遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
――SS精霊世界 ユウのデッキの中
ここは、SSカードの精霊が住まう世界。
ユウのデッキの中のモンスター精霊らが暮らしている世界である。
『戻りました〜……』
『おかえり〜……』
ミッドソードナイトやヒールマジシャンらは、疲弊していた。
今日に限っては異常な程にデュエルに駆り出されている為だ。
『はぁぁ〜疲れたぁ…ホンット、マスターどうしたの? 急に回数こなすじゃん…』
と、ヒールマジシャンが愚痴を言うのも仕方ない。短時間でもう5回目の呼び出しである。
ここまで忙しいのも久し振りの事だった。
『おぅ、おかえりィ〜』
更に2人を出迎えたのは、精霊【月光舞獅子姫】
アミの月光デッキの切り札であった。
今はSSの世界に遊びに来ている。
『ライオちゃんは全く呼ばれないよね〜。マスターはアミちゃんと戦ってるんでしょう?』
『それなんだがよ…ユウのデッキ調整なら、アタイの出番はねーんだぜ』
『舞獅子姫殿、それは何故でしょうか?』
ミッドソードナイトが質問を投げ掛けるが、ライオは顔をしかめるばかりだ。
『……まあ、あれだ。ユウを相手に、アタイら月光を使うのは…お前らSSが完全な状態じゃねえといけないらしいぜ。お前らはまだ、仲間が全員揃ってる訳じゃねえんだろ?』
『まあね。上級組はまたどこかに行っちゃったしぃ〜最近神龍サマもあんまり見ないよね〜居はするんだろうけどぉ〜』
『神龍様も気まぐれな御方だ。きっと休まれているのだろう』
『まあでもさぁ〜マスターとアミちゃん、まだデュエルとデッキ調整やってるの? もう夜更けよ? せっかくお部屋で2人きりなんだし、もっと他にイロイロやる事あるでしょー!! 爛れた青春の汗を流せーー!!』
ヒールマジシャンのヤケクソ気味な絶叫に、ライオもまた同調し、
『そりゃあそうだなー! 筋トレとか野山全力疾走とか狩りとかよぉ!!』
『いやいやちょっと汗流す方向性が違うかなライオちゃん。そりゃ最終段階に至ればある種の筋トレになるのかもだけどそういうんじゃなくてね』
『おっ、コイツは謎掛けかー!? でもすまねーがアタイはそーいうの苦手でな…』
『いやホラ、アレよア――』
と、ヒールマジシャンが踏み込もうとした直後、召喚ゲートが上空に現れた。
『むぅ、マジシャン殿、再び召喚だ! 行くぞ』
『え゛え゛〜もー!! 疲れたァァ〜!』
『おーう、頑張って来いよー!!』
空へ消えてゆく2人を、ライオは見送った。
――翌朝。
端末の目覚まし機能で、起床したユウ。
時間はきっかり7時30分。
「んっ…あぁ…」
軽く伸びをしてコンディションチェック。問題なし。
ロビーに集合は8時だった筈なので、洗顔やらを済ませると着替え、財布と端末…デッキケース入りの鞄を持ち、部屋を出た。
早目に出たのはロビーに先乗りし、アミに「遅せーぞ」と言う、ささやかな意趣返しを敢行したかったのだ。
が……
「あら、思っていたよりは早かったわね」
既に、待機していた。
「まだ15分も前だぞ…」
「女は支度に時間がかかるものなの。早目に動かないと遅れかねないのよ」
「そっかァ…なあ、そういやメシはどーすんだ? ホテルバイキングか?」
ビジネスホテルとはいえ、時間が時間だけに、そこそこの賑わいを見せている。
朝食、バイキング会場にもかなりの人が居た。
「ああそうそう、デュエルに夢中で伝え忘れてたわ。朝食は取ってないの。ホラ、私達って何かと目立つでしょう?」
と、アミは言う。
確かにマーカー付きが2人。そんなの堂々としてれば問題ない、と思われるかもしれないが、この刻印は想像以上に重く見られている。
本当はホテル側より、部屋を取る事でさえ拒否されかかっているのだが、アミは敢えて触れなかった。
マーカー付きを泊めるホテル、とは言われたくないのだろう。
「りょーかい。オッサンにゃあ伝えたのか?」
「伝えてないかも…ちょっとフロントに行って来るわ」
オガタは携帯端末を持っていない。部屋に直通か、もしくはデュエルディスクの通信機能を使うしかないのだ。
「分かった。精々目立たねぇよう待っとくさ」
と、ユウ。
アミが離れた間、端末をいじり時間を潰す。
(ふぅん…スゲェな。あらゆる情報が溢れてやがる)
幼少時…まだ両親が健在だった頃。
端末は、まだ早いと持たせて貰っていなかった彼に、情報の津波は新鮮であった。
ネット世界に没入してしまう人間の気持ちが、少し分かった気がした。
『マナカ ユウさん……』
「!?」
その時、彼に声を掛けて来る者があった。
顔を上げれば、そこに居たのはカードのモンスター【幽鬼うさぎ】の姿をした何かだった。
ユウは彼女を知っている。
島のデスゲームの際に、プレイヤーキラーとして、あるいは運営として幾度も姿を現した存在。
「テメェ、何でここに居やがる」
『……私達は、もう…この世界の…何処にでも出向ける様になっています…だから、時間がありません、警告だけします……』
「警告だぁ?」
『UCS……あの大会に、参加されない方がいいですよ……命が惜しいなら…』
「随分と物騒な言い草じゃねぇか。テメェが関わってるとなると…あの大会、ファングの野郎も1枚噛んでやがんな?』
『……あの大会は…ファング副長官の計画……その最初の一手となります…大変危険なんですよ』
「ハッ、どう危険だってんだァ?」
『……詳しくは、ノーコメントです…』
「チッ。だが、分かんねぇなァ、テメェはあっち側だろうが。なーんでわざわざオレに警告なんざしに来る? ソイツはおかしいんじゃねーのか?」
『そ、それは……私が…個人的に、貴方を気に入っている…という返答では…ダメ、でしょうか?』
予想外の答えに、ユウは思わず「はぁ!?」と素っ頓狂な声を上げてしまう。
『人間は……気に入った人を、危機から遠ざけたい…そう思いますよね……つまり、そういう事です』
「……なあ、そんなに危険なのか?」
『はい…ああ、もう無理です…それでは……』
「おい、ちょっと待っ――」
ユウが言葉を言い終わる前に、幽鬼うさぎは姿を消した。
文字通り、その場からパッと消えたのだ。
丁度、そのタイミングで、アミがオガタを伴って現れた。
「お待たせ」
「おはよう〜、君ら2人さぁ、もうちょっと静かに出来ないの? 2人の声が凄い漏れ聞こえててさぁ、おじさんドキドキして眠れなかったんだけどォ!」
「んな事はどーでもいい。アミ、オッサン、ちょっといいか…ヤバい話だ」
ユウは、2人と共にそそくさと、ホテルを出発した。
幽鬼うさぎ
カードモンスター。相手がフィールドで効果を発動した時、手札からこのカードを捨てることでそのカードを破壊できる効果を持つ。
デスデュエルゲームにおいては自律した存在としてユウらの前に現れ、プレイヤーキラーとして活動していた。デュエルをせずに隠れていたプレイヤーに制裁を科したり、デュエル以外の手段を用いたプレイヤーを排除したりしていた。
本人いわく、ソリッドビジョンでもカードの精霊でもなく、正体はトップシークレットとのこと