遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
「まず確認したいのだけれど、私についてはどこまで聞いたのかしら?」
アミは既に、島の頃の雰囲気…剥き出しの刃物の様な眼光をもって、ユウを見ていた。
「っと…怖ぇ怖ぇ…コイツは失言が即死に繋がるヤツかぁ?」
「この場には私と貴方しか居ない。素直に話してくれていいわ」
「あっそ。そうだなァ、つってもお前がセキュリティ副長官の妹って事くれぇだぞ」
「成程…私が貴方を倒す為に接触して、戦った事については?」
「正直ちったぁ思ってたがな、アミのデュエルに打算なんざ感じなかったし、どの道お前が刺客だろうがそうじゃなかろうが、結局は決闘なんだ…勝ち負けがあんのは当たり前だろ」
「フフ、そうね。私は強い人と決闘が出来れば良かった。安心したわ…下らない情報で、ラストデュエルが茶番に思われるの、耐えられなかったから」
やはり、この女は信頼していい。
ユウはそう確信した。
本題より先にデュエル結果を気にする者など、誇りしか感じないのだから。
「そして本題なんだけど…兄、ファングは貴方を始末する指示を出していたのだけれど、そこに条件が1つあったの」
「条件?」
「ええ。その条件が、神龍…あのモンスターを一度でも召喚してから、倒せというものだった」
「神龍…ピュアリフィケーションドラゴンの事か?」
それはユウのデッキにおいて、最強のモンスターである。
何故、ファングがそんな条件を出すのか…何一つ、ユウには思い当たらない。
(……ヤツらに聞いてみるしかねーか)
――オガタは用足しを済ませると、手を必死にじゃぶじゃぶ洗っていた。
清潔感のあるトイレ、曇り一つ無い鏡、磨かれたかの様な洗面台…何だか自分が一番の汚物であるように思えて仕方ないのだ。
(やっぱ俺にゃキッツイ空間だ…)
一時期とはいえイカサマ師で活動していた頃には、それなりの生活をしていたオガタならではの感覚である。
(つっても、なんもかも質に入れちまったしな…スーツ位買っとこうかね…)
ハンカチは持っていないから、手を振るいながらトイレを出たオガタを待っていたのは、恰幅の良い黒服だった。
腕や足、首の太さ等はオガタの倍はあろうかという屈強な男である。
送迎車を運転していた者でもあった。
「あ、案内ありがとうございました〜わざわざ待っててくれ…たんですか?」
「……気に入りませんな」
「へっ?」
「率直に申し上げて、何故、貴方様をお嬢様が招待されたのか理解しかねます」
車に乗った時から、敵意みたいな視線を感じていたオガタであったが…真正面から客人にこう言うとは。
「……悪いね、アンタらの機嫌を損ねたんなら、お邪魔虫は今すぐ帰るぞ」
「帰れとは言いません。しかしながらお嬢様の招待を受けたのでしたら、実力を示して頂きたいものでございます」
黒服はそう告げ、デュエルディスクを起動させる。
「おいおい、何でそんな事しなきゃいけないんだ?」
「お嬢様が招待されたという事は、貴方も強き決闘者でありましょう? マナカ ユウ様は常々、お嬢様が話題にされておりました…しかし、オガタ様、貴方の名は聞いておりませんので」
(アミちゃん…俺、島で頑張ったんだよ…?)
しかし、アミがユウの話題はよく出してた、と新たな情報を得たオガタは少し微笑ましい気持ちになった。
「さあ、どうなさいましたか?」
「いや……デュエルを挑まれちゃ、逃げる訳にはいかないなぁ。いいよ、デュエルしよう。俺が負けたら追い出されたり…しちゃう?」
「いいえ。しかし、当家の門を潜る機会は今後無くなるかと」
「そりゃー困るな。じゃあ勝たせて貰う!」
「申し遅れましたが、私は執事長のソバスチャンといいます。ではオガタ様、いざ――」
「「デュエル!」」
ソバスチャン LP4000
オガタ LP4000
「私の先攻、【ドラゴンメイド・チェイム】を通常召喚。効果を発動致します」
(さすが執事長…ドラゴンメイドとかレアなカードを使いやがる…とはいっても…)
正直、ゴリゴリの肉体派体型をしているソバスチャンが、可愛らしいドラゴンのメイドを召喚するのは若干シュールではある。
「デッキから【ドラゴンメイドのお心づくし】を加え、そのまま発動! 【ドラゴンメイド・パルラ】を手札から特殊召喚し、デッキより【ドラゴンメイド・ルフト】を墓地に送ります」
「お、おぅ…」
「パルラの効果により、デッキから【ドラゴンメイドのお片付け】を墓地に送り…パルラ1体でリンク召喚! 【ストライカー・ドラゴン】」
リンクモンスター。
条件に沿ったモンスターさえ墓地に送られれば、同じレベルで無くとも、チューナーが居なくともエクストラデッキから出せるモンスターだ。
「墓地のお片付けを除外し、再びパルラを特殊召喚! ストライカー・ドラゴンとチェイムの2体でリンク召喚! 【天球の聖刻印】!」
ソバスチャンの回しには、一切の淀みは見られない。
しかもオガタの寄せ集め的なゴチャゴチャデッキと違い、ちゃんとしたカテゴリーで揃えられたデザイナーズデッキだ。
「更に私はフィールドのパルラと墓地のルフトを除外し、【ドラゴンメイド・ラティス】を融合召喚致します」
「おいおい…融合カードも無しに融合モンスターが出てくるのか」
「ラティスの効果により、デッキから【ドラゴンメイド・ティルル】を特殊召喚。ティルルの効果により【ドラゴンメイド・フランメ】を手札に加え、そのままフランメを墓地に送ります。私はこれでターンを終了」
天球の聖刻印 ATK0
ドラゴンメイド・ティルル DEF1700
ドラゴンメイド・ラティス DEF3000
「そんじゃ、俺のターンな、ドロー! メインに入る」
「その前に貴方のスタンバイフェイズ時、ラティスの効果を発動しますよ。フィールドのティルルと除外ゾーンのルフトで融合召喚を行います…現れなさいメイド長【ドラゴンメイド・シュトラール】!」
【ドラゴンメイド・シュトラール】
【レベル10、光、ドラゴン族、ATK3500】
「更にシュトラールはスタンバイフェイズに、墓地のドラゴンメイドを特殊召喚出来る。ドラゴンメイド・チェイムを特殊召喚! 効果により【ドラゴンメイドのお召し替え】を手札に加える」
「ゲッ…増えた…しかも攻撃力3500かぁ…」
(それだけではない。シュトラールは魔法・罠・モンスター効果を無効に出来、天球は相手モンスターを手札に戻せる。強者であるならこれくらいは返して貰わねば)
「うーん…そうだな、取り敢えず魔法カード【地割れ】を使って、そっちのフィールドの一番攻撃力が低い天球を破壊しとくかぁ」
(な、なにィ!? 地割れだと…そんなカードを!?)
と、ソバスチャンが思ったのも無理はない。
ブラックホールやサンダーボルトといった、相手モンスターの全てを破壊する様なカードが飛んでくるのなら、まだ理解出来るのだが…
よりにもよって、低レアリティかつ、一番攻撃力の低いモンスターしか破壊出来ない、単体除去魔法が発動された。
まあそもそもの話、オガタのデッキは寄せ集めであり、そんな高レアリティの全体除去魔法など入れられる訳がないから、その代用である。
だが…それが思わぬ効果を生んだ。
(くっ、うう…地割れに、シュトラールの無効化効果を打つのは…しかし天球が…うぅむ…)
そう、全体除去カードであるならシュトラールの効果で問答無用に無効にしていたのだ、彼は。
しかし今は…【地割れに、シュトラールの効果は勿体無くないか?】という、ある種の厳しい選択肢を突き付けていたのである。
神龍ピュアリフィケーションドラゴン
ユウのSSデッキにおける切り札。4500もの攻撃力を持ち、効果を一切受け付けず最大3回の攻撃を叩き込むモンスターだ。
このモンスターはSSの他にSs(シャドウサーバント)としても扱う効果を持っており、Ssの使用者はセキュリティ副長官ファングであることから、彼とも少なからず関係を持ったモンスターであるといえる。
元々封印されデュエルディスクで読み取れないカードであったが、追い詰められたユウが召喚に成功し実体化したカードである。