学園都市キヴォトス、異世界に転移する   作:大和ゆか

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お待たせしました。




・アオイのヘイローについて

白鳥アオイのヘイローは、赤い球体を中心に放射状に16本の赤い光線が周りの二重の円まで伸びている形、いわば「アロナのヘイローの赤verの中にもう一つの円があり、その中に旭日模様」となっている。

イメージ↓

【挿絵表示】


詳細

即席で書いたメモ。見た目は楕円になっているが、実際は同心円になっている。中心から伸びる光線は、実際は16本である。挿絵の色はピンクだが、実際は赤である。


第二話 未知への備え

 カイザーコーポレーション 本社

 

 

「久しいですね、プレジデント」

 

 

「そちらこそ、久しぶりだな」

 

 

 連邦生徒会副会長のアオイは、キヴォトス有数の大企業であるカイザーコーポレーションのトップ、プレジデントと面会していた。理由はただ一つ、外の世界に対する対策である。

 カイザーコーポレーションは、兵器、観光地、コンビニなど様々な分野に進出している大企業である。原作では、利益のためならなんでもする悪徳企業そのものであったが、本世界線では、副会長主導で連邦生徒会に内部を一掃されたため、ある程度ホワイトな企業になっていた。

 

 

「早速、本題に入りましょう。キヴォトスが異世界に転移したという情報は知ってますよね」

 

 

「えぇ。そして、あなたが外界に対する対策に各学園を飛び回っていることも」

 

 

 アオイのキヴォトスにおける人気は途轍もないほど高い。それは、現実におけるXであるモモッターに彼の目撃情報がよく載せられるほどだ。巷では、彼のファンクラブがあるとの噂があるが、本当かどうかは定かではない。

 話を戻すが、アオイの人気が高い故に、彼の情報が手に入りやすい。だが、彼の業務や私生活とかの情報は当たり前だが得られない。

 

 

「やっぱりわかるか。あんだけ俺の居場所が拡散されてたらな」

 

 

 その状況に慣れているのか、アオイはため息をつくだけで愚痴をこぼすようなことはしなかった。

 

 

「それで、我が社に頼みたいことがあるのだろう?」

 

 

「そうです。詳しくはこちらの資料に書いてあります」

 

 

 紙媒体の資料をアオイから受け取ったプレジデントは、その場でその中身を見る。資料に書いてあることを要約すると、以下の通り。

 

 

・カイザーグループが生産している兵器の更新

・軍需物資の増産

 

 

 他にも食料品や家庭用品についての項目があったが、中心となるのは以上の二つだった。兵器の更新は、他の学園にも要請していることでもあり、軍需物資の増産も同じように要請していた。例外として、アビドスなどの要請に応えることができない学園は、連邦生徒会から兵器や軍需物資が支援物資として送られている。

 プレジデントは、その資料を見終わるとアオイの方を見て、彼の頼みを了承する。

 

 

「そちらの頼み通り、協力しよう。だが、あくまで連邦生徒会ではなく白鳥アオイ、君個人に協力するというのが条件だ」

 

 

 アオイの人気は生徒だけにとどまっていない。キヴォトスに存在する数多の企業でも人気だった。だからなのか、連邦生徒会に協力する企業とアオイ個人に協力する企業の数は明らかに後者の方が上だった。

 アオイは、連邦生徒会長失踪前から様々な企業を支援してきた。倒産しそうな企業を優先して支援し、大企業では労働環境を良くするために定期的に抜き打ちで視察しに行っていた。汚職や労働環境の悪化などがあれば、すぐに汚職は捕まえたり労働環境を改善させたりしていた。つまり、数多の企業にとってアオイは恩人であり、連邦生徒会より信頼できる人物であった。

 

 

「それで構わない。よろしく頼む」

 

 

 アオイは席から立ち、プレジデントと握手をする。契約が交わされた証だ。

 

 

「早速、増産を始めよう。1秒も惜しいのだろう?」

 

 

「そうですね。ありがとうございます」

 

 

 話が終わったのか、扉に向かっていくアオイ。扉の前に立つと、プレジデントの方に振り向き、

 

 

「それでは」

 

 

 そう挨拶して退出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 SRT特殊学園 

 

 SRT特殊学園。それは連邦生徒会長が設立したエリート校である。設立された経緯として、ヴァルキューレ警察学校では対処できない広域犯罪や危険な任務に対応するために設立された。この学園は、連邦生徒会長直属の学園組織であり、連邦生徒会長の権限・命令を以て、あらゆる自治区への介入ができる組織である。

 だが、連邦生徒会長の失踪で状況は変わった。SRT特殊学園は連邦生徒会長直属であるため、連邦生徒会長が失踪したことにより、この学園はトップがいない、責任者がいない状況になった。それをSRT特殊学園が持つ武力とともに危険視した連邦生徒会はこの学園を廃校にしようとした。しかし、それに待ったをかけた人物がいた。それが連邦生徒会副会長の白鳥アオイである。

 彼はSRT特殊学園の廃校は反対だった。理由として、SRT特殊学園とヴァルキューレ警察学校の対応範囲が違うという点にあった。ヴァルキューレ警察学校は主に民間のトラブルや治安維持などを請け負うが、他の自治区での活動は自治権の問題から制限があった。また、手続きも面倒であり、通報があってからすぐに動けないなど対応が鈍かった。故に、ワカモなど七囚人などの重犯罪者を見逃したり重大犯罪を解決できなかったりした。

 逆にSRT特殊学園は、元々、重大犯罪の取り締まりや重犯罪者の捕縛、企業の汚職などの調査など、ヴァルキューレ警察学校では対応できない案件の任務を専門としていた。

 以上のことから、民間レベルの案件はヴァルキューレ警察学校、それ以上だとSRT特殊学園という今までと同じようにするべきだとアオイは訴えた。また、責任者がいないのなら、連邦生徒会長の代わりに自分がなると宣言した。その結果、SRT特殊学園の廃校は取り消され、副会長直属の組織となっている。

 

 そんな学園組織であるSRT特殊学園だが、その学園の中でトップの実力を誇る集団、FOX小隊はある人物と面会していた。この時点で察している読者がいるだろうが、彼女らが面会しているのは連邦生徒会副会長の白鳥アオイである。

 

 FOX小隊は、七度ユキノを隊長とする、ニコ、クルミ、オトギの4人の小隊である。SRT特殊学園のトップというだけあって、キヴォトス有数の問題児で最強格の一人であるワカモをアオイ主導で捕縛するという功績を成し遂げたり、かつてのカイザーコーポレーションの闇を暴いたりしたことのある部隊だ。そんな彼女たちの練度は、キヴォトス最高と言っても過言ではないだろう。

 

 そんなFOX小隊だが、何故アオイと面会しているのか。それは、アオイからの要請に他ならない。

 SRT特殊学園の生徒は基本的に命令に忠実である。それが、SRT特殊学園の責任者であるアオイからの要請なら尚更だ。

 

 FOX小隊の一同は面会室にて、アオイの言葉を待っている。その彼女たちの様子は、側から見れば忠犬そのものであった。

 

 

「久しぶりだな、みんな」

 

 

「お久しぶりです」

 

 

「最近はどう?SRT内で何か変化は?」

 

 

「変化と言えば、副会長の命令で常時即応態勢になっているだけです」

 

 

 FOX小隊を代表してアオイと話しているのは七度ユキノ、FOX小隊の隊長である。彼女が言っていた常時即応態勢とは、特異現象対策会議後すぐにアオイが出した命令である。彼は、外からの何かしらのコンタクトがあった場合、それが武力侵攻だった場合にすぐに動けるように発令したのだ。

 SRT特殊学園と生徒たちは、この命令に対して極めて従順であった。というのも、SRT特殊学園の生徒たちはアオイに対して恩義を感じていた。その恩義は一生忠誠を誓うぐらいに感じていた。彼女たちは自分の手綱を自らアオイに渡し自ら腹を見せているのだ。それは、彼がSRT特殊学園の廃校を防ぎ、理念についても理解を示していたからである。それが彼女たちが忠誠を誓う理由になったのだろう。

 そんな彼女たちがアオイの命令を断るはずがない。むしろ、嬉々として任務を受諾するだろう。その証拠に、アオイの命令を受けた生徒たちはすぐさま即応態勢に入っていた。

 

 

「そうか。なら、早速本題に入ろう」

 

 

 アオイは姿勢を正してFOX小隊全員を見渡すように見つめる。

 

 

「外界からコンタクトがある可能性があるのは周知の事実だと思う。そして、それに対する対策をとっているのも」

 

 

「はい」

 

 

「仮に外界との接触があった場合、その顔合わせ及び外交は私が行う。その際の護衛として、君たちに任せたい」

 

 

 アオイのその提案にFOX小隊全員は目を見開いた。

 

 

「いいのですか?」

 

 

「あぁ」

 

 

 アオイは頷く。彼としても、キヴォトストップクラスの練度を誇るFOX小隊の護衛は心強かった。

 

 

「わかりました」

 

 

 ユキノはアオイの提案………彼女たちにとっての命令を承諾する。その時の彼女たちの副会長を見る目は、命令を受けたことに対して恍惚な表情を浮かべていた。アオイの駒だと自ら自称する彼女たちにとって、彼の役に立てることは何より大事なことなのだ。

 

 

「セイアの予知の情報によれば、接触するのは最速で1週間後。それも向こうから漂流の形でやってくるらしい」

 

 

「漂流?」

 

 

「ああ。それも時代遅れな木造船で、とのことだ」

 

 

 摩訶不思議な話だと、ユキノは思った。外界はそんなに遅れているのか。それか単純に木造船を扱う風習でもあるのか。少なくとも、不思議なことには変わりなかった。

 

 

「俺はその時に、その船の生き残りに話を聞く予定だ」

 

 

 アオイは、この世界について聞く機会を逃すまいと、セイアの予知を頼りに漂流予定の地に向かう予定だった。

 場所はトリニティ沿岸。セイア曰く、リゾート地となっている砂浜に漂流するとのことだった。

 

 

「この情報はセイアと俺しか知らない。こちらから公開するまで緘口令を敷く。わかったか?」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 こうして、FOX小隊とアオイの面会は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トリニティ総合学園 サンクトゥス分派 執務室

 

 SRT特殊学園から出たアオイは、トリニティ総合学園の生徒会メンバーの一人、百合園セイアの執務室に訪れていた。

 トリニティ総合学園。それは「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」の三つの主要な学園で連合を組んで、それがやがて統合してできた学園である。その生徒会であるティーパーティーのメンバーは、順に「聖園ミカ」「桐藤ナギサ」「百合園セイア」であり、その「百合園セイア」の元にアオイは訪れていた。

 

 

「また会えたようだね、副会長」

 

 

「会ったのは夢での話だろう」

 

 

 彼がFOX小隊に話していた彼女の予知の内容を聞いたのも夢の中でだった。

 セイアは明晰夢という形で過去・現在・未来の観測が可能だ。しかし、完全にコントロールはできないらしく、のぞいていけないものが見えてしまうことがあった。一度、アオイの入浴シーンを見てしまった時は顔を赤くしつつも大いに焦って、バレた時用に言い訳の言葉を一晩中考えていたことがあった。

 そんな彼女だが、キヴォトスが異世界に転移したことが連邦生徒会から公表されると、すぐさまその能力で未来を見た。その結果、トリニティのリゾート地の海岸に木造船が漂流する未来が観測された。

 さらに先の未来を見てみると、その木造船の乗組員の生き残りは数名しかおらず、船も乗組員の体もボロボロだった。何かがあったのは明白だが、それが何なのかはわからない。少なくとも、その生き残りの体に戦傷と思わしき傷があったりところどころ固まった血がついていたりと、普通ではないことがわかる。

 彼女は、それらのことをアオイに夢で具体的に説明しながら伝えた。アオイはその説明を聞くと、目が覚めた後すぐにFOX小隊のところに行き、その次にセイアのところに来た。

 

 ちなみに、この話を聞いたアオイは「テンプレ的展開」と思っていたらしい。

 

 そして今、セイアの執務室で二人は机を挟んで向かい合って座っている。アオイの手元には、セイアから出されたであろう紅茶が入ったティーカップがあり、それを彼は綺麗な所作で飲んでいた。

 

 

「味はどうだい?」

 

 

「美味しい。これはセイアが淹れたのか?」

 

 

「そうだ。ナギサに教えてもらってね」

 

 

 セイアは満足そうに頷く。アオイに「美味しい」と言ってもらえたことが嬉しいのだろう。

 実はセイアはアオイに片想いしている人物の一人である。だからなのか、アオイに飲ませた紅茶を用意するためにナギサに教えてもらっていた。紅茶の種類もアオイの好みに合わせている。セイアの大きい矢印が完全にアオイに向いているのは確実であった。

 

 

「最近、外界の対策であちこち回っていたから、こういう風に休憩するのも悪くないな」

 

 

「そうだろうね」

 

 

 自身の能力でアオイの行動を見ていたセイアは、アオイの呟きに相槌を打つ。副会長の仕事は普段から多いのだが、それに加えて今回の転移騒動でさらに倍増していた。外界の対策の件で様々な学園を飛び回っているのもあり、セイアはアオイに同情していた。仕事が多く多忙を極めるのは、彼女が現ホストであるというのも相まって共感できたのである。

 

 

「飲みながら外界について話そうか」

 

 

「そうしよう。私も話そうと思っていたのでね」

 

 

 お互いに手に持っているティーカップを机の上に置く。机の真ん中には、ホスト代行であるナギサから貰ったであろうロールケーキが置かれていた。

 

 

「まず、漂流の話の続きから話そうか」

 

 

 セイアは夢で見た、アオイが知っている先の未来の話をする。

 

 

「漂流した木造船の乗組員は、()()()()()()()()()()()()ことは話しただろう」

 

 

 アオイは頷く。

ーーー全員が大人でヘイローがない。これが話題にあがるのは、キヴォトス人にとってヘイローがない人間は珍しいからだ。しかも、漂流する予定の木造船の乗組員は()()()()。学園都市であるキヴォトスは、当たり前だが大人の数は少ない。さらに、その数少ない大人も、悪い大人が大半であり良い大人が極少数であった。故に、大人がやってくると聞いたアオイが、その漂流する予定の大人に警戒するのは必然であった。

 

 

「戦傷があるって話だったな」

 

 

 漂流する予定の全ての大人の体には、戦傷らしき傷があった。つまり、この船は何処かと戦っていたということの証明に他ならない。また、最悪の場合、その何処かがこちらに攻めてくる可能性も出てきた。

 

 

「その漂流した人物についてなのだが、帰る場所がないらしい」

 

 

「帰る場所が?」

 

 

「正確には、()()()()()とのことだ」

 

 

()()()()()()()

 

 

 アオイは目を見開いて驚く。この後の展開を聞くと、どうやらその乗組員全員をアオイが保護するらしい。だが、予知の通りに事が進んでいたのだとしたら、彼らの故郷は滅ぼされていて、その元凶がこちらにやってくる可能性がある。先程セイアが話した戦傷という証拠が、よりその可能性を高めさせた。

 

 

「だから気をつけて欲しい。外界の脅威は、すぐそばまで来ている」

 

 

 セイアはそう警告する。

 

 

「………『理解できないものを通じて、私たちは理解を得ることはできるのか』」

 

 

「二つ目の古則か」

 

 

「ああ」

 

 

 アオイは頷く。彼は続ける。

 

 

「我々は知らなければならない。この世界のことを。彼らのことを」

 

 

 そう言ったアオイは、再びティーカップの持ち手に指をかけて中の紅茶を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンクトゥムタワー 副会長執務室

 

 

 連邦生徒会の本部であるサンクトゥムタワーには、様々な連邦生徒会の部署が置かれている。そのうちの一つ、連邦生徒会副会長の執務室では、アオイは山のように積まれた書類仕事と戦っていた。その量はいつもの倍以上と言っても良く、これも転移の影響によるものだと言ってもよかった。

 

 

「終わらねぇ…」

 

 

 アオイがそう呟くほど量は多かった。彼は連邦生徒会長代理もやっているのでやる書類が通常より多いのだが、今回は常軌を逸していた。さらに、それに加えて各学園に飛び回って外界の対策を練っている。だが、それでも半分以上を既に終えているところをみると、彼も会長と同じく超人と言われてもおかしくなかった。それほど、彼のやっていることは物凄いことだった。

 

 

『後、三分の一ですよ!()()!!』

 

 

『お仕事、頑張って下さい』

 

 

 彼が持っているシッテムの箱からは、そのOSである『アロナ』と『プラナ』の声が聞こえてきた。

 彼女たちは、主にアオイのサポートを行っていた。この世界線では、先生はおらず、先生のポジションにアオイがついているためか、こうなるのは必然だった。ちなみに、アオイのことを彼女たちは「会長」と言っているが、実際は会長という役職を会長から受け継いだものの、会長が「いつ帰ってきてもいいように」と彼は敢えて副会長のままいるため、会長代理兼副会長という役職になっている。これは彼の自称であるが、書類上では失踪前の会長の手により会長にされている。これに関してはまだ表には出ていないが、アオイは知っていた。

 

 話を戻すが、アオイは机の端にあるエナジードリンクを飲みながら書類仕事を行っていた。トリニティ総合学園から帰ってきてすぐに始めてから数時間は経っている。

 彼は転移騒動から不眠不休で仕事しているため、目の下は化粧で隠された濃いクマがあった。その甲斐あって、現在ようやく残り三分の一のところまで減らせたのだ。

 

 そして、その3時間後。遂に、机の上の書類は全て片付いた。

 

 

「終わったぁ〜」

 

 

『お疲れ様です!』

 

 

『お疲れ様です、会長』

 

 

 近くのソファの上にうつ伏せに寝転んだアオイは、アロナとプラナの労りの言葉を聴きながらそのまま眠りに落ちた。

 

 尚、5時間ほどで起きたアオイが、机を見て、また増えている書類に項垂れたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トリニティ総合学園 リゾート地エリア

 

 

 1週間後、トリニティ沿岸に連邦生徒会副会長であるアオイとその護衛のFOX小隊の姿があった。

 

 

「セイアの予知によれば、そろそろなはずだ」

 

 

 そう言うアオイの顔は、化粧もクマも取れていた。実はあの後、不眠不休で仕事していることに気づいた首席行政官の七神リンと財務室長の扇喜アオイが無理やり彼の自室に押し込んだのだ。そのおかげか、彼はすこぶる体調が良くなっていた。

 

 そんな彼は、セイアの予知を頼りにトリニティ沿岸のリゾート地で例の漂流船の行方を探していた。

 

 

「副会長、あれじゃないですか?」

 

 

 FOX小隊の一人であるニコが指差したのは、ボロボロとなっている木造船が砂浜の岩場に打ち付けられている光景だった。波の影響か打ち付けられた時の影響か、木造船の原型はギリギリ残っている程度だが、船の機能はもはやないと言っても過言ではなかった。

 

 

「あれだな。いくぞ。総員、配置につけ」

 

 

「「「「はい」」」」

 

 

 一同は戦闘態勢になりながら、辺りを警戒しつつ木造船へと近づく。

 

 

「何もないな」

 

 

 辺りには散乱した木造船の破片が散らばっているぐらいで何もなかった。強いて言うなら、木造船の乗組員らしき人物の死体だろうか。それを見た彼らは顔を顰めたが、すぐに辺りの探索を再開する。

 続けて一同は木造船の中に入る。

 

 

「散乱してるな」

 

 

 木造船の中は矢やら剣やらで散乱していた。その中には、明らかに戦いがあったと思わしき体の一部が欠損した遺体や折れた剣の破片などが飛び散っていた。辺りには、血が飛び散って壁や天井にこびりついている場所もあった。

 

 

「副会長……」

 

 

「行こう」

 

 

 それらを見た一同は、目をつぶって少しだけ黙祷するとさらに奥に向かう。

 

 

「こちらもダメか……」

 

 

 アオイは生存者がいないことに落胆する。すると、ユキノは何かに気づいたのか、一部の遺体の脈を測り始めた。

 

 

「副会長。この人生きています」

 

 

「本当か」

 

 

「はい。脈が弱ってきていますが、間違いなく生きています」

 

 

 ユキノは大きい声でアオイに報告した。その報告を聞いた一同は、その他に生存者がいないかくまなく探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、見つけた生存者は10人のみだった。これは、セイアの予知と一致していた。しかし、そのどれも衰弱しており、予断を許さない状態だった。

 この状況を見たアオイは、すぐさま救護騎士団を呼んだ。救護騎士団とは、トリニティ総合学園の部活の一つで、主に怪我人や病気の治療を行っている部活である。そこにアオイは連絡したのだ。

 

 そして現在、見つけた生存者は、全員救護騎士団のところに入院している。意識は未だに戻らないそうだ。

 

 

「ありがとう、助かったよ」

 

 

「いえ、救護は私の仕事ですので」

 

 

 救護騎士団の団長である蒼森ミネはそう言う。左手にシールド、右手にショットガンを持つ彼女は、後輩たちに指示して生存者を病院に運んでいった。

 今、この場にいるのはFOX小隊とアオイ、ミネしかいない。リゾート地であるこの場所は、本来なら沢山の観光客がいるはずである。しかし、転移騒動で海岸には近づかないよう連邦生徒会から命令があった。だから、こんなにも閑散としているのである。

 

 

「あなたも()()が必要ですね」

 

 

 突如、アオイの肩に手を置いてミネはそう言った。

 

 

「い、いや、どこにそんな要素が」

 

 

「疲労が溜まっているようです」

 

 

「リンとアオイに休まされたから大丈夫だ」

 

 

「それっていつの話ですか?」

 

 

「………昨日ですね」

 

 

「睡眠時間は?」

 

 

「………2時間」

 

 

救護ぉ!!!

 

 

 不眠不休の業務があった日の睡眠時間が2時間は流石に少なすぎである。疲労が完全に抜け切っていないのも頷ける。

 

 ミネに担がれたアオイは、そのまま病院に連れて行かれていった。FOX小隊の面々は、それを見て唖然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1週間後、生存者の一人が目を覚ましたとの連絡がアオイに入る。アオイは急いで、生存者がいる病室にFOX小隊とともに向かう。

 

 病室に着くと、ベッドにいたのは、黒髪の優男に見える人物だった。

 

 

 

 

 

 

 そして、これが初めてのこの世界の現地民とのファーストコンタクトとなるのであった。

 

 

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