遊戯王アウトサイダーズ   作:とある遊戯王プレイヤー

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失われた神龍

 

(フフ…いよいよ決勝か。相変わらずやるわねボウヤ)

 

 観客席の堕天使の会代表、ルシア・イヴはお忍びで試合観戦に来ていた。

 彼女は裏社会では有名人である為、深く帽子を被りサングラスを着用している。

 

 周辺を固める形で、堕天使の会信徒数名を配置していた。

 とはいえ皆一様にエキサイトし、決勝を楽しんでいる。

 

(しかし相手はあのピース…盤外戦術が封じられているとはいえ彼の実力は本物よ。生半可では通用しないわぁ)

 

 彼女の評が的中していたのは、この後の展開をみれば明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

――「ククク…ようやく終わりかぁクソガキ?」

 

 ピースが、愉悦の笑みを浮かべて言った。

 彼がこれほど余裕を見せるのも仕方あるまい。現在の彼のフィールドをみれば…

 

 ピース LP4000

 モンスター

 真紅眼の不死竜皇(レッドアイズ・アンデットドラゴンロード) ATK2800

 巨骸竜(きょがいりゅう)フェルグラント ATK2800

 死霊王ドーハスーラ ATK2800

 炎神―不知火(ほむらがみ しらぬい) ATK3500

 フィールド魔法 アンデットワールド

 伏せカード 1枚

 

「へっ…そう言うオッサンも妨害は使い果たしただろうがよ…」

 

 ユウ LP2700

 モンスター

 白光龍エリプシス・ドラゴン ATK2500(効果無効)

 SSMフレイム・マニュピレート ATK2100

 SSミッドソードナイト ATK1950

 

「下らねえ強がりは止すもんだ。アンデットは不死、何度でも蘇る。そう、何度でもなぁ」

 

(ヤツの言うとおりか。何度も復活されちゃジリ貧だ。一気に決めるしかねぇ…)

 

 ユウは手札の、エッジストーンゴーレムに手を掛け…そこで思い出した。

 

『今、私達は危うい状況にある。決して私達を神龍に融合するな。例え神龍の力が必要だとしてもだ』

『私達にも分からぬ。だが神龍となった時に、私達はその力を失う事となる予感がするのだ。心せよ…』

 

 アクシスク・ドラゴンの言葉である。

 彼は言った。神龍を召喚するな、と。

 

「くっ…」

 

 しかし…神龍さえ出せれば、このターンで勝利することが出来る。

 神龍の攻撃力は4500。

 そして最大3回攻撃が出来る。

 

 2体のアンデットドラゴン、ドーハスーラと戦闘をすれば、ピースのライフを削り切れるのだ。

 

(だが…他の手では…)

 

『マナカ ユウ。私の半身の言葉を気にしているのだな…?』

 

 その時だった。

 目の前のエリプシス・ドラゴンが脳内に語り掛けてくる。

 

「へっ、お見通しってワケか」

 

『アレの言葉は私の言葉でもある。悪い予感は変わらず…我らの力は永遠に失われるやも知れぬが…それでもお前は勝利を渇望しているのだな? それ以外に手が無い事も分かっている』

 

 彼女の言葉は鉛の様に、ユウの心中へとのしかかる。

 まるで遺言だ。

 

「失われるってのは、テメェらが死ぬって事か?」

 

『……我らに死は無い。こうして召喚されている以上はな。あるとすれば消滅。失われしは、存在』

 

「消滅だと? んな事聞かされちゃあ――」

 

『だが、勝利を得る為には我らを再び融合せよ、ユウ。例えそれで我らが失われたとしても…』

 

 一方で、中々プレイを進めないユウに、対戦相手のピースは苛立っていた。

 

(何をしてやがる、さっさとプレイしやがれクソガキ。まあ、手も足も出ないのかもだがなァ!)

 

 ピースには確信があった。

 ユウには自分を倒せないという、確信が。

 

 何故なら彼は知っていた。

 ユウのデッキの中に、現状を変えうる力が無い事実を。

 

(ククク…誰だか知らねーが、俺に利する手を打ってくれて感謝するぜェ。ヤツのデッキにゃ、この布陣を突破出来ないんだからよォ)

 

 そう、ユウのデッキ構築を。その内容を知っている。

 【神龍】の存在を除いて。

 

「オラァ審判! 故意の遅延は失格じゃねーのか、えぇ?」

 

『確かに。ユウ選手、早くプレイして下さーい。あと30秒ですよ〜』

 

「ぐっ、オレは…!」

 

『……マナカ ユウ、勝利を得たいのはお前だけではない。我々とて、本気を出せずに敗北するなど受け入れ難い事なのだ。決闘者であるなら己のプライドを優先せよ!』

 

「クソがァァ!! オレは手札のエッジストーンゴーレムの効果発動! デッキトップを墓地に送り特殊召喚!」

 

『それで良い。さあ、行け!』

 

「ミッドソードナイトとエッジストーンゴーレムでシンクロ召喚! SSRブレイドホーリーナイトォ!!」

 

 フィールドには、エクシーズのフレイム・マニュピレートとシンクロのブレイドホーリーナイト。

 

「この2体を墓地に送り…現れろ【Ss黒血龍アクシスク・ドラゴン】!!」

 

「ハッ! ソイツは全体攻撃だったよなァ、無駄な抵抗だ!」

 

「うるせぇんだよ!! オレはエリプシス・ドラゴンとアクシスク・ドラゴンの2体をエクストラデッキに戻し、降臨しやがれ! 神龍ピュアリフィケーション・ドラゴン!!」

 

 神龍ピュアリフィケーション・ドラゴン

【レベル12、光属性、ドラゴン族、ATK4500】

 

 天空より光を纏い降臨する、黒白のドラゴン。

 その姿は見るものを圧倒した。

 

 だが……

 

 神龍のソリッドビジョンに、ノイズが走った。

 

「な、なんだと? 攻撃力4500!?」

 

 

 

 

 

 

 

――セキュリティ管轄秘密カード研究施設

 

 

「マナカ ユウ、神龍の召喚を確認! データ移行開始!」

 

「同時に移行終了後、UCS参加者のディスクIDにロックを仕掛けます」

 

 無数とも思えるモニターに、色とりどりの数値が、グラフか現れては更新されてゆく。

 ラボの中央、大仰な機械の真ん中に配置されている1枚のカード、邪神龍に、未知のエネルギーが流れ込んでゆく。

 

「ファング様に連絡を。邪神龍は間もなく貴方のものになるとな」

 

 

 

 

 

 

――『マナ…………ユ……早………攻撃………』

 

 段々と、ピュアリフィケーションの姿が薄れてゆく。

 明らかな異常事態だった。

 

 ユウは当然、間髪入れず彼女の効果を使用した。

 攻撃力4500による3回攻撃。

 

 もはや一刻の猶予も無い。

 バトルに突入すると、ユウは2体のアンデット・ドラゴンとドーハスーラに攻撃宣言を行った。

 

 弾ける光。

 砕けゆく威容。

 

 辛うじて届いた混沌のブレスは敵モンスターを飲み込み、アンデット・ピースのライフポイントを刈り取った。

 

 ピュアリフィケーション・ドラゴン ATK4500

 

 不死竜皇 ATK2800 貫通ダメージ1700

 フェルグラント ATK2800 貫通ダメージ1700

 ドーハスーラ ATK2800 貫通ダメージ1700

 

 4000 − 1700 − 1700 − 1700 = 0

 

「うぐあああああ!?」

 

『勝負アリ! 新生UCSの優勝者が決定致しましたァァ!! その名はマナカ ユウ選手ゥゥゥ!!』

 

 その宣言が成された直後、ピュアリフィケーション・ドラゴンのソリッドビジョンが完全に消滅した。

 カードをデュエルディスクから取り出してみれば…そこにあったのは真っ白のカードだった。

 

「馬鹿野郎…マジで消滅してんじゃねぇか……」

 

『それでは優勝なさったマナカ選手には、この場で5枚のカードが手渡されます! マナカ選手、前に!!』

 

「ちょっと待ちなァ!!」

 

 その時だった。敗北したピースが、優勝商品を持った幽鬼うさぎと、ユウの間に割って入る。

 

「審判団さんよォ、コイツが最後に出したカードを調べてくれや。ソリッドビジョンに異常があったの見てたろうが」

 

『ああ、確かにそうですねぇ。もしも問題あるカードを使用していたのなら明確なルール違反です』

 

「そうだろ! だから確認しろ! ソリッドビジョンの挙動が不自然なのは違法カードの可能性があるぜ」

 

 ピースがこう言うのも尤もではある。

 ピュアリフィケーションのソリッドビジョンにはノイズが走っていたし、ディスクの電源を切る前にビジョンが消滅した。

 

 そして現在、白紙のカードとなってしまっている。

 調べられれば不正扱いされるのは間違い無いだろう。

 

『ふぅ…マナカ選手に不正はありませんでしたよ。それにね、時間もありませんし大会の運営は時間の通りこれにて終わり、私は次のプログラムに移行しますねぇ』

 

「はぁ!? ふざけんなよテメェ!! さっさと調べろっつってんだろ!」

 

 アルレキーノにピースが詰め寄ってゆく。

 その隙に、幽鬼うさぎはユウへ、とててと駆け寄りカードを手渡した。

 

『マナカ ユウさん…逃げて下さい。今すぐ。この会場は地獄に変わります…』

 

「地獄だぁ? お前何を言って――」

 

「ぎゃああああああああああああ!?」

 

 会場に、ピースの悲鳴が響き渡ったのは直後のことだった。

 

 





アンデット・ピース
元々は海外でその名を轟かせた有名決闘者であるが、それは必ずしも名声だけではない。裏決闘者に堕ちたのもまた、必然であったのだ。唐草模様のバンダナは日本で購入しているお気に入りである。
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