遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
陽が傾き始めた頃、ユウらの仕事は方が付いていた。
作業長からもユウの働き振りは大絶賛され、遂にはウチで働かないかとまでお誘いがあった。
「いや〜オレ、マーカー付きだし体裁悪いっしょ」
と頑なに断り、約束通り倍の日当を貰って、家なき帰路につく2人。
「ユウくんさぁ、仕事にありつけるチャンスだったじゃん。何で断ったの?」
肩をグルグルと回しながらオガタが言った。
「オッサンなら受けてたか?」
「あ〜…微妙、かなぁ…二十代だったら絶対受けてたと思うが」
「あんな無茶苦茶な働き方なんざ、1日限定だよ。ま、次も頼むとか言われたし、依頼があったら行くかもだが」
「そのスタイルがいいか。バイトに責任はねえからなぁ…組織の一員になったら、しがらみも増えちまうだろうし」
「決闘に使う時間も必要だしなァ」
ユウもまた、背中を伸ばしながら返した。
「俺達みたいなのは、安定した稼ぎと自由時間は反比例しかしない。つくづく嫌な世の中よなぁ〜あー世知辛っ」
「辛気臭えぞオッサン。んじゃあ、取り敢えず行ってみるか」
「ああ、アミちゃんのトコでしょ? ビックリしたよね、あのクソ広い庭の奥にあった豪邸がアミちゃんちだったなんて」
(…天下のセキュリティ副長官様の妹だしな、そんなモンだろ)
「ていうかアミちゃんも出て来てたんだ。やっぱりあれ? 実家が太いから沢山保釈金出したとか…」
「あの女は、そんなタマじゃねえだろ」
「ま、まあ、確かに。というか本当に行くの? 場違い感パないよ」
「あっちが招待したんだ、んな事気にするかね?」
ユウらは薄暗くなりつつある道を進み、先程まで職場だった巨大邸宅の庭先にたどり着く。
固く閉ざされた門扉の隣にインターホンがあり、それを押すなり間髪入れず返事があった。
『どちら様でしょうか?』
「ユウとオガタってモンだ。アミに招待受けてんだけど、話は聞いてる?」
『アミ様のお客様ですね。今迎えが参りますので少々そこでお待ち下さいませ』
インターホンの音声が切れるなり、門扉が自動で開いてゆく。
「おお、さすが金持ちだねぇ、お迎えだってさ!」
「自分で行けるっつーの」
そうして2、3分は待っただろうか、闇夜に紛れて漆黒の車が、エンジン音1つさせずに現れ、ユウ達に横付けするなり後部ドアが開いた。
「うおっ、これアレじゃん! 金持ちが乗ってる長いヤツだろ!! いやぁスゲぇ! 生で初めて見た!」
「確かにスゲー形してんな。だけどこんな長かったら運転しにくくねぇか?」
「お客様、アミ様がお待ちです。お乗り下さい」
はしゃぐ2人に、心底軽蔑したかのような溜め息を交えて、運転手は言った。
黒服、黒グラサンの、運転席に無理矢理押し込まれたかの様な大男である。
低く迫力ある声に、オガタはそそくさと頭を下げて乗り込んだ。
ユウもまた黙って言われた通りにした。
後部ドアが閉まる。
運転手だけでなく、助手席にも似たような黒服が配備されていた。
「な、なあ、ユウくん…俺達、なんか連行されてる風じゃない?」
小声でオガタが言う。
「そりゃーコイツらからすりゃ、お嬢様の知り合いとはいえマーカー付きだ。警戒はするだろうよ。拘束されねえだけマシだ」
暗闇をゆっくり、ゆっくりと、細心の注意を払い車は進む。
化石燃料車と比すれば、モーメントエンジンの静粛性といったら、ヒソヒソと会話も出来ない程だ。
常に一定の速度を保ったまま、車は玄関前へと横付けされ、ドアが静かに開いた。
ドアの外に立っていた、初老のスーツ男がお辞儀をし、2人を伴い進んでゆく。
玄関を抜け、エントランスホールに差し掛かった頃、
「遅い」
と、二階に通ずる階段の方から、声が掛けられた。
アミだ。
だが、2人の知る彼女ではない。島で見せた野生児丸出しの格好や所作など一切ない…本物の貴族がそこに居る。
あの時の姿は極力飾り気を排し、動きやすさに重点を置いていた、所謂戦闘スタイルだったのだとよく分かった。
差し詰め今は、お嬢様モードとでも言ったらいいか。
オーダーメイドらしい、スカイブルーを基調とした薄手のドレス…何よりスカート姿なのが新鮮であった。
髪もまた、石鹸でガシガシと洗ったのを藁巻きに束ねた様なゴワゴワしたものから、一本一本丁寧に櫛通しされた滑らかな黒髪に変身。
しかも解かれて、今は肩まで伸びていた。
「…お前、アミか?」
「そうよ。他の誰に見えるのかしら?」
「いやぁ、マジで似合ってねーぞ。なんだそ――」
「わーー!! ユウくんストップ、ストーーップ!!」
慌てて口を塞ぎにかかるオガタであったが、時既に遅い。
バッチリとアミの耳に入っている。
これは正拳突きでも見舞われるか、と備えるオガタであったが…
「相変わらずデリカシーの無い人。まあ、私だってこんな動きにくい格好、好きでしている訳じゃないし」
「だろ? 何か無理矢理着せられてるって感じしたんだよ。前の格好のがしっくり来るってーか、本来のお前ってカンジだぜ」
(おや?)と、オガタは違和感を覚えた。
「フフ、褒め言葉として受け取っておくわ。それよりせっかく来て頂いたのだし、食事でもしながらお話ししましょう」
「メシか。丁度いいや、腹減ってたんだよなァ!」
「そこまでいいの? 俺達なんつーか場違いにならない?」
「大丈夫よオジサマ。この屋敷には私と、彼ら黒服しか居ないわ。好きに振る舞って貰っていいわよ」
そう言い、ヒールをコツコツ鳴らしながら階段を降りてきたアミは、2人をダイニングルームへと案内した。
ザ・金持ちな長テーブルに、所狭しと並べられた料理。
和洋中さまざまなメニューに男らは目を輝かせて席についた。
「さぁ、好きに食べて頂戴。余らせたらシェフに悪いわ」
「んじゃ、遠慮なく…いただくぜェ!!」
促されるままに、料理を口へと放り込む。
その料理らは、これまでの人生に於いて食べてきたもの全てを過去にした。
「うぅ……生きてて良かった……こんなウマいもの……初めて食べた……!!!」
と感嘆を漏らすオガタをよそに、ユウは次から次へと喰らってゆく。
ある程度口にしたところで、オガタが「ごめん、ちょっと…」と言い出した。
「マナー的にアレなんだけど…お手洗いどこかな?」
「それなら、ココを出て左よ。分からなければ黒服に聞けば案内してくれるわ」
「良いもの久々に食べたから腹がビックリしちゃったかな…失礼…」
席を立ち、ダイニングルームを出て行くオガタ。
後に残ったのは沈黙。
黙々と料理を食するユウと、それを眺めるアミ。
手羽の骨を口から引き抜いたユウは…口元を拭うと、切り出した。
「それで、俺達を招待してくれた、本当の用事って何だ?」
と。
「……そうね、そろそろ本題に入ろうかしら」
アミも、グラスの飲み物をあおり、改めて口を開いた。
マーカー付きの扱い
犯罪を犯した者は、顔に黒縁に黄色のラインでマーカーと呼ばれる刻印を刻まれる。これは消す事が出来ず、またセキュリティにより居場所を管理されているも同然であるため、刻まれた時点で人生が詰みかねない影響を持つ。
就職や業種を大きく制限され、生活もままならない人物も多い。