遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
観客席のアミとオガタは、第一回戦の決着を見届け、口々に感想を述べていた。
「スナイパーか…マジでおっかねえな。早速命に関わる事案じゃねーかよ!」
「そういった点では審判団達はよくやっている様ね」
「ま、まあなぁ。どうやら完全中立みたいだし…」
「しかしデュエルギャングとやらは一生相容れないわね。命まで取るなんて、狂っているわ」
「ちょっとした金の為に犯罪する連中も多い。狂わざるを得ないのさ、アイツらは」
ユウとモハンがステージから退場するなり、何事もなく2戦目がスタートしていた。
「……私も、人の事は言えないか」
アミの呟きは、観客らの声援にかき消えた。
――選手控室
ユウは無造作に並べられたテーブルにて、デッキの調整を行っていた。
【貪欲な壺】【シンクロキャンセル】【ツインツイスター】【霊王の波動】等の汎用カードを睨みつつ、思考をしている。
モニターの第2回戦の様子が中継されているが、そちらには時折視線を送る程度だ。
他の決闘者らは、敵の戦術を把握すべくモニターを注視していた。
(当然、オレの戦術はコイツらにバレてるだろうからなァ)
ユウと戦う相手が、SSに対して有利カードを握っている恐れは大いにある。
ならばこちらも多少のプラン変更はやむ無しだろう。
『おおーっとカザム選手、デュエルディスクに細工をしていた様ですねェ!! 残念ですが我々にはそういったものは通用致しませんよ…カザム選手、退場ォ!! オオタケ選手の先攻0ターンキルゥゥ! カードをプレイする事なく次戦出場を決めたァァ!』
「カザムの野郎ォ! 普段から引きが強ぇと思ってたらそういう事かよォ!!」
「てかあの眼鏡野郎の戦術分かんねーじゃねえか馬鹿野郎!」
「ディスク弄れんなら技術者にでもなっとけ!!」
控室でも罵詈雑言が飛び交う。
何人かのプレイヤーはコソコソとディスクを確認していた。
「ああ、ってことは次の相手は、あのオオタケってヤツか…」
その後も第一回戦、計8試合が行われた結果、モハンやカザムを含む退場者は半数にものぼった。
この結果には司会アルレキーノも苦笑いしつつ、審判団の有用性がアピールされてゆく。
『続きまして第ニ回戦に突入致します! 最初の対戦カードはマナカ ユウ選手とオオタケ デルタ選手、ご入場下さい!!』
ステージ上で相対した2人。
オオタケを見たユウの第一印象は、眼鏡。
逆に言えば眼鏡が唯一の特徴といっても良い存在感の薄い…覚えづらい、平均的顔付きの青年、といった感じである。
『ではお互いにディスクを起動して下さい…第二回戦、これより開始致します!』
「「デュエル!」」
オオタケ LP4000
ユウ LP4000
「ジブンのターン、手札よりモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド」
「なんだァ? 随分と短いじゃねぇか! オレのターン、ドロー!!」
「…………」
「事故か何か知らねーが遠慮なく行かせて貰うぜェ! 手札からSSミッドソードナイトを召喚、効果を発動ォ!」
「永続罠【閃光を吸い込むマジックミラー】を発動。フィールド及び墓地で発動した光属性モンスターの効果は無効化される」
「チィッ!? そういう事か!」
ミッドソードナイトのみならず、SSデッキは基本的に光属性モンスターで統一されたデッキだ。
なら、戦術がバレた時点でこの様なピンポイントメタカードを使われるのは予想していた。
ミッドソードナイトの発動した効果が無力化され、手札から相方を特殊召喚することは出来なかった。
「更にもう1枚の伏せカード【死霊の誘い】発動。カードが墓地に送られる度、そのプレイヤーに1枚に付き300ポイントのダメージを与える」
「…手札のSSエッジストーンゴーレムを、デッキトップのカードを墓地に送り特殊召喚! 他のSSモンスターが存在する為、ミッドソードナイトの攻撃力は500アップする」
ミッドソードナイト ATK1450 → 1950
ユウ LP4000 → 3700
『閃光を吸い込むマジックミラーがあるのに、どうしてミッドソードナイトの攻撃力が上がるんですか?』
審判団の1体、儚無みずきが質問を投げ掛ける。
『マジックミラーは、フィールド上と墓地で発動したモンスター効果を無力化するカードですからねぇ! 発動を伴わない永続効果、この場合のミッドソードナイトの様な効果は無力化されないのですよ!!』
アルレキーノの解説が意味不明な文言にしか聞こえなかったのだろう、儚無みずきは難しい顔のままフリーズしていた。
「仕方ねえバトルだ! ミッドソードナイトで守備モンスターに攻撃!」
「守備モンスターは【モコモッコ】このカードは戦闘で破壊されず、リバースした際にカードを1枚ドローする」
「チィッ…オレはメイン2にカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
ユウ LP3700
ミッドソードナイト ATK1450 → 1950
エッジストーンゴーレム DEF700
魔法・罠 2枚伏せ
「ジブンのターン、ドロー」
――観客席アミ、オガタ
「あのオオタケって人、どうやらメタ戦術が得意な決闘者の様ね」
「メタ戦術かぁ。相手の戦略を機能不全にして勝つ戦い方だよなぁ。俺は陰湿な感じがしてあんまり好きじゃねーな」
「でも、メタ戦術は相手の戦法やデッキ傾向をよく理解していないと充分真価を発揮しない…使い手の腕が試されるわ」
「確かにな…マジックミラーはユウに滅茶苦茶刺さるだろうし、ピンチだろ」
「忘れたのオジサマ? ユウのデッキに存在しているのは光属性だけじゃないわ」
「……ああ、あの黒いドラゴンな!」
「そういうこと。でも、あのカードを出すにはかなりの枚数のカードを墓地に送らなければならない。死霊の誘いでのダメージは馬鹿にならないでしょうね」
「あのオオタケって野郎、かなりSSデッキの戦い方を理解してるみたいだな」
「そうね。だけれど、ユウはあの程度なら容易く突破するでしょう」
――「モコモッコの効果を発動。このカードを裏守備に変更する。そしてモコモッコを反転召喚、攻撃表示に変更。モコモッコがリバースしたので1枚ドローする」
(またカードを引いた…何をするつもりだコイツ)
「モンスターをセット。カードを2枚セットしターンエンド」
オオタケ LP4000
モコモッコ ATK300
裏守備モンスター
魔法・罠 閃光を吸い込むマジックミラー、死霊の誘い、伏せ2枚
「…おいおい、随分とバエない戦い方してんなァ! ギャラリーヒエッヒエだぞ?」
ユウは、相手の情報を引き出すべく、軽く挑発をしてみた。
観客がトーンダウンしているのは事実で、分かり易い大型モンスターのぶつかり合い等の方が盛り上がるのだろう。
「地味でつまらない。ジブンはよく言われる」
「あ?」
「だがシンプルにコンパクトに、これがジブンの信条だ。メタが嫌ならサレンダーでもすればいい」
「ああそうかい。オレのターン、ドロー!」
ギャラリーらの声もまばらの中、ユウは引いたカードを睨んだ。
(モコモッコが攻撃表示な以上、攻撃すれば相当なダメージが入るが…それが分からん様なヤツじゃねぇだろ。確実に誘ってやがんな)
モコモッコの攻撃力は僅か300。
しかも戦闘では破壊されない事から、いわゆるサンドバッグに出来れば、大ダメージをプレイヤーに通せるが…
「随分と悩むなマナカ」
「ハッ、そりゃあな! こんなあからさまな誘い、誰だって警戒すんだろ!」
「君はもっと蛮勇を振りかざすタイプだと思ったが、思慮深い様だ」
「失礼だなァ! 思慮深くなきゃここまで生き残れてねーわ!」
「それもそうか…だがジブンのメタ戦術でメッタメタにしてやるから覚悟しろ!!」
「………………は?」
つまらないってそういうこと? とユウは思った。
永続効果
発動する、等の文言のない、フィールドに存在する限り効果が適用される効果。