遊戯王アウトサイダーズ 作:とある遊戯王プレイヤー
「遅い!」
合流地点に辿り着いたユウらを、出迎えた相変わらずの一言である。
アミはラフな服装で、ひたすら動き易さを追求したかの様な出で立ちだった。
「ワリィワリィ、ちょっとトラブルがあってなァ」
「貴方達が遅れたせいで、こっちもトラブルがあったわ」
と、アミは言う。
「へぇ…ナンパ男にでも絡まれてたかァ?」
「デュエルで叩きのめしたけどね。弱かったわ」
(マジでナンパされてたのか…?)
「まー、ムリもないよアミちゃんカワイイし。そんな格好してたら分からんでもないし」
オガタが指摘したのは間違いではない。
この時の彼女は、敢えて安手のコーディネートをしているのだ。
田舎の娘がそれっぽい格好をしている風のコーデとも言えようか。
悪い言い方をしてしまえば、普段が高嶺の花であるなら、現在は誰にでも手が届きそうな美しい野花といった所だ。
摘みに来る男など、そこかしこに居るだろう。
自分だって、二十代だったら声くらい掛けるかもしれない。そうオガタは思った。
「……ソバスチャンのコーディネートよ。この格好、そんなに劣情を煽るのかしら?」
「劣情って……ま、まあ、パッと見はそうならない事もないかなって…なあ、ユウ君?」
「まあ、お前らしいっちゃ、らしいカッコだろ。似合ってていいんじゃねーか?」
ファッションセンスなど皆無の模範的決闘者、ユウの言葉である。
それでも、オガタが想定していたよりは、かなりマシな返しではあった。
「ま、まあ、いいわ。それで、貴方達のトラブルっていうのは?」
「セキュリティに職質されたんだよ」
「ちょっとそれ…大丈夫だったの?」
「あー、何とかはなったぞ。ただなぁ〜…オッサン、説明たのむわ」
「お、俺に振るの!? う、うーむ、どっから言うか…」
取り敢えずオガタは、起こった事をそのまま説明した。
職質内容、セキュリティとのデュエル、堕天使の会、等。
一通り説明を終えたところで、アミはあからさまな怪訝顔で言った。
「堕天使の会って…国内最大の宗教法人じゃない。そのトップは確か終身刑か何かの筈だけど」
「しゅ、終身刑って…あの姉ちゃん何したんだ?」
「さぁ? そこまでは知らないけれど、生活に不自由はしていない様ね」
「そうだなァ…メッセージ送ってみたが、すぐに既読になったしよ」
と、プレゼントされた携帯端末の画面を見せるユウ。
【こんにちわマナカ ユウです。信徒の人から連絡先を頂いたのでメッセージを送りました】との文章に、確かに既読がついている。
しかし……
((文章が固い!!!))
そんなところより、メッセージ内容が気になる2人。
ガッチガチの定型文を見せつけられ、どうリアクションしていいのか困っていた。
「牢屋に入ってんのに、よく端末使えるよなァ」
「仮釈放されている場合もあるし何ともだけれど…気を付けなさいよ。何が仕込んであるか分からないわ」
「こういうの詳しくねーからなぁ。ま、ルシア(あいつ)は決闘したカンジ、そんな悪いヤツじゃねーし、大丈夫だろ」
と言った直後に、ユウの端末が振動する。
メッセージに返事があった様だ。
【あら、ボウヤ、こんにちわ~!(◠‿◕) 今日も決闘頑張ってるかしら?(☆▽☆) 私は、今から友達と決闘なの┗(•ˇ_ˇ•)―→ ユウくんも、ふぁいとだよー!(灬º‿º灬)♡(笑)】
((うわっ…))
引き気味の2人を他所に、ユウは、
「へぇ…こうやって感情を表すのか。便利な機能もあるもんだぜ」
等としみじみ言っている。
「いやぁ〜参考にしなくていいと思うよ。普通に返しな」
「……警戒するに越した事はないわね。でも明確な連絡先が出来たのも事実。ユウ、私とも連絡先を交換しなさい」
「ああ、そうだな。ちょっとどうやるのか分からんから、やって貰っていいか?」
「貸してみなさい。私の端末からアドレスを送信するから、それを――」
(…はぁ、これで俺だけ端末持ってねえのか…若者に置いてかれるのは寂しいぜ…)
こうしてアミは、ユウの連絡先を手に入れた。
――宿泊施設【シティ・ビジネスホテル】
3人が辿り着いたホテルは、可もなく不可もない、ごくごく一般的なビジネスホテルであった。
アミの家の力を持ってすれば、WCS、ワールドチャンピオンシップ大会で賑わう、会場近くの高級ホテルを抑えるのも用意だったろう。
しかし、自分達はあくまでもUCS、アンダーグラウンドチャンピオンシップ、裏大会の出場で来ている。
ならば目立つ高級ホテルより、質素なビジネスホテルの方が良いと踏んだのだ。
「大会は明後日からよ。明日はカードショップを巡ったり、辺りの散策をするわ。いいわね?」
「あいよォ〜」
「はいはい」
「それじゃあ各自ゆっくり休みなさい。貴方達はマーカー付きなんだから、くれぐれも外出は慎重にね」
そう言い、アミは自室へと入った。
ユウもまた隣の自室に。
オガタは、ちょっと買い物して来る、と言い残しホテルを出て行った。
ユウはシャワーを浴び、その後は狭いテーブルの上にカードを並べ、デッキ構築に頭を悩ませていた。
(汎用カードを思い切って入れちまうか? うーん…グラトニーデビルはあんま使えてねぇんだよな…)
ました。ありがとうございます】
【いいのよ〜(◍•ᴗ•◍)❤ 信徒みんなで応援୧(^ 〰 ^)୨はやめとくわん↴↴おやすみ〜(*^3^)/~♡】
と、メッセージのやり取りもこなしていると、
【ユウ、今から部屋に行ってもいいかしら?】
今度はアミからメッセージが入る。
(今から!? おい、ちょっとまて――)
返信しようとするも、既に扉はノックされていた。
仕方なく応対するユウ。
扉を開くと、シンプルな浴衣姿のアミが立っていた。
恐らくはホテルに常設してあるものだ。
「…何だよ?」
「いえ、ちょっと決闘したいのだけれど」
「今からか?」
「ええ。貴方の事だし、デッキの調整をしていたのよね? それなら戦いながら調整するのがベストでしょう?」
「…たしかにそうだけどよォ…」
そう言い、視線を彷徨わせるユウ。
アミは浴衣姿とはいえ薄着。彼女のプロポーションとのコンボは、目のやり場に困るのだ。
「なんつーの? 仮にも個室に、元犯罪者とお嬢様二人きりは…色々マズくねーか?」
「は?? 今更でしょう? 島の時なんて同じスペースに雑魚寝だったじゃない」
それは、あの時の環境が特殊だったからだ。
ベッドも布団もなく…さりとて、離れていたらいつデュエルゾンビや他プレイヤーに襲われるか分からなかった。
それに島の時の話を出すならアミは、一時期、身の危険を感じるから近寄るなと言っていたのだ。
(女ってのはマジで分からねーな)
「それにもし万が一、貴方が妙な気を起こしたら、鼻でも折ってあげるから安心なさい」
「へーへー、どちらにしろ、テメェをどうこうする度胸なんざねーよ。命がいくつあっても足らねェ」
「……どういう意味かしら?」
「そのまんまの意味だよ。オレはまだ死にたくねえ」
「ふふ、それにデッキ調整は1人より2人よ。私の視点からアドバイスも出来るわ」
「わーったよ、じゃあ頼むわ。丁度構築に煮詰まってたトコだしよ」
「お邪魔するわ…実は月光以外のデッキも沢山持ってき――」
バタン、と扉が閉まる。
――(オイオイオイ!!? マジでユウの部屋に入ってったよ??)
通路の影から一部始終を見守っていたオガタは、あまりの急展開に目眩さえ覚えた。
(前々から距離近いなぁとは思ってたが…遂にこうなったかぁ!)
オガタはユウの隣の部屋だ。
物音をたてず慎重にルームインする。
(あの2人、多分体力もあるだろうしなぁ…コイツァ朝まで…)
[ダイレクトアタックゥゥゥ!!]
[甘いわね! それは罠よ!!]
(……デュエル、かぁ)
隣から漏れ聞こえる声に、オガタは溜め息をついた。
【オレはまだ死にたくねえ】
アミは島のサバイバルデスデュエルの時、生身による戦闘能力の高さを見せつけており、ユウもまたその身に攻撃を受けている為に、この言葉が出た。