遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
――郊外地下デュエル場、観客入場ゲート
「観客の皆様はこちらへどうぞ〜お一人ずつ、ゆっくりと入場して下さいませ」
警備員が的確な誘導を行い、列が少しずつ進んでゆく。
UCSが非合法かつ非公開の大会である事を考えれば、観客の数は異常とも言えた。
日常の決闘大会ではお目にかかれ無い、デスマッチ紛いのデュエルが見たい観客らが一定数存在するとはいえ、だ。
アミとオガタは一般観客席列…ごった返す列に並んでいる。
一方でVIP席、優良席の観客は列を分けられ、スムーズに会場入りをしていた。
ついている警備の数も段違いだ。
「…警備の連中も、ギャングか何かだな」
「そうなの? 私には分からないわ」
「匂いで分かるさ。まあお客様は大事な資金源だしな〜おいそれと手出しはしないだろ」
列を進んで行くと、警備員が観客に声掛けをしているのが分かる。
いわく、録音録画、撮影の出来る機器を預かるとのこと。
中には反抗する客も居たが、屈強な警備員に囲まれ、それでも言う事を聞かなければ…別室へと案内されていた。
「可哀想に…」
そしてアミらの番となる。
彼女は端末を、オガタは差し出すものは何も無い。
「お客様、デュエルディスクは所持されていますか?」
警備員は言った。
「ええ。それが何か?」
「申し訳ありませんが、不正防止のためIDを登録させて頂きます」
アミ、オガタはディスクを登録し、ようやくゲートインが許された。
「最近の地下デュエルはあんな事すんだなぁ〜いやはや時代は変わったもんだ」
「不正防止は大いに結構だわ」
「不正とかイカサマ、場外乱闘も地下デュエルの見所と言って良かった時代があったんだよね」
そこからは自分らの席に着く2人。
開会式が始まったのはすぐだった。
――出場選手控室
控室に入ったユウを待ち構えていたのは、多数の視線であった。
皆、侵入者を一瞥し、そして興味なさそうに目線を外す。
ユウは部屋の隅へと移動し、壁にもたれかかった。
ざっと見たところ、自分と同じマーカー付きは半分は居る。
(……どいつもコイツも、只者じゃなさそうだ)
「隣いいかな?」
と、そこへ出場者と思しき細身の男が、唐突に話し掛けてくる。
ああ、とユウは生返事を返すなり、男は
「兄さん、中々立派なマーカーあるけど、何やったの?」
などとズケズケ尋ねて来た。
「万引きと恐喝だなァ、大したことのねー小悪党よ」
ユウは男に乗っかったフリをし、嘘を答えた。
こうして他人に気さくに話掛け、情報を抜き取る輩をユウは沢山見てきたのだ。
そして得た情報を戦いにも生かして来る。
「そっかー若いのに大変だね。イントネーションからすると、西エリアから来たのかな?」
「……ッ!?」
「それと兄さん、あからさまな嘘は良くないよ。ただの小悪党がどうして出場費用を出せるんだい? 本当の事を教えて欲しいな〜」
ここに居る連中は皆、何かしらのギャングクランか資金源を持っている者達であろう。
これはユウが迂闊だった。マーカー付きが個人的に出すには、出場費が高いのだから。
「それにな、ここに居るのは皆、どっかで見た事のある連中ばかりなんだ。馴染みのメンツってワケ。兄さんみたいなのは珍しいんだよ」
「…………」
「答えたくないのかな? まあいいや…でも私はね、ウソつきが嫌いなんだ」
男は、何かを取り出したのが見えた。
咄嗟にユウは飛び退こうとしたが…後ろは壁だ。
だから踏み出し、男の動いた手を掴んだ。
その手に仕込んであったのは…【死神の大鎌‐デスサイズ】のカード。
「いい度胸をしているね。兄さんとはいい勝負を期待しているよ…私はモハン。イーハン・モハンだ。名前だけでも覚えておいてくれよ」
そう言い残し、移動するモハン。
丁度そのタイミングで、控室のモニターに開会式の様子が中継された。
――唐突に、会場の照明が落ちた。
同時に幾筋ものスポットライトが、ステージ中央を照らし出す。
『レディースアーンドジェントルマン!! これよりUCS開会式を始めさせて頂きます!! 進行を務めさせて頂きますのはこの私!! 最新技術により現れしカードの精霊! アルレキーノと申します!!』
スポットライト下に現れた者の姿に、観客らからはどよめきが上がる。
あの島でデスゲームを体験し最期まで残った者ならば、よく見知った顔となるだろう。
【恐楽園の死配人〈Arlechino〉】
幽鬼うさぎと同じく、プレイヤーキラーを行っていたモンスターだ。
『まずはこの大会を主催なされたマーゼル会長のご挨拶です! では会長、どうぞ!!』
「これで確定したわね。UCSにはファング、セキュリティが関与している」
「ユウの言ってた通りってワケだな…下手すりゃもう、連中は俺達が居るの勘づいてるかもな」
「その為のID管理だったのかもしれないわね」
様々な方からの融資もあり、こうして最新技術を用いたUCSを開催出来ます事を、心より御礼申し上げ――』
「オジサマ、やはりこの大会は何かある。お互いに気を付けましょう」
「ああ、だな」
主催者挨拶が終わり、大会開始が宣言された。
すると会場にスモークが焚かれ、大小様々なデュエルモンスターらが狭い地下の宙を舞い、地面を駆けた。
観客らの盛り上がりが最高潮に達したところで、アルレキーノがルールを発表する。
『本大会はトーナメント形式にて計16名で争われる事になり、優勝には4連勝が求められる訳です。決闘者の皆様は、決闘中の違反行為全てを禁じますからご注意下さいませ〜我々が常に目を光らせておりますから、言い逃れなどは不可能です。審判団の皆様、どうぞ!』
アルレキーノの言葉に反応し、ステージに審判団らが姿を現す。
【灰流うらら】【屋敷わらし】【浮幽さくら】【儚無みずき】【朔夜しぐれ】などのいずれもモンスターの姿をしているが、その中にはやはり【幽鬼うさぎ】の姿もあった。
『なお昨年まで実施されておりました、電流デスマッチや蟲毒デュエル、ニードルウォールサバイバル等は、コンプライアンスの観点から実施されませんので、ご了承下さいませ…それでは、第一回戦の組み合わせを発表致します! 掲示板にご注目を!』
――出場選手らは、モニターの対戦組み合わせに注目していた。
ユウもまた、壁にもたれたまま画面を注視している。
やがて表示された2名の名前、それは……
イーハン・モハン VS マナカ ユウ
の組み合わせであった。
(いきなりあの男とか…ツイてんだかツイてねえんだか…)
「マナカ ユウ選手、イーハン・モハン選手、ステージへとお上がり下さいませ」
控室の扉が開き、スタッフが2人を呼んだ。
移動し、ステージにて相対する2人。
「へえ…兄さん、マナカ ユウっていうんだね」
「ああ」
「お互い、いい勝負をしようじゃないか。はい」
と、片手を差し出すモハン。
明らかに握手をしよう、というアクションなのだが、ユウはこれに応じる事はない。
「おや…失礼じゃないかな?」
「オレは用心深いんでなァ…【決闘中の】違反行為はダメだが、決闘前ならいいとかされそうだったんでね」
「なるほど」
モハンは、指に挟んだ仕込み毒針を引っ込めた。
「ユウ、やはり君は面白いね。益々倒したくなったよ」
「ハッ、やってみなァ!」
2人のデュエルディスクが展開されてゆく。
アルレキーノがオーディエンスを煽り、盛り上げていった。
『それでは御二方! 決闘開始の宣言を!』
「「デュエル!!」」
恐楽園の死配人〈Arlechino〉
幽鬼うさぎと同じく、カードモンスターでありながら独立した存在としてプレイヤーキラーや司会進行を務める者で、その正体は今のところ不明。
カードの精霊呼ばわりされた際には感情を露わにしており、本人としてはそう思われるのは不本意らしい。
電流デスマッチ
ライフポイントにダメージを受ければ、決闘者に電流が流れるルールの恐るべきデュエルだが、ダメージを与えるカードを大量にデッキに組み込む【デスバーン】等の戦術が横行し、見世物としてはつまらないという意見もある。
蟲毒デュエル
凶悪決闘者らを1部屋に集め、競わせるデュエル。最大で16名同時にデュエルした記録もある見応え重視のルールだが、モニターで観戦する観客からは、画面が五月蝿過ぎる等のクレームも度々受けていた。
ニードルウォールサバイバル
無数のトゲの生えた壁を、クライミングの要領で移動しながら行うデュエルだが、そもそもデュエルがしたいのかニードルウォールクライミングがしたいのか理解に苦しむルールである。