遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
――セキュリティ本部、ファング個室。
セキュリティ副長官、ファングはデスクに腰掛け、簡易モニターでUCSの様子を眺めていた。
試合は準決勝、ベスト4に出場した選手が戦っている。
(ふむ、あと…1時間もすれば頃合いか)
壁にかかるアナログの時計を横目に、自身のデッキを手に取る。
そのエクストラデッキから、1枚のカードを抜き出した。
【邪神龍ピュアリフィケーション・ドラゴン】のカードを。
(マナカ ユウ…あと僅かだ。もう一度神龍を召喚しろ。そうすれば完全にロックは外れる)
邪神龍のカードデータをディスクに読み取らせる事には成功したが…モンスター効果欄の表記が、現れていない。
懸命の解析の結果、連動しているモンスター、神龍ピュアリフィケーション・ドラゴンの、あと1度の召喚が必要である事が判明した。
(なんとも厄介なロックを掛けたものだ。だがそれも間もなく終わる…)
椅子の背もたれに体重をかけた時、執務室の扉が突如として開き、駆け込んで来たのは彼の右腕、ソラノ カナタであった。
「ノックぐらいしたらどう――」
「ファングさんアンタ、UCSでアレのテストをするって本気なのか!?」
「ほぉ、誰に聞いた?」
「そんな事はいい! 本気なのかと聞いている!」
「大方想像はつく。お前には話すなと釘を刺しておいたのだがな」
「質問に答えてくれ!」
「本気だとも。実行はプレイヤーキラーらに任せてある」
アッサリと答えたファングに、カナタは顔を青くし、
「どれだけの犠牲が出るのか理解しているのか!?」
と激昂し、言った。
ファングはそんな彼の様子を気にもせず、
「だから犠牲となっても問題ない連中が集まっているUCSを選んだのだ。表舞台に出られない日陰者の集まる大会など、島の連中の延長だろう」
「その理屈で言うなら、私も犠牲になって問題ない人間になるぞファングゥゥ!!」
カナタもまた、少年期はプロとして活躍していたが、ある事件を期に決闘の表舞台に立ってはいない。
ファングの言う、日陰者のカテゴリーには含まれ得る。
「そうか、そうなってしまうな。訂正しよう…あれはデュエルギャングや決闘者崩れや腐敗役人などの、片付けの必要な連中の集まりだ。存在しなくなった方が街の為だろう?」
「き、貴様ァァ!!」
胸ぐらを掴むカナタであったが、現職のセキュリティに敵う筈もない。
いとも簡単に手首を取られ、気が付けば逆に拘束されてしまっていた。
「落ち着けカナタ。いいか…人間には2種類しかないのだ。役に立つ者と立たぬ者。世界を獲るにはまず、役立たぬ者を減らさなければならない。それを実現する為にもテストを続け、間違いの無い成果を出さねばならんのだ」
「ぐっ、あっ……」
「テストに犠牲は付き物。モルモットの代わりに塵芥共を使うだけの事だ。テストの結果も得られ役立たずが減る、一石二鳥ではないか」
「そ、そんな事……」
「カナタ! 貴様はこれからの世に必要な人材なのだ。俺に手を下させないでくれ。いいな」
そう言い、拘束を緩めるファング。
ゲホゲホと咳き込むカナタを見下ろし、彼はスーツを整え、再びモニターに目をやった。
「要らぬカードはデッキから抜くだろう? それと同じだ」
ファングは誰に言うでもなく言葉を発した。
――UCS準決勝
「好きにやらせて貰うぜェ! 墓地のSSリクルートを除外して効果発動! デッキからSSストームメイカーを手札に加える! ミディエイト・サイキッカーを通常召喚し、さっき加えた手札の鳥獣族SS、ストームメイカーを特殊召喚する!」
ユウのフィールドに、サイキッカーとストームメイカーが降り立つ。
「フンッ、それがどうシタ! そんな雑魚でZEROを倒せるもノカ!!」
「それが出来るんだよォ!! ストームメイカーの効果発動! テメェの場の残った伏せカードを破壊するぜェ!」
「おのレ、セットカード【魔獣ガーゼット総進撃!】は破壊さレル! ダガ、セットされたこのカードを破壊した事デ、ストームメイカーを破壊スル!」
「ッ!? ったくよぉ、マジで面倒だなァ!! だったら、コイツで決めてやらぁ!! 墓地のストームメイカーを除外し、手札より【SSグリーン・ウィッチ】を特殊召喚!」
しかし、佐野のフィールドのZEROの攻撃力は5000。
如何にモンスターを並べようが、その数値に届く事はない。
それでも…ユウには確信がある。
「グリーン・ウィッチの効果発動! 自身のレベルを2から、4に変更する! ミディエイト・サイキッカーとレベル4になったグリーン・ウィッチでエクシーズ召喚するぜェ! 来い【SSFストームライダー】!!」
SSFストームライダー ランク4、光、鳥獣族、ATK?
「なンダ、そのモンスターハ!?」
「ククク…行くぜ、バトル! ストームライダーで終焉魔獣ガーゼット・ZEROに攻撃ィィ!!」
ストームライダーは口笛をヒュウと吹かすと巨大な翼を広げ、自身の数十倍はあろうかという相手に突っ込んでゆく。
「バカナ、一体何ヲ!?」
「単純だァ! ストームライダーの効果発動! エクシーズ素材を取り除き、このバトル中、コイツは相手モンスターの倍の攻撃力になる!」
ストームライダー ATK? → 10000
『イェアァァァーーーァ――――』
音さえを置き去りにし、加速したストームライダーがZEROの迎撃を潜り抜け、遂に肉薄した。
「ソンナ…ソンナッ…」
刹那、翼は光輝くと、超長尺に伸び……ZEROの分厚い胴体を両断する。
飛び去ったストームライダーの背後で、圧倒的暴威を振るった悪魔は爆散し、砕け散った。
ストームライダー 10000
ZERO 5000
ダメージ 5000
佐野 LP4000 → 0
「バカナァァァァァァ!!?」
『決着ゥゥゥ!! 最後は鮮やかな逆転劇により、マナカ ユウ選手が決勝へと駒を進めましたァァ!!』
ワンテンポ遅れ、歓声が押し寄せ空気を震わせた。
「グヌ…ゥゥ……あり得ナイ…」
崩れ落ちた佐野の前に、ユウが歩み寄った。
「なあ、サタケさんよ」
「佐野ダ!!」
「アンタ、中々強かったぜ。あぶねートコだった」
「うるセエ、そんな言葉を敗者にかけルナ!! 気に入らねえんダヨチビ助ガ!!」
「そうかい。ま、アンタの敗因はオレが相手だった事だぜ…並のデッキならありゃあ詰みかねん」
「……クソチビが偉そウニ! 次こそはテメェをぶっ倒してやるから覚悟してオケ!!」
「はいはい分かったよ。精々鍛えとくんだなァデカブツ!!」
ユウは振り返り、ステージを降りた。
残るは決勝のみ。
あと1勝すれば優勝…商品のカードも手に入る。
(…もうちょいだ、待ってやがれよ…)
――Bブロック準決勝
「ぐわあああああ!?」
チャパン LP600 → 0
『一方的! 一方的な試合でした! チャパン選手を破り、決勝に進んだのは元プロ決闘者、アンデット・ピース選手!!』
ユウの決勝の相手が決まった。
ジッパー・ピース…このデュエルの勝者である。
サングラスに、唐草模様のヘアバンダナ…無精髭を生やした男。
アンデットの由来は、使用デッキからだ。
「ククク…弱い、弱過ぎる…大したことねぇなぁジャッ◯の大会はよォ!! 俺の優勝は確定事項だ、デュエルしなくても分かる! 今すぐにでも商品を渡しな時間の無駄だ!」
等と、挑発するピース。
『ですが次が決勝ですので、あと1戦ばかりプレイして下さいませ。マナカ ユウ選手、ステージへ!』
いよいよ決勝がスタートした。
オリジナルカード効果
魔獣ガーゼット総進撃!
魔法カード
このカード発動後、自分のターン終了時まで「ガーゼット」カード以外の効果は発動できず、「ガーゼット」モンスター以外特殊召喚できない。このカード名の①の効果は1ターンに1度しか発動できない。
①:デッキ、手札、墓地から「ガーゼット」モンスター及び紅蓮魔獣ダ・イーザを可能な限り効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。このカードで特殊召喚されたモンスターの元々の攻撃力は倍になる。
②:セットされたこのカードが破壊された場合、相手フィールド上のカード1枚を対象に発動する。そのモンスターを破壊する。