遊戯王アウトサイダーズ   作:とある遊戯王プレイヤー

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死闘の果てに

 

 現在、相手フィールドに存在するキメラ、ファントム・Cは実用的な効果を5つ備えている。

 

 ①このカードは相手の効果を受けず、戦闘で破壊されず、リリースできない。

 これは、もともと持っているものだ。

 

 ②相手フィールドの表側表示モンスター1体を破壊、③魔法・罠を1枚破壊、④表示形式を変更、⑤自身をリリースしモンスター効果を無効にする。

 これらは全て吸収したSSモンスターから奪ったものだ。

 

 更に攻撃力は吸収したモンスターらの合計値、6600。

 一見し攻略する手立ては無いかに思えた。

 

 しかし、手段は存在する。

 それはかつて、ユウが一度だけ使った最期の一撃だ。

 

『少々お待ち下さい。念入りに、カードファントム・Cの効果発動! 貴方の場の伏せカードを破壊しますね』

 

「……霊王の波動だ。破壊されるぜ」

 

『では、フィナーレとしましょうか! バトルフェイズに入ります』

 

 これが最後の攻防となるだろう。

 ユウの場にはルーセット・タートル、攻撃力0のみ。

 

 ファントム・Cの攻撃が通れば6600のダメージ。

 ライフポイントは言うまでもなく消し飛ぶ。

 

(ここしかねぇ…! 頼むぜ!)

 

『私は、カードファントム・Cでルーセット・タートルを攻撃ィ!!』

 

「この瞬間、墓地のSSロングブレイドの効果発動! 相手モンスターの攻撃宣言時に、このカードを装備カードとして、墓地のミッドソードナイトを特殊召喚する!」

 

 SSミッドソードナイト(ロングブレイド装備)ATK1950

 

『ほぅ、まだそんな手があったのですねぇ』

 

「そしてファントム・Cは、ミッドソードナイトと戦闘しなければならない! そこで発生した戦闘ダメージは――」

 

 ユウはアルレキーノを指差し、力強く

 

「テメェが全て受ける!!」

 

 と、宣言した。

 

 ファントムからミッドソードナイトの攻撃力を引いた値は4650。

 アルレキーノのライフポイントは3200だ。

 

 即ち、この戦闘が成立してしまえばユウの逆転勝利となる。

 

「よっしゃあ! ユウのヤツやりやがった!」

 

 オガタが勝利を確信し歓声を上げた。

 

「いいえ…まだよ」

 

 しかしアミは気付いていた。

 ユウが勝利する為には戦闘ダメージが発生する必要がある。

 

『フフ、それが貴方様の切り札? 最期の足掻きといった所でしょうか。実に、実にドラマチックだ。ショーのフィナーレを飾るに相応しいと言える……()()()

 

「…………」

 

『貴方は忘れている様だ。カードファントム・Cの効果発動! ミッドソードナイトを対象に守備表示へと変更します』

 

 そう。これは吸収されたエッジストーンゴーレムの効果だ。

 ミッドソードナイトが守備となってしまえば、ただ戦闘で破壊されるだけとなる。

 

 移し替えるべきダメージは発生しない。

 

『ハハハ、つまりは無駄であったという事です。さぁ、今度こそ終わ――』

 

「ククク、ソレはどうかなァ?」

 

『……なんですって?』

 

「んな事は分かってたぜぇ!! その効果にチェーンして手札の【SSミラージュ・ヒュドラー】の効果発動! このカードを手札から捨て、フィールドのモンスターの表示形式を変更出来る! オレはミッドソードナイトを対象にする!」

 

『馬鹿な!? それだと……』

 

 アルレキーノが知らなかったのも無理はない。

 ミラージュ・ヒュドラーは島での戦いでも見せた事の無いカードだ。

 その効果は手札から捨てる事で、フィールドのモンスター1体の表示形式を自在に変更する。

 

 すなわち――

 

 ①ミラージュ・ヒュドラーの効果により、ミッドソードナイトが守備表示となる。

 

 ②ミッドソードナイトを対象に、カードファントム・Cの効果により表示形式が変更される → 守備となっている為、攻撃表示に。

 

 つまり、カードファントムは、攻撃表示のミッドソードナイトと戦闘を行う結果となる!

 

「さぁ、やれ! ミッドソードナイトのカウンター攻撃!!」

 

 ミッドソードナイトを押し潰さんと飛び上がったファントムは、敵モンスターの動きに翻弄され、やたらめたらと飛び回った。

 そして遂に。

 

『ま、待ちなさいファントム! やめろォ!! こんな、こんな事がァァァ!!?』

 

 ファントムは、あろうことかアルレキーノを押し潰してしまったのである。

 

 アルレキーノ LP3200 → 0

 

「っしゃあ! オレの勝ちだなアルレキーノ!」

 

 と、ユウは勝利を宣言した。

 しかしだ――

 

『ギ…ググ…まだ、まだですよォォォォ!!』

 

 カードファントムの巨大な身体が、再びグニグニと変形してゆく。

 それはすぐさま、アルレキーノの形をとった。

 

「なっ!?」

 

 恐らくはファントムに取り込まれ、それを支配しているのだろう。

 拳を握るとユウに間髪入れず振り下ろした。

 

『マナカ ユウ! 死になさァァァい!!』

 

『ユウさん!!』

 

 だが、その拳はすんでの所で空を切り、べしゃりとステージ床に弾けた。

 幽鬼うさぎの放った使い魔が、ギリギリのタイミングでユウを甘噛みし飛翔していた。

 

『貴様ですか幽鬼うさぎィィ!! なら貴方様から消えろォ!!』

 

 今度は、幽鬼うさぎへと攻撃を繰り出すアルレキーノ。

 援護に入ろうとした舞獅子神姫と堕天使ルシファーだったが、

 

『来ないで!!』

 

 絶叫した幽鬼うさぎの使い魔に阻まれた。

 

『精霊が触れれば…取り込まれます! 私が…私が、やります! 精霊ではない私が!』

 

 

 

 

 

 

 

――「ファング副長官、いつでもいけます」

 

 研究者が、会場のモニターを眺めながらいった。

 ファングはそれに応える様に、邪神龍のカードをディスプレイの中央に置いた。

 

「これで宜しいか?」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

「しかし…幾ら理論上は可能とはいえ、本当にこの事態を、簡単に収拾出来るのでしょうね?」

 

 ファングは眉を顰めて、研究者に問う。

 

「勿論です。彼ら人工カード生命体を見たでしょう? 直ぐに結果は出ますとも」

 

「……そうですね、ではお願いします」

 

 と、ファングは指示を出した。

 

(ふん、研究者らは科学の賜物などと宣うが…解明など出来ていないのだろうな)

 

 そう頭の片隅に思いながら。

 

「邪神龍、地下デュエル場直上に顕現!」

 

 科学者らの熱を帯びた歓声が響く。

 彼らはモニターと、様々なセンサー類に釘付けとなり、あらゆるデータを観測しているのだ。

 

 これからあの場の人間を灼き尽くすというのに、無邪気に。

 

(倫理などあってはシンギュラリティに立ち会う事はできん。私もコイツらも時代が時代ならただの――)

 

「副長官、攻撃宣言を!」

 

「ええ。邪神龍、攻撃しなさい!」

 

 その指示を受けた邪神龍は、モニターの向こうで地下デュエル場へと…攻撃した。

 

 

 

 

 

 

――『な、こ、これは!? ファング様! まさか我々もろとも!?』

 

 幽鬼うさぎに遅い掛からんとしていたアルレキーノファントムが突如として動きを止め、ドーム天井を見上げた。

 

『いかん!! 堕天使達よ、マスターと周りの人間を全力で守護するのだ!!』

 

 ルシファーは即座に踵を返し、主、ルシア・イヴの元へと急行している。

 

『コイツはヤバい! アミ、オガタ、伏せてろ!!』

 

 舞獅子神姫もまた、自分の主とオガタに言うなり、身体にエネルギーを滾らせ始めた。

 彼女の肉体が金色に発光してゆく。

 

「何があるの!?」

 

『分からねー! だがヤバいのだけは分かる!』

 

「マジかよ! ユウくんはどこに居る!?」

 

『時間がねえ! 早く伏せろ!!』

 

 そう舞獅子神姫が叫んだ直後だった。

 

 ドーム天井が一瞬で融解した。

 空から降り注いだ、莫大なエネルギー波がアルレキーノファントムに直撃したのは見えた。

 

 だが――その後は轟音と熱と爆風に五感全てを塗り潰され、彼女らの意識は深みへと沈んでいった。

 

 爆心地に居たユウは見た。

 

 絶叫を掻き消されながら、蒸発するアルレキーノを。

 

 何かを叫び、消し炭となる幽鬼うさぎを。

 

 そして…自分の視界が、突然黒一色に染まった。

 

 遅れて爆音が、どこか遠くで響いた。

 

 

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