遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
「嘘だァァァ!!!」
セキュリティ隊員、ヒガシヤマのライフポイントが尽きる。
ユウの完全勝利であった。
「はいよォ、オレの勝ちィ! んじゃ、約束通り見逃してくれや」
そう言い、そそくさと退散しようとするユウ、オガタをセキュリティ隊員は取り囲む。
全員の手に警棒が握られていた。
「あららァ、やっぱこーなンのか」
「勘違いするなよチンピラ風情が! ヒガシヤマ隊員は見逃しても俺達は見逃すつもりはねえ!!」
「で? アンタら2人にもデュエルで勝ちゃいいワケ? あー…でもそうしてる間に応援が来ちゃったり…もしくは強引に実力行使で捕縛しに来てデュエルを無意味にしたりするんだろ? テメェら底辺セキュリティにありがちよなぁ!」
「黙れよマーカー付きが! テメェらみたいなクズ野郎から市民の安全を守るのが、セキュリティ隊員の使命なのさぁ!」
「ど、どど、どーすんだよユウ!! またぶち込まれんのは勘弁だぜ!!」
「へっ…まあ見てなオッサンよォ! 底辺セキュリティなんぞぶちのめしてやんぜェ!! ……隙を見て逃げろ。アンタなら出来ンだろ?」
「へ? あ、ああ…」
隊員らがジリジリと距離を詰めて来る。
一触触発の状況に、ユウが息を思い切り吸い込み…足に力を込めたその時だった。
「双方、お止めなさい」
と、女の声が響いた。
誰もがその声の方へ向き直った。
そこに立っていたのは、数人の…男女混成の人々だった。
年齢、容姿、出で立ちにバラつきはあるものの…皆、一様に同じ空気を纏っている。
まるでこの集団が、1人の人間であるかの様な、不自然な統一感があった。
その集団を見たセキュリティ隊員らは、慌てて警棒を仕舞い、ユウと集団を交互に見た。
「その方は我々の仲間です。セキュリティの皆様にはご迷惑をお掛けしてしまった様ですね…申し訳ありません」
リーダー格と思しき女が前に出て謝罪の言葉を口にする。
しかしながら…セキュリティらの態度は謝罪を受け取る側のそれではない。
寧ろ、個室で上官に叱責を受けているかの様な…そんな様子であった。
「い、いえいえ、とんでもございません。あ、あなた方の信徒でしたら…本官達は勘違いしておりました。し、失礼致しました…どうぞ、良い観光をなさって下さい! それでは!」
態度を一変させたセキュリティは、脱兎の如く離れていった。
後に残されたユウは、リーダー格の女に頭を下げた。
「サンキューな、お陰で助かったぜ……と、素直に言いてェんだが…失礼だけどアンタらは何者だ?」
女は言った。その方は我々の仲間だ、と。
だが当然ながらユウにもオガタにも覚えはない。
それにセキュリティ隊員がポロッと口にした【信徒】という単語。
彼らがあれほどビビっていたのも気になる所だ。
「我々は【堕天使の会】のメンバーです。貴方はマナカ ユウ様ですね…代表より話は聞いております」
「……堕天使の会?」
「ええ。代表ルシア・イヴ様と面識はお有りでしょう?」
ルシア・イヴ。
これもまた、デスゲームの舞台となった島での対戦相手の名だった。
特にユウにしてみれば、決勝戦であるアミの前に戦った、堕天使使いの強敵として脳裏に刻まれている。
「オッサン…覚えてんだろ、島のトーナメントで戦った堕天使使いの女だ」
「ああ、あのセクシーな…!! ボッコボコに負けたんだよね俺」
「ルシア様は我々信徒に、マナカ ユウ様の行方を探させていたのです。信徒は全国に存在しますので、貴方を見付け出すのは簡単でした」
よくよく見れば集団の中には、先程までユウらを監視していた青年の姿もあった。
東エリアに辿り着いた時から…いや、もしかしたら現地に居る時からずっと監視されていたのではないか?
そう思うと身震いさえしてくる。
「じゃあその代表さん、オレに何か用事があるって事?」
「ええ。これを預かっております。受け取り下さい」
そう言って女が差し出したのは、封筒に入った紙切れである。
「コイツは?」
「これには最重要情報が書き込まれております。代表の端末の電話番号、メールアドレスそして…登録してあるアプリとアカウント名がね」
「…………ん?」
「代表と連絡先を交換して下さい。そうすれば我々の仕事も終わります」
「……ワリー、オレ通信端末持ってねーんだが」
「それならばご安心を、用意しております。遠慮なく受け取り下さい」
信徒の1人が、通信端末を差し出した。
ユウやオガタが知る由もないが、最新の最高級機種である。
「月々の支払いに関しましては堕天使の会でやらせて頂きますので、使い倒して貰えれば――」
「コレ受け取ったら、オレの居場所がお前らに筒抜けになるんじゃね?」
「…………」
途端に、女と信徒らが一言も発さなくなった。
それでもあからさまな圧力を感じる。
あれは…受け取ると言うまで逃さないといった類いのものだ。
セキュリティさえ逃げ出す様な団体を、敵に回したい訳がない。
「わ、分かった…受け取るよ。それでいいんだろ?」
「ありがとうございます。それではマナカ ユウ様…代表をよろしくお願いしますよ。では」
本当に、通信端末を押し付けたら、信徒らは帰っていった。
「……これってさ、ルシアってのがユウ君と連絡取り合いたいだけなのかな?」
「知らん。でもなァ、無視してたらまた奴らが突撃して来そうだしよぉ」
ルシアはカードの精霊の声を聞けていた人間である。
島に居た時は自分のカードらの声が聞こえなくなっていて、精霊と会話出来るユウが欲しいと言っていた。
今のこれは、スカウトを諦めて居ないという意思表示ではなかろうか、とユウは思った。
金とか権力、人脈のあるヤツは厄介極まりない。
「モテる男は大変だねぇ。いやマジで」
「全くだ。オッサンに分けてやりてーよ」
「俺だって三十代前半まではモテてたの!! あ、ていうかアミちゃんとの待ち合わせ時間は?」
ユウは早速、受け取った端末を確認した。
「時間…ちょっと過ぎてんな。急ぐぞオッサン!」
「ああ!」
ルシア・イヴ
サバイバルデスデュエルゲームの最終トーナメント戦において、ユウが戦った妖艶な女。初戦でオガタを破っており、ユウをあと一歩まで追い詰めるも敗北したが、その実力は確かである。使用デッキは堕天使、カードの精霊は堕天使モンスターほぼ全てである。
ちなみに彼女には終身刑の刑罰が下されてはいるが、信徒らの暴走を抑える為に、超法規的措置として仮釈放されており特に不自由なく暮らしている。
堕天使の会
国内最大とされる宗教法人で、全体の信徒数はハッキリと明言はされていないものの、最低でも百万世帯近い所属家庭があるとされている。
信徒らは代表のルシア・イヴを中心とし、この世界の理不尽からの救済と導きをテーマに熱心に活動している。
理不尽セキュリティらが恐れるのは当然と言えるだろう。