張るトムの顔を見た瞬間、その言葉は喉の奥で溶けてしまった。

 

 

──ああ、なんて満足げな顔をするのだろう。

 

 

 過去のトムにはなかった表情、感情の確かな動き。──それを曇らせる勇気なんて、私にはなかった。

 

 

「星を捕まえたの? すごいわ」

 

 

 目を細め、はにかむように答えると、トムは嬉しそうに頷いた。

 

 

「うん! 姉さんにあげる」

「……私に?」

 

 

 思わず声が揺れた。てっきり自分のために持ってきたのだと思っていたのに。

 

 

「うん。……嬉しい?」

 

 

 少し不安そうに見上げてくる瞳。

 その眼差しを受け止めて、私は小さく頷いた。

 

 

「ありがとう、トム。とっても嬉しいわ」

 

 

 そう言って腕を広げ、トムを抱き寄せる。小さな体を胸に抱きしめると、トムが息を呑んだ音が聞こえた。

 

 トムは私の首もとに鼻を寄せ、すう、とかすかに吸い込むと安心したように自分の腕を私の背に回す。

 

 

「うん、よかった……」

 

 

 小さな声。けれど、その声には確かな喜びが満ちていた。

 

 

──本当は、こんな夜に危ないことをする子を許しちゃいけないのだろう。

 危ないからやめなさい、もうこんなことはしないで、と強く言わなければならないのに。

 

 それでも、腕の中のトムはあまりにも誇らしげで、あまりにも愛おしかった。

 この子の純粋な気持ちを曇らせるくらいなら、叱る言葉なんてどうだっていい。

 

 

 困った子。

──でも、私にとっては、この上なく大切な子。

 

 私は姉であり、母であり──そして何より、この子の願いそのものになりたいと、そう思いながらトムを抱きしめる腕にそっと力を込めた。

 

 

 

 二人で手をつないで、森を抜ける道をゆっくりと歩く。

 夜空にはまだいくつもの星が散らばり、ときおりその中を一筋の光が走った。

 

 

「姉さん、見て!」

「……綺麗ね」

 

 

 トムが指を伸ばして声を弾ませる。私もつられて笑ってしまう。握った手は小さくて温かく、その温度が指先から胸の奥まで広がっていくようだった。

 

 しばらく空を見上げたまま歩き、ふと私は口を開いた。

 

 

「流れ星に願い事を唱えると願いが叶うんですって」

 

 

 ふと、思い出して伝える。

 魔法界でも、同じような事をするのかはわからない。けれど、なんとなく素敵な話だからトムに伝えたくなった。

 

 

「そうなの?」

「ええ。……トムは何か願いごとある?」

 

 

 問いかけながら横を見やる。トムは空をじっと見上げていた。小さな手が、私の手をぎゅっと強く握る。

 

 その瞬間、夜空に星がすっと流れ落ちた。

 

 

「──姉さんと、ずっと一緒にいられますように」

 

 

 そう言ってこちらを見上げ、少し照れたように笑う。その笑顔が夜空の星よりも眩しく感じられて、胸の奥が温かく揺れた。

 

 

「……ふふ。ありがとう。私も同じ願いよ」

 

 

 言葉を返しながら、私は自然と身を寄せた。肩が触れる。小さな手のぬくもりが、これからも続いていくようにと願わずにはいられなかった。

 

 夜空にはまだ、いくつもの星が瞬いていた。

 その光に照らされながら、私たちは寄り添い、微笑み合い、家路へと歩いていった。

 

 

 

 

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