遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
「アイツがそんな事を?」
ユウからの説明を受けるなり、オガタがそうリアクションした。
幽鬼うさぎからの警告。
それは信じられるのかと言われれば…難しい。
そもそもが、彼女自体ファングの手先である。
そんな相手がわざわざ現れることが不自然。
だが…大会がファングの差し金で、ユウを誘き出すのが目的だとすれば…納得出来る部分もある。
それが優勝商品の、SSカード5枚セットだ。
これ程分かりやすく、ユウを引っ張り出す手段は他に無い。
「だが、何と言われようがオレは出るぜ。これを逃せば二度と、SSカードは揃わねぇかもしれない」
「だけど命が危ないって言われたんだろ? 命あっての物種とも言うし…」
「アイツらはただのカードじゃねぇんだ。オレの命と同等以上の意味がある!」
SSカードは、ユウの父親の残した唯一のカード。
そこまではアミも知っている。
だが、この態度はそれ以上の何かがあると感じずにはいられない。
「敵の待ち構える巣穴へ飛び込むのだから、相応の準備は必要よ」
「アミちゃんまで…うーん……なあ、ユウ君。俺だって君の願いは尊重したいよ? だけど、アイツらが居るって事は、最低でもデスゲームをやった島くらいには危険があるって事だ」
いつになく真顔でオガタは言う。
ユウもまた、この時ばかりは沈黙を選んだ。
「俺は今まで散々修羅場を潜って来たが、あの島だけは別格だった。あんな危機を間近に感じた事はねえんだ。人間ってのは誰も彼も進んで危険に飛び込める訳じゃないし、飛び込むべきでもねえと思ってる……最期のお願いだ、出場は考え直さないか?」
「……オッサンは待ってていいぜ」
その言葉を受けたオガタは、ギリッと歯噛みした。
「ズルいよユウ君さぁ…そんな風に言われて本当に待ってたら…俺、臆病者になるじゃん」
「そんな事は無いわ。オジサマは当たり前の事を言っている。決闘に目が眩んでいるのは私達の方よ」
「そうだぜ。アンタにゃ色々と世話になった、無理強いはしねぇよ」
うつ向くオガタ。
彼はボソボソと…しかしハッキリと、言った。
「…ったく、若者の前でさ、情けないオッサンじゃダメだろ」
と。彼は自身のディスク入りの鞄を、デッキを握り締め、言葉を紡いだ。
「俺が居ないと割りと不都合あんじゃん? 怖いけど着いてくよ、勿論最後までな!」
「いや別に不都合はねえけどなァ」
「あるよ!! 裏のヤツらのやり口知らねーだろ、オジサンは詳しいの! アドバイスさせてよ!」
「ふふ。ね、ユウ。オジサマもこう言ってるし、やっぱりご同行を願いましょう?」
「えー? 仕方ねぇな〜じゃあ行こうぜオッサン!」
「も〜なんだよこの扱い! 俺のセリフなのよそれは!!」
「ハハハハハ〜まあいいじゃねえか! まずはメシだメシ!! 準備はその後な!」
こうして一行は、UCSに向けての準備に取り掛かった。
――翌日。UCS当日。
準備を完了したユウは、先日と同じくロビーに居た。
アミとオガタも、そこに立っている。
「いいかいユウ君。会場に入る時は、俺達は別々に入らないといけない。何故だか分かる?」
「あ? 何でだよ」
「少しは考えなって。俺やアミちゃんが、出場者、この場合はユウ君の関係者だって分かるとヤバいのよ」
「なるほど。私達を人質に使われる恐れがあるのね?」
「そう言う事だ。勝つ為なら何だってする連中も居る…特にデュエルギャングなんかも参加してるだろうからね」
中には家族を人質に、負けを強要された決闘者さえ居る。
ただただ賞金や優勝商品を争う正規の大会と違い、他の賭け事の対象となっている場合もある。
「今までは1人でやってたからよォ…そういうのもあるんだな」
「ああ。後は控室とかに置いてある飲食品には手を付けないこと。これは分かるよね?」
「そりゃ当然だろ。何が入ってるか分かりゃしねぇ」
「その通り! 後は防毒マスクは常に持ち歩く事」
ポケットに忍ばせた、簡易防毒マスクを取り出すオガタ。
「そんなモンまで必要かァ? さすがに大袈裟じゃ――」
「甘い! 言ったろ、連中に常識を期待するんじゃない。何があっても対応出来ないと…まずは試合に出れないといけないんだからな! 本当は防弾チョッキくらいは着といて欲しいんだけどね」
「そんな真似をする卑怯者は決闘者を名乗らないで欲しいわね」
アミがやや呆れながら言った。
「それじゃ、準備はオッケーか? 良かったらユウ君から行ってくれ。俺達もバラバラに会場に入る」
「ああ。そんじゃ、行って来るわ」
「気を付けて」
そういう彼女に、手を上げて応え、ユウはホテルをあとにした。
UCSの会場は、未だに郊外に存在している地下決闘場にて行われる手筈になっていた。
かつては賑わいを見せていた東エリア郊外地区は、現在ではすっかりとさびれてしまっている。
しまいには、デュエルギャングや決闘者崩れなどの、反社会的勢力に地区は乗っ取られていた。
普段であるなら、独り歩きなど危険極まりないのだが、今日は別だ。
何せ年に一度のUCS、大規模決闘大会が開かれる日。
この日は全国からの物好きな観戦者、及びお忍びの有力者が、郊外地区を訪れる。
無法者らとて、現地や大会組織にカネを落とすお客様や、手出しすれば郊外地区が消し飛びかねない有力者にまで噛み付くほど、馬鹿な訳ではない。
だからユウもまた、アッサリと会場に辿り着く事が出来た。
「大会参加希望だ」
会場入り口を固める、どう見てもカタギでない若者らに告げるユウ。
「へへへッ…マーカー付きか…地獄へようこそ
「コレでいいか?」
キャッシュ一括で支払うなり、若者らの好奇の視線が益々強まった。
「オッケーだ。そんじゃ、アンタ名前は?」
「ユウだ。マナカ ユウ」
「マナカ、ユウね…気のせいかな、どっかで聞いたことある名前だな」
それにユウは答えない。
「まあいいや。デュエルディスクと、携帯端末を出しな。後はカメラとか録音するヤツとかあんなら、全部預けてくれ」
(カメラやらもダメなのか…)
当然ながら、非公開の裏デュエルとあって、撮影したり音声を拾うのはアウトなのだ。つまり携帯端末やらが没収されるのは理解出来る。
預けた端末は、専用金庫に入れられた。
デュエルディスクを差し出すと、男らは正体不明の装置をディスクに近づけ、何かを読み取っている。
「こりゃあ何をしてんだ?」
「大会用デバイスにディスクIDを登録してんのさ。替え玉出場されねえように、試合前の度に照合すんだよ」
思っていたよりも、ずっと厳重な体制である。
地下デュエルで、ここまでやるのは珍しい。
だが少なくとも、無法極まりない大会ではなさそうだ。
「登録は終わった。お前は控室に行きだ。プレイヤーは開会式が終わってからが出番だからよぉ…ここから先は、案内板に従って移動しなぁ」
「……ああ、分かった」
ユウが会場入りしたのを見届け、若者らは顔を見合わせた。
明らかに興奮した様子で。
「かっちゃん、アイツ本物だよな? なぁ?」
「ガチもガチよやっべー雰囲気だよ」
「いべちーってばメッチャブルってたろ、なンだよ【地獄へようこそ】ってえ! 慣れねーこと言いやがって」
「しょーがねーだろ【セキュリティキラー】のマナカ ユウだ、誰でもビビんべ」
彼の悪名は、こんな所にまで響いていた。
セキュリティキラー、マナカ ユウ
ユウが捕縛された裏デュエル会場に於いて、ユウは数十人ものセキュリティ隊員らをデュエルで負かしており、副長官ファングの登場が無ければ逃げ遂せた可能性があった。
恐らくはその時に、関係者が鬼神の如く暴れるユウを見ていたのだろう。新聞やニュースにもなっている為、こう言われるのも仕方のないことかもしれない。