遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
オガタは悩んでいた。
手札にはモンスターが1体しかいない。
他の4枚が魔法・罠だった。
そして相手が何やら凄そうな布陣を築いて行っていたが、そんな事よりも手札質の悪さで頭が一杯だ。
次のドローでモンスターが引けなければ、こちらが展開出来ないのだから。
ソバスチャンがターンを終了した時、祈るような気持ちでドローしたカード…それは…
(よっしゃ、ラッキー!! コイツならなんとか…でもその前にヤツのモンスターをコイツらで除去しねえとなぁ)
そう考えて、まず発動したのが【地割れ】だった。
このカードは相手フィールドの一番攻撃力の低いモンスターを破壊するカードだ。
(うぅっ…古いノーマルカードだからなぁ、相手さんも小馬鹿にしてるかもしれねぇ)
だがそのカードが今、ソバスチャンに厳しい決断を迫っているとは、オガタは夢にも思っていなかった。
(ぬぅぅ…どうなのだ? あの薄汚い男、アミ様がお呼びしたからには全くの素人ではない筈だ。では地割れの目的は…? もしや、フィールドのモンスターを手札に戻されるのが、何よりキツいのでは!?)
ソバスチャンは己の直感を信じ、手を打った。
「ならばシュトラールの効果を発動! 地割れの効果を無効にし、シュトラールをエクストラデッキへと戻して【ドラゴンメイド・ハスキー】を特殊召喚します!」
ドラゴンメイド・ハスキー ATK3000
「っしゃ、厄介な無効持ちが居なくなった。更に手札から【闇の侯爵ベリアル】を捨てて【死者への手向け】を発動! 天球の聖刻印を破壊するぜ」
「なん…だと?」
ソバスチャンは困惑した。
死者への手向けなど…久し振りに聞いたフレーズである。
手札を1枚捨てる代わりにフィールドのモンスター1体を破壊する旧世代のカード。
しかもコストで捨てられたモンスターも、見覚えの無いカードだ。
(馬鹿な! どう対応しようが、私の布陣は崩されていたというのか…? ぬぅぅ、おのれ! 認識を改めねば…決闘者を見てくれで判断するとは、私も存外ぬるい…)
天球の聖刻印が破壊される。
(お、決まったぞ! これで妨害は無いが…3000かぁ、キッツいなぁ…やれる事をやるか)
「手札から、こちらの可愛い子ちゃん、【魔界発現世行きデスガイド】を召喚して効果発動! デッキからレベル3、悪魔族モンスターを出すぜ!」
(くっ…いかん、動かれてしまう!)
「デッキから【魔サイの戦士】を特殊召喚!」
(魔サイ…という事は悪魔族主体のデッキか?)
「レベル3のデスガイドと魔サイでリンク召喚! 【魔界特派員デスキャスター】! 墓地に送られた魔サイの効果で…デッキから【トリック・デーモン】を墓地に送って、【デーモンの呼び声】を手札に加えるぞ!」
(これは…うむ…)
ソバスチャンは改めてオガタを見ると、静かに微笑み、頭を垂れた。
「オガタ様…貴方はどうやらお嬢様が招待するに十分足る決闘者であると判断致しました。これまでの非礼、どうかお許し下さいませ」
「へ?」
「貴方様のデッキは、失礼ながらオールドカードも多く含まれていらっしゃる様ですが…それでも、私の布陣を崩された。貴方のデュエルタクティクス、戦術、確かなものです」
「そ、そりゃどうも」
(なんか知らんが納得してくれたか…それならこの決闘終わってくれるかも――)
等と淡い期待を浮かべたオガタであるが、ソバスチャンはディスクを構え、オガタをより鋭い目付きで睨んだ。
「では…ここからが、彼女らの本気の奉仕となります。存分に御堪能下さいませ」
(やっぱなぁ! くそっ、俺も腹を括るしかねえか!)
――ダイニングルーム
「神龍の事は、デッキの奴らにも聞いてみる。ヤツらなら何か知ってるかもな」
と、ユウは言った。それを聞いたアミが「ふふっ」と漏らす。
「何だよ」
「いえ。貴方もナチュラルにカードの精霊に聞く、なんて言う様になったのね」
2人が出会った当初、ユウはカードの精霊なる存在をあり得ないと一蹴していた。
しかし、アミのカードの精霊である【月光舞獅子姫】や自分のデッキの精霊達と触れ合う内に、存在を肯定している。
「自分の目で見た事だぜ。疑いようも無いだろうが」
「それもそうね。じゃあこの話は終わり……次の要件なんだけど、貴方は3日後にある東エリアのカード大会に出場出来るかしら?」
「唐突だな。この時期の東エリアの大会っていやぁ、国内最大級のヤツか?」
「いいえ。それと同時に開催される裏デュエル大会…通称UCSが密かに行われていてね」
「は? おい、裏デュエルって…オレが出場すんの? 冗談じゃねーぞ、またムショ送りになったらどーすんだ!」
ユウは以前、違法裏デュエル大会に出場し、セキュリティに捕縛された過去を持つ。
当然ながら首を縦には振らない。
だが…アミは大会概要のページを情報端末に表示した。
「優勝報酬の欄を見てみなさい」
「ん? 報酬金と…なっ!?」
ユウが素っ頓狂な声をあげる。
無理もあるまい。報酬の欄に表示されていたのは5枚のカード。
世界に1枚しかないカードとの触れ込みで紹介されていたのは…
【SSアドバンスド・サイキッカー】
【SSゲイル・フェニックス】
【SSハイオーダー・マジシャン】
【SSロングブレイド】
【SSミラージュ・ヒュドラー】
当然、SS(シャイニーソルジャー)は、ユウの使用しているデッキテーマだ。
「んなバカな!? SSは――」
「貴方のお父様が生み出した、唯一無二のテーマ。そうでしょう?」
「……調べたのか?」
「申し訳ないけれどね。カードデザイナー、シザキ マサル…それが貴方のお父様。奥方のシザキ ミナコ、旧姓マナカ ミナコ。つまりユウは母方の姓を名乗っている。そしてシザキ マサルが生み出し息子に渡したテーマがSS。それは現在、散逸しているとされている」
「オレが持ってるの以外がな」
「ええ、そうね。島ではカードデータのみだったから存在していたけれど、実際にはあらゆる者の手に渡っている」
特に、現在のユウのデッキは完全体と言うには程遠い状態だった。
全てのカードは1枚ずつしか存在せず、その多くが行方不明。
裏デュエルに参加していたのも、SSと関係のあるカードが商品としてあったからである。
だからこそ、これだけ一気にSSカードが出てくるのは異例だった。
「……ワリィなアミ、コイツには参加しねーといけないみてぇだ」
「そう言うと思っていた。そこで、参加までのあらゆる段取りは私達が行うわ。貴方はその身一つで東エリアに行きなさい」
「あ? 手助けなんざ要らねぇよ。オレ1人で――」
「あら、東エリアまでの交通費は? 宿泊費に食費、なによりこの裏デュエルは参加費があるのよ。アルバイトにあり付いたばかりの貴方に払えるの?」
「……幾ら必要なんだよ」
「ざっと計算したけれど、100から120といったところね」
「……あ〜……」
「意地を張らないで。それに貴方だけじゃなく私にもメリットがある事なの」
アミは席を立つと、ユウの顔をズイッと覗き込んだ。
「報酬のカードを手に入れる事で、貴方は強くなる。いいえ、元に戻るのかしら? 最低でも島で私を負かした時程にはなって欲しいのよ。だって私は貴方の全力を知っている…パワーダウンしているユウと戦ったところでそれは公平な勝負ではないわ。だから、貴方のデッキが未完成というのなら、完成の手助けをするの、当然ではなくて?」
「はぁ…ったく、決闘バカが」
「よく言われるわ。ね、ユウ、貴方は私に勝った。ならば私は貴方が最強の状態でリベンジしなければならないのよ。カード集め、手伝わせて頂戴」
相変わらず、獲物を睨む獅子の様な目でユウを見るアミ。
そして…アミの兄、ファングにも似た事を言われた。
「分かった、分かったよ。んじゃあそういった事は任せる! オレは優勝して来りゃいいんだろ!」
「契約成立ね。それじゃあ明日から準備に入るわ」
と話が纏まったところで、扉が開く。
オガタだ。彼が帰って来た。
「いやぁ遅くなった、ゴメンね〜…って」
と、そこでユウとアミが、ごく至近距離、それこそ目と鼻の先な距離で会話していたのが目に入る。
(あら〜…おじさんが居ない間に見つめ合っちゃってまあ…)
「遅かったなオッサン」
「ああ、可愛いメイドさん達に、これでもかと滅茶苦茶にご奉仕されちゃってね…」
「ああ、ソバスチャンね。あの人も決闘好きだから…」
「いやぁ〜決闘好きってか、ねぇ…」
「んな事はどうでもいい。オッサン、オレ明後日から居ねえからよ、留守番頼むぜ!」
「え? は? どういうこと?」
「私から説明するわ」
【最低でも島で私を負かした時】
アミとユウの島での決勝での話。当時、島に参加した決闘者らは本来のデッキを没収され、そのデッキを元に再現されたデータカードでデュエルしており、敵に勝利した時、最新カードへとアップデート出来る仕組みだった。
今回、優勝商品にされているカードは、島最終決戦時のユウのデッキにデータのみで入っていて、その時のユウのデッキが最強の状態だった。