トレーナー俺氏、気がついたらコスモ幻獣拳の継承者になってるし、ウマ娘はコスモビーストになってるんだが   作:幽明卿

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7話 破局

 

 

 クレーターと化した街――

 巨大な穴の中心に佇むのは、発光体の頭部を持つように『不可視()』える、人型の何かだった。

 

 その『非存在(そんざい)』に相対するようにウルトラマントレーナが降り立つ。

 彼はジェンティルドンナたちに促されて空高く飛び上がっており、街を消滅させた現象から逃れることができていた。――とはいえ、周囲の被害は甚大だ。彼は周囲を見回し、その荒涼たる景色に動揺する。

 

「シュア……ッ」

 

 怪獣と呼んでいいのかすら分からない『それ』に対し、トレーナはファイティングポーズを取る。ぼんやりと佇んでいた『それ』が接近してくる。まるで酒に酔っているかのようなふらふらとした足取りで。

 

「      」

「セヤァッ!」

 

 光の剣『鋭針閃煌剣』を生成し、突きを繰り出す。

 だが――手ごたえはなかった。確かに命中したように見えたのに。

 

「      」

「――!」

 

 いつの間にか怪獣はトレーナのすぐ隣にいた。その腕がラリアットを繰り出し、トレーナの首を捉える。

 

「グッ……!」

 

 転ばされるトレーナ。しかし彼は違和感を持った。ラリアットを受けたはずなのに、怪獣の腕力で転ばされたように感じなかったのだ。より間接的な、非接触的な……何かしらの超自然的な力を受けたように思えた。

 

 トレーナは地面を転がって距離を取った。

 起き上がると同時に剣を振り、刃状の光弾を放つ。――しかしそれも、怪獣には通じない。怪獣はそこに突っ立っていただけなのに、気付けば光弾はあらぬ方向へ飛んでしまっているのだ。

 

「      」

 

 女性のコーラスのように『非可聴()』こえる声を上げながら、怪獣は頭部から電撃光線を放つ。

 それは鞭のようにしなって中空を踊り、トレーナの体を襲った。

 

「デアア……ッ!」

 

 膝をついて肩を上下させるトレーナ。その胸のカラータイマーが点滅を始めた。

 相変わらずふらふらと接近してくる怪獣に対して拳を振るうが、有効打どころか触れることすら叶わない。確実に捉えたと思った攻撃でも、怪獣は必ずそれを躱してくる。

 

「      」

「テヤッ……!」

 

 凄まじいエネルギーの奔流が怪獣の胸部から放たれる。トレーナはすかさずバリアを展開するが、敵の光線はまるで意に介さない。すり抜けるようにして容易くバリアを砕き、トレーナの巨体を突き飛ばした。

 

「グ……デァ……」

 

 何もない荒野に倒れ込み、トレーナはのたうつ。

 ただでさえメフィラス星人との連戦だったのに、この怪獣には一方的にやられるばかりだ。ダメージの蓄積は大きく、体力も尽きかけている。

 

 だが、怪獣はそんなことはお構いなしといわんばかりに、攻撃の手を緩めない。

 その胸部からエネルギー光弾が次々と生成される。怪獣の周囲に浮遊したそれらが一斉に放たれ、トレーナの周囲で爆発の連鎖を巻き起こした。

 

 

 

 

「トレーナーさんっ!」

 

 空中から戦闘を見守っていたヴィルシーナが叫ぶ。

 ジェンティルドンナはその横で眉間に皺を寄せ――その身に光を纏い、トレーナの元へ飛んで行った。

 

「ジェ、ジェンティルさん!?」

 

 ヴィルシーナもそれに続く。

 真紅と群青、二筋の光が星のように流れ、トレーナのカラータイマーに飛び込んだ。

 

 

 

 

『トレーナ』

 

 トレーナの意識空間とも言うべきインナースペース。

 トレーナーは、そこに響くジェンティルドンナの声を聞いた。

 

『ジェンティル……?! 来てくれたのか!』

『無駄話は後で。トレーナ、あの怪獣は恐らく「グリーザ」ですわ』

 

『グリーザ……!』と、エイシンフラッシュとヴィルシーナの声が重なった。

 

『あの怪獣は実体のない「虚無」。故に、あらゆる攻撃が通じない。そこに居るように見えるのは、観測者の脳が無理やり可視化させているからと言われていますわ』

『何だそれ……。倒す方法はあるのか?』

 

 ジェンティルドンナは少し間を置いてから言葉を紡いだ。

 

(わたくし)の「力」であれば……封じ込めることは可能よ』

 

 彼女らしからぬ歯切れの悪さだった。

 トレーナーはそこを追及したかったが、それより先にエイシンフラッシュの声が割り込んだ。

 

『確かに。いかにグリーザが「虚無」であるとはいえ、「今」「ここに」現象が確認されているのも事実。グリーザは「非存在」でありながら「存在する」。矛盾していますが、そこに付け入る隙はあります』

 

『ジェンティルさんの理屈を超えた「力」であれば、「虚無」をも打ち負かせるかもしれません』とヴィルシーナも同調する。

 

『トレーナ!』ジェンティルドンナの声が響く。インナースペースに真紅の光が飛び、それがトレーナーの手の中で『ジェンティルドンナオーブ』として結実した。

 

 トレーナーは『分かった』と頷く。

 真紅の宝珠を『トレーナスラッガー』に装填し、掲げ上げた。

 

 

『――剛馬、力を魅せよ!』

 

 

 

 

 カラータイマーから溢れた光がトレーナを飲み込み、『絢爛剛馬拳』を扱う真紅の姿へと変貌させた。

 トレーナは右手を握りしめ、そこに渾身の力を込める。彼の全身にオーラが炎のように纏い、足元の地面が割れる。そのオーラの吹き上がりにより、赤く染まった後ろ髪が浮き上がり、空を行く龍のように波打つ。

 

「ハアアアアア…………ッ!!!」

 

 そしてトレーナは地面を蹴り――

 一瞬にして、グリーザの懐に潜り込んだ。

 

 オーラを纏う拳を振り抜く。グリーザの胸部に叩きつける。

 影と音を置き去りにし、空間を捻じ曲げるほどの圧倒的破壊力が、無敵だったグリーザの体を捉えた。

 

 

「――無影(むえい)剛毅(ごうき)絢爛撃(けんらんげき)!!」

 

 

 一瞬の無音の後、凄絶な衝撃音が響き渡った。

 グリーザも抵抗する。トレーナの真紅のオーラとグリーザの妖光が衝突し、嵐となって周囲に吹き荒れる。

 

「      」

「グッ――――!!」

 

 トレーナは渾身の力を込めている。残りの力を全て振り絞っている。

 だが、それでも拮抗するのみだ。そればかりか、徐々に形勢が敵方に傾いているような気がする。まるで、力そのものがグリーザに吸い込まれ――喰われているかのようだ。

 

 そこへ、ヴィルシーナとエイシンフラッシュの声が響いた。

 

『――ジェンティルさん!』

『私たちも、一緒に……!』

 

 トレーナの両肩に刻まれたコスモビーストの紋様。

 ジェンティルドンナを象ったそれに、二人の紋様が重なる。

 一時的だが、二人の力を上乗せしたのだ。

 

『お二人とも……』

 

 ジェンティルドンナは少し驚いてから――

『トレーナ!』と、自身の力を操る主に呼びかけた。

 

『私たちの力で、グリーザを封じ込めますわ。けれど、もって一日。あるいは、もっと早いかもしれません』

 

 ヴィルシーナがそれに続く。

 

『それまでに、「破局」を回避する方法を見つけてください……っ!』

 

 エイシンフラッシュもまた、必死な口ぶりで言う。

 

『トレーナーさんの予感通り、その鍵はきっと「貴方の担当ウマ娘」です! その記憶を思い出してください!』

『み、みんな……!? 待ってくれ!』

 

 トレーナーの呼びかけに答えはなく――

 巨人の拳から、真紅、群青、漆黒の光が飛び出す。混じり合い、ひとつの光の奔流となって、グリーザに叩きつけられる。その胸に宿る発光体を割り、砕き、そして怪獣の体内に潜り込んだ。

 

「グアアアアアッ!!」

 

 グリーザの体から衝撃波が放たれ、トレーナは吹き飛ばされる。

 限界だった彼の変身が解かれ、一介の地球人の姿に戻ってクレーターの地面に倒れる。

 

「……はぁ、はぁ……っ」

 

 満身創痍になりつつも、彼は面を上げる。その目に飛び込んできたのは――

 

 再び球体になったグリーザが、宙に浮かんで静止している光景だった。

 

 


 

閃煌(せんこう)黒馬拳(こくばけん)

『エイシンフラッシュオーブ』を装填することで使用できるようになるコスモ幻獣拳。

体と後ろ髪がエイシンフラッシュの黒髪を思わせる漆黒になる。

 

光エネルギーのコントロールに長けており、剣の形に固形化したうえで振るう剣術が主な戦法。

必殺技は「鋭針閃煌剣」「鋭針閃煌波」。

 

 

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