今回はちゃんとしたデュエルシーンがあるので結構長いです。
突如、俺の前に現れ、父を助けて欲しいと懇願してきた少女「白羽光姫」。これは複雑な事情があると察し、俺は近くの茶店で話を聞く事にした。
白羽さんの父親は、ソリットビジョンシステムを開発した大企業「白羽コーポレーション」の社長で、社員や家族に優しい理想的な父親だったそうだ。しかし数日前から社員に対して非人道的な労働を強いたり、家族に手を挙げたりと、まるで別人のようだと彼女は語った。だけど、
遊真「その、話を聞く限り俺が解決できる問題じゃない気がするんだが、どんな経緯で俺を頼ろうって考えになったんだ?」
光姫「それは、この子のお陰です」
白羽さんが胸ポケットから一枚のカードを取り出したかと思えば、突然カードが光り、そこに描かれていた金髪の少女…"閃刀姫-レイ"の精霊が姿を現した。
光姫「昨日、この子が教えてくれたんです。お父さんはデュエルモンスターズの精霊に憑りつかれてる。元に戻すにはデュエルに勝って精霊を引き剥がすしかないって。それで、昔デュエルモンスターズの大会を最年少で優勝した先輩が学校にいるって噂を思い出して、今日あの空き教室で先輩を見つけたんです」
遊真「まさか、きみもカードの精霊が見えているのか?」
光姫「いえ、時々声が聞こえるだけで姿とかは見えないんです。でも、この子は近くで私を守ってくれている。そんな気がするんです」
そう言って大事そうにカードを抱え込む白羽さん。そんな彼女を慈しむような視線を向けるレイは、真剣な顔つきで俺の方に向き直る。
レイ「私からもお願いします。マスターのお父さんは私とマスターを引き合わせてくれた。私にとっても父親のような存在なんです。お願いします、私達のお父さんを助けてください」
レイは深々と頭を下げて懇願してくる。普通、精霊が主以外にこれほどの感情を向ける事は無い。だが彼女は、白羽さん達を自分の家族だと心の底から思っている。例え存在を認知されていなくても、彼女達が共に過ごした時間がどれだけ濃密で、そこで育まれた絆は本当の家族のものと何ら変わらない事は、俺にも理解できた。
遊真「(ここまで頼み込まれたら、断れないな。)分かった。君達のお父さんは俺が何とかしよう」
光姫 / レイ「「ありがとうございます!」」
遊真(……やっぱり良いな。家族ってのは)
▼
白羽さん宅に着いた俺は、目の前の巨大な豪邸と広い敷地に唖然としていた。想像はしてたが、流石に広すぎる。本当にこんな豪邸に3人だけで住んでるのか?
光姫「どうぞ先輩。こちらが玄関です」
メイド「光姫お嬢様!こんな時間までどこに……そちらの方は?」
屋敷に入ると、奥から『ドラゴンメイド・ハスキー』のような女性を筆頭に、7人のメイドから出迎えられた。
光姫「こちらは学校の先輩の霞理遊真さんです。それより
黒龍院「
光姫「分かりました。皆さんはお仕事に戻ってください。先輩、行きましょう」
遊真「ああ。あ、お邪魔します」
黒龍院「はい、ごゆっくり。じゃなくて!お待ちください光姫様!お客様も!」
父親の所在を聞いた白羽さんは靴を脱ぎ棄てて屋敷の奥へと走る。俺はちゃんと靴を揃えて客人用のスリッパに履き替えてから白羽さんを追い掛ける。
そして廊下の突き当たりの扉を開けたまま固まっていた白羽さんに追い付いた俺は、同時に目に入ってきた光景に戦慄した。
部屋の中では白羽さんの父親が1人の女性――白羽さんの母親だろう――の胸倉を掴んでいた。女性は何度も殴られていたのか、体の至る所に青いあざが痛々しく浮き出ている。だが俺が戦慄したのは、それだけが原因じゃない。
遊真(何だ、この威圧感……これ程の力を持つ精霊は初めてだ)
光姫「お母さん!」
秀明「ん?光姫ぃ、こんな時間までどこに行ってたんだ。それに誰だぁ?その男は」
光姫「お父さん!お母さんに何してるの!」
別に何でもいいだろっと、秀明さんは奥さんを掴んでる手を放し、意識のない奥さんはゴトンッと鈍い音を立てて倒れる。
黒龍院「お、お二人とも早すぎます……だ、旦那様⁉」
秀明「黒龍院か。貴様何をしている。早くその小僧を摘み出せ」
黒龍院「し、しかし旦那様、奥様が」
秀明「主人に逆らうのか?」
黒龍院「っ…!か、畏まりました……」
光姫「待って黒龍院さん!」
黒龍院「すみませんお嬢様。旦那様のご命令に背くわけには……」
初めこそ秀明さんの近くで倒れている奥さんを心配していた黒龍院さんだったが、秀明さんの気迫に押され、苦い顔で俺を取り抑える。だが黒龍院さんの意志が弱かったのと、白羽さんのお陰で簡単に振り解けた。
遊真「おい、アンタ」
秀明「あ?何だ小僧?」
遊真「俺とデュエルしろよ」
俺の言葉に白羽さんのお父さん…いや、憑りついている精霊は一瞬驚いた表情を見せ、段々と可笑しい物を見るように笑い出した。
秀明「私とデュエルだと?それは私が白羽コーポレーションの社長だと知っての挑戦か?」
遊真「社長だからってデュエルが上手いとは限らない。それに、その地位はその人が家族の為に身を粉にしてようやく手に入れたモノだ。精霊、お前のじゃない」
秀明「……精霊?何の事やら」
遊真「とぼけても無駄だ。俺は昔からカードの精霊が見える体質でな、お前がその人に憑りついてるのは分かってる。俺とデュエルしろ。そして俺が勝ったらその人の体から出て行くんだ」
精霊は初めこそ正体を暴かれた事に怪訝な表情を浮かべていたが、俺が精霊が見える人間だと気付いた瞬間、上機嫌になり、不敵な笑みを浮かべた。
精霊「何という幸運だ。まさかこんな上物に出会えるとはな」
遊真「どういう意味だ」
精霊「なに、こっちの話さ。そんな事より人間、貴様の申し出、聞き入れてやらん事も無い。だが、私が勝った場合はきみの体を貰う事にするが、それでも良いならね」
遊真「良いだろう。デュエルだ!」
▼
NOside――――
遊真(なんとかデュエルに持ち込めたな)
屋敷の裏にある特設のデュエルフィールドに立つ遊真と精霊。後ろでは光姫がデュエルの勝敗を見届けるべく少し離れた所で立っている。因みに黒龍院は搬送された白羽・母に付き添っている
光姫「先輩、いいんですか!あんな条件」
遊真「大丈夫だ。俺は負けない。家族の絆を弄ぶような奴にはな。それとこれは勘だけど、このデュエルは嫌な予感がする。離れておいてくれ」
心配する光姫をフィールドから遠ざけ、遊真がデッキを取り出すと精霊から何かを投げ渡された。
精霊「折角だ。此度の戦いは、ソレを使う事にしよう」
遊真「これは、新型デュエルディスク⁉」
精霊「正式発表前の新型だとさ。この男が後生大事に持っていたよ。ディスクの後ろに付いているデバイスを取り外して頭に付けるんだ。デュエルの補助をしてくるらしい。安心しなよ、相手のディスクに細工するような姑息な真似はしていない」
投げ渡されたのは新型のデュエルディスク。遊真は初めこそ疑いの目を向けていたが、相手の言葉を信じ、ディスクの後ろにあるデバイスを頭に、左手にデュエルディスクを装着した。
続いてデッキをセットすると自動的にシャッフルが行われ、デュエルディスクが展開する。
※デュエルディスクの形状は「DSOD」の物をイメージしています。
精霊「準備は良いか?」
遊真「ああ」
「「
遊真 LP:4000 手札:5枚
精霊 LP:4000 手札:5枚
精霊「先行は私だ。私は『翻弄するエルフの剣士』を召喚!」
『翻弄するエルフの剣士』 星4 ATK:1400
このカードは攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない。
精霊「更に私は、永続魔法『レベル制限B地区』を発動」
『レベル制限B地区』 永続魔法
フィールド上のレベル4以上のモンスターは守備表示になる。
精霊「『レベル制限B地区』の効果で『翻弄するエルフの剣士』は守備表示に。ターンエンド」
精霊 LP:4000 手札:3枚
《モンスターゾーン》
・翻弄するエルフの剣士 星4 DEF:1200
《魔法・罠ゾーン》
・レベル制限B地区 永続魔法
遊真「俺のターン、ドロー」
遊真 手札:5 → 6枚
遊真(さてこの盤面、どうやって攻略するか)
翻弄するエルフの剣士は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されず、更にレベル制限B地区は召喚されたレベル4以上のモンスターの表示形式を守備表示にする効果を持つ。翻弄するエルフの剣士も例外なくその効果を受けているが、遊真のデッキで攻撃力が1200を超えるモンスターはそのほとんどがレベル4のモンスターばかり。現状、遊真にはエルフの剣士を倒せるモンスターは居ない。
遊真「(取り敢えず手札の確認を……ん?)カードが光っている?」
精霊「気付いたな。それが新型デュエルディスクの補助機能。デュエルディスクと頭のデバイスが連動し、現時点で発動可能なカードが強調される仕組みとなっている。人間の道具は便利だなぁ」
遊真「確かに便利な機能だ(お陰で突破口も見えた)。俺は手札から速攻魔法『サイクロン』を発動!レベル制限B地区を破壊!」
『サイクロン』 速攻魔法
フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
カードから発生した突風が秀明のフィールドのレベル制限B地区を破壊する。
遊真「これでレベル制限B地区の効果は無くなった!俺は手札から魔法カード『予想GUY』を発動!デッキから『幻獣王ガゼル』を特殊召喚!」
『予想GUY』 通常魔法
自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する。
遊真のフィールドに出現した異次元ゲートから、幻獣王ガゼルが飛び出す。
『幻獣王ガゼル』 星4 ATK:1500
通常モンスター
遊真「更に手札から『竜魔導の守護者』を通常召喚!」
『竜魔導の守護者』 星4 ATK:1800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、このカードの効果を発動するターン、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる。デッキから「融合」通常魔法カードまたは「フュージョン」通常魔法カード1枚を手札に加える。
②:EXデッキの融合モンスター1体を相手に見せて発動できる。そのモンスターにカード名が記された融合素材モンスター1体を自分の墓地から選んで裏側守備表示で特殊召喚する。
遊真「竜魔導の守護者の効果。手札1枚を墓地に送り、デッキから『融合』を手札に!」
『融合』 通常魔法
自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。
遊真「竜魔導の守護者のもう1つの効果。EXデッキの融合モンスターを見せて、そこに記された融合素材モンスター1体を墓地から裏側守備表示で特殊召喚する。俺のカードは『有翼幻獣キマイラ』俺は墓地から『バフォメット』を裏守備表示で特殊召喚!」
精霊「1つ目の効果でバフォメットを墓地に送っていたのか」
遊真「そういう事だ。手札から融合を発動!フィールドのガゼルとバフォメットで融合!融合召喚!有翼幻獣キマイラ!」
『有翼幻獣キマイラ』 星6 融合モンスター ATK:2100
「幻獣王ガゼル」+「バフォメット」
このカードが破壊された時、自分の墓地の、「幻獣王ガゼル」か「バフォメット」1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
遊真「バトル!竜魔導の守護者で翻弄するエルフの剣士を攻撃!」
竜魔導の守護者の攻撃力は1800。翻弄するエルフの剣士の破壊耐性は攻撃力1900以上のモンスターにのみ有効。守備力1200のエルフの剣士は成す術もなく破壊される。
遊真「続けて、キマイラでダイレクトアタック!"
精霊「ぐはぁ‼」
精霊 LP:4000 → 1900
遊真「カードを1枚セットして、ターンエンド」
光姫「凄い。お父さんのライフがもう半分に」
遊真 LP:4000 手札:1枚
《モンスターゾーン》
・有翼幻獣キマイラ 星6 ATK:2100
・竜魔導の守護者 星4 ATK:1800
《魔法・罠ゾーン》
・伏せカード1枚
精霊「流石……いや期待以上だよ。やはり貴様は私の依り代に相応しい!私のターン!……くく」
精霊 手札:3枚 → 4枚
遊真(何か仕掛けてくるな)
精霊「私は魔法カード『戦士の生還』を発動!墓地から翻弄するエルフの剣士を手札に戻し、そのまま召喚。更に私は永続魔法『罪宝の欺き』を発動!」
『戦士の生還』 通常魔法
自分の墓地の戦士族モンスター1体を対象として発動できる。その戦士族モンスターを手札に加える。
『罪宝の欺き』 永続魔法
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。デッキから「アザミナ」カード1枚を手札に加える。
②:モンスターが相手の墓地へ送られた場合、自分フィールドに「アザミナ」モンスターが存在していれば発動できる。相手は1500LPを失い、自分は1500LP回復する。
③:魔法&罠ゾーンの表側表示のこのカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。このカードを自分フィールドにセットする。
精霊「罪宝の欺きの効果、翻弄するエルフの剣士をリリースし、デッキから『聖なる
『聖なる
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:EXデッキの「アザミナ」融合モンスター1体を相手に見せ、そのレベル4につき1枚、自分の手札・フィールドから「罪宝」カードを墓地へ送る(裏側表示カードはめくって確認する)。その後、見せたモンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。
②:このカードが墓地に存在する場合、自分のフィールド・墓地の「アザミナ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、このカードを手札に加える。
精霊「このカードの効果により、私はEXデッキの『アザミナ』融合モンスターを公開する。私が公開するのは『
遊真「確認した」
精霊「その後、公開したモンスターレベル4つにつき1枚、手札・フィールドから『罪宝』カードを墓地へ送る事で公開したモンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。公開したレジーナのレベルは8。私はフィールドの『罪宝の欺き』と手札の『廻る罪宝』の2枚を墓地へ、現れよ我が分身、
秀明の体から溢れ出るオーラが、漆黒の翼を持つ巨大なモンスターの姿へと変化する。
『
幻想魔族モンスター+レベル6以上の悪魔族モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:「殺戮聖徒レジーナ」以外の自分の墓地の幻想魔族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚できる。
②: 「殺戮聖徒レジーナ」以外の「アザミナ」カードか「罪宝」カードの効果が発動した時、フィールドのカードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊する。
遊真「これが奴の正体!」
レジーナ「驚くのはまだ早い!私はカードを1枚セット。続いて墓地の廻る罪宝を除外し効果発動。今セットしたカードを手札に戻し、その後手札からカードをセットできる」
『廻る罪宝』 通常罠
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①:デッキからレベル5以上の幻想魔族モンスター1体を選び、手札に加えるか特殊召喚する。このターンのメインフェイズの間、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの効果を発動できない。
②:墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの裏側表示カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に戻す。その後、手札から魔法・罠カード1枚をセットできる。
遊真「だがお前の手札は0枚。手札に戻してもセットできるのは同じカードだ。どうしてそんな意味のない効果を」
レジーナ「ここで我が分身、殺戮聖徒レジーナの効果発動!このカード以外のアザミナまたは罪宝カードの効果が発動した時発動できる。フィールドのカード2枚まで選び破壊する。私が対象とするのは貴様のフィールドのキマイラとその伏せカードだ!」
突如として発生した紫の雷が遊真のフィールドのキマイラと伏せカード(
遊真「くっ(このタイミングじゃ、キマイラの効果は発動できない)!」
レジーナ「廻る財宝の効果処理、セットカードを手札に戻す。ただしセットはしない。バトル!我が分身、殺戮聖徒レジーナで竜魔導の守護者を攻撃!"
殺戮聖徒レジーナの周囲に複数の魔法陣が出現し、放たれた巨大な魔法弾が竜魔導の守護者を破壊し、その余波が遊真を襲う。
遊真「グッアアアア‼」
遊真 LP:4000 → 2800
攻撃の余波を受け、吹き飛ばされた遊真は地面を転がる。
光姫「先輩‼」
遊真「ゲホッゲホッ!なんだこれ、実際にダメージを受けたみたいだ……」
レジーナ「おっとこれは失敬、張り切りすぎてつい、威力を間違えちゃったよ」
遊真「どういう、意味だ?」
レジーナ「私が召喚された時点でこのデュエルは闇のゲームと化した。モンスターは実体を持ち、ダメージは現実となる。そしてこのデュエルに負けた者は命を落とす。因みに私が負けた場合は私自身が消滅する。もっとも私が負ける事はあり得ないけどね」
余裕の表情で説明を行うレジーナ。一方の遊真は全身を貫く激痛で話を聞いてる余裕はない。しかしいくら意識が朦朧としていても、遊真はデュエルを諦める気は無かった。
光姫「もういいです先輩!このままじゃ先輩が死んじゃいます!」
レジーナ「その子の言う通り。今ならまだ、命だけは見逃してあげるよ。私もきみの体を綺麗なうちに手に入れたいからね。エンドフェイズ、墓地の罪宝の欺きの効果によりこのカードをフィールドにセットする。ターンエンド。さあ、サレンダーするんだ霞理遊真」
サレンダー……つまり降参しろとレジーナは遊真に提案する。遊真は右手をゆっくりとデッキの上まで持っていく。あとは「
遊真「サレンダーは、しない。俺のターン……ドロー」
遊真 手札:1枚 → 2枚
体中が痛みで軋み、今にも気を失いそうな自分に鞭を打ち、カードを引いた。
遊真「(手札に逆転のカードは無い。ここは守備を固めて奴の攻撃を凌ぐしかない)モンスターとカードをセット。ターンエンド」
遊真 LP:2800 手札:0枚
《モンスターゾーン》
・裏守備モンスター ×1
《魔法・罠ゾーン》
・伏せカード ×1
レジーナ「あくまでも抵抗し続ける。それがきみの答えか。私のターン」
レジーナ 手札:1枚 → 2枚
レジーナ「私はフィールドのレジーナを対象に墓地の聖なる薊花の効果を発動。対象モンスターをEXデッキに戻し、このカードを手札に戻す。この瞬間、レジーナの効果発動!きみが希望を託したその2枚のカードを破壊してあげよう!」
遊真「させない。
『もの忘れ』 通常罠
相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動した効果を無効にし、そのモンスターを表側守備表示にする。
遊真の場の伏せカード目掛けて放たんとしていた雷は不発、レジーナは守備表示となり、聖なる薊花の効果で即座にEXデッキへと戻った。
レジーナ「咄嗟の対応力は素直に評価するよ。でも、その幸運もここまでだ。私は魔法カード『『守備』封じ』を発動!さあ、そのモンスターの正体を見せて貰おうか!」
『『守備』封じ』 通常魔法
相手フィールドの守備表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを表側攻撃表示にする。
『守備』封じの効果により裏守備となっている遊真のモンスターは攻撃表示となり、彼の相棒モコモッコが姿を現した。
モコ「モコ!」
『モコモッコ』 星1 ATK:300
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがモンスターと戦闘を行う場合、その2体はその戦闘では破壊されない。
②:自分メインフェイズに発動できる。このカードを裏側守備表示にする。
③:このカードがリバースした場合に発動できる。自分は1枚ドローする。
遊真「モコモッコのリバース効果。1枚ドローする」
遊真 手札:1枚 → 2枚
レジーナ「それがきみの希望?たかだか攻撃力300の雑魚モンスターが?」
遊真「俺の相棒を、馬鹿にするな。コイツは何度も俺に勝利をもたらしてくれた。コイツの力で俺は必ずお前を倒す!」
レジーナ「残念だけどそれは不可能さ!私は聖なる薊花を発動!フィールドの『罪宝の欺き』と手札の『罪宝合戦』を墓地に送り、殺戮聖徒レジーナを特殊召喚!さあ幕引きだ。きみの相棒ごと葬ってあげよう!殺戮聖徒レジーナの攻撃!"
先程よりも巨大な魔法弾がモコモッコへと迫る。
遊真「モコモッコの効果により、このカードとバトルする相手モンスターは互いにこのバトルでは破壊されない!」
レジーナ「だがダメージは受ける。たとえライフが残ったとしても、この攻撃をまともに受けてタダで済みはしない!先に本当のライフが尽きるかもな!」
遊真「っ、モコモッコ!」
モコ「モコ‼︎」
モコモッコのウィジャド眼が輝き、巨大な障壁となってレジーナが放った魔法弾を受け止める。
モコ「モっ…コぉ!」
遊真「ぐっ…耐えてくれ、モコモッコ!」
次の瞬間、モコモッコの張る障壁が割れ、膨大な魔力の塊は遊真とモコモッコを巻き込んで爆発した。
遊真「ガアアアアアアア‼」
遊真 LP:2800 → 100
爆発が収まり、倒れる遊真をモコモッコが支えている姿が見えた。モコモッコのお陰で何とか意識を保っている遊真だが、体は既に限界を迎えており、これ以上デュエルを続行できるかも怪しい状態だ。
レジーナ「ほう、あの攻撃に耐えるとはな。だが、もう意識を保つのも限界だろう。今からでも遅くない。サレンダーして楽になるんだ」
遊真「サレンダーは、しない…」
レジーナ「これ以上続けても無意味だ。きみの残りライフはたったの100。奇跡でも起こらない限り、きみが勝つ可能性は0だ」
遊真「ライフが100も残ってれば、十分だ。俺はまだ戦える。さあ、早くデュエルを続けろ」
立ち上がった遊真は、震える腕を何とか持ち上げてデュエルディスクを構え直す。
レジーナ「……エンドフェイズ、墓地の罪宝の欺きの効果を発動。墓地のこのカードをセット。ターンエンド」
レジーナ LP:1900 手札:0枚
《モンスターゾーン》
・殺戮聖徒レジーナ ATK:3000
《魔法・罠ゾーン》
・伏せカード ×1
遊真「俺のターン、ドロー」
遊真 手札:1枚 → 2枚
遊真(駄目だ、この手札じゃ勝てない)
遊真の手札には『死者蘇生』と『思い出のブランコ』。しかし、どちらも墓地のモンスターを蘇生するカード。場の殺戮聖徒レジーナを倒すことは出来ない。
『死者蘇生』 通常魔法
自分か相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
『思い出のブランコ』 通常魔法
自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。
遊真(このターンで決着を付けないと次のターンで確実に負ける。なら…ここは勝負に出る!)
遊真「手札から『死者蘇生』を発動!墓地からバフォメットを特殊召喚!更に『思い出のブランコ』を発動!墓地から通常モンスターのガゼルを特殊召喚!」
・幻獣王ガゼル 星4 DEF:1200
・バフォメット 星5 DEF:1800
レジーナ「守備を固めてきたか。だがその程度、次のターンで蹴散らすまで」
遊真「まだだ!モコモッコの効果、このカードを裏側守備表示にし、その後反転召喚。この瞬間、モコモッコのリバース効果発動。デッキから1枚ドローする」
白羽「これで逆転のカードが引ければ……」
レジーナ「そんなの不可能さ!たった1枚のカードでこの局面を覆せる訳がない!」
遊真「それはどうかな」
レジーナ「なに?」
遊真「デュエルモンスターズの醍醐味は、たった1枚のカードが勝利の鍵となるゲーム性だ。俺はこのラストドローに全てを賭ける!力を貸してくれ、相棒!」
モコ「モコ!モオッコ‼」
金色に変化したモコモッコのウィジャド眼の光が遊真のデッキへと放射され、遊真のデッキトップのカードにも同じ紋様が浮かび上がる。
遊真「ドロー!」
遊真 手札:0枚 → 1枚
遊真(この、モンスターは……そうか、お前が引き寄せてくれたんだな)
遊真は自身が引いたカードに困惑したが、逆転にはこのモンスターの力が必要だというデュエリストの本能と、このモンスターを引き寄せてくれた相棒を信じカードをデュエルディスクに置いた。
遊真「俺はガゼルとバフォメットをリリースし、アドバンス召喚!出でよ『
光の粒子となった2体の獣が紅の魔法陣を形成し、脈打つ魔法陣の中心から霧が噴き上がる。噴き出す濃霧の中から金色のマントを翻した魔術師が悠然とその姿を現した。
『
①:このカードがモンスターと戦闘を行う場合、その2体はその戦闘では破壊されない。
②:このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターのコントロールを得る。
③:1ターンに1度、このカード以外のモンスターが攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。フィールドのカード1枚を破壊する。
レジーナ「幻惑の魔術師……⁉何だ、そのモンスターは!」
遊真「さあな、俺もこんなモンスターは初めて見た。だけど俺には分かる。コイツは
光姫「どうして⁉攻撃力には10倍も差があるのに!」
レジーナ「血迷って自滅の道を選んだか!なら望み通り返り打ちにしてやろう。"
三段跳びで天高く飛び上がるモコモッコ。そのまま落下して体当たりしようとするモコモッコを撃ち落とさんと、レジーナが三度魔法弾を放つ。
遊真「悪いが自滅するつもりはない。モコモッコをサポートしてくれ、幻惑の魔術師!」
幻惑の魔術師が頷くと、モコモッコの体を紫色の魔力が包む。魔力の膜に包まれたモコモッコはレジーナが放った魔法弾を貫き、そのまま殺戮聖徒レジーナの体をも貫き破壊した。
レジーナ「攻撃力3000のモンスターが、攻撃力300の雑魚如きに破壊されただと⁉」
遊真「これが幻惑の魔術師の効果。自身以外が攻撃する時、フィールドのカード1枚を破壊する。コレでお前を守るモンスターはいなくなった!次の攻撃で、俺の勝ちだ!」
レジーナ「まさか、ここまでしてくるとはねぇ。だけど良いのかい?このまま攻撃すれば実際のダメージがこの体を襲う事になるよ?」
レジーナの言葉に遊真は攻撃の手を止める。
レジーナ「今、攻撃すれば私を倒せるだろう。だがこの体はどうなる?私が消滅しても、受けたダメージは体に残る。この男はただでは済まない。もしかしたら死ぬかもしれない。それでも良いというなら攻撃してきなよ」
遊真「お前、初めからその人を人質にするつもりで!」
レジーナ「言った筈だよ。私が負ける事はあり得ない。どんな手を使っても必ず勝利する!さあ、早くターンエンドするんだ」
遊真(どうする……奴の言う通りこのまま攻撃したらあの人は)
光姫「攻撃してください!先輩!」
闇のゲームのダメージは攻撃の余波を受けた遊真が倒れるほどの威力だった。そんな遊真だからこそ、直接攻撃を受けた秀明がどうなるか簡単に予想できた。攻撃を躊躇する遊真の背中を押したのは意外にも光姫だった。
遊真「だけど、それじゃきみのお父さんが」
光姫「このままじゃ、お父さんはずっと体を乗っ取られたままです。そんなの耐えられません。それにお父さんなら、自分のために先輩が傷つく事は望んでない筈です。お願いします先輩、お父さんを助けて‼」
遊真「……分かった。頼むぞ、幻惑の魔術師」
レジーナ「ま、待て」
遊真は覚悟を決め、レジーナの方を向き直る。その眼に迷いはない。攻撃してくるつもりだと気付いたレジーナは彼を止めようとするがもう遅い。
遊真「幻惑の魔術師でダイレクトアタック!"
レジーナ「バカなァアアアアアアア‼」 LP:1900 → 0
▼
遊真「何とか、勝てた……そうだ、あの人」
まだデュエルのダメージが残っていたが、俺は急いで倒れている白羽さんのお父さんに駆け寄った。憑りついていた精霊が消えているのは分かるが、目を覚ます様子はない。やはり最後の攻撃のせいで…と不安がよぎる。
秀明「っ……うぅ」
遊真(良かった。思っていたよりも傷は浅い)
光姫「霞理先輩!お父さん!」
遊真「白羽さん。大丈夫、すぐに手当てをすれば問題ないはずだ」
光姫「良かった……」
安堵し、父親の手を取って涙ぐむ白羽さんと、彼女の肩を優しく支え静かな喜びを見せるレイ。その様子を見て、本当に救えて良かったと思っていると、急に視界が揺れた。
遊真(あ……これは、まず)
疲労とデュエルのダメージで体の自由が利かない。遠のく意識の中で白羽さんが倒れた俺の名前を何度も呼んでいた。彼女を安心させようと言葉を発した筈だが、果たして彼女に届いたのか。その答えを確認するよりも先に、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。
▼
Noside――
白羽邸から離れた深い森の中、翼が折れた状態のレジーナが木に凭れ掛かっていた。
レジーナ「危なかった……あと少しあの体を捨てるのが遅かったら、本当に消滅する所だったよ。こんな屈辱は初めてだ。霞理遊真、次こそは必ず貴様を……」
??「あら、貴女に次は無いわよ」
レジーナ「!お前は……!」
遊真に対する恨みの炎を燃やすレジーナの前に白魔女が現れた。
白魔女「敗者に次は無い。それがアタシ達の掟よ。忘れたの?」
レジーナ「分かってるわよ。でもね、私も黙ってやられるつもりは無い」
白魔女「無駄よ。本調子じゃない貴女はアタシの敵じゃない。さよなら、"大魔女モルガナ"」
白魔女に対抗して魔法弾を放つレジーナだったが。今のレジーナに白魔女の魔力に打ち勝てるほどの力は残っておらず、押し返されてしまう。
??『レジーナを葬ったのか』
白魔女「あら?悪かったかしら?」
??『……いや、処分する手間が省けた』
レジーナを倒した白魔女の精神に男の声が響く。声の主に笑いながら問い返した白魔女。男は彼女の問いに冷酷な言葉で返す。しかしその声色はどこか悲しげだった。
??『計画はどうなっている』
白魔女「首尾は上場……っと言いたい所だけど、中々"カギ"は見つからないものね」
??『急げ。必要なら増援を送ってやる』
白魔女「相も変わらず人使いが荒いわね。いや、精霊使いかしら?ま、どっちでも良いわ。あ、そうそう、さっき彼女が面白い事を言ってたのよ」
白魔女は声を一段高くし、嬉々とした表情で話を続けた。
白魔女「彼女を倒した人間の名前、霞理遊真って言うらしいわよ?どこかで聞いた名前ねぇ?」
??『霞理游…真?確かにそう言ったのか?』
白魔女「そうよ。と言っても、もう確認のしようは無いけどね」
??『そうか。くくっ、楽しみが増えた。早急に計画を進めろ!」
霞理遊真の名を聞いた瞬間、上機嫌に笑い出した男は白魔女にそう命令すると、一方的に会話を終了させた。
白魔女「本当、精霊使いが荒いんだから。ま、これから面白くなるみたいだし良しとしましょう。あら?これは」
男の態度に悪態を吐き、その場を離れようとした白魔女はふと、3つの宝石が先程までレジーナの亡骸があった場所に落ちてるのに気付いた。
白魔女「これも報酬として貰っておこうっと」
宝石を拾い、まるで幼い少女のような笑みを浮かべる白魔女は、今度こそ森から姿を消し、森には静寂が戻った。
今回はここまで。
以降の話ではデュエルシーンは分割するつもりです。
ルール的な指摘があれば、教えていただけると幸いです。